不要な土地の処分に困った時、多くの方は適切なタイミングで売却したいと思うことでしょう。
一度売却した土地は、基本的には二度と戻ってくることはありません。所有者がその土地の価値を最大限活かせるような活用をした上で、売却による利益も十分見込めるタイミングで売るのがベストでしょう。
また、土地の市場価格は周辺環境の変化や、経済状況・ローン金利などの外的要因でも変化します。土地の売り時を見極めるためには、こうした要因にも目を向ける必要があります。
今回は、土地を売る最適なタイミングについて、チェックすべき要素と併せて解説していきます。
宅地建物取引士/2級FP/住宅ローンアドバイザー
賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理会社の勤務を経て独立。2022年に法人設立。
現在は都心で不動産事業を営むかたわら、WEBメディアで監修や執筆に従事している。
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2024年は売り時?土地の価格推移・売買状況
東京都内の公示地価は、上記の通り近年上向き推移を続けており、引き続き高く売れやすいタイミングと言えます。
年 | 件数 (件) | 価格(万円) |
---|---|---|
2013 | 5,461 | 2,849 |
2014 | 4,920 | 2,792 |
2015 | 5,661 | 2,747 |
2016 | 6,148 | 2,796 |
2017 | 5,932 | 2,842 |
2018 | 5,962 | 2,904 |
2019 | 5,827 | 2,897 |
2020 | 5,828 | 2,810 |
2021 | 6,083 | 2,948 |
2022 | 4,582 | 3,397 |
2023 | 4,581 | 3,529 |
上記は、首都圏での土地成約件数と成約価格(平均)をまとめたものです。※面積100~200㎡に限る
近年では件数が減ってはいますが、成約価格は上昇推移を見せています。
こうした市況を見ても、やはり現在は土地売却の好機だと言えます。
土地売却のタイミングの判断基準【売り時の見極め方】
タイミング1】購入需要が高い季節・時期
土地の購入需要が高い季節や時期に売り出すことで購入を希望する方の目に留まり、売却がしやすくなります。
1年のうち一般的に購入需要が多い時期は、転勤や進学などで転入者が増える9~11月と2~3月になります。
年月 | 成約件数(件) |
---|---|
2022年3月 | 427 |
2022年4月 | 406 |
2022年5月 | 368 |
2022年6月 | 371 |
2022年7月 | 334 |
2022年8月 | 295 |
2022年9月 | 336 |
2022年10月 | 373 |
2022年11月 | 346 |
2022年12月 | 330 |
2023年1月 | 278 |
2022年2月 | 364 |
上記は、首都圏の各月での土地の成約件数を整理したものです。完全な因果関係はありませんが、前述した9~11月と2~3月は比較的件数が多くなっています。
タイミング2】経済が好況なタイミング
土地などの不動産の取引は、景気が良いタイミングで件数が多くなります。
好景気によって経済状況が土地売買に有利な影響を与えるというのも一因ですが、人々の収入が増えることで土地の購入などにお金を回せる余裕が出来るというのも大きな要因です。
一般的に、景気の上向き推移は地価の高騰と合わせて語られることが多いです。
ポイント3】周辺環境が変化したタイミング
- 新駅の開通
- 都市部を繋がる道路の開通
- 大きな商業施設ができた
- 大きな学校・企業など、人が集まる理由ができた
- 大きな事件の発生
- 治安の悪化
- 大学キャンパスの移転など
- 大型商業施設の閉店
上記のように、土地の需要が今後高まりそうなタイミングや、逆に土地の需要が今後大きく下がりそうなタイミングで売却をするのも一つの手です。
価格が高騰する要因としては、大型商業施設・娯楽施設の開店や都市部への道路や新駅の開通、メディアからの注目度の上昇などが挙げられます。
一方、少子高齢化の進展や居住者の減少、スーパー等の閉店などが起これば、価格が下がる傾向にあります。
特に少子高齢化の進展が見られる場合は、早めに売却手続きを進めることをおすすめします。
ポイント4】住宅ローン金利が変化するタイミング
住宅ローン金利が低金利で推移しているタイミングは、購入する側の負担が軽くなるので、売れやすいと言えます。
住宅ローン金利は時期によって変動するものですが、固定金利は借入時の金利が原則基準になるので、金利が今後上がる場合でも今の金利が低水準ならお得に借入ができます。
住宅ローン金利は2016年にマイナス金利政策を導入してから低金利水準を維持してきましたが、2024年にマイナス金利が解除されてから、三菱UFJ銀行を除く大手銀行住宅ローンが上昇金利に転換するなど、変化が起こっています。(2024年10月時点)
土地売却で後悔しないためにも、こうしたローン金利の変化をチェックしておく必要があります。
ポイント5】税制や政策が土地売却に追い風のタイミング
その他、税制や政策が土地を売却する上で有利かどうかも、土地を売却する上での判断基準となります。
2024年時点で土地の売却に利用できる特例控除は、下記などが挙げられます。
特例控除 | 利用できるケース |
---|---|
長期譲渡所得の1,000万円特別控除 | 2011年・2012年に取得した土地を売却する場合 |
5,000万円の特別控除の特例 | 公共事業のために土地を売却する場合 |
2,000万円の特別控除の特例 | 特定土地区画整理事業のために土地を売却する場合 |
1,500万円の特別控除の特例 | 特定住宅地造成事業のために土地を売却する場合 |
800万円の特別控除の特例 | 農地保有の合理化のために土地を売却する場合 |
参考:譲渡所得の特別控除の種類|国税庁より
ポイント6】維持管理が難しくなったタイミング
管理していた土地から離れて暮らすようになったなど、維持や管理が難しくなったタイミングで売却してしまうことが、結果的にベストである可能性も高いです。
土地を所有する限り、固定資産税や都市計画税を支払い続ける必要があります。
また、土地の管理を完全に放棄すると犯罪の温床になったり、伸びきった草木の越境などで近隣に迷惑がかかったりするので、賠償金の支払いなどで結果的に高くつく可能性があります。
特に近年では民法・不動産登記法の改正により、管理できていない土地・管理が行き届いていない土地への規制は厳しくなっています。
管理が行き届いていない土地は無償で譲渡を募集しても貰い手がないという状況が多発しており、結果的に大きなマイナスとなる可能性もあります。買い手がつくタイミングで早めに売り払うことが、結果的にメリットに繋がります。
土地売却のタイミングに関する注意点
注意点1】タイミングにこだわり過ぎて売り時を逃す可能性も
例えば住宅地(敷地)として購入した土地は、しっかり敷地として活用した上で、維持費がただかさむといった状況になる前に売るのがベストです。
また、上記のようなケースで住み替えを検討している場合、「今は高く売れる時期ではない」と考えて土地をキープしていても、意味はありません。
ライフプランの中で売却が必要であれば、そこが売り時である可能性が高いです。
注意点2】売り出し期間が長引くと意味がない
絶好のタイミングで売り出しても、なかなか成約がとれず売り出し期間が長引きすぎると意味がありません。
売り出し期間が長引くほど、売り出し価格と成約価格の乖離は大きくなる傾向にあります。
土地売却では売り出しのタイミングだけでなく、早く売ることも意識する必要があります。
売れない土地も時期を見極めれば売れる可能性が高まる
アクセス・面積などの条件が悪くて売りにくい土地でも、前述のポイントを意識すれば高く売れる可能性は十分あります。
多くの方は転勤、相続など急な出来事で焦って売ることが多いですが、事前に売り時をチェックして売り出しのタイミングを慎重に選択すれば、それだけで売却を有利に進めることができます。
土地を売るのは人生に一度あるかどうかの出来事で、高額な不労所得を得られるまたとない機会でもあります。
このチャンスを逃さないためにも、しっかり売り時を見極めていきましょう。