家を売ると、様々な税金が発生します。
なお、かかる税金の種類や課税額は売却時の状況によっても異なるため、事前に課税条件などを確認しておく必要があります。
今回は、家を売った時にかかる税金の計算方法や納税のタイミング、利用できる特例控除を解説していきます。
宅地建物取引士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者。
相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など多方面で活動する独立系ファイナンシャルプランナー。
全国1000名以上から日本FP協会に寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。
年300本の執筆・監修を手掛けながら、学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義を毎週行っている。
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家売却でかかる税金
日本で家や土地を売却する際には、いくつかの税金や手数料が必ず発生します。
家を売却した時にかかる税金は、売却をした時に確実にかかるものと、特定の条件下でかかるものの2種類に分かれます。
家売却で必ず発生する税金 |
|
---|---|
特定の条件下で発生する税金 |
|
それぞれの税金の内容を簡単にまとめると、以下の通りになります。
税金の種類 | 内容 |
---|---|
印紙税 | 売買契約書に貼り付ける収入印紙代 |
消費税 | 仲介手数料などに課される税金 |
登録免許税 | 不動産や抵当権の登記にかかる税金 |
所得税 | 家売却で利益が発生した時に上乗せされる |
住民税 | 同上 |
復興特別所得税 | 同上 |
中でも、家を売却する際には印紙税と、関連する手数料にかかる消費税は、戸建て住宅やマンションなどの不動産を売買すれば必ず負担しなければならない税金です。
また、不動産を売却する際、ある特定の条件下でのみ発生する税金や手数料があります。
加えて、これらの税金は全ての取引に一律で発生するわけではなく、取引の内容や状況によって変わります。
税金について理解を深めておけば、不動産取引をスムーズに進められるでしょう。
ここからは、各税金の税率や納税の目的について解説していきます。
印紙税
印紙税は、印紙税法の課税物件表に掲げられている、商取引で使う20種類の文書に課税されます。
経済取引等に伴って作成された契約書などの文書が対象であり、不動産の売買契約書にも印紙税が課されます。
不動産売買契約書の印紙税額は、不動産の売却価格によって変動します。
契約金額 | 税額 | 軽減税率適用時の税額 |
---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
1万円以上・10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円以上・50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円以上・100万円以下 | 1000円 | 500円 |
100万円以上・500万円以下 | 2000円 | 1000円 |
500万円以上・1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円以上・5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円以上・1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円以上・5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円以上・10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
参照:国税庁|印紙税額の一覧表より
印紙税の納付は、契約書を作成した後に、所定の収入印紙を購入し、契約書に印紙を貼付し消印しておこないます。
※電子契約により不動産売買契約を締結する場合、印紙税は非課税となります。
消費税
不動産の売却に関連する手数料には消費税が課されます。
以下は、居住用の家を売却した時に発生する手数料で消費税がかかるものです。
- 不動産会社へ支払う仲介手数料
- 司法書士に支払う報酬
- 融資手続きで支払う手数料
また、不動産売買では売買価格自体に消費税が課されるケースがありますが、自宅(居住用不動産)の売買では非課税となります。
登録免許税
登録免許税は、不動産登記を実施する場合にかかる税金(登記費用)です。
不動産売買の場合は、売主が抵当権抹消登記、買主が所有権移転登記をおこなうのが一般的です。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税の税額は、不動産一つあたり1,000円と定められており、一戸建ての場合は建物と土地をそれぞれ別の不動産として数えるので、計2,000円の登録免許税が発生します。
登記上の土地が複数筆に分かれている場合は、それ以上かかる場合もあります。
その他、家の売買をおこなった後に所有者が変わったことを申請する所有権移転登記にも登録免許税が発生します。
所有権移転登記の費用は、一般的には買主が負担します。
以下は、土地の所有権を移転した時にかかる登録免許税です。
移転内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|---|
売買 | 不動産の価額※ | 20/1,000 | 令和8年(2026年)3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15 |
相続、法人の合併または共有物の分割 | 不動産の価額※ | 4/1,000 | ― |
贈与・交換・収用・競売等 | 不動産の価額※ | 20/1,000 | ― |
参照:国税庁|登録免許税の税額表より
また以下は、建物に関する登録免許税です。
移転内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率 |
---|---|---|---|
所有権の保存 | 不動産の価額※ | 4/1,000 | 個人が、住宅用家屋を新築または取得し自己の居住の用に供した場合は「住宅用家屋の軽減税率」に準ずる |
売買または競売による所有権の移転 | 不動産の価額※ | 20/1,000 | 同上 |
相続または法人の合併による所有権の移転 | 不動産の価額※ | 4/1,000 | ― |
贈与・交換・収用・競売等 | 不動産の価額※ | 20/1,000 | ― |
参照:国税庁|登録免許税の税額表より
※不動産の価額は、市町村役場で管理している固定資産課税台帳に登録された価格に準じ、未登録の場合は登記官認定の価格が適用
また、住宅用家屋の登録免許税には、以下のような軽減税率が設けられています。
項目 | 内容 | 軽減税率 | 備考 |
---|---|---|---|
住宅用家屋の所有権の保存登記 (措法72の2) |
個人が、令和9年(2027年)3月31日までの間に住宅用家屋を新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存登記 | 1.5/1,000 | 登記申請における家屋の所在する市町村等の証明書が必要。 なお、登記後の提出は認められない |
住宅用家屋の所有権の移転登記 (措法73) |
個人が、令和9年(2027年)3月31日までの間に住宅用家屋を売買・競売のいずれかで取得し、自己の居住の用に供した場合の移転登記 | 3/1,000 | 同上 |
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等 (措法74) |
個人が、令和9年(2027年)3月31日までの間に認定長期優良住宅で住宅用家屋に当たる新築または建築後使用されたことのない特定認定長期優良住宅の取得をし、自己の居住の用に供した場合の移転登記 | 1/1,000 | 同上 |
認定低炭素住宅の所有権の保存登記等 (措法74の2) |
個人が、令和9年(2027年)3月31日までの間に低炭素建築物で住宅用家屋に該当するものを新築または建築後使用されたことのない認定低炭素住宅の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存または移転登記 | 1/1,000 | 同上 |
特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記 (措法74の3) |
個人が、令和9年(2027年)3月31日までの間に、宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合の移転登記 | 1/1,000 | 同上 |
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記 (措法75) |
個人が、令和9年(2027年)3月31日までの間に住宅用家屋の新築・増築、または住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合において、これらの住宅用家屋の新築または取得をするための資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記 | 1/1,000 | 同上 |
参照:国税庁|登録免許税の税額表より
譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)
家を売却して得た利益(譲渡所得)にかかる税金が譲渡所得税です。
ただ、実際に譲渡所得税という税金がある訳ではなく、所得税・住民税・復興所得税に上乗せされて課税されます。※復興所得税は所得税に上乗せ
譲渡所得税は、下記の計算式で求められます。
譲渡所得税の税率は、家の所有期間(取得日から引き渡し年の1月1日まで)に応じて変化します。
税区分 | 不動産の所有期間 | 所得税※ | 住民税 |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63% | 9% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315% | 5% |
※所得税に復興特別所得税2.1%を上乗せ
また、10年超所有した家の売却で一定の要件を満たす場合は軽減税率が適用され、以下の税率で譲渡所得税が計算されます。
税区分 | 不動産の所有期間 | 課税譲渡所得 | 所得税※ | 住民税 |
---|---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 10年超 | 6,000万円以下 | 10.21% | 4% |
6,000万円以上 | 15.315% | 5% |
※所得税に復興特別所得税2.1%を上乗せ
譲渡所得の金額ごとの課税額は、下記の通りになります。
譲渡所得 | 所有期間 | 所得税額 | 住民税額 | 特別復興所得税額 | 合計税額 |
---|---|---|---|---|---|
100万円 | 5年超 | 15万円 | 5万円 | 3,150円 | 20万3,150円 |
5年以内 | 30万円 | 9万円 | 6,300円 | 39万6,300円 | |
500万円 | 5年超 | 75万円 | 25万円 | 15,750円 | 101万5,750円 |
5年以内 | 150万円 | 45万円 | 31,500円 | 198万1,500円 | |
1000万円 | 5年超 | 150万円 | 50万円 | 31,500円 | 203万1,500円 |
5年以内 | 300万円 | 90万円 | 63,000円 | 396万3,000円 | |
5000万円 | 5年超 | 750万円 | 250万円 | 157,500円 | 1,015万7,500円 |
5年以内 | 1,000万円 | 450万円 | 315,000円 | 1,981万5,000円 | |
1億円 | 5年超 | 1500万円 | 500万円 | 315,000円 | 2031万5,000円 |
5年以内 | 3,000万円 | 900万円 | 630,000円 | 3,963万円 |
家を売却してかかる税金(譲渡所得税)の計算方法
前述の通り、家売却にかかる譲渡所得税は、以下の計算式で求めることができます。
ただし、各項目の数値を算出する際にも、特別な計算が必要になります。
- Step1】売却した家の取得費を算出する
- Step2】売却費用(譲渡費用)を計算する
- Step3】特別控除額を計算する
- Step4】譲渡所得(不動産売却で発生した利益)を計算する
- Step5】それぞれの金額を計算式に当てはめる
Step1】売却した家の取得費を算出する
取得費とは家の取得(購入)にかかった費用のことです。
住宅本体の購入価格だけでなく、購入に関連する費用や、購入を目的として支払った費用であれば、取得費に計上できる可能性があります。
- 設計変更費用
- 増改築リフォーム費用
- 仲介手数料
- 不動産取得税
- 登録免許税や登記手数料
- 契約書の印紙代
- ローン事務手数料
- ローン保証事務手数料
- 固定資産税・都市計画税の精算金
- 抵当権設定の登録免許税や登記手数料
- 建物に付属する設備費
- 建築費や工事にかかった諸費用
- ローン借入日~所有開始までにかかったローン金利
- ローン借入日~所有開始までにかかったローン保証料
- ローン借入日~所有開始までにかかった団体信用生命保険料
Step1-1】取得費として計上できそうな経費を整理する
取得費を計算する際は、まず取得費になる費用を整理する必要があります。
前述の通り、家の購入とダイレクトに関係ない費用でも取得費として認められる可能性があります。取得費として認められるか不明な場合は、仲介業者や税理士などの専門家に相談しましょう。
相続した不動産などで取得費の情報が全くない場合は、売却価額の5%相当が取得費として適用されます。
Step1-2】不動産の減価償却費を求める
取得費を求める際は、不動産の減価償却分を差し引く必要があります。(土地を除く)
家の減価償却費は下記の計算式で算出します。
※1 建物の取得費の95%を上限とする
※2 経過年数の6ヶ月以上の端数は1年とし、6ヶ月未満は端数切り捨てで計算する
上記の「法的耐用年数の1.5倍の年数の償却率」は、以下の表を参考にすることで求められます。
建材 | 法的耐用年数 | 法的耐用年数×1.5 | 償却率 |
---|---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造もしくは鉄筋コンクリート造 | 47 | 70 | 0.015% |
れんが造、石造又はブロック造 | 38 | 57 | 0.018% |
金属造 ※骨格の肉厚が4mmを超える |
34 | 51 | 0.02% |
金属造 ※骨格の肉厚が3mmを超え4mm以下 |
27 | 40 | 0.025% |
金属造 ※骨格の肉厚が3mm以下 |
19 | 28 | 0.036% |
木造もしくは合成樹脂 | 22 | 33 | 0.031% |
木造モルタル造 | 20 | 30 | 0.034% |
戸建て住宅の場合は木造であることが多いため、償却率0.031%で計算されることが多いです。
家(木造住宅)の取得費が5,000万円・築20年の場合、減価償却費は下記のようになります。
建物の取得費:5,000万円×0.9×(法的耐用年数の1.5倍の年数の償却率:0.034%)×経過年数:20年=4,500万円×0.034(%)×20(年)=3,060万円
Step1-3】取得費から減価償却費を差し引く
不動産の取得でかかった費用から減価償却費を差し引いて、取得費の計算は完了となります。
Step2】売却費用(譲渡費用)を計算する
売却費用(譲渡費用)とは、家を売る際に支払った費用や、売却に関連して発生した諸経費のことを指します。
主な例としては、下記の費用などが挙げられます。
- 仲介手数料
- 印紙代
- 立退料
- 取り壊し費用
- 売買契約の違約金
- 登録免許税
「内覧前に第一印象を良くするためにハウスクリーニングを依頼した」など、売却を目的として支払った費用は、幅広く計上できる可能性があります。
Step3】特別控除額を計算する
家売却では、いくつか利用できる特例控除があります。正確な課税額を算出するためには、控除額も含めて計算する必要があります。
家(居住用住宅)の売却で最も控除額が大きいのは、3,000万円の特別控除です。
この控除を利用すれば、譲渡所得税が発生した場合も課税を大幅に減免できます。
不動産売却の3,000万円特別控除とは?制度の仕組みと適用条件・必要書類を徹底解説
Step4】譲渡所得(不動産売却で発生した利益)を計算する
譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
Step5】それぞれの金額を計算式に当てはめる
ここまでで求めた値を上記の計算式に当てはめれば、税額を算出することができます。
家を売却した時に利用できる特例控除
家(建物+土地)を売って譲渡所得税が発生した時には、主に次の3つの特例・控除を利用できます。
- 3000万円の特別控除
- 軽減税率の特例
- 買い換え(交換)の特例
特例や控除を使って譲渡所得を計算することで、譲渡所得税を非課税にすることもできます。
それぞれの控除の内容を見ていきましょう。
3000万円の特別控除
家を売る時に使える最も便利な特例控除が、3000万円の特別控除(マイホーム特例)です。
これは、今まで住んできた家(マイホーム)を売る時にのみ適用することができます。
別荘や投資物件は対象外ですので注意しましょう。
特例条件を整理すると、以下4つが挙げられます。
- 長年住んでいた家を売るか、住まなくなってから3年経過するまでに引き渡すこと※
- 親子・親族間の取引ではないこと
- 引き渡し前の2年間で同じ特別控除を受けていないこと
- 他の特例を受けていないこと
※この場合の3年は、3年を経過する年の12月31日までとなります。例えば、2020年1月1日に引っ越した空き家を2023年12月1日に売却したとしても、この特別控除を利用することができます。
また、共有名義の不動産については、名義人それぞれが3,000万特別控除の対象です。
相続物件に3,000万円特別控除を使う時の注意点
相続した家を売却する際も、3,000万円特別控除を利用することは可能です。
一人暮らしの親の空き家を相続して売却した場合に、譲渡所得から3,000万円を控除できます。
相続空き家の特別控除を利用する際には、以下の条件に全てあてはまっていなければいけません。
- 1981年5月31日以前に建てられた家屋
- 区分所有登記がされていない
- 相続直前には親が一人暮らしをしてきた
- 相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に供されていない
- 売却価格が1億円以下であること
老人ホーム等に入所していたことで居住しなくなった場合は、一定要件を満たしていれば被相続人が居住していたとみなされます。
相続空き家の特別控除の適用を受けるには、更に売却した翌年の確定申告で「被相続人居住用家屋等確認書」を合わせて提出する必要があります。
この書類は市区町村の役所で発行できるもので、親が一人暮らししていたことを証明するものです。
軽減税率の特例
譲渡所得が発生し、マイホームの所有期間が10年を超える場合は、譲渡所得税の計算で軽減税率が適用できます。
譲渡所得(円) | 所得税の税率 | 住民税の税率 |
---|---|---|
6,000万円以下 | 10.21% | 4% |
6,000万円超 | 15.315% | 5% |
軽減された税率はわずかにも感じますが、課税額が大きくなるほど税額低減効果が高くなります。
また、3,000万円特別控除の併用も可能です。
買い換え(交換)の特例
3,000万円の特別控除の要件に加え、以下の条件を満たしていれば、買い換え特例「居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を利用することができます。
- 売却した年の1月1日における所有期間が10年超
- 居住期間が10年以上
- 売却価格が1億円以下
- 買い換えた住宅が床面積50㎡以上・敷地面積500㎡以下
- 買い換えがマンションなら築25年以内であること
- 売却した年の前年1月1日~翌年12月31日の3年間で買い換えること
- マイホーム売却に関する他の特例を受けていないこと
- (売却した年・その前年に取得)売却した年の翌年12月31日までに居住
- (売却した年の翌年に取得)取得した年の翌年12月31日までに居住
この特例では、購入価格が売却価格よりも高いと譲渡所得税が非課税になります。
一方で、売却価格が購入価格よりも高いケースでは、差額は譲渡所得税を計算する際の収入金額に加えられます。
つまり、買い換えたマイホームを将来売却したときまで、譲渡益の課税が繰り延べされる制度です。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
家を売却する際、購入時よりも価格が下がってしまうと売却損(譲渡損失)が発生します。
家の売却損を給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算できる特例が、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」です。
損益通算することで全体の課税所得を抑えられ、所得税額を減らせます。
1年分の所得で損益通算しきれない譲渡損失があれば、翌年以降の3年間にわたって他の所得と相殺(繰越控除)できます。
ただし、損益通算および繰越控除の対象となる金額は、住宅ローン残高から売却価格を差し引いた残額が上限となります。
売却した家の譲渡損失がそのまま損益通算されるわけではありませんので、注意しましょう。
家売却で税金が発生した場合の注意点
家を売却する際には税金が発生しますが、次のような注意点があります。
- 買い換え時の3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できない
- 税金の納付時期は一律ではない
- 控除や特例の適用を受けるには確定申告が必要
- 税金以外にも費用がかかる
- 譲渡損失が発生した場合は税金の還付が受けられる
知らないことで不利になることもありますので、必ず確認しておきましょう。
以下にそれぞれの注意点を解説します。
注意点1】買い換え時の3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できない
家を売却し譲渡所得が発生した場合、3,000万円特別控除によって譲渡所得を抑えることができます。
しかし、住宅ローン控除とは併用できないので注意しましょう。
特に住み替えを検討している人は、家の売却と家の購入を同時に行うので、どちらの控除を利用するか選択することになります。
注意点2】税金の納付時期は一律ではない
家を売却した際には税金の支払いが発生しますが、納付する時期は一律ではありません。
例えば印紙税は売買契約を結ぶタイミングで発生しますが、登録免許税は家の引き渡しのタイミングです。
譲渡所得税に関しては、売却した年の翌年の確定申告後に納税します。
売却後にまとまった支払いが発生する場合もありますので、それぞれのタイミングを確認して、忘れることのないようにしておきましょう。
注意点3】控除や特例の適用を受けるには確定申告が必要
譲渡所得税に関する控除や特例を利用する場合、確定申告が必要です。
確定申告は、家を売却した年の翌年2月16日~3月15日までにおこないます。
家を売却した時期によっては確定申告までに期間があきますので、売却時の書類などは紛失しないよう保管しておきます。
確定申告が不慣れであれば、税務署に確認しながら申告書作成などの準備を進めていきましょう。
注意点4】税金以外にも費用・手数料がかかる
家を売却する際には税金が発生しますが、税金以外にも費用が掛かります。
特に不動産会社への仲介手数料は売却価格の約3%かかり、不動産が高額であるほど負担も大きくなります。
家の売却でかかる費用を事前に確認しておけば、予想外の出費があっても対応しやすいでしょう。
注意点5】譲渡損失が発生した場合は税金の還付が受けられる
家の売却価格によっては、購入価格と比べ売却損となるケースもあります。
その場合、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受けることで、税金が戻ってくる場合があります。
損益通算とは、ある所得で損失が出た場合に、他の黒字の所得から損失分を差し引くことで、所得税を減額することができる仕組みです。
家の売却で損益通算が使えるのは、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えており、次の要件にあてはまる場合です。
- 売却相手が配偶者や親族ではないこと
- 売却年の前々年までに他の特例を利用していないこと
- 売却時に返済期間10年以上の住宅ローンが残っていること
- その年の合計所得金額が3000万円以下であること など
その年の他の所得から差し引けなかった損失金額があれば、翌年以降に最長3年間繰り越すこともできます。
不動産一括査定サイトを利用して家を高く売ろう
家を高く売った方の9割以上が利用するサイトが不動産一括査定サイトです。
物件のカンタンな情報を60秒前後で記入・送信すれば、地域に対応している不動産会社へ一括で査定依頼をすることができます。
家を高く売って、税負担を少しでも減らしましょう。
※不動産一括査定サイトの詳しい使い方は、こちらにまとめてあります。