「クラウドファンディング市場調査報告書」一般社団法人　日本クラウドファンディング協会－2021年7月9日

一般社団法人日本クラウドファンディング協会が公表している市場調査(2020年)によると、不動産クラウドファンディング(不特法型) の市場規模の推移は以下のようになります。

※金額は主要9サービスの掲載金額から算出されたものです。

引用：「クラウドファンディング市場調査報告書」一般社団法人　日本クラウドファンディング協会－2021年7月9日

中小規模のサービスも含めた市場規模は2021年時点で250億円ほどまで増えて、短期間で規模を拡大させていることがわかります。

サービス開始当初の不安定な時期と比較すると、安心して投資ができる土壌ができています。

不動産クラウドファンディングの規模が拡大した裏を分析すると、様々な側面からの追い風があったことがわかります。

不動産クラウドファンディングは平成7年に施行された不動産特定共同事業法（不特法）が改正されて、事業者の参入要件が緩和されたのがきっかけで大きく活性化されました。

ただし、近年の市場規模拡大は、この法改正だけが理由ではありません。

ここからは、不動産クラウドファンディングが市場規模を拡大している理由をいくつかのポイントに分けて解説します。

大手から中小までバランスの取れた市場である

不動産クラウドファンディングは新規参入でLIFULL、穴吹興産など、以前から不動産業界で様々な事業を展開していた大手企業が参入しました。

それと同時に、中小規模の業者も多数参入して、大手企業とは違った切り口でのサービス展開を進めています。

このような中小業者の参入は大手が率先して参入したからこそ生まれた流れとも言えますし、投資家にも「不動産クラウドファンディング＝安全な投資方法」という認識を広げるきっかけとなりました。

少額から投資ができる

不動産クラウドファンディングは1万円から投資ができて、かつ管理や売買の手間がかかりません。

初心者でも始めやすい投資手法として注目を集めており、実際に投資未経験の方が多くサービス登録しています。

特に2022年現在は新型コロナの感染拡大もあり、投資や資産運用に興味を持つ層が増えていることも、新規登録を後押しする結果となりました。

透明性が高く分かりやすい

不動産投資は、いわゆる収益不動産だけでも272兆円ほどの資産規模※があると言われています。

※出典：ニッセイ基礎研究所・価値総合研究所レポート-2021年03月12日

ただし、大きな規模であるが故に有象無象の業者が参入しており、悪徳業者に騙される人などもいます。

一方、不動産クラウドファンディングはまだまだ参入業者が限定されているため、複数社と比較して、情報の少ない案件や稚拙なサービスの使用を回避することができます。

また、不動産は築年数や想定利回り、所在地、写真などの情報が豊富にあるので、内容や結果が見えにくい投資方法に比べて、透明度が高いです。

POLARIS MARKET RESEARCH

不動産クラウドファンディングの本場とも言えるアメリカでは、世界の約4割を占めるほど、市場が活発化しています。

ソーシャルレンディング自体がアメリカ・ヨーロッパでより利用されている投資方法ですが、その中でも不動産クラウドファンディングがアメリカでシェアを持ち、かつ規模を急速に拡大しているのはいくつか理由があります。

ここからは、なぜアメリカで不動産クラウドファンディングが市場規模を拡大させているのかを解説します。

リーマンショック後に不動産市場の見直しが起きた

2008年にリーマンショックが起こってから特に、アメリカでは不動産投資に魅力を感じる人が増えてきました。

これはリーマンショック後の回復率（成長率）が、株式投資よりも不動産投資のほうが上向きだったことが大きな理由です。

特にリーマンショックの残像で今後訪れる金融危機を不安視するアメリカの投資家層は、不動産投資がより安全という考えを持つ方が多いです。

テクノロジーの活用が進んでいる

アメリカの不動産クラウドファンディング事業は、テクノロジーの活用によって少ない労働力で運用する仕組み化がすすめられています。

スマホ画面で現在の投資状況が分かる仕組みなどを導入することで、ユーザーにとってわかりやすいサービスとなるだけでなく、サービス運営で必要な人的リソースも抑えることが可能です。

アメリカの不動産クラウドファンディング市場は、テクノロジーの進展に後押しされて拡大しているとも言えます。

日本国内での不動産クラウドファンディングの整備は国土交通省によって主導された部分も大きく、国としても需要の高い施策であることは間違いありません。

法整備によって新規参入者の数も増えてきており、今後も市場は拡大し続けると考えられます。

しかし、日本の不動産クラウドファンディングの市場規模が拡大し続けるためには、現在の日本の不動産市場の見直しも必要になってくると考えられます。

アメリカは日本と比較して中古住宅の流動性が高く、不動産クラウドファンディングを通して容易に取引ができる土壌が整備されていました。

一方で日本は中古物件の取引市場が比較的小さく、まだまだ取引が促進されていない背景があります。

日本で中古住宅の取引が広がらない要因としては、以下のような要因があげられます。

• 仲介業者の透明性が低く、市場が活性化しない（囲い込みなど）
• 法整備・仕組み整備が進まず、中古物件が効率よく管理できていない
• 伝統的に中古住宅を購入する文化がない(災害の多さから新築が好まれる)

ただ、近年では不動産共通IDの整備などが進み、所在不明の中古住宅を管理しやすくしようという試みが生まれています。

こうした試みと合わせて不動産クラウドファンディングの市場が今後盛り上がってくれば、日本国内の市場規模もより大きくなってくると考えられます。

先の市場規模拡大に伴って、不動産クラウドファンディングを利用される方が増えています。

その中でも、以下のような考えや資産計画を立てている方に、不動産クラウドファンディングは最適な資産形成です。

ここからは、上記で上げた3つの考えや特徴について1つずつ解説して行きます。

長期・中期的で収入を得たい方

不動産クラウドファンディングは、長期的または中期的な収入を求める方々にとって適した投資手段と言えます。

その理由の一つは、不動産は安定性が高く、一定期間での収入が見込めます。

また、クラウドファンディングという仕組みがあれば、莫大な初期投資なしにも、収益化の可能性が広がります。

期間を通じて得られる賃貸料や運用益は、他の一般的な投資商品と比較しても安定したリターンを提供します。

さらに、不動産の価格が上昇することでキャピタルゲインを享受する可能性もあります。

少額で不動産投資に挑戦してみたい方

本来、不動産投資と言えば、大きな資本が必要とされるイメージがありました。

しかし、クラウドファンディングの登場により、一般の個人でも比較的少額の資金から不動産投資に参入できるようになりました。

特に、不動産クラウドファンディングは、その手軽さから、投資初心者や学生などでも手を出しやすい傾向にあります。

そのため、投資に興味があるものの、大きなリスクをとりたくないという方におすすめの投資方法です。

将来的に不動産投資を行いたいと考えている方

不動産クラウドファンディングは、将来的に不動産投資を本格的に行いたいと考えている方に対して、理想的な第一歩となるでしょう。

この方法を利用すれば、まずは少額から不動産投資の経験を積むのが望ましいです。

そして、その経験を通じて不動産市場の動向や投資の仕組みを理解することができます。

また、多様なプロジェクトから選べるため、自身の投資スタイルやリスク許容度に合わせた投資が行えます。

不動産クラウドファンディングは中古物件の流通を促進したい国の思惑とも合致しており、今後も更なる拡大が見込める投資手法として注目されています。

複雑でリスクも大きい従来の不動産投資の面倒な部分がなくなり、投資初心者も安心して進められるのが魅力です。

先行きが不安な時代に向けて活用できる資産運用の一種として、今後も期待できます。

不動産クラウドファンディングは不動産管理の手間・費用をかけずにスタートできる一方で、運用期間や案件の規模などがそれぞれ異なります。

また、似たような物件に対する想定利回りもサービス毎に異なるため、それぞれのサービスを比較して、最適な一社を選択しましょう。