住宅ジャーナリスト。
全国の住宅事情に精通し、現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。
毎日新聞で連載コラムを持ち、Yahoo!ニュース「個人」でも住宅コラムを連載中。
テレビ出演も多い。「買って得する都心の1LDK」など著書多数。
近著は、「櫻井幸雄の人生スマイル相談室」(法研)。
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仕事を頑張ってお金を貯めて、賃貸から念願のマイホームに引っ越す。多くの方にとって大きな目標だと思います。
ただ実際には、新居を購入した後のほうが生活は苦しくなり、賃貸に戻りたい…と思う人も多くいます。
今回は、「家なんて買うんじゃなかった」と後悔する人に共通する理由の紹介と、その対処法を分かりやすく解説していきます。
家なんて買うんじゃなかった…と後悔する方に共通する傾向
家の購入に後悔する理由は人によって様々ですが、ある程度共通する傾向もあります。
ここからは、家購入で後悔する人の共通点を紹介していきます。
後悔した例1】住宅ローン+固定資産税で家計が圧迫される
- 住宅ローン年間返済額:100万円~170万円
- 固定資産税:固定資産税評価額(課税標準額)※公示価格の約70%× 標準税率(1.4%)
家を購入する際、多くの方は住宅ローンを利用します。
住宅ローンを借りる際は「月々の返済はせいぜい家賃並みですよ!」と言われて安心する方が多いですが、これは申込者が支払っていた家賃をベースに提案している訳では必ずしもありません。
また、持ち家には固定資産税という、賃貸には課されない高額の税金がかかってきます。
住宅ローンと固定資産税のダブルパンチで思いのほか家計が圧迫され、生活が苦になることも少なくありません。
固定資産税も3000万円台、4000万円台の新築マンションの場合10万円程度になることが多く、それも含めてシミュレーションしておかないとダメですね。
後悔した例2】間取りや面積が意外に使いにくい
引っ越し前は自分たちにとって理想の住まいのはずだったのに、いざ住んでみると色々な不満が出るケースもしばしば。
よくあるのが1階と2階の機能が上手く分かれておらず、住みにくいというケースです。
マンションは間取りや面積が家賃の価格帯ごとにある程度似通っていますが、戸建て住宅は住む人の趣向によってもバラバラなのでイメージとのギャップが大きくなりやすいのです。
持ち家に住みにくさを感じても賃貸ほど気軽に引っ越せないのもネックになってきます。
一番困るのは、2階にトイレがないこと。寝室が2階なので、夜中のトイレで階段の上り下りを強いられて……。こんなことなら、初志貫徹で最初の条件のまま建てれば良かったです。
後悔した例3】中古物件を購入して失敗
近年では、新築ではなく中古住宅を購入する方も増えています。
リーズナブルに高性能物件を購入できるという意味ではこれ以上ない選択ですが、買ってすぐに不具合がおきたり、設備の修繕が必要だったりと、思わぬトラブルが頻発する傾向にあります。
現在は契約不適合責任で、購入前からあった欠陥は発覚次第に売主へ請求することができます。(従来の”引き渡し後○年以内までに買主からの賠償請求申し立てが必要”という時効が撤廃された)
項目 | 起算点と請求期間 |
---|---|
① 債務不履行に基づく損害賠償請求権 | 権利を行使できると知った日から5年 |
権利を行使できると認められた日から10年 | |
② 不法行為に基づく損害賠償請求権 | 損害および加害者であると知った日から3年 |
不法行為を受けた日および加害者が権利行使可能になった日から20年 | |
③ (①②)による特則・生命・身体の侵害による損害賠償請求権 | 請求権の内容を知った日から5年 |
加害者が権利行使可能になった日から20年 |
項目 | 起算点と請求期間 |
---|---|
① 債務不履行に基づく損害賠償請求権 | 加害者が権利行使可能になった日から10年 |
② 不法行為に基づく損害賠償請求権 | 請求権の内容を知った日から3年 |
不法行為を受けた日から20年 |
ただ、購入前に欠陥がなくてもその後すぐトラブルが起きるケースは多いので注意しましょう。
熱源機(給湯器)が壊れ、サッシから雨漏りが生じて散々。この辺の修理をしたら、結局新築と変わらない費用になってしまった。
後悔した例4】立地に不満が出てきた
引っ越す前は職場に近い、アクセスが便利など、様々な条件を鑑みた上で引っ越し先を選ぶ方がほとんどです。
ただ、本当の住みやすさは実際に引っ越してみなければ分かりません。
意外と買い物がしにくい、治安が悪い、騒音がするなど、不満は意外と多く出てくるものです。
また、昼に下見をしたときは良かったのに、夜になると一変するというケースもあります。
引っ越したいけど当分無理…。
後悔した例5】家を購入してすぐ引っ越しになった
夢の新居をやっと購入したのに、転勤や家族の事情でまたすぐ引っ越すケースも多いです。
家族はそのまま住み続け、夫は単身赴任になるケースも多いですが、せっかく家族で暮らすはずだったのに、結果離れ離れになってしまったら元も子もありません。
会社に足元を見られている気がしてならないけど仕方ない。子供がよい中学校に入ったので、家族帯同は無理。来年の家族イベントは全部キャンセルか…
後悔した例6】学区選びを失敗してしまう
子供がいる方は、進学先をメインに考えて引っ越し先を選ぶと思います。
この際、どの学区が良いか、ネットの情報なども踏まえつつ調べていくことでしょう。
ただ、引っ越した後に理想と違うことが分かったり、他の用事が面倒だったりすることも多いので注意が必要です。
「▲▲橋を挟んで向こう側の学区は意外と荒れていて…」というような情報は、全国展開している大手ハウスメーカーは意外と知らないことも多く、地域密着型の中小会社の方が知っている可能性が高いです。
荒れてる学区を避けて引っ越したはずが、子供がいじめられたという報告があった。
子供は登校拒否気味になり、何のために引っ越したのか…
後悔した例7】急な死別・離婚
家を購入した矢先、急な死別や離婚で家族構成が変わってしまうことも多々あります。
こうなってしまうと想定していた暮らしとは程遠くなってしまうので、住まいの使い方も見直さなければいけません。
戸建てを一旦購入したから、自由な動きができなくなったというケースも少なくありません。
家を買ったばかりなのに嫁が浮気で離婚したいと言われる…
夫婦ダブルローンにしていなかったので、家に住み続けることはできるけど、駅から離れた場所の一軒家で、これからやもめ暮らししてゆけるのか心配です。
後悔した例8】ご近所付き合いが上手くいかない
周辺環境も新居も文句ないのに、近隣トラブルに見舞われて後悔する事例も意外と多いです。
性格が合わない・騒音が我慢できないなど近隣トラブルの形は様々。
引っ越したくてもローンが残っていることから、気軽に動けないということになってしまいがちです。
最初は感じがいいなあって思っていたけど、ちょっと物音がしただけですぐ管理会社に連絡されたりと、もう散々。
マンション自体は気に入っているのになあ…
後悔した例9】ハウスメーカー選びで失敗
家を建てる際は、ハウスメーカーや工務店を選ぶことになりますが、無数にある業者のうち、どれを選べば良いのか分からないことも多いです。
コミュニケーションが上手くいかずに失敗し、当初の想定と全く違う形になってしまったという例もあります。
ハウスメーカー選びが失敗だったといっても過言ではありません。
私の意向はすべて無視され、言った、聞いていないの言い合いが続くばかり。
全てお金を返してもらい、解体してから違う業者に依頼したいくらいです。
後悔した例10】必要性を感じないまま家を購入してしまった
マイホームに漠然とした憧れを持ってはいたものの、よくよく考えると今のタイミングに購入するのはどう考えてもミスだったと後で感じるケースは少なくありません。
勢いや憧れだけで新居を購入するのは危険なので、注意しましょう。
結婚の条件だったこともあり、無理をして新築を購入したら、すぐに子供ができて、妻が仕事を辞めた。
妻の収入がなくなったことと、子育て費用で、たちまち金欠に…。
無理して家を買うのはいいことがないのだとつくづく感じた…
家なんて買うんじゃなかった…と思っていたのに意外と良かった事例
家というのは重大な買い物なので、あまりに高い理想と現実のギャップに当初は後悔するケースも少なくありません。
ただ、買った時に後悔をしても、住んでいくにつれて、やっぱり家買っといてよかった!と思う方は少なくありません。
ここからは、結果的に家を買ってよかった事例も紹介していきます。
自分達の好きなように利用・リフォームできる
自分の好きなように住まいを改造・改築できるというのは賃貸にはない大きな利点です。
自分の好きなタイミングで改装や増築といったリフォームができる楽しみは、一戸建てを買ったからこそのものです。
持ち家はステータスになる
妻が、ママ友の中で1人だけ賃貸に住んでいて肩身が狭い思いをしているというケースも少なくありません。
持ち家に住む方の割合は概ね60%程度で推移しており、持ち家派のほうが多くなっていますが、持ち家に住んでいるというのは未だステータスと感じることもあります。
車のローンが通りやすい、クレジットカードの審査が通りやすいなど、社会的信頼を得たことで、環境がガラッと変わることも多いです。
家を買って後悔した時の対処法
世の中には、家を買って後悔しても、我慢をして住み続ける人もいます。
その場合、購入した家を売却してやり直したい、と考えることがあるでしょう。
しかし、この売却は簡単ではありません。
キャッシュで購入した人ならば、中古での売却は簡単です。
しかし、金融機関で住宅ローンを組み購入した場合、売却でローンを完済できる、という見通しがないと金融機関が抵当権を外すことを承諾してくれません。
つまり、売却ができないということになります。
対処法1】都心マンションや駅近マンションならば売却がしやすい
その点、都心マンションや郊外駅近のマンションであれば、新築購入時よりも高く売れることがあり、それによってローン完済が実現しやすい、つまり売却が容易になります。
しかし、都心マンションや駅近マンションは新築時の値段が高く、誰でも購入できるわけではありません。
郊外で、駅から徒歩7分以上のマンション、一戸建ての場合、中古で売ると、買ったときよりも安くなるのが普通です
その場合、売却と手持ち金で住宅ローンを精算できるかどうかが重要になります。
精算できるかどうかは、中古売却を助けてくれる不動産仲介会社と相談するとよいでしょう。
対処法2】賃貸に出すのも一つの手
住宅ローンが精算できる(キャッシュで買った人なら、まとまったお金が手に入る)という点では売却が一番ですが、手放すのには未練がある、というケースもあるでしょう。
そんなときに考えられるのは、賃貸に出すことです。
住宅ローンが残っているときは、金融機関との契約で賃貸に出すことができないことになっています。
しかし、転勤が絡んでいれば、転勤で余所に行っている間、賃貸にだすことが認められます。
その場合、毎月の家賃収入でローン返済が可能になります。
固定資産税などの支払いにも補填することができますが、家賃収入に対する税金が発生するので、注意が必要です。
家を買って後悔しないためのポイントをおさらい
家なんて買うんじゃなかった…と後悔する理由は?
- 後悔した例1】住宅ローン+固定資産税で家計が圧迫される
- 後悔した例2】間取りや面積が意外に使いにくい
- 後悔した例3】中古物件を購入して失敗
- 後悔した例4】立地に不満が出てきた
- 後悔した例5】家を購入してすぐ引っ越しになった
- 後悔した例6】学区選びを失敗してしまう
- 後悔した例7】急な死別・離婚
- 後悔した例8】ご近所付き合いが上手くいかない
- 後悔した例9】ハウスメーカー選びで失敗
- 後悔した例10】必要性を感じないまま家を購入してしまった
これらの後悔は、住宅購入前の計画や選択の失敗から起こることが多いです。
具体的には、ローンの返済計画の不備や、間取りや面積についての考慮不足、中古物件の詳細な調査の不足、立地や学区選びのミス、家族状況の変化への備えの不足、近隣環境の確認不足、業者選びの失敗、そして必要性を感じないままの家の購入などです。
家を買って後悔してしまったらどうすれば良い?
キャッシュで購入した人は売却が簡単ですが、住宅ローンを組んだ場合は、売却でローンを完済できる見通しを金融機関に示さなければ、抵当権を外すことを許可してもらえません。
都心マンションや郊外駅近のマンションの場合、新築購入時よりも高く売れる可能性があります。
ただし、郊外で駅から徒歩7分以上のマンションや一戸建ては、通常中古で売ると価格が下がるため、住宅ローンを精算できるかどうかが重要です。
また、賃貸に出すという手もあります。
住宅ローンが残っているとき、通常は賃貸に出すことはできませんが、転勤などの特別な状況では認められる場合があります。
賃貸に出せば、家賃収入でローン返済を補填できますが、家賃収入に対する税金が発生するため、税務には注意が必要です。
家を買って後悔しないためにも物件選びは慎重に
家を買って後悔するのは、とても残念なことです。
「それが、怖いので、マイホームは買わない」という人もいます。
しかし、マイホーム購入には、大きな喜びがあるのも事実です
そのため、後悔のない物件を慎重に探すことが何より大切になってくるのです。