離婚する際にもめる理由の第一位が財産分与です。
特に家は生活の拠点であり、共有の資産の中でも高価になるので分け方が難しいです。
片方が家に住み続けるのと、家を売ってしまうのはどちらが良いのでしょうか?
判断するポイントを紹介していきます。
離婚時は家を売却しても住み続けても良い
厚労省によると2019年に結婚したカップルは59万9,007組いる一方で、離婚したカップルは20万8,496組でした。
単純計算だと、結婚したカップルの約3分の1が離婚している計算になります。
円滑に離婚をするためには、家をどうするか計画を立てておくのが大切です。
離婚をしたら、共同で生活していた持ち家はそのまま残ってしまいます。
この家を売るか、そのまま住み続けるはそれぞれの意向によって決めて良いことになっています。
ただ、選択に付随して様々な手続きや注意点が発生するので、気軽に好きな方を選べば良いという訳ではありません。
事前に知っておきたい財産分与の知識
家をどうするか考える前に、まずは財産分与がどういうルールでおこなわれるか理解しておく必要があります。
財産分与は、清算的財産分与・扶養的財産分与・慰謝料的財産分与の3種類に分けることができます。
財産分与の方法 | 内容 |
---|---|
清算的財産分与 | 共同で築いた財産を離婚時に分配する |
扶養的財産分与 | 片方が高齢・病気・育休などで就業が難しい際に、財産分与の配当を増やす |
慰謝料的財産分与 | 片方の不倫、DVなどが原因で離婚をした際に、もう片方の配分を増やす |
一般的な離婚に対しては、清算的財産分与が適用されます。
夫婦共同で取得した家は財産分与の対象になります。
サラリーマンの夫と専業主婦の夫婦でも、夫の給与を元に気付いた財産は夫婦共同の資産と見なされるので財産分与の対象です。
つまり、結婚後に購入した家は基本的には漏れなく財産分与が適用されます。
一方、結婚前に片方の財産100%で購入した家や、片方の親族の贈与・相続で取得した家は財産分与の対象にはなりません。
財産分与の前に調べておくべき2つのポイント
離婚時に家をどうするか決める前に、チェックしておきたい2つの重要なポイントがあります。
- 共有名義かどうか
- 抵当権が残っているかどうか
現状を調べた上で、可能な方法で対処していく必要があります。
チェック➀共有名義かどうか
物件の名義が夫婦共有になっている場合、離婚後の家の名義をどうするのか考える必要があります。
家の売却や譲渡は名義人全員の承諾が必要なので、早い段階でどちらの単独名義にするか決めておかないと、双方の連絡が取れなくなった時に売却できなくなってしまいます。
加えて、片方が住み続けることになった家を共有名義のままにしておくと、共有名義人の相続人全員み持分が分配されます。
例えば上の例では、夫の方が家を引き取って単独名義にしておけば孫に持分100%を相続できるのに、共有名義のままだと孫が25%の持分しか受け取れません。
夫婦共有の物件を単独名義に変更する場合、持分割合が50%なら現在の査定額の半分を名義人になる人が支払うようになります。
共有名義の解消に限らず、財産分与の前には現在の家の価値を査定しておく必要があります。
チェック②抵当権が残っているかどうか
住宅ローンの残債がある場合、家には抵当権が設置されています。
抵当権とは金融機関が住宅ローンを貸す代わりに物件を担保に出来る権利のことで、ローンの返済が滞った場合は強制的に差し押さえることが出来ます。
住宅ローンの債務者と家の名義人が異なると、家を出ていった側が返済義務を怠ったら、もう片方(家を取得したほう)の家が差し押さえられてしまいます。
多くの専門家が離婚時は家の売却をして抵当権を取り外すべきと言っているのも、こうしたリスクを見越してのことです。
離婚時に家を売るメリット
離婚時に家を売るメリットについて紹介していきます。
家を売ることによって不動産を売却し住宅ローンの返済や財産分与に利用することが出来ます。
不動産を売却すると一時的にでも手元に大きな金額が残るので離婚時に家を売るだけで大きなメリットを感じることが出来ますよね。
様々なメリットがあるので、それぞれを詳しく見ていきましょう。
財産分与が出来る
家やマンションの様に二等分できないものは、売却して一度現金化することで平等に財産分与をすることが可能です。
財産分与は離婚の際に避けることが出来ない問題点です。
また、住宅ローンを利用している場合は不動産を売却して得た利益を、ローンの返済に充てることで、互いの新しい門出の際にローンが残っている等の後腐れなく分かれることが出来ます。
急に追い出される心配がない
離婚後も同じ家に住んでいると名義人が実際の所有権を持っているので、名義が無い場合が急に追い出される心配を考慮する必要があります。
家を売却して新生活を始めることで、いきなり家を追い出されるのではという心配をすることなく生活をすることが出来ます。
家を売却することで気持ちの整理を行い新生活を送るための手助けにもなります。
離婚時に家を売るデメリット
実は、離婚時に家を売ることはメリットだけでなくデメリットもあります。
特に住宅ローンを利用して家を購入している場合はデメリットや解決しなければいけない問題点があるので売却する際は注意が必要です。
新居を探す必要がある
家を売ってしまうと新たに生活をする家や賃貸を準備する必要があります。
また、引っ越しや住所変更の手続きなどのやらなければならないことが増えてしまいます。
一度手にした不動産を手放さなければいけない
時間をかけて選んで、人によっては住宅ローンを利用してやっと手に入れた住居を手放す必要があります。
一度、家を手放してしまうと再び自分の物に戻すことは非常に困難です。
費用・時間をかけて手に入れたものが水泡に帰してしまうので喪失感を感じてしまいます。
売却するのにも苦労をする
家を売却するのは本や家具を売るのとは違い一筋縄ではいきません。
販売業者選び・売買契約・抵当権の抹消などといったやるべきことが複数あります。
売却先をしっかりと選ばなければ相場よりも安い価格で購入されてしまい、手元に残るお金が少なくなってしまう場合もあります。
不動産を高額で売却したい場合は、不動産の一括査定サイトを利用することで複数の不動産業者に一度の申込で査定の依頼を出すことが出来ます。
どの不動産業者に査定の依頼をすれば良いか分からない場合はぜひ利用してみてください。
離婚しても住み続けるメリット
離婚をしてもどちらか一方に住み続けることは全くないわけではありません。
また、売却せずにそのまま住み続けることによってプラスな面もあります。
詳しく見ていきましょう。
子供がそのまま学校に通える
子供がいる家庭であれば、心配毎の一つに子供の通学があります。
離婚した後も同じ家に住み続けることで転校する必要はなく、また友達と離れることなく学校生活を送ることが出来ます。
親の離婚によって子供には負担がかかるので、転校などが無いことで子供にかかる負担を最小化することが可能です。
出費を抑えられる
離婚をした後は新生活を送るためにも様々な費用がかかります。
離婚しても住み続けることで、引っ越し代などを負担する必要がなく最低限度の生活は何の準備をすることなく送ることが可能です。
ただし住宅ローンを利用して家を建てている場合はどちらがお得なのか慎重に判断する必要があります。
離婚しても住み続けるデメリット
離婚しても住み続けることのデメリットについて紹介していきます。
メリット・デメリットを総合的に判断して住み続けるかどうか判断するようにしましょう。
住宅ローンの支払いが必要
住宅ローンを利用して家を建てている場合は、毎月の支払を継続して行っていく必要があります。
毎月の返済額が大きい場合は離婚相手との相談をしっかりとしなければなりません。
経済的に負担がある場合は離婚後は自分の収入に見合った家に引っ越す必要があります。
家は劣化する
家だけでなくマンション・アパートなどの不動産は必ず経年劣化をします。
経年劣化することで年々資産としての価値が低くなっていきます。
すぐに売却することで資産として高い価値の状態で売却をすることが出来るので、売却のタイミングを見計らう必要があります。
また、劣化した部分を修正するためにメンテナンス必要や修理費用が発生します。
離婚後も家に住み続ける5つのケース
離婚後も家に住み続ける場合、想定できるケースは以下の5通りになります。
- 単独名義人が住み続ける
- 名義人以外が住み続ける
- 共有名義のまま片方が住み続ける
- 収入の無い方が名義人になって住み続ける
- 元夫婦でそのまま住み続ける
それぞれ、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?
ケース➀単独名義人が住み続ける
夫がサラリーマンで妻が専業主婦という場合、夫名義の物件をそのまま住み続けるのは特に問題なく出来ます。
ただ、この場合も現在の家の価値から住宅ローン残債を差し引いた残金の50%を妻に支払う必要があります。
ケース②名義人以外が住み続ける
名義を変更しないまま、名義人以外が住み続けるケースも考えられます。
住み続ける側が専業主婦(夫)などで経済的に不安が残る場合に、このような形態をとることがあります。
この場合、住んでいない方が住宅ローンの返済をおこなう他、新居への引っ越し等も必要になるので経済的な負担が大きくなります。
そのため、不公平が生じないように財産分与の割合を調整することがあります。
また、物件に抵当権が残ったままなのでローン返済が滞ったら差し押さえられる可能性があります。
離婚直後はこの形で合意していたとしても、時間が経てば家から出ていったほうは再婚などの可能性もあり、返済へのモチベーションはだんだん下がっていきます。
ケース③共有名義のまま片方が住み続ける
共有名義のまま片方が住み続ける場合、売却や譲渡などの諸手続きに双方の承認が必要になります。
家に住み続ける側も不自由が生じる他、家を出て心機一転暮らしたいと思っていても元の関係が続いてしまいます。
共有名義の関係は、出来るだけ早く解消することをおすすめします。
ケース④収入の無い方が名義人になって住み続ける
専業主婦が子どもを引き取り、物件の名義を居住者の単独名義に変更するケースも考えられます。
ただ、基本的に住宅ローンの債務者の名義と担保物件の所有者の名義は同じであるべきなので、妻=物件の持主で夫=ローンの債務者という関係は不自然です。
上記が一致しない場合、契約違反と見なされて一括返済を求められることも珍しくありません。
住宅ローン残債がある場合、この形式は取れないので注意しましょう。
ケース⑤元夫婦でそのまま住み続ける
離婚後も元夫婦でそのまま住み続けるケースがあります。
お互いの金銭条件を考えれば、柔軟にこうした選択が取れるのも悪いことではありません。
この場合も離婚時は財産分与の対象になります。
離婚をしたら家を売却したほうが良い理由
離婚をしたら家を売却するか、住み続けるか選ばなければいけません。
世帯の状況に合わせて適切なほうを選ぶことが大事ですが、特にこだわりがない場合は売却してしまうのがおすすめです。
なぜ売却すべきなのか、理由を解説していきます。
理由➀家を残すと将来的にトラブルが起こりやすい
家を残すと処分やローン返済を巡って、様々なトラブルの可能性も残すことになります。
将来のリスク回避を考えるなら、売却してしまうのがおすすめです。
理由②財産分与のトラブルを回避できる
家が残っていると、どっちが住むかでトラブルになる可能性があります。
一方、家を売って換金してしまえば、後は持分などに応じてキレイに分割ができるので、トラブルは起こりにくくなります。
理由③ローン残債を完済できる
離婚後もネックになってくるのが、住宅ローンの残債の存在です。
返済は大きな負担になりますし、返済が万が一滞れば家が差し押さえられるリスクもあります。
高額なローン残債を自己資金で完済できるケースは少ないですが、物件を売却した代金を利用すれば完済できる可能性は高いです。
離婚時の家売却で注意したいオーバーローン
ローン残債が家の売却価格をオーバーするケースを、「オーバーローン」と呼びます。
家を売却する際は抵当権の抹消が必要ですが、抹消のためには残債を完済する必要があります。
つまり、オーバーローンの場合は自己資金を加えて完済するなどの方法が取れない限り、売却をすることができません。
この際には、任意売却という方法を取ることができます。
任意売却は、債権者と債務者(金融機関)が話し合った上で、返済できないローンを残したまま売却をしたり、残債を圧縮してから売り出したりできる方法です。
離婚で住宅ローンが払えなくなった場合、通常なら差し押さえられて競売にかけられてしまいます。
競売は売却相場が低い上に売主の利益になりませんが、任意売却は通常の不動産売却の相場と同じくらいの価格で売れる上、利益は売主のものになります。
また、通常の不動産売却として扱われるので、プライバシーも保護されるメリットがあります。
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離婚時の家の処遇は慎重に決めること
離婚時は家を売却してしまうのがおすすめとは言っても、実際は片方が住み続けるケースが多いです。
この場合、ローン返済や物件管理などの面倒事も増えてしまうので、判断は慎重におこないましょう。
どうしても結論がでない場合は、弁護士や専門家に相談することをおすすめします。