個人再生は債務整理の一つで、抱える借金を減額してもらう方法です。
自己破産をせずに借金を圧縮でき、自宅を手放さずに借金整理をすることが可能です。
しかし、不動産評価額と住宅ローン残高の内容によっては、借金が減額されない・個人再生ができない可能性もあるので注意が必要です。
今回は、個人再生と不動産評価額の関係と、清算価値の計算方法について詳しく解説していきます。
個人再生の返済額と清算価値の関係
個人再生をおこなうと、裁判所の再生計画に基づいて借金の一部を3年計画で返済していきます。
減額された借金を3年で返済することができれば、残りの借金の返済義務が免除されるというのが個人再生の基本的な仕組みです。
3年で返済する金額(計画弁済総額)については、以下3つの基準から決定されます。
- 清算価値
- 最低弁済額:負債額によって決まっている最低弁済基準額
- 法定可処分所得の2年分:個人再生のやり方に基づき、民事再生法241条に定められた金額を負担
この3基準の内容によっては、3年間で課される返済額が大きく減額される可能性も、ほぼ減額されない可能性もあるのです。
特に、不動産と大きな関係があるのが清算価値です。
不動産は清算価値に計上される
清算価値とは、債務者が自己破産した時の債権者配当の見込み額となります。
債務者は、借金をすることで対価となるメリットを債権者からいただいています。個人再生で返済額を縮小するということは、この権利も縮小することになります。
これでは個人再生の意味がないので、債権者に配当可能な金額(財産価値)以上の返済をおこなうことで、債権者の権利を確保する仕組みになっています。
これを清算価値保障の原則と言い、基準となる財産価値のことを清算価値と言います。
清算価値は、差し押さえ対象となる以下のような財産の評価額によって計上されます。
- 不動産
- 現金
- 預貯金
- 貸付金
- 積立金
- 有価証券
- 自家用車・バイク
- 20万円以上の動産(貴金属・ブランド品など)
不動産評価額と清算価値の関係・計算方法
不動産は前述の資産の中でも特に高額で、総財産の評価額の中でも占める割合が大きいです。
そのため、不動産と清算価値の関係を把握しておくことは非常に重要となります。
ここからは不動産評価額と清算価値の関係・計算方法を分かりやすく解説していきます。
不動産の清算価値は評価額からローン残額を控除した金額になる
不動産の清算価値は、評価額からローン残額を控除した金額になります。
例えば不動産の評価額が2,000万円、ローン残額が1,000万円の場合、不動産の清算価値は1,000万円になるということです。
そしてこの際の評価額ですが、税評価額ではなく時価(実勢価格)が基準になります。
不動産の清算価値が低いほどメリットは大きい【清算価値保障の原則】
清算価値保障の原則により、個人再生時も所有の資産は保護される仕組みになります。
その代わり、バランスをとって所有の資産価値が低いほど税負担は軽くなり、資産価値が高いほど税負担は重くなってしまいます。
不動産の価値が高額なのは通常時なら喜ばしいことですが、高額すぎると個人再生をしたにも関わらず返済額が以前と全く変わらないということも起こり得ます。
個人再生をする際は、出来るだけ不動産の清算価値が低いほど返済額が下がり、メリットが大きくなるのです。
不動産の清算価値は不動産会社に無料で査定依頼するのが一般的
不動産の清算価値は、物件の時価(実勢価格)を基準に計算をします。
清算価値を証明する際に必須となるのが、以下の2書類です。
- 固定資産税評価額の証明書
- 不動産会社が作成した査定書
このうち、固定資産税評価額の証明書は毎年送られる領収書でチェックできます。
固定資産税評価額は国が定めた基準地価を元に算出するので、逆算すれば公式の価格が分かります。
ただ、基準地価には細かい地域の差異や直近の変化などは反映されていないので、そういった点は不動産会社に調査してもらい、査定書にまとめてもらいます。
不動産会社の査定は無料で依頼できる
不動産会社への査定は無料で依頼ができます。
査定費用が一切かからない理由は、不動産会社が契約を取るために敷居を低く設定しているからです。
無料査定を依頼してきた人をつながり、営業活動をおこなえば契約に近づくので、業者にとってもメリットがあるのです。
清算価値を算出するためには、早めに不動産会社の査定を受けることをおすすめします。
目的が売却ではなくても不動産査定は無料
個人再生のために不動産会社へ査定依頼を検討している方から、不動産会社への査定依頼は売却が目的でなくても出来るのかという旨の質問をもらうことがあります。
基本的には、売却以外の目的があったとしても不動産会社は無料で査定を実施してくれます。
結果的に売却につなげられる可能性が0でないというのも理由の一つですが、仲介売却だけを専門にやっている不動産会社は少なく、どんなニーズでも何かしらの形でサービス利用につなげられる可能性があるので、業者側にメリットが0という訳ではないのです。
もっと裏側の話をすれば、不動産会社にとってはリストアップされている顧客が増えるだけでも意味があります。
例えばメールマガジン等に登録してもらい、有益な情報を継続的に流しつづけます。
そのメールの下に電話番号などを載せておけば、いつか売却を検討した時、優先的に連絡をくれる可能性が高まります。
つまり、将来的な利益の拡大を見込んで、すぐに売る予定のない人にも査定サービスの利用を促進させているのです。
不動産一括査定サイトを利用して不動産の清算価値を下げよう
不動産の清算価値を下げるため、故意に低い査定額を申請するのはNGです。
しかし、不動産会社の査定額は業者によってバラバラなので、複数社の査定額を効率よく比較できれば、清算価値を下げて返済額を圧縮することができます。
効率よく複数社に査定依頼が出来るおすすめツールが、不動産一括査定サイトです。
物件の簡単な情報を入力・申請すれば、平均最大6社へ一括で査定を依頼することができます。
賢い使い方としては最初に机上査定(簡易査定)を申し込み、結果が低い業者に訪問調査を依頼して査定書をもらって提出するというフローがおすすめです。
不動産評価額から清算価値を計算する方法はローン残債によって決まる
不動産評価額から清算価値を計算する方法は、ローンの状態によって3種類に分かれます。
- ローン残債がない状態
- アンダーローン状態
- オーバーローン状態
ローン残債がない場合は不動産評価額=清算価値となる
ローン残債がない場合は、不動産評価額がそのまま清算価値となります。
ローン残債が0で築浅・好立地の物件だと、清算価値が高くなりすぎて返済額がほぼ変わりません。
アンダーローン状態は不動産評価額-ローン残債が清算価値となる
不動産の評価額>ローン残債の状態をアンダーローンと呼びます。
この場合、評価額からローン残債を差し引いた額が清算価値となります。
この状態が最も返済負担を縮小できるため、個人再生に適しています。
オーバーローン状態は清算価値が0となる
不動産の評価額<ローン残債のオーバーローン状態では、清算価値が0となります。
つまり、清算価値の計算に不動産評価額を組み入れずおこなうようになります。
メリットがあるようにも思えますが、そもそもオーバーローン状態に陥っている時点で経済的にかなり苦しい可能性が高く、自己破産までしなければ意味がない事例も多々あります。
不動産の清算価値が高い時は任意売却がおすすめ
不動産の清算価値が高くなってしまう時は、個人再生のメリットをあまり享受できません。
この場合におすすめできるのが任意売却という方法です。
不動産の売却が必要ではありますが、不動産を処分してその利益を返済に充てることができます。
そこで完済ができなかったとしても、債権回収会社に対して無理のない金額から返済することができるので、どちらにせよ魅力が大きい制度です。
まずは不動産の評価額を算出することから始めよう
個人再生をする際は、まず不動産の現在の価値がいくらか確かめる必要があります。
不動産はあなたの資産の一つですから、経済的な見直しをおこなう際に現行の価格を知らないというのは危険です。
住まいの評価額は環境の変化、築年数の経過などによって大きく変化している可能性が高いです。
購入時のイメージに惑わされず、必ずその時のリアルタイムな評価額を調べるようにしましょう。