

萱谷 有香
叶税理士法人 東京事務所代表
税理士・上級相続カウンセラー
大学卒業後は、英会話教材を飛び込み営業により訪問販売しておりましたが、一生働ける仕事をしたいと思い税理士を目指しました。
不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら、沢山の収益物件について税務と投資の面で多くの知識を得られたことを活かし、自分でも不動産投資を始めました。
現在では、札幌や北陸を中心に5棟の物件を保有しつつ、不動産投資家さんの気持ちがわかる税理士になるよう日々勉強し、色々な情報を集めています。
不動産売却は、不動産を売る事で、丸々利益が入るだけではありません。さまざまな税金が課されるので、トータルすると物件を売ったのに損をしてしまうこともあります。
また、不動産売却にかかる税金は、支払いのタイミングや額が決まっているものもありますが、中には売却額によって発生の有無や、課税額が決まるものもあるので、注意が必要です。
特に、不動産引き渡し後に課される譲渡所得税は、売却額、物件を所有していた期間によって変化するので、仕組みを事前に知っておく事をお薦めします。
この記事では、不動産売却にかかる税金の内容と注意点、減税方法を解説します。
→不動産売却の方法ガイド|売る前に読むべき鉄則!成功してる人の共通点【2022年最新】
萱谷 有香
叶税理士法人 東京事務所代表
税理士・上級相続カウンセラー
大学卒業後は、英会話教材を飛び込み営業により訪問販売しておりましたが、一生働ける仕事をしたいと思い税理士を目指しました。
不動産投資に特化した税理士事務所で働きながら、沢山の収益物件について税務と投資の面で多くの知識を得られたことを活かし、自分でも不動産投資を始めました。
現在では、札幌や北陸を中心に5棟の物件を保有しつつ、不動産投資家さんの気持ちがわかる税理士になるよう日々勉強し、色々な情報を集めています。
不動産を売却すると、以下3種類の税金が発生する仕組みです。
注意したいのが、こちら3種類の税金はそれぞれ支払うタイミングが異なるということです。
税金 | 発生するタイミング |
---|---|
印紙税 | 売買契約 |
譲渡所得税 | 確定申告時(引き渡しの翌年2~3月 |
住民税 | 引き渡しの翌年6月以降 |
支払いのタイミングを失念していると遅延金が発生したり、脱税に問われたりするケースもあるので十分注意しましょう。
印紙税は、不動産売買契約書に収入印紙を貼り付ける形で納付をします。
納付する印紙代は、売買契約で取り決めた契約金額に対応して決まっています。
2022年までは、契約金額に付き、以下の金額の印紙税請求がされる仕組みとなっています。
契約金額 | 税額 | 軽減税率適用時の税額 |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円超・10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超・50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超・100万円以下 | 1000円 | 500円 |
100万円超・500万円以下 | 2000円 | 1000円 |
500万円超・1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超・5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超・1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超・5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円超・10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
収入印紙はコンビニなど、比較的どこでも購入することができます。
ただ、不動産売却で利用するような高額印紙は、郵便局や不動産会社から購入するのが無難でしょう。
譲渡所得税は、不動産売却によって売却益が発生した時に、利益に上乗せされて請求される税金のことです。
基本的には購入後、築年数の経過によって価値は下がっていくので、売却益が発生することはそこまで多い訳ではありません。
ただ、ひとたび発生すると高額なので注意が必要です。
譲渡所得税は仕組みが複雑なので、後ほど詳しく説明します。
不動産売却で売却益が発生したら、住民税にも費用が上乗せされます。
売却益が発生した翌年の5月ごろ住民税納付書が届き、そこから1年間で分割請求される住民税は、上乗せされた税額を支払うようになります。
住民税の課税上乗せは、不動産売却の翌1年間のみで、その後は元の金額に戻ります。
不動産の売買契約が成立すると、まず仲介手数料(→不動産売却における仲介手数料の金額と必要性)が発生しますが、引き渡しを行ったあとに、譲渡所得税が新たに課税されます。
譲渡所得税とは、不動産売却で利益が出た際に、所得税と住民税に上乗せで課される税金の通称です。
課される譲渡所得税は決まった計算式で算出されるので、式さえしっていれば、売却前でも今の自分の手持ち額と不動産の予想売却額を合わせたシミュレーションが可能です。
譲渡所得税=税率×{譲渡価格-(取得費+売却費用) }
譲渡所得税の計算式は、以上の通りです。
取得費は、不動産の購入代金と取得に要した費用の合計額(家の場合は減価償却費を差し引く)と譲渡収入金額の5%のうち、大きい額の方が採用されます。
売却費用とは、仲介手数料、登録免許税など、売却の為にかかった経費の合計のことです。
また、実際に課税される額は、この譲渡所得から特別控除を引いたものとなります。
譲渡所得税は所得税と住民税に上乗せされますが、どちらの場合も計算式は同じです。
ただ、それぞれの税率が異なるので、金額に違いが出ます。
短期譲渡所得(不動産所有期間が5年以内) | 長期譲渡所得(不動産所有期間が5年超) | |
---|---|---|
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
※復興特別所得税として所得税の2.1%相当が上乗せ
不動産売却でかかる譲渡所得の税率は、短期(不動産所有期間が5年以下)と長期(5年超)で、以上のような違いが出ます。
この際の注意点として、所有期間は不動産の購入日から引渡日までを数えるのではなく、引き渡した年の1月1日までとなります。
多くの人が勘違いをしている所ですが、これを間違えると無駄に高い税金を納めなければなりません。
不動産売却を始めてしまったあとでは、期間調整で税率を下げるのは難しいので、事前の調整が必要です。
所有期間が5年を過ぎた不動産を売却すると税率が下がりますが、10年を過ぎると特例が適用され、更に税率が引き下げられます。
この際、6,000万円以下の部分の適用税率は所得税が10.21%、住民税が4%となります。
特別控除を受けた後に残った譲渡所得が6,000万円以下であれば、この税率が丸々適用されます。
もしも、譲渡所得が6,000万円を超える場合は、6,000万円分はこの税率が適用され、余剰分は長期譲渡所得の税率が適用されます。
前述の通り、不動産を売却すると復興特別所得税という税金もかかってきます。
これは東日本大震災からの復興のために財源を確保する目的で始まったもので、平成25年(2013年)から課税がおこなわれています。
認知度の低い税金ですが、すでにサラリーマンの給与所得からは復興特別所得税が自動で天引きされています。
復興特別所得税の課税対象は、所得税の納税義務がある全ての個人となります。
平成25年(2013年)から平成49年(2037年)までの所得に対して、毎年所得税に上乗せされる形で課税されます。
復興特別所得税は、基準所得税額に課税される仕組みです。
ただ、国内に生活の本拠をおく居住者か、それ以外の非居住者かによって、課税の条件は変わります。
区分 | 基準所得税額 |
---|---|
非永住以外の居住者 | 全所得に対する所得税額 |
非永住者の居住者 |
|
非居住者 | 国内源泉所得に対する所得税額 |
復興特別所得税の税率は、年2.1%相当で計算します。
復興特別所得税=基準所得税額×2.1%
こちらの計算式で、復興特別所得税の金額を算出します。
復興特別所得税は譲渡所得税と同じく、売却益が発生した際に課されるようになります。
そのため、譲渡所得がマイナスになる場合は、不動産売却時に復興特別所得税は発生しません。
譲渡所得がプラスだったとしても特別控除の条件を満たしている場合、課税される可能性は低いと言えます。
不動産売却で復興特別所得税が発生したら、確定申告を忘れずにおこなう必要があります。
前述の通り復興特別所得税は一般の認知が低い税金で、申告漏れのリスクが高いので注意しましょう。
復興特別所得税は、申告書B第一表の右側に記入する箇所があります。事前に把握しておきましょう。
前述の通り、不動産売却にかかる譲渡所得税は、以下の計算式で求めることができます。
譲渡所得税=税率×{譲渡価格-(取得費+売却費用) }
該当する数字をこちらの計算式に当てはめれば良いのですが、各項目を算出する際も少し手間がかかります。
ここからは、不動産売却にかかる税金の計算方法を、初心者にもわかりやすく流れに沿って解説していきます。
譲渡所得税は不動産売却で発生した利益に対して課されるので、まずはこの利益(譲渡所得)を求める必要があります。
譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得=収入金額(売却代金)-取得費(購入代金+諸費用-減価償却費)-譲渡費用(売却時にかかった諸経費)-特別控除額
それぞれの項目の意味を確かめていきましょう。
収入金額とは、そのまま不動産売却で得た収入のことです。
収入金額は売買契約時に手付金、引き渡し時に残金という形で、2回に分けて支払われます。
収入金額はこの2回に分けて支払われた金額を合計したものになります。
また、1年の途中で不動産を売却した時は、払いすぎている固定資産税を買主に払い戻してもらいます。
こちらの金額(固定資産税の精算金)も収入金額へ含むようになります。
取得費は不動産の取得にかかった費用のことで、購入代金の他にも以下の経費を計上することができます。
取得費の計算は他の項目に比べて少し難しいので、後ほど詳しく説明します。
売却費用(譲渡費用)とは、不動産を売却する際に支払った関連費用のことです。
売却費用には、以下のようなものが含まれます。
ただ、不動産売却の流れは人によっても異なるので、売却費用として計上できるか不明なものもあるかと思います。
この時は遠慮なく不動産会社に相談しましょう。
最後に3,000万円特別控除などを利用した際に差し引かれる特別控除額を計算して、譲渡所得の算出は完了です。
譲渡所得を求めたら、次にかかる税率を計算します。
税率は前述の通り、所有期間が5年以内か5年超かによって変わることを覚えておけばOKです。
ただ、所有期間は注意が必要で、取得した日から引き渡した年の1月1日までの期間を計算するようになります。
2015年4月1日~2020年5月1日までの経過年月は素直に計算すると5年1か月です。
ただ、これを所有期間に当てはめると2015年4月1日~2020年1月1日=4年9か月となり、税金が減額されません。
とはいえ、あえて所有期間を数年延長して長期譲渡所得を狙うようなことはおすすめできません。
基本的には早く売ったほうが築浅のうちに売却できるので、余裕を持って税金の納付が可能になります。
不動産売却の税金を計算するには、取得費の計算が重要になります。
取得費の計算が難しいのは、減価償却の要素が入ってくるためです。
ただ、取得費の計算をしっかりおこなうことで大きな節税効果も見込めます。
ここからは、初心者が取っ付きにくい取得費の計算方法を解説していきます。
ただ、戸建て・マンションなどの建物は確かに築年数の経過によって劣化しますが、土地には築年数という概念がないので、減価償却はおこなわれません。
まずは、取得費計上が可能な経費を洗い出しましょう。
取得費計上ができる経費はあくまで取得(購入)にかかったものであり、その後の運用のために支払われた管理費や住宅ローンの返済費用などは計上できないので注意しましょう。
取得費の減価償却費を計算する方法は、定額法と定率法の2種類があります。
定額法は毎年一定の金額を減価償却する方法で、定率法は一定の割合で減価償却費を求める方法です。
例えば、取得費が2,000万円の不動産を4年で減価償却した場合、1年目の減価償却費の金額は定額法と定率法で大きく変わります。
定率法の減価償却費は、期首残存価額×償却率で計算します。
定率法を計算する際に必要な要素は、こちらの3つです。
上記の数値は法律で決まっており、国税庁が提供しているテーブルに物件の築年数、構造、用途などを当てはめて数値を算出していきます。
この3要素が分かったら、償却保証額と初年度の減価償却費を計算します。
この時、減価償却費>償却保証額の場合は、その期は減価償却費がそのまま採用されます。
一方、減価償却費<償却保証額の場合は、次の年度から改定取得価額×改定償却率で計算されるようになります。
取得費を計算する際は、どんな物件も定額法と定率法のどちらかを選べる訳ではありません。
特に平成19年4月1日以降に取得した物件は全て定額法で計算されるようになるので注意しましょう。
それ以前に取得した物件は、特に申請などをおこなわない場合は旧定額法が採用されます。
定率法を利用するためには手続きが必要になるので、こちらも注意が必要です。
不動産売却にかかる税金を実際に計算していきましょう。
例として、以下のような中古物件Aが成約したとします。
項目 | 内容 |
---|---|
取得期間 | 6年11か月 |
成約価格 | 3000万円 |
購入時の価格 | 2600万円 |
購入時の費用 | 70万円 |
売却時の費用 | 80万円 |
この時、以下の式で計算をします。
約20%×(3000万円-(2600万円+70万円-60万円※減価償却費)=約62万円
こちらの金額が、物件Aの売却でかかる大まかな納税額となります。
ここから特別控除を使えば、税負担をなしにすることができます。
譲渡所得税が発生したとしても、複数ある特別控除を利用することで、課税を減額することができます。
控除が利用できるケース | 所有期間 | 特別控除の内容 |
---|---|---|
売却益が発生 | 10年超 |
|
売却益が発生 | 5年超10年以下 | 3,000万円特別控除※控除しきれない所得に長期譲渡所得の税率が課される |
売却益が発生 | 5年以下 | 3,000万円特別控除※控除しきれない所得に短期譲渡所得の税率が課される |
ただし、それぞれの特別控除には利用条件が定められており、誰もが利用できる訳ではありません。
税金をシミュレーションする際は、事前に条件を満たしているかどうかのチェックもしていきましょう。
売却を行った不動産が家と敷地という、いわゆるマイホームだった場合、特別控除を受ける事ができます。
この特別控除の額は3,000万円とかなり高い金額なので、確実にもらっておきたいですよね。
しかし、築年数が経った家の場合などは、取り壊して土地を売ることを業者から薦められるケースもあります。
もし、控除を受けたいので、どうしても家を取り壊したくないという場合は、大規模なリフォームを行うという手もありますが、この際、リフォーム費用、売却額、特別控除を天秤にかけ、どこに力を入れるか見極めることが重要になります。
また、建物を取り壊した場合でも3,000万円の特別控除を適用できるケースは存在するので、必ずしも物件を取り壊してはいけないということではありません。
3,000万円特別控除は災害などで家屋が減失した場合を除いては、建物付きでの譲渡を前提にしています。
しかし、これでは建物+土地で売り出したのに買主の強い要請を受けて建物を取り壊した場合も、3,000万円特別控除が受けられないことになってしまいます。
この状態を防ぐために、国税庁は租税特別措置法通達(措通)35-2で、建物部分を取り壊して更地にした場合も、以下の条件を全て満たしていれば3,000万円特別控除が利用できるとしています。
この2点はあくまで、譲渡のために家屋を解体したケースを想定したものになります。
上記は、建物部分を取り壊し、更地化した場合にも3,000万円特別控除が適用されるケースです。
ただ、売主と買主の話し合いによっては、契約後に取り壊しをおこなって更地化してから引き渡すケースも考えられます。
このケースを明確に規定している法令・通達はありませんが、租税特別措置法通達(措通)35-2の趣旨を考えた場合、本来は家屋付きで取引する予定だったのに何らかの事情で取り壊しを余儀なくされたケースを補完しているという意味合いになるため、たとえ売買契約後に取り壊しがおこなわれた場合でも3,000万円の控除は利用することができると考えられます。
措通35-2(1)の内容を考えて、土地の譲渡契約から1年以内に取り壊し・引き渡しをする必要があるでしょう。
不動産売却にかかる税金は、必ずしも課税分をそのまま支払う必要はありません。
取引促進のために複数の特別控除が用意されており、条件に当てはまれば大幅減額をすることも可能です。
不動産売却にかかる税金の特別控除は、以下のものが挙げられます。
内容や条件を1つずつ見ていきましょう。
居住用不動産を売却した時に譲渡所得が発生した場合、そこから3,000万円を特別控除することができます。
マイホーム特例とも呼ばれるこの特別控除を利用すれば、ほとんどの場合、かかる税金を0に抑えることができます。
この3,000万円特別控除を利用する場合は、以下の条件をクリアしている必要があります。
3,000万円特別控除は、相続開始のあった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日以内に売却をすれば相続物件にも適用されます。
この特例を利用するには必ず確定申告をする必要があるので注意しましょう。
取得費加算の特例とは、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に相続物件を売却した場合、取得費に相続税額の一部を含めることができる制度です。
譲渡所得税の大きな減額になりますが、利用する際は以下の条件を満たす必要があります。
所有期間が10年を超えた場合、譲渡所得税率の計算が以下のようになります。
例えば譲渡所得が8,000万円の場合、軽減税率の特例を使うと以下のようになります。
この特例は3,000万円特別控除と併用できるのも大きな魅力です。
この特例を使うことで、不動産を売却した時に税金を支払うのを、新居を売ったタイミングの支払いに繰り延べることができます。
住み替えにかかる諸費用を抑えることができ、予想以上に収入金額が低かった時の救済策にもなります。
この特例を利用する際は、以下の条件を満たしている必要があります。
居住用不動産の譲渡損失特例は、その名の通り不動産を売却して損失が出てしまった場合、つまり譲渡所得がマイナスになった場合に利用できる特例です。
この場合、譲渡所得の損失分を他の所得を使って損益通算することができます。
例えば、給与所得が700万円、譲渡所得の損失が200万円の場合、700万円から200万円を持ってきて相殺します。
そうすると給与所得は500万円になるので、課税される所得が200万円少なくなります
この特例を利用するには、以下の条件を満たしている必要があります。
※譲渡年は、合計所得金額が3000万円超でも損益通算可能ですが、 繰越控除の適用をうける年の合計所得金額は3000万円以下となります。
前述の譲渡損失特例は、買換え時以外で利用することはできません。
ただ、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除は買換え資産がなくても実施可能です。
ただ、条件として所有期間5年超である必要があるので注意しましょう。
幅広い取引事例に適用される制度ですが、親族間など近しい間柄の取引は適用外となるケースも少なくないので注意しましょう。
平成21年~平成22年に取得した土地を売却する場合、譲渡所得から1,000万円を控除することができます。
収用とは公共事業のために国が土地を買い取って利用することです。
道路を開通させたり、大規模な施設を建造したりする際に、予想される範囲の中にポツンとある個人の敷地を購入してしまい、まとめて国の土地としてしまうのです。
国の買取は強制力が働くので、その代わりに高額の特別控除が提供されているのです。
この特別控除を利用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
また、以下のような税金優遇制度を利用している場合、併用はできないので注意しましょう。
区画整理や都市開発といった事業の一環で土地を売却する場合は、2,000万円の特別控除を受けることができます。
この特例を利用するためには、区画面積が最低でも30haである必要があります。
また、以下の特例と併用することができないので注意しましょう。
造成とは干拓や埋め立てなどをおこない、土地の用途を大きく変更する作業のことです。
国・自治体や民間企業が造成事業をおこなう一環で土地を買い取る場合、1,500万円が控除されます。
農地を農家へ売却した場合、特別に800万円の控除を受けることができます。
近年は農地の取引が活発化させたい、生産緑地法の期限が切れることで売り出される大量の農地の放棄を避けたいという行政の思惑もあり、1,200万円に控除額が引き上げられるといわれています。
不動産を売って住み替える際に利用したいのが、住宅ローン控除です。
住宅ローン控除によって、新居に引っ越す際の初期負担が楽になります。
住み替え時の初期負担が軽減できるので出来るだけ活用したいところですが、この住宅ローン控除には条件があり、誰もが利用できる訳ではありません。
住宅ローン控除は中古住宅への住み替えでも利用可能ですが、その際は上記条件に加えて木造なら20年以内、耐火建築物なら25年以内に建築されたものであることが条件となります。
住宅ローン控除を適用した場合、以下の金額が各年分の所得税から控除されます。
・控除額=年末借入金残高×1%(控除限度額有り)
不動産売却時に特別控除を利用し、購入時に住宅ローン控除を利用することは難しいです。
ローン控除の適用を受けるには、居住の用に供した年とその前後2年ずつの5年の間に、以下の特例を受けていないことが条件となります。
上記の期間内に両者を併用することはできません。もし税金が発生する上にローンも組むとなれば、どちらかお得なほうをケースに応じて選択する必要があります。
住宅ローン控除と特別控除のタイミングをずらせば、理論上は併用することは可能です。
例えば、住宅ローン控除を利用してマイホームを購入後、旧宅は所有したままにしておき、3年目以降(3年経過する日の属する年の12月31日まで)に売却すれば3,000万円特別控除を利用できます。
ただ、この場合は、いくつかの問題点が発生します。
これらのリスクを考えると、無理に併用しようとせず、どちらか一方に絞ることをおすすめします。
不動産売却にかかる税金の説明は基本的に個人に向けたものです。
法人の不動産売却時は、かかる税金がまた変わってくるので注意しましょう。
個人が不動産をした際に得られる利益は、譲渡所得とみなされます。
そのため、売却益が出た場合にかかる税金も譲渡所得税と呼ばれます。
一方、法人の場合は収益全体に対してまとめて税金がかかるようになります。
かかる税金に対する考え方が個人と法人では全く異なるのです。
前述の通り、法人が不動産売却をする際は全収益に含めた上で、法人税率をかけて課税額を算出します。
開始事業年度 | 資本金1億円以下の外形標準課税不適用法人(年800万円超の部分) | 資本金1億円超の外形標準課税適用法人 |
---|---|---|
H28/4/1~H29/3/31 | 23.4% | 23.4% |
H29/4/1~H30/3/31 | 23.4% | 23.4% |
H30/4/1~H31/3/31 | 23.2% | 23.2% |
一般的な中小企業の法人税実効税率は、近年30%~35%の間で推移しています。
個人の譲渡所得税は所有期間が長引くほどお得になりますが、法人税は最初のほうが優遇されます。
早い段階の不動産売却なら法人税のほうがお得になりますが、だから法人のほうがお得と一概に言える訳ではありません。
法人の不動産売却では消費税が課されます。
消費税が課されるのは建物のみで、土地は非課税になります。
例えば建物を敷地ごと売って総額5300万円、消費税が300万円の場合、売上の内訳が以下の通りだったことを表します。
消費税のコストが加わるので、総額の税負担は法人のほうが大きくなる傾向にあります。
→不動産売却で消費税はかかる?課税・免税の条件と課税額の計算方法・注意点
法人による不動産売却では消費税課税が大きなデメリットですが、法人であれば必ず消費税が課されるという訳ではありません。
法人でも免税事業者なら課税されないのです。
業績不振などで課税事業者に一度なってから課税売上高が1,000万円を下回った場合も、届け出手続きをおこなうことで翌々事業年度は免税事業者になります。
ただ新規法人の場合、1年目は確実に免税ですが、2年目から課税事業者になってしまう場合もあります。
更に、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるか否かの判定は、事業者が特定期間中に支払った給与等の金額の合計額が1,000万円を超えるか否かでおこなうことも認められています。
特定期間中の課税売上高が1,000万円を超えていても、その間の給与等の支給額が1,000万円以下であれば、免税事業者と判定することができます。
個人が不動産売却をした際に発生する譲渡所得税には、最大3,000万円の特別控除をはじめ、複数の特別控除が用意されています。
一方、法人の場合は不動産売却益を他の収益と区別せずに扱うので、こうした特例を利用することができません。
この点は会計処理上重要なので、しっかりチェックしておきましょう。
不動産売却にかかる税金の説明は基本的に個人に向けたものです。
法人の不動産売却時は、かかる税金がまた変わってくるので注意しましょう。
不動産売却でかかる税金(譲渡所得税)は、引き渡しの翌年2月中旬から3月中旬の間に確定申告をして納付をします。
サラリーマンの方は税金の納付に慣れていない方も多いので、タイミングには十分注意しましょう。
ただ、全ての税金・費用がこのタイミングで支払われる訳ではありません。
税金・費用 | 支払うタイミング |
---|---|
印紙税 | 売買契約時に、契約書に印紙を貼り付けて納付 |
消費税 | 決済時に支払う |
仲介手数料 | 売買契約時に半金を、引き渡し時に残額を支払うのが一般的 |
司法書士の報酬 | 決済時に支払う |
それぞれ支払いのタイミングがバラバラなので、売主自身も時期を把握しておきましょう。
不動産売却によって利益が発生した場合、売却した翌年3月15日までに確定申告を行って、税金を納付する必要があります。
ただ、確定申告後に所得税は納付の必要がありますが、住民税は税務署に申告をしていれば確定申告のみで構いません。
住民税は、翌年の6月から納付するようになります。
確定申告のやり方はこちらにまとめています。参考にしながら手続きを進めてください。
→不動産売却時は確定申告が必要!必要書類の書き方を完全ガイド【決定版】
確定申告をする際は、まず申告書類の記入をおこなう必要があります。
必要書類は管轄の税務署で取得をしなくても、国税庁のHPからダウンロードすることができます。
申告書類をスムーズに記入する流れは、以下の通りです。
確定申告は、国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用して自宅からおこなうこともできます。
多忙で税務署へ行けない方や、混雑を避けたい方、自宅が遠方にある方などはe-Taxの利用をおすすめできます。
ただ、e-Taxを利用する際は電子証明書取得やICカードリーダー購入などが必要になってくるので、通常時より準備に時間がかかる可能性もあります。
不動産を売却する機会は一生に一度あるかどうかですし、サラリーマンの方ならe-Taxを使うために準備をしても、その後2度と利用しない可能性が高いです。
ただ、個人事業主など何度も確定申告をおこなう方なら、e-Taxを利用できるようになっておくと便利ですよ。
課税額をシミュレーションする際は、居住期間や所有期間などの確認が必要になります。
この時、税務上の認識とズレていると実際の課税額と大分違った数値になってしまうので、注意しましょう。
税務上の「居住期間」は、住まいに入居してから転居するまでの期間を指します。
購入した日や売買契約日は含まないので注意しましょう。
また、単身赴任などで家を空けていた期間も、“その期間が終われば再び住まいに戻ることが約束されている”と見なされれば、居住期間はそのまま継続となります。
上記の扱いに関しては条件が比較的アバウトなので、先に専門家へ確認することをおすすめします。
譲渡所得税の税率を計算する際は、所有期間の正確な把握が必要になります。
このとき注意してほしいのが、所有期間は取得日から譲渡日までの日数を計算するのではなく、取得日から譲渡した年の1月1日までを指すということです。
例えば、2015年2月1日に取得した物件を2020年3月1日に売却した場合、経過日数は5年1か月なので、税率が軽減されると思いがちです。
ただ、税務上は2015年2月1日から2020年1月1日までで所有期間を計算するので、4年11か月となり税率は軽減されません。
シミュレーションする上で重要なポイントなので注意しましょう。
上記2つほどではないですが、特別控除の条件内に建築年数という項目が含まれるケースもあります。
この建築年数とは、文字通り注文住宅などの建築を開始してから、完成までの期間をあらわすものです。
税務上は、登記簿に記載がある年月日から、鍵や登記申請書類の引き渡しがおこなわれた日までの期間を指します。
ちなみに、入居した日は実際に住みだし、住まいとして利用しだした日で計算するのが一般的です。ただ例外的に、住民票の異動日を入居日と見なすケースもあるので注意しましょう。
譲渡所得税は、不動産売却が終わり、代金を取得してからの納付なので、支払いにはそれほど程困らないでしょう。
しかし、譲渡所得税の支払い計画をしっかり取っていなければ、物件の購入費、引っ越し代、手続き時の出費の補充など、さまざまな部分に影響が出てしまいます。
不動産売却は、売却代金だけでなく、出費にも目を向けなければ成功する事はできません。
過度に意識をするのも危険ですが、事前に税金の仕組みとタイミングは確認しておきましょう。
不動産を売る理由や売却価格、売主の置かれた状況など、不動産売却でおかれる状況は売主によって千差万別です。
そのことが、不動産売却でかかる税金を簡単にシミュレーションすることを難しくしてしまっています。
ここからは、不動産売却で税金が発生する事例を3つ紹介し、実際に税額を計算シミュレーションしていきます。
新築マンションを4年で売却したAさんの物件は、以下のステータスだったと仮定します。
築年数 | 4年 |
---|---|
売却額 | 4,500万円 |
購入額 | 4,000万円 |
購入時の費用 | 200万円 |
売却時の費用 | 225万円 |
減価償却費について計算すると、以下の通りになります。
ここから、減価償却費を差し引いたマンションの購入額を計算すると、4,000万円-216万円=3,784万円となります。
ここから税額を計算すると、以下の通りになります。
税金 | 税額 |
---|---|
譲渡所得税【短期】 | 115万円 |
抵当権抹消登記の登録免許税 | 1,000円 |
収入印紙税 | 1万円 |
税額の合計 | 116万1,000円 |
次に計算するのは、以下の事例です。
築年数 | 12年 |
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売却額 | 4,000万円 |
購入額 | 3,700万円 |
購入時の費用 | 180万円 |
売却時の費用 | 200万円 |
この場合、税額を計算シミュレーションすると、以下の通りになります。
税金 | 税額 |
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譲渡所得税【軽減税率】 |
|
抵当権抹消登記の登録免許税 | 1,000円 |
収入印紙税 | 1万円 |
税額の合計 | 74万9,000円 |
Fさんは、所有していたマンションを5年間放置した後、売却に出しました。
築年数 | 12年 |
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売却額 | 4,000万円 |
購入額 | 3,700万円 |
購入時の費用 | 180万円 |
売却時の費用 | 200万円 |
この場合、5年間放置をしていたことで軽減税率の特例等が利用できなくなるので、注意が必要です。
この際、以下の税額を納付しなければいけません。
税金 | 税額 |
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譲渡所得税【長期】 |
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抵当権抹消登記の登録免許税 | 1,000円 |
収入印紙税 | 1万円 |
税額の合計 | 1074万1,000円 |
不動産売却でかかる税金を減らすことで、手残りが増えてお得になります。
ただ、高値で売却をした上で節税をしないと意味はありません。
不動産売却にかかる多くの税金・費用は、売却価格に比例して高額になります。
同じマンションを1,000万円で売った場合と2,000万円で売った場合では後者のほうが税金は高額になりますが、(売却価額-税金)の手残りが多いのも後者になります。
例えば譲渡所得税率は所有期間が長いほど減率されますが、その年数分だけ建物は劣化していくので、結果的に損をするようになります。
不動産売却では、まず最大限に高く売ることを目指すことで、はじめて節税の効果が見込めるということは理解しておきましょう。
→家を高く売るコツ!高額売却を成功させるためのポイント・流れをガイド