地方の空き家が増えていることからも分かるように、田舎の実家を都市部にすむ相続人が放棄するというケースは増えています。
利用予定がない不動産であっても、一旦所有してしまうと毎年固定資産税がかかる上、どんな手を使っても処分できない可能性が高いです。
こうしたケースに陥らないために、相続放棄はおすすめでもあります。
今回は不動産の相続放棄について分かりやすく解説していきます。
不動産の相続放棄はできるが管理責任は残る可能性がある
不動産の相続放棄は可能で、実行することで固定資産税の支払いをしなくて済みます。
ただし、相続放棄をしても不動産の管理責任は残り続ける可能性があります。
また、不動産は大きな資産なので注目しがちですが、相続放棄をすると相続人の会社からの死亡退職金なども受け取れないので、注意が必要です。
相続放棄によって空き家が生まれるデメリットは相続人にある?空き家対策特別措置法で変化したのか
相続放棄によって空き家の所有権を手放したら、その家は空き家となってしまいます。
空き家問題が社会問題化している昨今、その問題を生み出す当事者となってしまったら、何かしらの罰則があるのか不安に思う方も多いです。
2020年10月以降、相続放棄をして空き家を生み出した当事者を罰するようなルールはありません。
旧耐震基準も再建築不可物件も、突き詰めて考えると国の基準が変わっただけであり、昔はそれでよかったのです。
とはいえ、空き家の管理責任が残った場合は最低限の管理をしなければいけません。
平成27年5月26日に施行された空き家対策特別措置法では、近隣に被害を与えるような空き家と特定空き家に指定し、最終的に行政代執行までおこなえるようになりました。
不動産を相続放棄するメリット・デメリット
固定資産税の支払いを0にできるのが最大のメリット
不動産の相続放棄をする最大のメリットは、固定資産税の支払いをなくすことができることです。
今後の生活に支障が出るほか、本人の死後は利用価値のない物件を子どもに相続しなければいけなくなります。
こうした負の面を、相続放棄で一切なくすことができます。
他の資産も放棄しなければいけないのがデメリット
相続放棄をする場合、不動産以外の資産も放棄しなければいけません。
不動産を放棄した結果、貯蓄なども手放さないといけないので注意しましょう。
不要な不動産でも、相続資産の2割程度なら丸ごと相続したほうがメリットはあります。
不動産の管理義務は相続放棄をしても残る?
民法940条では、“相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。”と明記されています。
つまり、相続放棄をしても他の管理者が現れなければ、管理義務を負い続けることになります。
基本的に国や自治体は個人が所有する不動産は個人間に渡り続け、管理し続けるのが良いと考えています。
そのため、安易に個人が管理を放棄することはできないのです。
相続財産管理人を立てて管理義務から解放される
完全に管理義務を放棄するには、前述の通り管理を公式に代行してくれる人を探さなければいけません。
もし近親者でそうした方がいない場合、相続財産管理人の選任を家庭裁判所へ請求する必要があります。
この際の手続きも面倒な上、時間がかかるので注意しましょう。
相続人が複数いる場合に不動産を相続放棄する注意点!持ち分の相続に要注意
法定相続人が複数人いる場合、自分が何も手続きをしなくても、他の相続人が登記(相続登記)をすることで、不動産権利を相続した状態になってしまいます。
この時、権利証は申請人にしか交付されないので、気づいたら固定資産税の通知書が来て驚いたなんてことになりかねません。
何も連絡等が来ていないから良しとするのではなく、相続を放棄したい方は早めに自分から手続きをすることをおすすめします。
相続不動産は自治体に寄付できるという安易な考えは捨てるべし
不要な不動産を相続しても、自治体に寄付すれば大丈夫と考えている方がいます。
ただ、あなたが不要と思っている不動産は恐らく自治体も不要と思っているので、受け入れてくれる可能性は少ないです。
地方自治体にとって固定資産税は4割にもなる貴重な財源なので、これを安易に放棄する訳にもいきません。
後で自治体に寄付する予定なら、最初から相続放棄することをおすすめします。