住宅ローンを返済中の不動産を売却する際、「銀行にはいつ連絡すればいいのか?」という点で不安を感じる方は多いです。
とくに住み替えや相続整理などで急いで売却を進めたい場合、銀行への連絡のタイミングを誤ると、抵当権の抹消手続きが間に合わず、決済に遅れが出るリスクもあります。
この記事では、住宅ローンの残債がある不動産を売却する際の「銀行への連絡タイミング」を中心に、必要な準備・注意点・進め方のコツをわかりやすく解説します。
住宅ローン残債のある不動産は売却前に銀行への連絡が必要
住宅ローンを利用して購入した不動産には、ほぼ例外なく抵当権が設定されています。
住宅ローンなどを組むとき、金融機関が融資の担保として土地や建物に設定する権利で、主に、住宅ローンの返済がままならない物件オーナー(債務者)に対して債権の履行を確保するための権利です。
もしも、ローンの返済が滞る事態に陥ったり、返済不能となれば、以下のような形で抵当権が行使されます。
- 不動産の差し押さえ
- 不動産を競売にかけ、発生した代金をローンの弁済に充てる
抵当権は、万が一ローンの返済が滞ったときに金融機関がその不動産を担保として回収(競売)できる権利であり、売却の際には必ず抹消しなければなりません。
つまり、売却を成立させるには売却代金で住宅ローンを一括返済し、抵当権を抹消する必要があります。この一連の流れは、金融機関の協力なしには実行できません。
したがって、不動産売却時には銀行に事前連絡を入れ、ローン返済や必要書類の準備を調整する必要があるのです。
ローンの一括返済は銀行への事前連絡が原則必要
住宅ローンの残債がある状態で不動産を売却する場合、売買代金からローン残債を一括返済することが前提となります。
住宅ローンの返済方法は毎月決まった額を支払う約定返済とボーナス月などを利用して追加で返済をする繰り上げ返済がありますが、一括返済は基本的にイレギュラーの対応になるため、事前に銀行への確認が必要なことが多いです。
また、一括返済をする場合は別途で手数料が発生することが多いので注意が必要です。
不動産売却を計画する段階でローンの残債と想定売却価格を正確に把握し、返済に必要な金額を銀行と確認しておくことが極めて重要です。
不動産売却で銀行に連絡するベストタイミングはいつ?
住宅ローンの残債がある不動産を売却する場合、銀行への連絡タイミングは非常に重要です。
連絡が早すぎても具体的な話が進められず、遅すぎると必要書類の準備や返済段取りに間に合わなくなるリスクがあります。
この章では、不動産売却のどの段階で銀行に連絡すべきか、またそのタイミングごとのポイントを詳しく見ていきましょう。
売買契約後〜決済日の10日前が目安
住宅ローン残債がある不動産を売却する場合、銀行への正式な連絡は「売買契約が締結された直後」がベストです。
契約内容が確定し、決済日が決まった段階で銀行に連絡することで、残債の一括返済額や抵当権抹消に必要な書類の準備をスムーズに進めることができます。
銀行によっては抹消登記書類や清算書の作成に数営業日〜10日程度を要することもあり、直前の連絡では間に合わない恐れがあります。
そのため、決済日の少なくとも10日前までには銀行に連絡を入れるのが安心です。あらかじめスケジュールを組み、余裕を持って調整しましょう。
査定段階でも事前相談がおすすめなケース
銀行への正式な手続きは売買契約締結後ですが、査定段階から銀行へ事前相談しておくと安心なケースもあります。
たとえば、以下のような状況に該当する場合は、早めに相談しておくことで手続きがスムーズになります。
- ローンの残債が物件価格を大きく上回っていそうな場合
- 繰上返済にかかる違約金や手数料の条件が不明な場合
- 過去に返済の遅延などがあり、ローンの条件が特殊な場合
- 住み替えローンやつなぎ融資を検討している場合
こうしたケースでは、あらかじめ銀行側と資金計画をすり合わせておくことが、売却時のトラブル回避につながります。
銀行に連絡する際の準備事項と伝える内容
住宅ローンが残る不動産を売却する際、銀行に連絡を入れるときは、口頭連絡だけでは不十分です。
的確に情報を伝え、必要な書類を揃えておかないと、手続きが後回しになったり、決済日までに間に合わなくなるリスクがあります。
ここでは、銀行に連絡する際に事前に用意しておきたい情報や書類、伝えるべき内容を具体的に解説します。
事前に用意すべき情報・書類
銀行にスムーズに対応してもらうためには、以下の情報や書類を事前に準備しておくことが重要です。
- 住宅ローン契約番号・借入残高(返済予定表またはローン通帳)
- 売却予定の不動産情報(登記簿謄本、物件概要書など)
- 売買契約書(契約締結後)または査定書
- 決済予定日・引き渡し日の目安
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
とくに残債額と返済方法(一括返済・住み替えローンなど)は、手続き内容に直結するため必ず明記・把握しておきましょう。
また、銀行によっては書式の指定がある場合もあるため、必要書類の具体的な内容は必ず事前に問い合わせて確認しておくと安心です。
銀行に伝えるべきポイント
銀行に連絡する際は、単に「不動産を売却します」と伝えるだけでは不十分です。以下のような具体的な内容を明確に伝えることで、手続きがスムーズに進みます。
- 売却予定の不動産の住所・物件概要
- 売買契約が成立しているかどうか
- 決済予定日と引き渡し日
- 売却代金とローン残債の差額状況
- 返済方法(全額現金返済・住み替えローン等)
- 抵当権抹消に関わる司法書士の連絡先(わかる場合)
特に「自己資金で残債を補填する予定があるか」や「住み替えローンを組むか」といった資金計画については、金融機関にとって重要な判断材料になります。
あいまいなまま話を進めると、書類作成や審査の遅延により、決済スケジュールに影響が出る可能性があるため注意が必要です。
連絡が遅れるとどうなる?手続き上のリスク
銀行への連絡が遅れると、売却スケジュールに大きな支障をきたす恐れがあります。
住宅ローン残債の一括返済や抵当権の抹消には、銀行が発行する複数の書類と、一定の処理時間が必要です。
ここでは、連絡の遅れが引き起こす可能性のある具体的なリスクとその影響について解説します。
抵当権抹消が間に合わないケース
銀行への連絡が遅れると、決済日までに抵当権を抹消するための準備が間に合わなくなることがあります。
抵当権の抹消には、銀行から発行される以下のような書類が必要です。
- 弁済証書
- 抵当権解除証書
- 登記原因証明情報
- 金融機関の代表者印の押印済書類
これらの書類の準備には最短でも数日〜1週間以上かかるケースもあり、直前に連絡しても発行が間に合わないことがあります。
抵当権が抹消できなければ、買主への所有権移転が不可能となり、決済・引き渡しの延期や契約解除リスクにつながるため、早めの連絡が不可欠です。
融資違約金・決済延期によるトラブル
銀行への連絡が遅れた結果、決済日に間に合わず引き渡しが延期になると、思わぬトラブルを招くことがあります。
まず、買主側が住宅ローンを利用している場合、決済の遅れによって融資期限が切れることがあり、その場合は買主に違約金が発生する可能性もあります。
また、売主側にも契約不履行(契約遅延)としてペナルティが科されるケースもあり、最悪の場合は契約解除や損害賠償に発展することもあります。
このようなリスクを避けるためにも、決済予定日から逆算して早めに銀行とスケジュール調整を行うことが、売却成功のカギとなります。
銀行との連携をスムーズに進めるコツ
住宅ローンが残る不動産を売却する際、銀行との手続きを円滑に進めるには、段取りとパートナー選びが重要です。
書類のやり取りや資金の精算、登記などの複雑な流れを把握し、信頼できる不動産会社や司法書士と連携することで、トラブルを防ぐことができます。
この章では、銀行との協力をスムーズに行うための実践的なコツを紹介します。
コツ1】信頼できる不動産会社(仲介担当者)と司法書士を揃える
不動産売却では、銀行との調整を代行してくれる不動産会社や司法書士の存在が、手続き全体の円滑さを大きく左右します。
とくに住宅ローンが残っているケースでは、抵当権の抹消、清算書の作成、残債の返済手続きなど複雑な業務が発生するため、経験豊富な専門家のサポートが欠かせません。
優秀な不動産会社や司法書士であれば、銀行とのやり取りを事前に整理し、必要書類やスケジュールも的確にリードしてくれます。
初めて不動産を売却する方ほど、実績や対応力を重視して信頼できるパートナーを選ぶことが、結果的に最短・最小トラブルで売却完了に繋がります。
コツ2】ローン残債を超える場合などの自己資金を準備しておく
売却予定の価格が住宅ローンの残債を下回る場合、売主が自己資金で差額を補填する必要があります。この状態を「アンダーローン」と呼びます。
たとえば、ローン残債が2,500万円に対し、売却価格が2,300万円であれば、200万円の不足分を決済日までに現金で用意しなければなりません。
この準備ができていないと、抵当権の抹消ができず、決済・引き渡しが遅延または中止となる可能性があります。
対応方法としては、以下のような選択肢があります。
- 自己資金で補う(貯金・親族支援など)
- 住み替えローンの利用を検討する
- 他の金融機関から借り入れる
不足リスクがある場合は、売却計画の初期段階で銀行と返済方法を相談しておくことが大切です。
住宅ローン残債ありの不動産売却を成功させるポイント
住宅ローンが残った不動産の売却には、通常の売却よりも多くの確認事項と段取りが必要です。
特に、ローン残債と売却価格の差額、銀行への連絡タイミング、抵当権抹消、自己資金の用意など、資金計画を含めた「全体設計」がカギとなります。
ここでは、こうした売却を成功させるために押さえておきたい実践的なポイントを紹介します。
ポイント1】まずは査定と事前資金計画からおこなう
住宅ローン残債がある不動産を売却する際は、最初に「物件の査定」と「資金計画の立案」をセットで行うことが重要です。
査定を通じておおよその売却予想価格がわかれば、ローン残高との差額も明確になり、手続きや銀行対応の方針が立てやすくなります。
また、残債を超える場合は資金準備の猶予期間が必要ですし、ローン完済が見込める場合でも手数料や諸費用を含めた清算計画が不可欠です。
売却完了後に慌てないためにも、不動産会社・銀行・司法書士と連携した早めの資金シミュレーションが欠かせません。
ポイント2】不動産一括査定サイトを使って業者を比較する
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合、信頼できる不動産会社選びが極めて重要です。
その際に活用したいのが不動産一括査定サイトです。物件情報を入力するだけで、複数の不動産会社から査定額を一度に取得でき、査定価格の比較や対応の丁寧さ、信頼性を判断する材料になります。
また、ローン残債のある物件は手続きが複雑なため、売却経験が豊富で銀行とのやり取りにも慣れている業者を見つけるのが成功のカギです。

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