住まいを売却しようと思ったら、不動産会社に査定を依頼して、売却したらいくらになるかの見積もりを出してもらう必要があります。
査定では、実際に不動産会社の担当者が現地に赴いて、自宅の室内や周辺を調査した上で価格を算出します。
この際、初めて査定を依頼する方からの質問として多いのが、「査定前に自宅を掃除する必要はあるのか」「自宅を事前に掃除しておけば、査定価格は高くなるのか」といったものです。
今回は、家の査定価格と掃除や、自宅の状態との関係性について解説していきます。
【免許登録】
宅地建物取引業免許:国土交通大臣(4)第7845号
一級建築士事務所登録:東京都知事 第62093号(東京本社)
特定建設業許可:東京都知事 (特-2) 第135078号(東京本社)
不動産特定共同事業許可:東京都知事 第134号(東京本社)
賃貸住宅管理業登録:国土交通大臣(1)第1722号(東京本社)
家査定を依頼する前に掃除する必要は原則ない
家の査定を依頼する前に、室内などの掃除をしておく必要は原則ありません。
加えて、家を掃除したかどうかが、査定価格に影響することも原則ありません。
不動産会社の査定価格は、不動産を売却したらいくらになるかを見積もるものですが、実際に家を売却する際は、事前に清掃をして、家財道具などは処分した上で引き渡すようになります。
このような理由で、査定の段階で清掃ができているかどうかは原則考慮されません。
また、家の査定価格に影響する要素としては、築年数や立地、周辺環境(生活のしやすさ)などが大きいです。査定担当者も人間なので、ピカピカに掃除をしていれば多少評価が上がる可能性はあるかもしれませんが、その場合も上がる金額は微々たるものでしょう。
とはいえ、実際に訪問査定がおこなわれる日までには、不動産会社が調査をしやすいように、マナーとして掃除をしておくことをおすすめします。
明らかなキズ・凹み・汚れなどは査定でマイナス評価になる
- 売主が対応することで改善できる汚れや、家財道具などが煩雑に置かれている状況:査定評価に影響しない
- キズ・凹み・汚れなどがひどく、有償での修繕対応が必要な状況:査定評価に影響する
前述の通り、前提として引き渡し時に清掃や不用品処分は行いますが、対応をしても残ってしまう劣化がある場合は、査定評価が下がる要因となってしまいます。
ただ、このような状態の物件を売る場合も、まずは不動産会社に状況を見てもらい、相談をした方が、無駄にリフォームを依頼して出費するリスクを回避できます。
家の査定価格が低いと売却する際に問題がある?
不動産会社による査定で算出された価格と実際の売却価格を比べると、およそ査定価格の通りに売れます。
ただ、厳密に言えば査定価格が低かったとしても、より高値の価格で売却することは可能です。
- 不動産会社によって査定がおこなわれる(査定価格の提案)
- 売主が最終的に売り出し価格を決定(または不動産会社の提案を承認)する
- 買主と合意した成約価格を決定する
家を売り出す際に付ける価格(売り出し価格)は、最終的には売主の意向が反映されます。そのため、査定価格が予想より低かったとしても、売り出し価格をより高値に設定することは可能です。
ただ、前述の通り、掃除の有無は基本的には査定結果に反映されないので、掃除をした上で売り出し価格を上げても、スムーズに買い手が見つかるかどうかは分かりません。
査定価格と売り出し価格の乖離が大きすぎると、割高と思われて買い手に敬遠されるようになり、売れ残ってしまうので注意が必要です。
家の売却中には掃除が必要な理由
前述の通り、査定前は家を掃除することが価格に影響することは少ないですが、実際に不動産会社と契約を結び、家を売り出すとなった際は、しっかりと掃除をしておく必要があります。
家の売却中に掃除が必要な理由は、下記の2点です。
理由1】内覧の第一印象は売買契約を締結できるかを左右する
住まいを売り出す時、多くの場合は中古戸建の購入を考えている個人がターゲットになります。
彼らの多くは不動産の知識が豊富な訳でもないので、第一印象が悪いと、いくら状態が良い物件でも契約を断られる可能性が出てきます。
内覧後に契約を断られれば、いつまで経っても売ることはできず、売れ残り続けてしまいます。
こうしたことの無いよう、特に内覧の実施前はしっかりと清掃をおこなう必要があります。
理由2】買主からの値下げ要求の材料にされる可能性がある
家を売る際の価格は売り出し価格と必ずしもイコールではなく、買主と売主が双方の言い分を確認した上、双方合意した金額で取引をおこないます。
具体的には、内覧が完了した後に、買主(買主側仲介業者)から不動産購入申込書という書類が送られます。この不動産購入申込書に、買主側の希望価格なども記載されています。
掃除をしておらず家の第一印象が悪いと、買主からの値下げ要求の材料にされてしまう可能性もあります。
値下げ要求をしても売主が拒否したり、要求を受けた上で改めて話し合いをすることは可能ですが、一般的な中古戸建の売買は買主優位になるケースが多く、話し合いに持ち込まれると不利になりがちです。
売り出し価格を通すためにも、清掃には力を入れるのがおすすめです。
家の売却前に掃除すべき場所
訪問査定や内覧時に、少しでもいい印象を持ってもらいたいという一心で掃除を行うなら、以下の場所を意識して掃除しましょう。
- バス・トイレ
- キッチン
- 玄関
- 室内
バス・トイレ
バスルームとトイレは、生活感が特に顕著に現れる場所の一つです。
カビや水垢、使用後の汚れは査定時にマイナスの印象を与える要因となり得ます。
特に、バスルームは湿気が多く、カビの発生がしやすいため、徹底的な掃除が必要です。
浴槽やタイル、シャワーヘッド、蛇口などの水回りは、ピカピカに磨くことで新しい印象を与えてくれます。
トイレも便器やタンク、床周りなど、隅々まで清掃して、清潔感を出しましょう。
キッチン
キッチンは家の中でも特に使用頻度が高く、油や食材の汚れがこびりつきやすい場所です。
特にコンロや換気扇、シンクなどの油汚れは、こまめに掃除していないと手がつけられないほどの頑固な汚れになります。
収納スペースや冷蔵庫の中も、整理整頓されていると好印象です。
査定士や購入希望者に清潔で使いやすいキッチンとして認識してもらうため、念入りな掃除が必要となります。
玄関
玄関は家の顔とも言われ、訪問者の最初の印象を決定する場所です。
床やドア、シューズボックスなど、汚れやホコリが溜まりやすい場所を特に注意深く掃除することで、明るく清潔な印象を持ってもらえます。
また、不要なものは玄関から撤去し、スッキリとした空間を演出することで、広々とした雰囲気を作り出すことができます。
リビング・寝室・子供部屋
室内のリビングや寝室、子供部屋などの掃除も欠かせません。
床や壁、窓周りの汚れやホコリをきちんと取り除き、可能であれば家具や荷物を整理整頓して部屋を広く見せる工夫が必要です。
照明やエアコンのフィルターも清掃し、部屋全体が明るく爽やかな印象を与えるようにしましょう。
清潔感のある室内は、購入希望者が自らの生活をイメージしやすく、ポジティブな査定の要因となります。
家の掃除をハウスクリーニング業者に依頼するのも一つの手
家を売却する際、その物件の第一印象は非常に重要です。
購入希望者や査定員に良い印象を持ってもらうため、家の掃除や整理は必須の作業となります。
ここで、ハウスクリーニング業者の力を借りることは、家の魅力を最大限に引き出す大きな武器となり得ます。
特に、長年住んでいた家や掃除が行き届いていない場合、プロの技術を利用することで、査定価格のアップに期待できます。
ハウスクリーニングの依頼相場
ハウスクリーニングの費用は、清掃の範囲や対象となる部屋の面積、業者によって異なります。
掃除場所 | 依頼費用 |
---|---|
キッチン | 10,000~16,000円 |
換気扇 | 9,000~15,000円 |
バス | 11,000~16,000円 |
洗面所 | 7,000~10,000円 |
トイレ | 10,000~26,000円 |
例えば、キッチンやバスルームなどの特定の部分だけのクリーニングを依頼する場合は、費用が下がる可能性があります。
しかし、家全体の徹底的なクリーニングを依頼すると、その分高くなることも覚悟する必要があります。
依頼前に、複数の業者から見積もりを取得することで、適切な費用を確認しましょう。
水回りのクリーニングのみ依頼するのも効果的
前述の通り、第一印象は価格にも影響する可能性があるので、資金に余裕があれば物件全体のクリーニングを依頼した方が良いでしょう。
全面クリーニングはコストがかかって依頼しにくいという場合は、キッチンやトイレ・バスルームなどの水回りのみ依頼するのも効果的です。
特に水回りは第一印象に影響するので、水回りのみ業者に依頼して、他は売主が自力で掃除をするというのも効率的です。
家の査定・売却で掃除をする際の注意点
注意点1】契約前に家財道具などの処分を済ませるのはリスク大
家を売る際は部屋の掃除や整理整頓が必要なのは間違いないですが、かといって売却中に部屋の不用品や家財道具を処分しきってしまうのはリスクがあります。
なぜかというと、家を売り出し中の段階では、買い手との契約が今後結べる保証はないためです。
売り出したはいいものの、買い手が全くつかずに売却を諦めて、引き続き今の家に住まざるを得ないケースも珍しくありません。この際に、生活必需品なども捨ててしまっていると、生活に困ってしまいます。
年度(年) | 新規登録件数(件)※1 | 成約件数(件) | 成約件数の割合(%) ※小数点2位以下切り捨て |
---|---|---|---|
2013 | 64,623 | 12,123 | 18.7% |
2014 | 64,287 | 11,125 | 17.3% |
2015 | 66,447 | 12,639 | 19.0% |
2016 | 61,788 | 13,036 | 21.0% |
2017 | 62,181 | 12,560 | 20.1% |
2018 | 67,207 | 12,873 | 19.1% |
2019 | 72,525 | 13,080 | 18.0% |
2020 | 64,398 | 14,102 | 21.8% |
2021※2 | 50,907 | 14,732 | 28.9% |
2022※2 | 50,811 | 13,132 | 25.8% |
2023 | 65,192 | 13,160 | 20.1% |
※1:同年度に、レインズへ新規登録された物件の件数
※2:2021年・2022年は他年と計測方法が異なる
上記は1年のうち、新規で売り出した物件の数と成約件数を比較したものですが、単純計算だと売り出し物件全体の約20%しか年内に成約していないことになります。
その他の80%の物件は1年以上かけて売り出しているか、途中で売却を諦めているかのいずれかだと推測できます。
このように、家の販売活動は長期戦になる可能性も高く、不用品処分を進める際は注意をする必要があります。
注意点2】利用価値のある家財道具なども売主側で全て処分が原則
状態の良い家具や家電でも、引き渡し前に売主側で処分するか、売主側の新居へ持っていくのが基本となります。
また、その際に処分費用などが発生する場合、支払いなども全て売主側が負担するのが基本です。
ただ、例外的に、売主と買主の話し合い次第では下記のような対応をすることもあります。
- 買主が気に入った家財道具があったため、買い取るという形で価格に上乗せする
- 短期間での処分が難しいものがあったため、引き渡し後に買主が処分する前提で、かかる処分費用を価格から差し引く
ただ、上記のような契約になるケースは少なく、基本的には売主が対応する必要があります。
査定価格に影響はないが早めに掃除を進めるのがおすすめ
家の査定価格に掃除の有無は大きく影響しませんが、買い手からの印象などを考えると売却中はしっかりと清掃をおこなうことがおすすめです。
掃除は早めに始めておいた方がスムーズに売却が出来るので、そういった意味では査定前に少しずつ整理整頓や清掃に着手しておくべきでしょう。