不動産を売却する際に頻繁に目にする「抵当権」という言葉を目にする機会が多いでしょう
【抵当権とは】
住宅ローンなどを組むとき、金融機関が融資の担保として土地や建物に設定する権利で、主に、住宅ローンの返済がままならない物件オーナー(債務者)に対して債権の履行を確保するための権利です。
もしも、ローンの返済が滞る事態に陥ったり、返済不能となれば、以下のような形で抵当権が行使されます。
- 不動産の差し押さえ
- 不動産を競売にかけ、発生した代金をローンの弁済に充てる
※住宅ローンを返済する際には、特定の期限が定められており、もし期限を過ぎてもなお借入金が残っている場合に備えて、金融機関は抵当権を利用します。
参照:民法|第369条・抵当権より
また住宅ローンを組んでいる方の中には、転勤や離婚などの理由から不動産を売却したいと考える一方、原則として抵当権が付いている状態で不動産を売ることはできません。
しかし、売却益が住宅ローンの残債額を上回るアンダーローンであれば、抵当権が外れ、不動産の売却が行えます。
ただし、抵当権が付いている不動産を売却するときは、権利が行使される前に売る必要があります。
ここからは、抵当権の仕組みや抵当権が付いている不動産の売却方法について詳しく解説して行きます。
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抵当権が付いている不動産は売却できる?
結論を述べると、不動産に抵当権が設定されている状態でも、不動産売却は行えます。
抵当権とは
抵当権は、住宅ローンなどの際に、金融機関が融資の担保として土地や建物に設定する権利です。
借り手が返済不能になった際、金融機関はこの権利を行使し、不動産を競売にかけて債権を回収します。
通常、不動産を売却する際は抵当権を抹消し、清算した後に取引が行われます。
参照:民法|第369条・抵当権より
参照:民法|第424条第3項・特定の債権者に対する担保の供与等の特則より
抵当権は、債務者がローンの返済不能による貸し倒れを避けるために金融機関が設ける権利であり、抵当権が設けられた不動産を売却するには、抵当権の抹消登記を行ってから売却に至ります。
一般的に抵当権の抹消手続きは、売却に先立って抵当権を抹消するか売却と同時に抹消するのいずれかになります。
抵当権を抹消することで、新しい所有者が抵当権に縛られず、購入した不動産の所有ができるようになるためです。
逆に抵当権がついている物件を購入することはリスクが伴うため、購入者を見つけることが難しくなることがあります。
特に、売却価格が抵当権に設定された債務よりも低い場合、売却後も債務が残り、競売にかけられるリスクがあります。
さらに、抵当権が付いている物件に対して融資を行う金融機関はほとんどありませんので、資金計画も慎重に行う必要があります。
したがって、抵当権付きの不動産をスムーズに売却するためには、抵当権抹消のプロセスやスケジュールを十分に理解し、適切な資金計画を立てることが重要です。
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抵当権付き不動産の売却は権利が行使される前に行うこと
前述の通り、抵当権とは住宅ローンが期限内に完済されなかった場合の担保のことで、状況次第では抵当権が持つ権利を行使する可能性があります。
抵当権が行使されると、不動産が競売にかけられます。
さらに抵当権を持つ金融機関には、競売にかける日を決める権利があり、通常の売却価格よりも安値で売り出されてしまいます。
同じような状況でも任意売却であれば居住者のプライバシーを守り、秘密裏に販売活動をおこなってくれますが、競売は白昼堂々とおこなわれてしまうので、精神的なダメージも受けます。
不動産売却を検討しているのであれば、抵当権が行使される前に売ってしまうことが大切です。
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抵当権付き不動産を売却する方法
前述したように、抵当権が付いている不動産の売却は行えますが、売り出す物件を購入希望者に引き渡す前に、付随している抵当権を抹消しなければ、購入者との間でトラブルを招く結果になります。
トラブルを避けるためにも、抵当権の抹消は売却前に済ませておく必要があります。
具体的、抵当権を抹消する方法は3パターンあります。
- 住宅ローンを完済して「抵当権」を抹消する
- 売却益をローン残債に充てて「抵当権」を抹消する
- 任意売却で「抵当権」を抹消する
上記3パターンのうち、②と⓷の抹消方法は、売却益が住宅ローンの残債額を上回るか下回るかで決定します。
ここからは、各方法について1つずつ解説して行きます。
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住宅ローンを完済して「抵当権」を抹消する
住宅ローンやその他の借入金を完済し、抵当権を抹消することで、不動産の売却をスムーズに進めることができます。
手持ちの資金が十分にある場合、ローン残債を先に全額返済し、抵当権を抹消することで、買い手にとって魅力的な条件で不動産売却が行えます。
この方法は、住み替えを検討している方や、投資用不動産を売却する際にも有効です。
抵当権がない状態での売却は、買い手が住宅ローンを組みやすくなり、売却価格での交渉もスムーズに進む傾向があります。
抵当権の抹消には、金融機関との手続きが必要となるため、売却を急ぐ場合は事前に準備を進めておくことが重要です。
売却益をローン残債に充てて「抵当権」を抹消する
手持ち資金が不足している場合、不動産を売却し得た資金でローン残債を返済し、抵当権を抹消する方法があります。
これを「同時決済」といい、売却とローン返済を同時に行います。
この方法を利用することで、ローン残債がある状態でも不動産を売却することが可能です。
しかし、売却価格がローン残債を下回る「短売」の状態になると、売却は難しくなる可能性があります。
そのため、事前に不動産の価値を正確に把握し、適切な価格設定を行うことが重要です。
また、同時決済をスムーズに進めるためには、事前に金融機関との調整が必要となります。
また、売却益を持って抵当権を抹消する方法には、売り先行と買い先行という方法を持って抵当権付き不動産の売却を行う方法もあります。
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買い先行
買い先行は、新しい住宅を先に購入し、その後で現在の不動産を売却する方法です。
この方法のメリットは、新居への引っ越しを先に済ませることができるため、売却物件を空室にし、より魅力的に見せることが可能になる点です。
空室の状態であれば、購入希望者には内覧の際に好印象を与えることができ、またクリーニングやリフォームもしやすくなります。
しかし、デメリットとしては、新しい住宅のローンと現在の住宅のローンの二重返済が発生する可能性がある点が挙げられます。
特に、新しい住宅にも住宅ローンを利用する場合は、経済的な負担が大きくなるため注意が必要です。
売り先行
売り先行は、現在の不動産を先に売却し、その後で新しい住宅を購入する方法です。
この方法の最大のメリットは、資金計画が立てやすくなる点です。
売却した資金を新居購入のために利用することができるため、財務的な余裕が生まれます。
また、二重ローンの心配がないため、月々の支出を抑えることが可能です。
しかし、デメリットとしては、売却後にすぐに新居が見つからない場合、一時的な仮住まいが必要になる可能性があります。
これにより、追加で引っ越し費用がかかるなど、一時的な負担が増える可能性があります。
不動産の売却と購入をスムーズに進めるためには、不動産会社との連携が重要となります。
任意売却で「抵当権」を抹消する
住宅ローンの返済が困難になった場合、任意売却を検討することができます。
任意売却は、裁判所を通さずに、債権者の同意のもとで不動産を売却し、得た資金で借入金を返済する方法です。
競売よりも高い価格で売却できる可能性があり、債務者にとっても債権者にとってもメリットがあります。
ただし、任意売却を成功させるためには、債権者との交渉が不可欠となるため、専門の業者への相談が推奨されます。
任意売却によって抵当権を抹消し、新たなスタートを切ることが可能となりますが、事前の情報収集と計画的な行動が重要となります。
抵当権付き不動産を相続した時の対処方法
売却同様、抵当権が付いている不動産を親族に相続させることも自由に行えます。
ただし、相続の過程で抵当権が抹消されることはなく、不動産と一緒に抵当権も引き継ぐ形になります。
また被相続人が借金を背負っていた場合、相続人がその借金を引き継ぐこととなり、毎月所得の一部を返済に充てることになります。
ついては、返済が滞ると、引き継いだ不動産が競売にかけられてしまいます。
ここでは、抵当権が付いている不動産を相続した時の対処方法について解説します。
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住宅ローンを完済して抵当権抹消登記を行う
相続した不動産に抵当権がついている場合、まず考えられる対処方法は、その抵当権を抹消することです。
そのためにも被相続人が背負っていた借金を完済し、その後、抵当権の抹消手続きを行います。
なお、借金完済と抹消登記は別のプロセスになるので、完済しただけでは抵当権は自動的には消えません。
抵当権抹消の手続きには、登記関連の書類や手数料が必要となるため、専門家の助けを借りることが一般的です。
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【注意】抵当権付き不動産を相続すると相続税が発生する
抵当権付きの不動産を相続すると、その不動産の価値に応じて相続税が発生する可能性があります。
抵当権があるとはいえ、不動産そのものの評価額は変わらず、通常通りに相続税の計算が行われます。
また、負債の返済義務は法律上、相続人全員が共同して負うことになっていますが、金融機関と話し合いを行うことで、不動産を相続した人だけが借金の返済を行うように変更することもできます。
交渉を前に、専門家のアドバイスを求めると話がスムーズに進みます。
相続そのものを放棄する
相続財産が負債を上回る状況であれば、相続放棄を検討することも一つの手段です。
相続放棄をすると、その人は相続人でなかったことになり、負債の返済義務もなくなります。
ただし、相続放棄には期限があり、相続開始を知った日から3か月以内に手続きを完了させる必要があります。
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抵当権の有無を確認する方法
不動産に抵当権が付いているかどうかは、次の方法で確認することができます
自分が利用しやすい方法で抵当権を確認して下さい。
登記簿謄本で確認する
登記簿謄本は、不動産の権利者から所在地・間取りなどさまざまな情報が詳細に記載されている書類です。
登記簿謄本の内容はさまざまな項目に分かれていますが、このうち乙区といわれる部分に、抵当権に関する記述があります。
登記簿謄本に抵当権に関する記載をおこなうことを、抵当権設定登記と言い、抵当権の内容を削除することを抵当権抹消登記といいます。
登記簿謄本はお金さえ払えば、法務局の保管分を閲覧することができます。
本人が権利者になっていない場合でも登記簿謄本でもチェックすることができます。
登記情報提供サービスの利用
不動産登記情報をインターネットで提供するサービスを利用することも一つの方法です。
登記情報提供サービスでは、物件の住所や地番を入力するだけで、抵当権や所有権等の登記情報を確認することができます。
ただし、有料の場合が多く、また最新の情報を提供していない場合もあるので利用する際は注意が必要です。
専門家への相談
不動産の抵当権等の確認は専門的な知識を必要とします。
そのため、不確実性を避けるためには、不動産や法律に詳しい専門家に相談することで確認してもらえます。
依頼する際は不動産コンサルタント、司法書士、弁護士などがその専門家として適任です。
これらの専門家は登記情報の閲覧方法を理解しており、またそれらの情報を正確に解釈する能力を持っています。
自分で調べるのではなくプロに任せることで抵当権の確認が可能です。
売却する不動産に付いている抵当権を抹消する流れ
抵当権の抹消登記は、売買契約で不動産の売却代金が確定してから行います。
なお、抵当権の抹消方法は、住宅ローンの完済を基本としますが、それ以外の方法で抵当権を抹消する場合は、売却代金とローンの残債額の大きさで方法が変わってきます。
パターン | 外し方 |
---|---|
不動産の売却代金>ローン残債 | 売却代金を使って残債を完済 |
不動産の売却代金<ローン残債 | 売却代金と手持ちを合わせて残債を完済(住み替え時はローンも利用できる) |
どちらのパターンにしても、不動産の売却代金が占める割合は非常に大きくなります。
そのため、安全に抵当権を抹消するためには、なるべく高額で不動産を売ることが何よりも大切です。
ここでは、不動産に付いている抵当権を抹消する流れについて紹介します。
抵当権の抹消登記に必要な書類を用意する
抹消手続きは、物件の引き渡し及び売却代金が入ってくるタイミングで同時におこなわれます。
引き渡し等を行う日を前に、売主は以下の書類を手元にそろえておく必要があります。
- 権利証
- 登記原因証明書(司法書士に依頼)
- 委任状(司法書士に依頼)
- 印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
- 固定資産税等評価証明書
この他にも、場合によっては住民票なども必要になります。
通常の引き渡しでは使わない書類も多く含まれるので、事前の確認・準備が大切になります。
売却代金受け取り時に抹消できないと大変なことに
前述の通り、抹消手続きは不動産を引き渡し、売却代金を取得するのと同日におこないますが、この段階で手続きができないと契約は打ち切りになり、売り手に賠償が請求されます。
よってトラブルを避けるためにも売主は、売買契約締結後、物件の引き渡しが行われるまでの約1.5か月で確実に支払えるような計画を立てておく必要があります。
不動産の引き渡し時に抵当権の抹消登記を行う
抵当権付きの不動産売却は、その代金をローン残債にあて、完済した後に抹消登記をおこないます。
代金が支払われるのは引き渡し日なので、この時に抵当権抹消登記も同時におこなうのが一般的です。
不動産の引き渡し日当日の流れは、以下のようになります。
- 本人確認と書類の確認
- ローン融資を買い手がおこなう
- 税金などの精算
- 売り手から買い手へ領収書の発行
- 仲介手数料の支払い
- 司法書士への報酬支払い
- 売り手のローン返済手続き
- 抵当権の抹消登記完了
- 鍵や重要事項説明書などの引き渡し
一般的には、買主が売主指定の銀行口座へ代金を振り込んだ後に、上記の書類を司法書士に渡し、抹消登記を依頼します。
引き渡し日当日は、抵当権の抹消登記以外にもさまざまな手続きをおこなう必要があります。
不動産売却に必要な書類の種類・取得方法を紹介!売却依頼から決済・引き渡しに必要な書類を一覧で紹介
抵当権抹消にかかる費用
住宅ローンを完済した後、抵当権抹消の手続きを進めることは、買主様の安心感を高めるためにも重要なプロセスです。
この手続きを適切に行うためには、法務局での登記作業が必要となりますが、その際には司法書士に依頼することが一般的です。
抵当権抹消登記に関わる主な費用は、登録免許税、司法書士への報酬、そして事前調査費用などです。
それぞれの金額相場をまとめると、以下の通りです。
費用の種類 | 金額の相場 |
---|---|
登録免許税 | 不動産1件に付き1,000円 |
司法書士への報酬 | 15,000円~20,000円前後 |
司法書士への報酬は事務所によって異なるため、事前にしっかりと確認し、適切な見積もりを取得しておくことが重要です。
また、物件の数(筆数)によっても費用は変動するため、複数の物件が絡む場合は特に注意が必要です。
また抵当権抹消にかかる費用の「登録免許税」は、不動産1件につきいくらと計算します。
そのため、マイホーム(庭付き一戸建て)を売る場合は、建物+土地という見方で費用を計上するため、抹消登記費用は1,000×2+15,000=17,000円前後となります。
不動産売却では様々な費用が掛かる…コストを見越して高額売却を目指そう!
抵当権の抹消登記には意外と高額な費用が掛かるのがわかったでしょうか?
これ以外にも不動産売却では仲介手数料や譲渡所得税など、細かい費用・税金がたくさんかかってきます。
これらの費用をトータルすれば、売却価格を上回ってしまうケースだって考えられます。
手取り額を増やすためには、不動産をなるべく高く売ることが一番の近道です。
不動産売却の費用・手数料を一覧で紹介!諸費用の金額相場・計算方法
一括査定サイトで業者を上手に選ぼう
抵当権を安全に取り外すためには、何といっても物件を高額で売ることが大切です。
まだ売り出しを検討している段階の方は、少しでも高く売る工夫をできる範囲でおこなっていきましょう。
対策は複数ありますが、最も効果があるのは一括査定サイトを利用することです。
業者によっては300万円ほど査定額に開きがあるので、適当に仲介先を選ぶ場合に比べればかなりお得ですよ。
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