マンション売却をすると様々な費用・手数料がかかってきます。
高く売れたはずが予想外の出費に驚き、計画通りに事を進めることができなかった方も多数存在します。
マンションを完全に売ってしまう前に、費用・手数料がいくらかかるのかをシミュレーションしておくことをおすすめします。
ただ、計算した費用を減らす方法も存在します。こちらも事前に知っておくことで、費用を大きく抑えることができます。
今回は、気になるマンション売却時の費用・手数料について分かりやすく解説していきます。
宅地建物取引士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者。
相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など多方面で活動する独立系ファイナンシャルプランナー。
全国1000名以上から日本FP協会に寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。
年300本の執筆・監修を手掛けながら、学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義を毎週行っている。
●大水野総合FP事務所のホームページ
(https://mizunotakashi.com/)
閉じる
マンション売却には主に仲介手数料がかかる
マンション売却にかかる費用の中で最も割合を占めるのは、仲介手数料です。
具体的な費用や相場、計算方法や特徴を解説していきます。
仲介手数料の相場・計算方法
マンション売却にかかる主な手数料は、仲介手数料と呼ばれるものです。
仲介手数料は、マンションを不動産会社に依頼して売却し、成約した際に成果報酬として支払われる手数料のことです。
仲介手数料の相場は以下の通りです。
取引額 | 仲介手数料(法定の上限額) |
---|---|
200万円以下 | 売却額(税抜)×5% |
200万円超400万円以下 | 売却額(税抜)×4%+2万円 |
400万円超 | 売却額(税抜)×3%+6万円 |
例えばマンションが1,000万円で売却できた時、仲介手数料の金額は以下の通りになります。
1000万円×3%+6万円=36万円(税抜)
仲介手数料は、一般的に売買契約時に半金を、引き渡し時にもう半金を支払う仕組みです。
仲介手数料の支払いタイミングは2回
マンション売却にかかる費用・手数料は仲介手数料を含めいくつかありますが、支払いのタイミングはほとんどが売買契約時と引き渡し時の2回です。
この2つのタイミングを意識して、事前に資金を準備していきましょう。
売り出しから売買契約・引き渡しまで時間の余裕があるようにも感じますが、売り出し後にすぐ内覧希望者が出て現金で購入する場合など、買い手のタイミングで売買契約の場が早めにセッティングされる可能性もあります。
売り出しを開始したらいつ費用・手数料を払うことになるか分からないので、生活費以外の余裕資金を売却前から用意しておく必要があります。
仲介手数料は法定の上限額が一般的
前述の仲介手数料の相場は、法律で定められた上限額となります。
つまり、1,000万円でマンションを売却した場合の仲介手数料は最大36万円なので、必ずこの金額を支払わなければいけないという法的根拠はありません。
慣習として上限額が請求されるのが一般的になっており、値下げの交渉余地があるかは媒介契約前に確認しましょう。
マンション売却でかかるその他の手数料
マンション売却にかかる費用・手数料は仲介手数料だけではありません。
ここからは、費用・手数料のそれぞれの内容を紹介していきます。
印紙税
印紙税はその名の通り、売買契約時に契約書へ収入印紙を貼り付けて納付する税金のことです。
印紙税額は売却代金と比例し、以下のように決まっています。
不動産売却代金 | 印紙税額(軽減税率) |
---|---|
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
収入印紙はコンビニでも売っていますが、マンション売却で利用するような高額印紙は郵便局で買い求めるのがおすすめです。
登録免許税
マンション売却では所有権移転登記、抵当権抹消登記といった登記手続きが必要になります。
また、売却時点で登記簿の住所と変更があれば、住所変更登記も合わせて行う必要があります。
登記手続きを行う際は、それぞれに登録免許税がかかります。
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円かかり、土地部分と建物部分は別々に登録免許税が発生します。
そのため、マンション売却に伴う抵当権抹消登記の登録免許税は最低2,000円です。
マンション敷地部分の登記状況次第では、それ以上の金額となる場合もあります。
所有権移転登記は、原則として買主が手続きを行い費用を負担します。
このような登記手続きについては、一般的には司法書士に依頼することが多く、その際は報酬料が別途かかります。
譲渡所得税
譲渡所得税はマンションの売却益が発生した際に、利益に課税される税金のことです。
譲渡取得税は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得税=税率×{譲渡価格-(取得費+売却費用) }
税率は売ったマンションの所有期間が5年以内(短期譲渡)か、5年超(長期譲渡)かによって以下のように変わります。
【短期譲渡所得】 | 【長期譲渡所得】 | |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
譲渡所得税は高額になりがちですが、要件を満たせば3,000万円特別控除や特例、軽減税率の適用を受けられ、課税額を抑えることができます。
ローンの繰り上げ返済手数料
住宅ローンの残っているマンションを売る際は、売却時にローンを一括返済する必要があります。
繰り上げ返済を行う場合金融機関によっては手数料が発生します。
金融機関 | 全額繰上返済手数料 |
---|---|
ARUHI(フラット25) | 0円 |
イオン銀行 | 55,000円 |
auじぶん銀行 | 0円(固定金利:33,000円) |
SBI新生銀行 | 0円 |
住信SBIネット銀行 | 0円(固定金利:33,000円) |
ソニー銀行 | 0円 |
楽天銀行 | 0円 |
みずほ銀行 | 33,000円 |
三井住友銀行 | 5,500円(窓口:11,000円) |
三菱UFJ銀行 | 16,500円(窓口:33,000円) |
りそな銀行 | 11,000円(窓口:33,000円) |
三井住友信託銀行 | 22,000円 |
PayPay銀行 | 33,000円 |
横浜銀行 | 33,000円(固定金利:44,000円) |
このように全額繰上返済手数料は金融機関によって異なります。
また、金利条件や返済方法によって、金額が変わるケースもあるので注意しましょう。
マンション売却時に戻ってくる費用・手数料
マンション売却は費用・手数料がかかるだけでなく、一部の費用については返金される可能性があります。
事前に1年分、1か月分を想定して支払った費用などは、引き渡し日を起点にして清算します。。
ここからは、マンション売却時に戻すことができる費用・手数料を紹介します。
管理費・修繕積立金
マンションの管理費や修繕積立金は先払いが基本で毎月支払うものですが、たとえば月半ばにマンションが引き渡しされた場合などは、日割り計算して精算されます。
売買契約後の残金決済の場で、買主から売主に清算金が支払われます。
固定資産税・都市計画税
固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産の所有者に対して、1年分が課税されます。
そのため、1年の途中にマンションを引き渡した後も、1年間は売主が納税の責任を負うことになります。
この時も、引き渡し日から日割り計算をおこない、買主に清算してもらうことができます。
管理費や修繕積立金よりも高額になりますので、必ず清算してもらうことをおすすめします。
住宅ローンの保証金
住宅ローンを利用して購入したマンションの売却時にはローン残債を一括返済しますが、この時にローン契約時に負担した保証金の一部が返金される場合があります。
ただし、返金されるタイミングや金額は、金融機関によっても異なりますので、直接確認しましょう。
マンション売却にかかる手数料を値下げするコツ
マンション売却にかかる仲介手数料は不動産会社にとっての成功報酬であり、不動産取引が成立するまでは支払う必要がありません。
買主が見つかり売買契約が締結された場合に支払いますが、仲介手数料の値下げ交渉は難しいケースが多いです。
どうしても値下げをしたい場合は、売主側からもメリットを提示するようにしましょう。
ここからは、マンション売却にかかる手数料を値下げするコツを解説していきます。
専属専任媒介契約を結ぶ
手数料の値下げをするためにもう一つ重要なのが、専属専任媒介契約の締結です。
契約の種類 | 契約の有効期間 | 自己発見取引 | 依頼可能な業者数 | 依頼主への報告 |
---|---|---|---|---|
専属専任媒介契約 | 3ヶ月以内 | できない | 1社のみ | 1週間に1回以上 |
専任媒介契約 | 3ヶ月以内 | 可能 | 1社のみ | 2週間に1回以上 |
一般媒介契約 | 法律上の定めなし (3ヶ月が目安) |
可能 | 複数社に依頼可能 | なし |
不動産会社との媒介契約には3種類りますが、そのうち専属専任媒介契約が、売主にとって最も自由度の低い契約方法で、契約期間中の他社への鞍替えができません。
その一方で、不動産会社の担当者とは密に連絡を取り合うこととなり、売主の意向に沿った売却活動が期待されます。
不動産会社としても買主を見つけられれば、売主と買主の両方から仲介手数料を受け取れるメリットもあるでしょう。
不動産会社の中には、専属専任媒介契約を結んだ方へキャッシュバックキャンペーンを実施しているところもあります。
マンション売却の費用・手数料は売買契約と引き渡しのタイミングで支払う
マンション売却にかかる費用・手数料はいくつかありますが、支払いはほとんどが売買契約と引き渡しのタイミングです。
この2つのタイミングを意識して、事前に資金を準備していきましょう。
売り出しから売買契約・引き渡しまで時間の余裕があるようにも感じますが、現金一括で購入する買主が現れれば、売買契約に至る手続きは思ったよりも早いです。
最低限必要な売却時の費用は、あらかじめ用意しておく必要があります。
マンション売却でかかる仲介手数料のシミュレーション
マンション売却する際は、事前にかかる仲介手数料について計算しておくと無難です。
予想外に手数料がかかるケースもあるので、マンション売却のシミュレーションサイトを利用するなどして確認しておきましょう。
- 手取り金額
- 仲介手数料
- 売買契約書印紙税
かかる税金や仲介手数料が計算可能です。
売却価格が1,000万円の場合
売却価格が1,000万円の物件であれば、シミュレーションを行うと次の金額が算出されます。
費用 | 金額 |
---|---|
手取り金額 | 959.9万円 |
仲介手数料 | 39.6万円 |
印紙税 | 0.5万円 |
マンション売却の費用・手数料は高額なので注意!事前の準備がかかせない
この記事では、マンション売却でかかる費用や手数料について解説しました。
マンション売却には、トータルで売却代金の4〜5%程度の費用がかかると言われています。
その中でも最も大きな金額は仲介手数料でしょう。
仲介手数料は値引きに応じてくれるケースもありますが、不動産会社の成功報酬ですので一般的には難しく、それよりも特例や控除を利用して節税対策したほうが効果的です。
売却代金を手元に多く残すためには、まずはマンションを高く売ることを意識しましょう。