様々な事情から離婚することになれば、金銭面や親権問題など、多様な問題解決に時間を割かねばなりません。
夫婦で築き上げてきた財産を均等に分割する財産分与も、解決しなければならない問題の1つです。
中でも、巨額な財産に当たる戸建て住宅やマンションなどの不動産を均等に分与するために売却するなら、離婚前と離婚後のどちらに行うべきか迷われる方がいらっしゃいます。
今回は、離婚で家を売却する最適なタイミングを解説すると同時に、売却前に決めておくことを紹介します。
離婚前のタイミングで家を売るメリット
余計なトラブルに繋がりにくい
夫婦で購入した家は共有の財産なので、売却をする際は少なからず連絡をとる必要があります。
ただし、離婚が成立した後に連絡を取り合うとなると、また余計なトラブルに繋がる恐れもあります。
離婚前に家を売ってしまうと、その後に連絡を取り合う必要がなくなり、トラブルの可能性が少なくなります。
離婚と共に新生活を開始できる
これまでの住まいを売って、離婚と共に引っ越して心機一転の気持ちで新生活を始めることができます。
離婚のタイミングできっぱりと線引きができるので、精神的にも前向きになります。
離婚後のタイミングで家を売るメリット
余裕をもって売却できる
離婚するまでに家を売ろうとする場合、限られた期間内に成約をとる必要があります。
家の売却は時間に追われて焦るほど、売れ残りや値下げに繋がってしまいます。
離婚後に家を売ることで、時間的な制約なしで、納得いく価格で売れるまで粘ることができます。
離婚前のタイミングで家を売るべきケース
離婚に伴って行う持ち家の売却には、トラブルがつきものです。
極力トラブルなく、円満な形で売却を済ませるなら、夫婦で話し合った結果を基に売却計画を立てていくのが最適です。
つまるところ、離婚で持ち家を売却するタイミングは、夫婦それぞれの希望や事情によって異なります。
しかし、これから紹介する事情や考えが強い場合、離婚前に売却を済ませてしまうか、離婚後に売却を済ませてしまうのが最適かの判断が付きます。
離婚前に家を売却してしまうのが最適という夫婦の考えをまとめると、以下のものが当てはまります。
- 売却完了まで離婚を持てる
- 離婚後は極力やり取りを控えたい
- 離婚後のトラブルを回避したい
上記で挙げたモノを1つずつ解説していきます。
売却完了まで離婚を持てる
不動産の売却には、仲介売却と業者買取の2種類があります。
中でも仲介売却は高値で売れる反面、3ヶ月~6カ月以上もの時間を要する売却方法です。
また物件の状態や条件が悪ければ、それ以上の時間を要することになります。
なので、離婚前に持ち家を売却するなら、売買契約を締結するまで離婚が待てる方、売却完了をもって時間に余裕を作れる方に最適です。
離婚後は極力やり取りを控えたい
離婚後のやり取りを極力避けたい考えでいる夫婦にも、離婚前に売却してしまう考えが最適です。
不動産売却の締結は売り手側の同意をもって締結します。
締結時、夫婦そろっての同意を得る必要があるため、離婚後に連絡が取りにくくなれば、売買契約がスムーズに進みません。
もし離婚後に売却を行うものなら、定期的に連絡を取ることになりますので、やり取りを避けたい方にとっては、多大なストレスです。
離婚後のトラブルを回避しつつ、円満な新生活をスタートさせたい方にも、離婚前の売却は最適です。
離婚後のトラブルを回避したい
離婚前に家を売却する最大のメリットは、話し合いをきっちり行った結果、夫婦の同意が得られたということです。
きっちり話し合いがなされて、結論まで導き出されたのなら、売却期間中に起こるトラブルを未然のモノにすることができます。
もし離婚後に売却を進めるとなれば、売却活動や売買契約の締結がスムーズに行えないなどのストレスがのしかかって、最悪の場合、物件そのものを放置してしまうケースに発展します。
なので、離婚後のトラブルや精神的ストレスを極力感じたくないという方は、離婚前に売却を済ませるのが最適でしょう。
離婚後のタイミングで家を売るべきケース
離婚前に家を売却してしまうのが最適という夫婦の考えをまとめると、以下のものが当てはまります。
- 早々に離婚したい
- 家をできるだけ高めに売りたい
- 離婚後のやり取りに抵抗がない
上記で挙げたモノを1つずつ解説していきます。
早々に離婚したい
前節でも紹介したように不動産売却には、相応の時間を要します。
ゆえに、早々に離婚したいという考えが強い方は離婚成立後に売却してしまうのが最適です。
ただし、離婚後の連絡がストレスになったり、連絡そのものを避けたいという思考が強いなら、離婚前に済ませるのが最適です。
家をできるだけ高めに売りたい
家を高めに売りたい方には、仲介売却がおすすめですが、査定から売買契約の締結、引き渡しまでおおよそ3ヶ月~6ヶ月以上もの時間を要します。
離婚協議期間中は、離婚の手続きと並行して売却活動を行っていく必要があるので、売却に専念できる余裕がそうありません。
しかし、離婚後なら、売却活動に回せる時間的余裕が得られるので、高値で売りたいという方には最適です。
離婚後のやり取りに抵抗がない
持ち家の現金化やローンの支払いが必要ないなど、早々に家を手放す理由がなく、離婚後のやり取りに抵抗がないという方にも、離婚後の売却が最適です。
ただし、夫婦そろって持ち家に住んでいなくても、固定資産税や都市計画税が毎年発生します。
離婚後、持ち家に住む予定がないなら、早々に売却してしまうのがおすすめです。
家の売却と財産分与のタイミング
離婚することが決まれば、財産分与や親権問題をどちらにするかなど、様々な問題が出てきます。
それと並行して、持ち家の売却活動を行うとなれば、精神的苦労が絶えない日々を送ることとなります。
円滑に事を進めるためにも、持ち家の売却と財産分与を行う最適な順番を紹介します。
離婚前に売却を済ませて離婚後に財産分与
前節でも紹介したように、持ち家の売却で仲介売却を選択した場合、3ヶ月~6ヶ月以上、物件の状態によっては半年以上もの時間を要します。
持ち家を希望額通り、あるいは相場額に対してプラス利益が出る金額で売りたいなら、離婚協議と売却活動を並行して進めていくのが最適であり、基本的な流れです。
また売買契約締結後に入る売却益の分与は、離婚協議が成立してから行うのがベストです。
理由は、贈与税の課税を未然のモノにするためです。
離婚前に財産分与として現金をパートナーに渡せば、贈与税が課せられて、せっかく手にした大金の数%を国に収める形になります。
しかし、離婚理由による財産分与は、非課税になるので、売却益を均等に割れても贈与税が課せられることがなく、満額受け取れることになります。
共有名義なら売却はいつでもできる
持ち家が共有名義であるなら、夫婦それぞれの持ち分は50%ずつ所有していることになりますので、離婚前・離婚後のどちらかで売却しても問題ありません。
持ち家を50%ずつ所有していることは、財産分与がすでに住んでいることを指します。
さらに贈与税が課せられないというメリットがある以上、離婚協議に時間を割くことができます。
離婚で家を売る前に確認しておくこと
持ち家に住む予定がない以上、現金化して財産分与を行う方向で結論を導き出して、いざ、売却活動を始め前に、いくつか確認しておくべきことがあります。
ここでは、持ち家の売却活動を始める前に行う確認事項と検討しておくことを紹介します。
売却にはローン完済が必須
持ち家の売却を行うとき、購入時に組んだ住宅ローンを完済しておく必要があります。
理由は、債権者が持つ抵当権を抹消しなければ売ることができないためです。
抵当権とは、持ち家にかけられた担保のことで、もし債務者が住宅ローンの支払いができない状態になれば、担保にしている家を売却してローン返済の肩代わりにできる権利です。
これを債権者が持っている以上、売却はできませんが、売却査定額がローン残債額を上回るアンダーローンになれば、ローン完済がなせるということから売却ができます。
ただし売却額がローン残債額を下回るオーバーローンとなれば話は別です。
オーバーローンの状態で売却を済ませるなら、任意売却か月々払いでローン返済のいずれかを選択しましょう。
オーバーローンは財産分与の対象から外れる
売却予定の持ち家の売却査定額がローンの残債額を下回れば、オーバーローンとなり、財産分与の対象から外れます。
オーバーローンの場合、前述した任意売却を選択するか、夫婦片方が持ち家に住み続ける必要があります。
もし後者の住み続ける方法を選択して、ローン名義である夫が済み続けて、なおかつ、ローン返済も行うのなら、問題はありません。
しかし、ローン名義人じゃない妻が住むとなれば、妻がローン返済口座に振り込みを行うことを決める必要があります。
最終手段として買取を検討しておく
早々に離婚したい方や売却活動そのものを早々に済ませたい方は、業者買取を検討しておきましょう。
業者買取は、買い手を探す手間を省いて物件の売買を済ませる方法です。
買取交渉が締結すれば、1~3週間以内に持ち家を現金にできますが、価格が仲介売却時の2~4割減した価格で取引されることが多いです。
離婚で家を売るタイミングは状況によって異なる
離婚時に持ち家を売却するタイミングは、夫婦で話し合った結果を基に行うのが最適ですが、財産分与を行うタイミングは、離婚が成立した後の方が最適です。
また売却する前に。必ずローンの残債額の確認を忘れずに行いましょう。
査定額次第では、オーバーローンとなって、売却そのものが拒まれる可能性もあります。
ストレスなく、スムーズに売却活動を行うなら、離婚協議と並行して進めていくのが最適でしょう。