不動産売却では、確定申告が必要だという声を聞きます。
会社員の方は勤務先でやってもらうことが多いので、そもそも確定申告とはどんなものなのかわからないという方もいることでしょう。
実際に少し申告手続きは面倒なので、なるべくであれば申告をせずに不動産売却をしたいところです。
実は不動産売却には申告が不要な場合もあり、必ずしも手続きの必要があるわけではありません。
この記事では、不動産売却において確定申告が必要なケースと不要なケースについて紹介します。
※確定申告の詳しい手続きの方法はこちらで解説!
不動産売却の確定申告は必要?申告の流れ・必要書類の書き方を完全ガイド【決定版】
不動産売却で確定申告が不要になる条件
不動産を売却(譲渡)した時に確定申告が必要かどうかは、譲渡所得の値によって決まります。
譲渡所得=譲渡価額(売却額)-取得費-譲渡費用
ちなみに、取得費とは売った不動産の購入費を減価償却したもので、譲渡費用は売却時にかかった費用のことです。
この譲渡所得がプラスになった場合は、譲渡所得税という税金が発生します。この税金は所得税と住民税に上乗せされて課されますが、その総額はこちらの計算式で求めることができます。
譲渡所得税=税率×譲渡所得
ちなみに、税率は売った不動産の所有期間が5年以下(短期)か、5年超(長期)かによって以下のように変化します。
所得税 | 住民税 | 合計税率 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 39% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 20% |
この税金を納付するために、確定申告の必要があるのです。
譲渡所得がマイナスなら確定申告は原則不要
譲渡所得がマイナス・つまり売却損が出た状態なら、譲渡所得税が発生しないので、確定申告をする必要はありません。
ただ、後述しますが売却損が出た時に確定申告をすれば、所得税の還付を受けることができます。
どちらにせよ、確定申告はしておいて損はありませんよ。
譲渡所得税が発生しても確定申告しないと脱税になる
給与や他の副収入が発生した場合、黙ってそのままにしていると脱税になってしまいます。
こうなってしまうと犯罪者として扱われてしまいます。
それに加えて、以下の税金を追加で課されます。
- 無申告加算税
- 延滞税
無申告課税とは、その名の通り確定申告をしなかったペナルティとして課される税で、本来支払うべきであった所得税額に15~20%が加算されます。
延滞税は、申告の期限を過ぎてしまった場合に課される税金で、期限を過ぎた日数×本来支払う額の約7%が課され続ける仕組みとなります。
確定申告が不要なのに税務署から問い合わせが来るケース
確定申告が不要なケースでも、税務署からなぜ確定申告しなかったのかについて問い合わせが来ることがあります。
税務署は登記簿を通じて不動産売買による登記移転があったことを確認できます。登記移転があったのに確定申告していないので、税務署は不審に思っているのです。
お尋ねが来た時は、課税譲渡所得がマイナスだったことを示す書類(売買契約書など)を準備して回答すれば問題ありません。
税務署からのお尋ねが来る人、来ない人がいますが、特に意味はありません。
近年、不動産投資ブームの影響で富裕層が知識0で不動産売買に挑戦し、書類の提出を忘れるという事態が頻発しています。
お尋ねの件数はこうした背景により増えていますが、来たからといってリスクがあるわけではないのでご安心ください。
本来は不要なのに確定申告しないといけない2つのケース
譲渡所得がマイナスであれば、確定申告は本来不要です。
ただ、こちらの2ケースは、譲渡所得に関わらず確定申告をしないといけません。
- 3000万円特別控除を使って譲渡所得がマイナスになった場合
- 譲渡所得のマイナスを特例で損益通算した場合
それぞれの具体的な事例を詳しくみていきましょう。
3000万円特別控除を利用したケース
中古の不動産を売却した時、条件を満たすと利用できるのが3000万円特別控除です。
この控除は、以下4つの条件のうち1つを満たしていれば利用することができます。
- 主として利用している住まいを売却すること
- 居住しなくなった日から3年後の年末までに売却すること
- 自宅を解体した場合はそれから1年以内に敷地の売買契約を結んだこと
- 配偶者が主として住んでいる家を売却すること(本人が単身赴任などの場合)
この3000万円特別控除を使えば、課税譲渡所得を以下の式で計算するようになります。
課税譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用-3000万円
3000万円特別控除を使っても譲渡所得がプラスの方は確定申告が必要なのは分かりますが、計算の結果マイナスになったとしても、控除を利用したなら確定申告をしなければいけません。
少し複雑なので整理すると、以下の通りです。
- 譲渡所得が発生:納税のために確定申告が必要
- 譲渡所得が発生せず:納税も確定申告も不要
- 譲渡所得が発生したが控除でマイナスに:納税は不要だが確定申告は必要
3000万円特別控除を使えば、結果がどうであれ確定申告が必要だと覚えておきましょう。
特例を利用したケース
買った時は高額費用を要したが、売却時は築年数の経過で価値がつかなかったという場合は、譲渡所得がマイナスになりやすいです。
居住用不動産の売却で譲渡所得がマイナスになった時は、2種類の特例を利用することができます。
- 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
長い名前ですが、上は買換え時に下はそれ以外で利用でき、譲渡所得以外の所得と損益通算をすることができます。
この特例を使うと源泉徴収税のキャッシュバックを受けることができてお得ですが、受ける際は確定申告の必要があります。
確定申告が不要なケースに関するポイントをおさらい
確定申告が不要になる条件は?
不動産売却時の確定申告が必要かどうかは、譲渡結果の額によって決まります。
譲渡結果は売却額から取得費と譲渡費用を差し引いたもので、プラスの場合は譲渡結果税が発生し、取得税と住民譲渡結果税の優遇は、不動産の全期間が5年以下の短期で39%、5年超の長期で20%となります。
譲渡結果がマイナスの場合、原則として確定申告は不要ですが、行うと結果税の還付が可能です。
譲渡結果税が発生して確定申告を行うと脱税となり、無申告加算税や延滞税が課されるリスクがあります。
確定申告が不要になる場合の注意点は?
確定申告が本来不要な場合でも税務署から問い合わせが来ることがありますが、来た場合は、譲渡結果がマイナスであることを示す書類を準備して回答すれば問題はありません。
ただし、売却結果とは別に、確定申告が必要な場合として、以下の2つの状況があります。
- 3000万円特別免除を利用したケース:3000万円特別免除は、主として自宅の売却など特定の条件を満たした場合に適用されます。
- 特例を利用したケース:居住用不動産の売却で譲渡結果がマイナスになった際、特定の利益益通算及び繰越控除の特例を利用する場合も確定申告が必要です。
確定申告が必要な場合は忘れず期限内に申請する
確定申告は、引き渡しの翌2~3月に管轄の税務署でおこなうのが一般的です。(地域によって若干差がある)
売却から申告までに期間があるので、忘れないようにしましょう。
不動産売却は高額の利益が得られる取引というだけではなく、さまざまな税金・手数料を支払わなければならないものでもあります。
こうした費用を支払うことで法律的に認められるという部分もあるので、確実に支払っていく必要があります。
多くの費用は不動産売却のなかでも、売買契約締結から引き渡しまでの期間内に支払いとなることが多いですが、確定申告や譲渡所得税は不動産売却をした翌年にいきなり手続き義務が発生します。
そのため、まず自分のケースは申告の必要があるのかをチェックし、その後、どのように税金の支払い額を捻出していくか長期計画を立てておく必要があるでしょう。