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不動産売却

共有名義の不動産を売却するには?売却方法やかかる税金・費用・トラブル回避法

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共有名義の不動産には複数人による所有権があります。

夫婦やビジネスパートナーと共有名義の不動産を所有している人もいるでしょう。

  • 共有名義の不動産を売却する方法を知りたい
  • 売る時にかかる税金・費用やトラブルを避けたい

この記事では、以上について詳しい方法を紹介していきます。

共有名義の不動産売却は、所有者が複数いると手続きが面倒になってしまいます。

トラブルを避けるためにも、入念に準備をしましょう。

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Contents

不動産の共有持分とは?

共有名義の不動産参照:民法|第二百四十九条
共有物の使用より

共有名義の不動産とは、一つの不動産物件が複数人の名義で所有されている状態を指します。

この所有形態は、家族が共同で住宅を購入する際や、事業用の不動産を複数の投資者で持つ際によく見られます。

しかし、共有名義には注意が必要です。

不動産を共有名義にするときの注意点

例えば建物は一方の名義、土地は別の名義で登記されている場合、これらは個別の不動産として扱われ、厳密な意味での共有名義とは異なります。

このように、共有名義の不動産は所有権の共有により複数の人が関わる複雑な法的関係を生じさせるため、その管理や売却、相続などにあたっては、共有者間の明確な合意形成が重要になります。

共有持分の割合(持分割合)とは

共有持分の割合(持分割合)とは、不動産の所有権の割合を表すものです。

夫婦で共有持分の不動産を所有する場合は、夫と妻で1:2、3:1といった割合で表します。

例えば、3000万円の住宅で、持分割合が1:2の場合は、それぞれ1000万円と2000万円の不動産を保有する形でしょう。

持分割合は、不動産の売買手続きで参照される重要な項目といえます。

共有名義の不動産の具体例

共有名義の不動産の具体例は戸建て住宅や土地等の不動産を家族やビジネスパートナーなど、複数の関係者が共同で所有している状態のことです。

  • 夫婦間で1つの不動産を共有
  • 親子間で1つの不動産を共有
  • 兄弟(姉妹)間で1つの不動産を共有
  • 他人と1つの不動産を共有 など

共有名義の設定は、共有者間の合意に基づき、不動産登記簿にその所有権の共有状態が明記されることで法的に認められます。

共有不動産の持ち主ができること(共有持ち分権)

共有名義人が持つ権利と同意を求められる要件範囲以下は、共有名義人が持つ権利と同意を求められる要件範囲です。

共有名義人が持つ権利と同意を求められる要件範囲

  • 自分の共有持分の売却は自由に行える
  • 不動産の保存・使用行為は共有者個人の判断で実行可能
  • 不動産の管理行為は共有者の過半数の同意が必要

ここからは、各要件について解説して行きます。

共有不動産の名義人でも、個人の判断でできる行為には限界があります。

要件範囲外の行為は、共有名義人になっている者から同意を得なければなりません

自分の共有持分の売却は自由に行える

共有者は、自分が持つ共有持分に関しては、他の共有者の同意なしで自由に売却できます

この権利は、共有者がその持分に対して完全な権利を有していることに基づいています。

自分の共有持分の売却ができるケース

たとえば、兄弟間で共有されている土地において、一方が自分の持分を他方や外部の第三者に自由に売却できるケースが該当します。

しかし、このような取引を円滑に進めるためには、売却意向を事前に他の共有者に通知することが望ましいです。

持分の売却が自由に行えるとはいえ、その行為が共有不動産全体の管理や利用に影響を及ぼす可能性があるため、共有者間の事前のコミュニケーションはトラブルを防ぐ上で非常に重要です。

自分の共有持分を売却する時の注意点

  • 買主に対して共有状態の不動産であることを伝えておく
  • 他の共有者が存在することを明確に伝える
  • 不動産の価値や売却に際しての法的手続きにおいても、専門的な知識が必要

共有不動産の持分売却に関しては、適切な評価額の設定や契約書の作成など、法律的な支援を得ることが賢明です。

不動産の保存・使用行為は共有者個人の判断で実行できる

共有不動産においては、各共有者にはその物件を適切に維持し、保護するための責任が伴います。

不動産の保存・使用行為が認められている理由

共有物件の価値を守り、その使用価値を維持のため、共有者が個々の判断で物件の修繕やメンテナンスといった保存行為の実行が行える。

認められている行為の目的

  • 建物の老朽化に対する修繕
  • 不法占拠者の排除 など

ただし、例外として大規模な改修や物件の性質を変更するような行為については、他の共有者の同意を得ること。

参照:民法|第二百五十二条 共有物の管理より

また、共有不動産を居住用として使用する場合、共有者は物件全体の利用が可能ですが、この際に他の共有者への使用料の支払いが必要です。

共有不動産を居住用として使用する場合の注意点

これは、共有物件を独占的に利用することにより、他の共有者がその利用から排除されるため、公平性を保つ措置として設けられています。
使用料の額は、通常、共有者間の合意や持分の比率に基づいて決定されます。

参照:民法|第二百四十九条 共有物の使用より

これらの原則は、共有不動産の効果的な管理と運用を可能にし、共有者それぞれの権利と責任を明確にします。

共有者個人が不動産の保存に関してある程度の自由を持つことは、緊急性の高い修繕を迅速に行うなど、物件の価値を維持する上で大きな利点となります。

不動産の管理行為は共有者の過半数の同意が必要

不動産の管理に関する行為は、その性質上、全共有者の利益に影響を及ぼすため、これらの活動を実施するには共有者の過半数の同意が必要とされています。

不動産の管理行為に該当するもの

  • 物件の短期賃貸借契約の締結
  • リフォーム作業の実施
  • その他の改善措置

参照:民法|第二百四十九条 共有物の使用より

このルールは、不動産が適切に管理され、改善されることを保証し、同時に全共有者の利益を保護するために設けられたものです。

この過半数の同意要件は、共有不動産が多数の共有者によって所有されている場合に重要となります。

共有不動産の管理に過半数の同意が求められる理由

それは、単一の共有者が独断で行動することにより、他の共有者の権利や不動産の価値に悪影響を及ぼす可能性を最小限に抑えるためです。
例:大規模なリフォームや長期賃貸契約の締結は、不動産の使用価値や市場価値に大きな影響を与えるため、これらの決定は慎重に行われる必要があります。

過半数の同意を得るプロセスは、共有者間での透明性と公正性を促進することを目的としています。

このプロセスを通じて、共有者は不動産に関する重要な決定を共同で行い、それぞれの意見や懸念を考慮に入れる機会を持つことができます。

共有不動産の管理行為における注意点

緊急を要する修繕やメンテナンスのような保存行為とは異なり、管理行為は通常、より計画的で長期的な視点から行われるべき活動です。
そのため、共有者間でのコミュニケーションや合意形成のプロセスは、不動産の効果的な管理と保全において中心的な役割を果たします。

共有名義の不動産を売却できるパターン

共有名義の不動産を売却できるパターン

以下は、共有名義になっている不動産を売却する方法です。

共有名義の不動産を売却する方法

  • 共有者全員から同意を得た状態で不動産を売却する
  • 自分の名義の共有持分だけ売却する
  • 他の共有者に持分を買い取ってもらう
  • 分筆して売却する
  • リースバックを活用する

ここでは、上記5つの売却方法について1つずつ解説して行きます。

冒頭でも紹介したように、共有名義の不動産は、複数の人が所有権を持つものを指します。

共有名義の不動産を売却する際は、通常の単独名義の物件よりも注意しながら進める必要があります

共有者全員の合意を得て売却する

共有名義の不動産の売却をスムーズに行う方法として最もシンプルかつ合理的な方法は、不動産の名義人になっている共有者全員から同意を得た状態で売却に踏み切ることです。

このプロセスは、不動産売却において共有者間の意見の一致を確認し、全員が売却条件に同意していることを保証するために不可欠です。

不動産は市場価格で売却され、その収益は共有者の持分比率に応じて公平に利益が分配される。

ただし、共有者の中に一人でも売却に反対する者がいる場合、高確率でトラブルにつながります。

共有名義の不動産を売る際に反対者が出た時に生じる問題

  • 不動産売却活動の停滞及び資産価値の低下
  • 共有者間の関係に悪影響を及ぼす

このような状況を避けるためには、売却を開始する前に、全共有者間で徹底的な協議を行い、可能な限り全員の合意をとることが求められます。

共有不動産の売却にあたっては、専門家のアドバイスを求めることも有効です。

不動産仲介業者法律家は、売却の法的手続きや交渉をサポートしてくれるでしょう。

共有者へ自分の持分を売却する

共有不動産において自己の持分を売却したい場合他の共有名義人にその持分を買い取ってもらう方法は、双方にとって有益な選択肢です。

他の共有者に持分を買い取ってもらう方法を選ぶメリット

共有名義の不動産を売買する人 メリット
売り手 ・外部の買取業者や見知らぬ第三者を探す手間を省き、取引の透明性と信頼性を高めてくれる。
・不動産の状況や共有者間の関係を良く知る間柄であるため、売買に伴うトラブルの回避につながる。
買い手 自身の持分を増やすことで、将来的な不動産全体の売却や管理における発言力の強化につながる。
・持分拡大が、後々の不動産の価値向上によって大きな利益を生み出してくれる。

しかし、この取引を成功させるためには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。

共有名義者間で不動産の売買を行う時に踏むプロセス

  • 売却条件、価格、支払い方法などについての合意形成が必要
  • 取引の公正性を保証するため、正式な売買契約を結ぶこと
  • 契約書には、売買の条件、権利義務、そして可能な紛争解決手段を明記する

加えて、持分の売買を行う際には、売却予定の持分に関して他の共有者に通知する必要があるでしょう。

これにより、共有不動産の透明性が保たれ、将来的な誤解や不和を防ぐことができます。

自己持分を第三者へ売却する

共有不動産における売却で全共有者の同意が得られない場合、自己名義の共有持分のみを売却する方法があります。

個人名義の所有分のみを売却する方法とは

共有不動産の売却に際して共有者間の合意形成に障害がある時に有効な手段です。

売却できる範囲

持分の売却は、土地や建物など、共有されている不動産の一部に限定されます。

参照:民法|第二百五十二条 共有物の管理より

共有不動産全体の売却に関する合意がない場合にも、有効な方法です。

持分を専門の買取業者に売却する場合、一般に、共有不動産全体と比較して売却価格が低くなる傾向があります。

これは、共有持分の購入者が将来的に他の共有者との調整や合意形成を必要とする可能性があるため、リスクが高まるからです。

そのため、持分売却は急ぎ資金が必要な場合や、共有不動産の管理に関するトラブルを解決したい場合に検討されることが多いです。

共有不動産の持分を売却する際の注意点
持分の売却を検討する際は、他の共有者に売却意向を事前に通知することが望ましいです。
【売却意向を事前に通知する理由】

  • 共有関係における透明性と信頼を維持のため
  • 売却後に新たな共有者との関係が発生するため
  • 既存の共有者との関係を円滑に保つため

司法手続きで権利関係を解消する

共有名義の不動産は、司法手続きで権利関係の解消が可能です。

民法第255条により、共有名義の不動産の持分は放棄することができる。

【民法第255条】

共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

参考:
e-Govポータル 民法第255条

しかし、権利関係の解消にはいくつかの注意点があります。

権利関係の解消の注意点

  • 持分放棄すると他の共有者は取得した持分に応じて贈与税の支払い義務が発生する
  • 持分放棄には他の共有者の捺印がある所有権移転登記が必要
  • 放棄した持分は他の共有者に無償で帰属となる

所有権移転登記は、法務局に申請します。

この際に、他の共有者の印鑑を必要書類に捺印してもらいましょう

持分の現金化は不可能ですが、不動産の権利関係を解消したい人におすすめです。

持分の割合に合わせて分筆をする

共有名義の土地を効果的に売却する一つの方法として、分筆してから売却を行う手段があります。

分筆とは

一つの土地を複数の区画に区切り、それぞれを独立した土地として再登記するプロセスを指します。
この方法を用いることで、元々共有名義であった土地が、分筆後は各共有者の単独名義の土地となり、それぞれが自由に売却する権利を持つことができます。

分筆売却は、共有者間での意見の対立や合意形成が難しい時に有効な手段です。

共有者がそれぞれ独立した所有権を持つことにより、個別の判断で土地を売却し、投資回収に役立ちます。

しかし、分筆には専門家による測量作業や所有権移転の登記など、複雑かつコストがかかる手続きが伴います。

分筆売却を行う時に考えること

  • 必要なコストや手間
  • 分筆後の土地の利用価値
  • 分筆後の土地の市場価格

また、分筆により新たに形成される各区画のサイズや形状が、将来の利用や売却においてどのように影響を与えるかも考える必要があります。

共有名義の不動産を売却するときに必要な書類

共有名義の不動産を売却するときに用意する書類は、単独名義の不動産を売却するときに用意する書類と同じです。

共有不動産を売却する際は、以下の書類を手元に用意しておく必要があります。

用意する書類
  • 登記識別情報(登記済権利証)
  • 地積測量図・境界確認書
  • 共有名義者全員の身分証明書と実印・印鑑証明書・住民票

ここからは、上記3つの書類がどのような場面で使用されるのかについて解説します。

登記識別情報(登記済権利証)

画像引用:法務省|登記識別情報を通知する際の通知事項の追加についてより

登記識別情報は、不動産登記が完了した際に名義人に交付されるもので、その名義人が不動産の所有者であることを示すための情報となります。

具体的には、12桁の英数字からなるコードのようなもので、この情報を登記所へ提出すれば、本人確認が可能となります。

2006年以前は「登記済権利証」という形式で発行されていたのですが、その後はこの登記識別情報に変わっています。

売却する際は、この情報または旧式の登記済権利証が必要となります。

権利証を紛失した場合は、事前通知を利用して名義人であることを確認する手続きが必要です。

地積測量図・境界確認書

画像引用: 盛岡地方法務局|「地積測量図サンプル」より

地積測量図や境界確認書は、土地の面積や境界に関する情報を示す重要な書類です。

地積測量図は、土地の面積や形状、地番などが詳しく記載された図面で、土地の特性や面積の計算結果を正確に知ることができます。

一方、境界確認書は、隣接する土地との境界を明確にしたものです。

境界が不明確なまま売却を進めると、後にトラブルの原因となる可能性があるため、これらの書類の準備は大切です。

共有名義者全員の身分証明書と実印・印鑑証明書・住民票

共有名義の不動産売却時、最も重要なのは、共有者全員の同意とその確認です。

以下は、共有者全員の身分を証明する書類して提出が求められる書類です。

共有者全員の身分を証明する書類
  • 身分証明書
  • 実印
  • 印鑑証明書
  • 住民票

これらの書類によって、共有者の同意が正式に確認され、売却が進められます。

特に共有者が多い、または遠方に住んでいる場合、事前の準備やコミュニケーションが欠かせません。

また、何らかの事情で売却に参加できない共有者がいる場合、その人の代わりに手続きを進めるための委任状も必要します。

共有名義の不動産を売却するときにかかる費用

共有不動産を売却すると、売主は以下の税金と手数料を支払わなければなりません

共有不動産の売却後に発生する諸費用
  • 登記費用
  • 印紙税
  • 仲介手数料
  • 譲渡所得税

上記で挙げた4つの諸経費は、通常の不動産売却を行ったときにも発生します。

ここからは、各諸経費について解説して行きます。

登記費用

共有不動産を売却する際、名義変更のための登記手続きが必要となります。

この手続きには、3~7万円程度の費用が発生する場合が多いです。

さらに、抵当権が設定されている場合は、それを抹消するための「抵当権抹消登記」が要求され、この登記の費用は不動産1つにつき1,000円程度となります。

実際の登記の手続きは司法書士に依頼することが一般的で、この場合の報酬も考慮に入れる必要があります。

登記の種類や内容により、報酬額は変動しますが、例えば、所有権移転登記の場合は約2万8,000~12万円が目安とされています。

登記の種類 報酬額の目安
所有権移転登記 2万8,000~12万円
所有権保存登記 1万3,000~5万円
抵当権設定登記 2万~7万5,000円

印紙税

不動産の売買契約書を作成する際にかかる税金が印紙税です。

この税の額は、契約書に記載されている売買価格によって変動します。

契約書上に記載されている金額 印紙税
1万円未満 非課税
10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1千円
100万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円

参照:国税庁 印紙税額の一覧表より

例えば、契約書に5,000万円以下の価格が記載されている場合、印紙税は1,000円となり、1億円以下のものでは30,000円の税が発生します。

重要な点として、印紙税の負担者は特定されておらず、売主、買主双方で折半、もしくはどちらか一方が全額負担することも可能です。

仲介手数料

不動産の売却には、専門的な知識や手続きが求められるため、不動産会社に仲介を依頼することが一般的です。

その際、成果報酬として仲介手数料が発生します。

この手数料の上限は、宅地建物取引法によって定められています。

売買価格 仲介手数料
200万円以下 売買価格の5% + 消費税(10%)
200万円超、400万円以下 売買価格の4% + 消費税(10%)
400万円超 売買価格の3% + 消費税(10%)

譲渡所得税

不動産を売却して利益が発生した場合、譲渡所得税と住民税がかかります。

この税は、不動産の保有期間により、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられ、それぞれ税率が異なります。

税区分 所有期間 所得税 復興特別所得税 住民税
短期譲渡所得税 5年未満 30.0% 0.63% 9.0%
長期譲渡所得税 5年以上 15.0% 0.315% 5.0%

上記表から伺えるように、短期譲渡所得に設けられた税率は、長期譲渡所得の税率よりも高めに設定されています。

その目的は、短期間で土地の売買を繰り返して収益を得る土地ころがしを抑制するためです。

売却後に発生する諸経費の中でも、譲渡所得税の支払い負担は重たく、売却後の資金繰りに大きな打撃を与えることもあります。

もし共有不動産の売却を考えているなら、5年以上の所有期間を経てから売却に臨むのがベストです。

共有名義の不動産の持分を売却するリスク

共有不動産の持分のみの売却は、個人の判断で行えます

しかし、持分の売却や買取を行うと、以下のようなリスクを被ることになります。

共有不動産の持分を売却するリスク
  • 低額で共有持分を買い取ろうとしてくる業者がいる
  • 持分購入者が不動産内を出入りする
  • 家賃請求・税金滞納のリスクが生じる
  • 共有物分割請求が業者側から来る

上記4つのリスクの中には、売主に関係しているものもあれば、他の共有者にも関係しているものもあります。

ここでは、共有不動産の持分を売却するリスクについて解説して行きます。

低額で共有持分を買い取ろうとしてくる業者がいる

共有持分買取業者は利益を最大化するために、共有者から持分をできるだけ安い価格で買い取ろうとします。

したがって、持分を売却する際には、不当な低価格での買取を提案されるリスクがあります。

買取価格に納得がいかない場合は、無理に売却する必要はありません。

また、共有者として持分を保有し続けることで、将来的な価値上昇やより有利な条件での売却のチャンスを待つこともできます。

ただし、他の共有者との関係性や不動産の利用状況を考慮する必要があります。

持分購入者が不動産内を出入りする

共有持分を買い取った業者は、その不動産内を自由に出入りする権利を持ちます。

これにより、他の共有者との間でトラブルが発生するリスクがあります。

特に、共有不動産が住居や事業所として使用されている場合、新たな持分所有者の出入りが他の利用者にとって不快や迷惑と感じられる可能性があります。

共有持分を売却する際には、こうしたリスクを事前に考慮し、他の共有者と十分なコミュニケーションをとることが重要です。

家賃請求・税金滞納のリスクが生じる

共有不動産を賃貸している場合、持分を売却すると、新たな持分所有者から家賃の支払いを請求される可能性があります。

また、固定資産税などの公租公課についても、持分割合に応じて支払い責任が生じます。

これらの費用の支払いが滞ると、税金滞納のリスクが生じ、最終的には法的なトラブルに発展する可能性があります

したがって、共有持分を売却する際には、これらの経済的な責任をしっかりと理解し、計画的に行動することが重要です。

共有物分割請求が業者側から来る

共有持分の買取交渉が難航すると、業者は共有物分割請求を行うことがあります。

これは、共有物件を持分に応じて分割するための法的手続きであり、話し合いがつかない場合には裁判に発展する可能性があります。

裁判になれば、時間と費用がかかるだけでなく、感情的な負担も大きくなります。

また、裁判所が分割方法を決定することになり、自身にとって不利な結果になるリスクもあります。

そのため、共有持分を売却する前に、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

共有名義の不動産を売却する時のポイント

共有名義の不動産を売却する時のポイントをまとめました。

共有名義の不動産を売却する時のポイント
  • 事前に必要な準備をおこたらない
  • 売買契約に立ち会えない共有者は委任状を作成する
  • 持ち分割合以上の分配では贈与税が発生するので注意

事前に必要な準備をおこたらない

共有名義の不動産は売却準備をおこたらない
  • 遺産分割時に不動産を共有名義にしない
  • 共有物分割請求を行って共有状態を解消する
  • 夫婦で共有している不動産の売却取り決めは早いうちに決めておく
  • 相続人と共有している不動産の処分方法は生前のうちに決めておく

遺産分割を行う際、不動産の売却代金を相続人同士で分配する方法があります。

または特定の相続人がその不動産を引き取り、他の相続人に対して金銭的な補償を行うことで、共有名義を持たなくても公平な分割が可能です。

共有物分割には「現物分割」、「代償分割」、「換価分割」の三つの方法があります。

現物分割 共有状態が原因でトラブルが起こっている土地を強制的に分筆し、共有者をそれぞれ割り当てることで共有を解消する方法
代償分割 共有物について、特定の共有名義人が全ての所有権を取得した上で、他の名義人に対して代償金を支払う方法
特定の一人が不動産を取得した後は、その人の権限で自由に利用・処分ができる
換価分割 不動産を売却し、得られた利益を共有者で分配。
共有状態が解消され、それぞれが独自の道を選択できる

共有不動産の売却取り決めは早いうちに決めておくことも、トラブル回避の方法です。

夫婦ならマイホームの購入段階で、相続人がいる場合は生前のうちから話し合いましょう。

司法書士を立てて効力のある書類を作っておくといった対策もおすすめです。

売買契約に立ち会えない共有者は委任状を作成する

売買契約の際に共有者全員が立ち会うことができない場合は、不在の共有者は他の共有者や信頼できる第三者を代理人として指定し、委任状を作成する必要があります

委任状には、委任者と被委任者の住所と氏名、委任する内容、取引の日付、委任の範囲などを明記し、委任者は実印を押印し印鑑証明書を添付する必要があります。

これによって、契約時に発生する可能性のある不測の事態を防ぎ、スムーズな取引を可能にします。

持ち分割合以上の分配では贈与税が発生するので注意

共有名義の不動産を売却した際の代金は、共有者の持分に応じて分配されるべきです。

持分割合を無視して行われた分配は、贈与とみなされ贈与税が課される可能性があります

したがって、売却代金の分配は非常に慎重に行う必要があります。

持分割合に基づいて公平に分配することで、税金の問題を避け、共有者間の信頼関係を維持しましょう。

これは、共有不動産の売却において重要なポイントとなります。

共有名義の不動産を売却する際によくある質問

共有名義の不動産を売却する際によくある質問をまとめました。

共有名義の不動産を売却する際によくある質問
  • 共有名義の不動産を売って発生した税金はどうする?
  • 共有名義の不動産を売った後の確定申告はどうする?
  • 共有名義の不動産売却で同意がどうしても取れない時はどうする?
  • 共有名義の不動産売却でトラブルが起こったらどこに相談する?

紹介する準備を事前に共有者全員と済ませておけば、不動産売却がスムーズに行えます。

共有名義の不動産を売って発生した税金はどうする?

共有不動産を売却したときは、持分割合に応じて税金を支払う必要があります

共有名義の不動産を売って発生する税金は、以下の3種類です。

  • 譲渡所得税・住民税
  • 登録免許税
  • 印紙税

不動産を売却する時には名義変更をしなければなりません

名義変更手続きは法務局で行い、その際に登録免許税が必要です。

共有名義の不動産を売った後の確定申告はどうする?

共有名義の不動産を売った後の確定申告は、以下の流れで行います

  1. 譲渡所得税を計算
  2. 確定申告書類の用意
  3. 所轄の税務署に提出

確定申告書類は、以下が必要です。

  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書
  • 源泉徴収票
  • 売却した不動産の登記簿謄本
  • 不動産売買契約書(写し)
  • 不動産会社への仲介手数料の領収書(写し)

売却額が取得費用よりも低い場合などは、確定申告は必要ありません

共有名義の不動産売却で同意がどうしても取れない時はどうする?

どうしても共有名義の不動産売却について同意が取れない場合は、以下の方法があります。

  • 持分に従って土地を分割
  • 建物は「共有物の分割の申し立て」を行って所有者で分ける
  • 弁護士に相談する

民法256条によると、不動産の分割は各共有名義人の権利です。

協議がどうしてもうまく進まない場合は、裁判にかけることも考えましょう。

共有物の分割の申し立て裁判は「共有物分割請求訴訟」と呼ばれます。

参考:e-Govポータル 民法第256条

共有名義の不動産売却でトラブルが起こったらどこに相談する?

共有名義の不動産売却でトラブルが起こったら、以下に相談しましょう。

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 税理士
  • 不動産会社

法律の専門家である士業への依頼は、トラブル解消につながります。

登記の手続きについても、詳しい情報を教えてもらえるでしょう。

ただし依頼内容によっては、高額な報酬が発生することがあるので気をつけてください。

コストを抑えたい人には、まずは無料で相談できる不動産会社へ出向くこともおすすめです。

共有名義の不動産売却はトラブルが起こりやすいので要注意

夫婦の離婚で家を売却する場合は、感情論でぶつかってしまい答えがでないことが多いです

このような状態に陥ってしまったら当人同士が話し合っても解決しないので、弁護士に相談をして法的な解決策を考えていきましょう

一方、相続によって共同所有となった場合は法律で解決することが難しく、時間が経つほど家族間の亀裂が広がってしまいます。

こうした状況に陥ってしまわないためにも、敢えて身を引く、第三者にそれぞれの主張を聞いてもらうといった方法をとることをおすすめします。