アパート経営をする際は、その終わらせ方も考えなければいけません。
今は満室のアパートでもずっと続けていくと価値は0になり、管理費が超高額になります。
賃貸収入+売却価格が最大値になるタイミングを見極めて売るのが理想的ですが、その売り時がいつなのか的確に読み取るのは非常に難しいです。
そこで今回は、アパートの売り時を見極めるコツを解説していきます。
アパートの売り時は大きく分けて2つある
アパートの売り時は、大きく分けてこの2つのタイミングです。
- アパートと経営主の事情からみた最高の時期
- 景気や税制の変化からみた最高の時期
できればこの2つのタイミングが重なった時にアパートを売るのが理想的です。
では、それぞれのタイミングはどう見極めれば良いのでしょうか?これから解説していきます。
アパートの売り時を見極めるポイント11選
大きな経済状況や税金の変化から、売り時を見極めることができます。
売り時を見極める際にチェックしたいのが、以下の11のポイントです。
- 設定した投資期限を満たしているか
- ポートフォリオ割合を見直すタイミング
- まとまったお金が必要なタイミング
- 市況が悪化するタイミング
- 取引コストの増加(消費税増税など)
- 維持コストの増加(固定資産税増税など)
- アパートの満室状態が解消されそうなタイミング
- 地価が見直しされたタイミング
- 減価償却費期間が満了したタイミング
- 購入費用+見込収益よりも売ってしまったほうがお得なケース
- 2、3月の転居者が多いタイミング
ここからは、それぞれの内容をわかりやすく解説していきます。
①設定した投資期限を満たしているか
アパートの運用は賃貸”経営”ですから、一つのプロジェクトとして見るべきです。
プロジェクトには初期投資・期限・目標額があるように、賃貸経営を始める時も期限・目標額を設定するのが理想的です。
この投資期限が来たら、いくら未練があっても売ってしまうというのが、ベストな売り時に売る一つの方法です。
ただ、最初に「期限は5年」と決めたなら、運用も5年計画でやっていかなければいけません。
最初に5年といったのに4年目に入居者を募集していたら、計画は失敗してしまいます。
初志貫徹で戦略を実行していくことが大切なのです。
②ポートフォリオ割合を見直すタイミング
「最終的にはアパート経営だけで年1億円以上稼ぎたい!」という方は、まず小さなアパートから経営をはじめ、買い換えてどんどん箱を大きくしていき、最終的には高層マンションの経営に回るという計画が一般的です。
こういう計画なら常により良い物件を狙っていく必要がありますから、経営が順調でもより規模の大きな物件が買い時なら売ってしまうのも一つの手です。
法人がおこなう不動産ファンド事業を、個人に落とし込んだ戦略だと言えます。
③まとまったお金が必要なタイミング
アパートの賃貸経営は毎月決まった金額が収益になるのが魅力です。
ただ、一気に多額のまとまったお金が欲しいなら、売ってしまうのがおすすめです。
現金確保を目的とした純粋な売却ですが、注意してほしいのは、住宅ローン残高を一括返済する必要があるという点です。
費用計算をしっかりしておかないと、あと数年経営しておいたほうがお得だったということになり兼ねません。
④市況が悪化するタイミング
収益を取るだけとって、いざ景気が悪化しそうな直前の段階で売り払うというのがベストです。
ただ、これは非常に難しいやり方でもあります。
まず、バブル崩壊の教訓から、大半の投資家がこの売り方を認識しています。
ということは、自分が売る時にはもうすでに大量の中古アパートが出回り、相場が低下しているという可能性が高いです。
この売り方を成功させるには、常に他の投資家より一足早く決断する必要があります。
そのために、相当な知識量、分析力が必要となるのです。
⑤取引コストの増加(消費税増税など)
2019年10月に消費税が10%に増税します。
収益物件の取引では売主に消費税がかかるので、増税前に売ってしまうのも一つの手です。
ただ、考え方によっては増税後も数年好調に経営を進めていければ、増税分を回収できますし、同じタイミングで一斉に売れば前述のように損する可能性もあります。
ただ、こうした分かりやすい増税はライトな購入者層に大きなダメージを与えます。
投資初心者による駆け込み需要を信じて、オーソドックスに増税前に売ってしまっても間違いはないと思います。
⑥維持コストの増加(固定資産税増税など)
2018年から、新築のタワーマンションの固定資産税が中間階~上層階は増税、低層階は減税するという法案が適用されています。
マンション・アパートを取り巻く環境が大きく変わろうとしている2020年までに、何かしらの対策をしておきたいという国の考えが見てとれます。
アパートを経営する者からすればあまり関係ない話ですが、見方によってはいつ固定資産税が値上げするかわからないということになります。
値上げ案が議題にのぼったり、法案が通過しそうだったりする段階で、施行を待たずに売ってしまうというのも一つの手でしょう。
⑦アパートの満室状態が解消されそうなタイミング
アパートが満室だと高額で安定した収益が見込めるだけでなく、投資家にも高く売ることができます。
最近空室が目立ってきたアパートなら、一旦埋めてから売ることをおすすめします。
満室なら、投資家たちに「収益が十分見込めるアパート」だとアピールできるので、強気の価格設定をすることができます。
実際、満室にした後に売ったら相場以上の価格が付いたというケースも多々あります。
⑧地価が見直しされたタイミング
毎年3月中旬に、国土交通省は新しい公示地価を発表します。
地域によっては昨年の評価と変化がないことも多いですが、地価が上昇すればそれに伴い、アパートの価値も上がります。この時を見計らって売れば高値が付く可能性が高いです。
地価は国土交通省の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」というデータベースで調べることができます。
⑨減価償却費期間が満了したタイミング
取得から一定期間は、減価償却費期間といって築年数の経過によって価値が年々下がっていきます。
期間中は費用化できるものを償却分として計上すれば、その分かかる税金を減らすことができるので、節税対策になります。
減価償却期間を過ぎると節税効果が薄れてしまうので、既存のアパートを売ってしまい新たなアパートを買うのも節税のための手の1つです。
⑩購入費用+見込収益よりも売ってしまったほうがお得なケース
単純に、このまま所有するよりも売ったほうがトータルの高利益を見込める場合は、売ってしまうことをおすすめします。
物件の価値は築年数の経過によりどんどん下がっていくので、購入時よりも高く売れることはなかなかありません。
ただ、2018~2020年は東京オリンピックによる特需とマイナス金利政策により住宅ローンが借りやすくなったので、高く売れても不思議ではありません。
特に首都圏のアパートは、築年数が古くても高く売れる可能性が隠されています。このタイミングで一度査定をしてもらうのがおすすめです。
⑪2、3月の転居者が多いタイミング
アパートは基本的に2、3月に売ると最も買われやすいです。
4月は入社・転職のシーズンなので、住まいを求める人の数が急増します。
不動産は必要に迫られないとなかなか買われないので、こうした時期を狙っていくのがおすすめですよ。
その次におすすめなのが、やはり異動の多い9月前です。
周辺環境の変化にもアンテナを張って売り時を判断しよう
街の中には、近くにある大学や企業の関係者たちが住むことで成り立っているケースも多々あります。
また、たとえば街の外れにある大型ショッピングモールが倒産し、ショッピングが昔ながらの商店街からしかできなくなれば街の魅力は半減します。
このように、郊外の街は特定の施設がなくなれば、居住者が大幅に減少する仕組みのところも多いです。
例えば学生街にある安家賃のアパートは、大学が移転すれば今ほどの利益は見込めません。
1年後に大学が移転するというニュースを聞けば、それまでに売ってしまうのがベストでしょう。
何のために・どんな人がアパートに入居するのかを深く分析する
アパートはマンションに比べて家賃が安いので、低所得~平均年収くらいの一人暮らしの人が多く住む傾向にあります。
生活環境を考えれば、低所得層が住む町には安いスーパーやファストフード店が多く出店されているでしょう。
また、駅近で、都心まで一本で行ける場合は、都心勤務の若手社員が多く住んでいると予測できます。
このように、自分のアパートはどんな人が、何を魅力に思って入居してきたのかをしっかり分析しましょう。
【分析の例】
入居者のステータス | 20~30代の男性・一人暮らし |
---|---|
どこを魅力に思っているか | 駅近で都心まで一本・通勤が楽 |
その他に気づいたこと |
|
このような形でメモを書くと、以下のような点が見えてきました。
- 2年後の駅開通は賃貸経営の致命傷になる(それまでには絶対に売らないといけない)
- スーパーの閉店はそこまで致命傷ではない(他にもコンビニが沢山ある)
- 駐車場の契約は継続する必要あり
- 結論:駐車場があることを宣伝して部屋を満室にし、1年後に売りに出す
管理会社をあてにし過ぎると、こうしたポイントが見えてきません。
ぜひ、自分の足で動くことをおすすめします。
数字には見えない売り時を見抜くにはどうすれば良い?
増税など、目に見える変化がないのに、入居率が落ちていたり、空室が埋まるまでの期間が延びていたりすることがあります。
上の6つに当てはまらなくても、入居率が落ちる理由は無限にあります。
例えば、近くで事件があった、若者の住まいへの意識に変化があった、少子化の煽りを受けているなどです。
こうした事態に陥った時、理想的なのは分析をして、明確な原因を見つけることです。
入居率が落ちている原因が分かれば、すぐ売るべきなのか経営改善の見込みがあるのかが分かります。
なぜ入居率が落ちているのか分からなければ、判断には経験が必要になります。
専門家に聞いてみるのも良いですが、アドバイスがしっくりこなければ再び上記6つの基準に照らし合わせて判断するのも良いでしょう。
自分の中で確信がある状態で売り時を判断するのが、悔いを残さない最善の方法です。
アパートの売り時に関する良くある4つの勘違い
アパートの売り時を判断する際に、根拠のないアドバイスや自分の思い込みを信じると失敗してしまいがちです。
特に賃貸経営の初心者はこうしたケースが多いので注意しましょう。
今回は、アパートの売り時を決める際に初心者がやりがちな4つの勘違いを紹介していきます。
【勘違い①】必ず売却価格>購入価格で売るのがお得ではない
購入したアパートは初期投資よりも高く売らなければいけないと思い込み、そこにこだわり過ぎている人は多いです。
ただ、アパート経営では高く売れば良いというわけでは必ずしもありません。例えば、以下のような物件があったとします。
築年数 | 10年 |
---|---|
年間の収益 | 200万円 |
満室率 | 70%(7/10部屋) |
購入時の価格 | 3000万円(7年前に購入) |
現在(2018年)の7年前ということは、東日本大震災の影響で相場が大きく下がっていた時期です。
これを今の好相場で売れば、確かに購入時以上で売却できるかも知れません。
ただ、アパートは基本的に築年数が1年経つごとに100~200万円価格が減少していくので、購入時より高く売るのは簡単ではありません。
また、空室率を見れば、まだまだ収益を増やせる可能性も十分にあります。更に所有期間が10年を超えると軽減税率の特例が使えるので、譲渡所得税が安くなります。
あと3年キープしていればその分価値は減りますが、収益の拡大と税金コストの減少でトータルの利益は上がるかもしれません。
このように、出口戦略にばかり気を取られていると、今やるべきことを見逃してしまいます。
そもそも、アパート経営は満室率を100%にする努力をしなければ意味がありません。単純に買った時より高く売れば良いと考えるのは浅はかで危険です。
【勘違い②】キャッシュフローだけ見ているとローンの変化を見落としがち
突然ですが、下の2つのケースのうち、どちらが利益を見込めるか分かるでしょうか?
- 3000万円で売れるアパートAを2018年に売る
- 5年間で500万円の賃貸収入をあげたアパートAを2500万円で売る(2023年)
税制の変化を考慮しなければ、どちらも全く同じに見えます。そうであるなら、早めに5年分のキャッシュフローを得たほうがお得ですよね?
ただ、この計算には、住宅ローンの残債が抜けています。
5年ローンの支払いを続けていれば、借入額にもよりますが、後者のほうが1,000万円近く高い収益を見込めます。
ローンもそうですが、固定資産税や管理費など、経営でかかるコストも考えないと正確な売り時は決められないので注意しましょう。
【勘違い③】アパート売る時のあなたは年収・状況が今と同じではない
例えばアパート経営の計画を10年で立てる場合、多くの人はプランを今の年収や状況を起点にして考えます。
超高収入の人は立地の良い物件を買い、相場が上がったら売る計画の人が多いでしょうし、はじめてアパート経営をする際は安値で仕入れて少しでも高く売れれば良いと考えがちです。
ただ例えば、高い物件を買った直後に年収が下がれば、高額のローン返済に耐えられなくなり相場が上がるのを待たずに売ってしまうようになります。
アパートの売り時を決める場合は、自分の年収や環境がどう変化しているかも考えなければいけません。
10年後にアパートを売るのであれば、その収益が10年後の自分にも意味のある金額でないと、だんだんアパート経営への興味・熱意が薄れてきて管理が疎かになってしまいます。
【勘違い④】10年経ったら税金が安くなるわけではない
「10年所有したアパートを売ると税金が安くなる」というのは、多くの投資家がしている勘違いです。
これは譲渡所得税のことを指しているのでしょうが、まず譲渡所得税は所有期間が5年を超えてから売ると税率が半額近く低くなります。
短期譲渡所得(所有期間5年以内) | 長期譲渡所得(所有期間5年超) | |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 15% | 5% |
そのため、「所有期間が5年を超えると税金が安くなる」というのは本当です。
ただ、所有期間が10年を超えた時には必ずしも税金が安くなるわけではありません。
所有期間が10年を超えると軽減税率の特例が適用されますが、これを利用できるのは居住目的で物件を利用していた人のみです。
賃貸経営していたアパートを売る際は利用できないので注意しましょう。
2019年10月から消費税が10%に!賃貸アパートの売却には大きく影響する
2019年10月から消費税が8%から10%に値上げしますが、このことは賃貸アパートの売り時に大きな影響を与えると考えられます。
普通に考えれば10月までに売ってしまうのがお得でしょう。
そのため、不動産会社もそこに向けて駆け込みキャンペーンを展開していくと予想できます。
ただ、必ずしも焦って早期売却をするのがお得というわけではありません。
期限を焦りすぎれば、買主に足元を見られてしまう可能性もあるからです。
増税直前は同じ考えで売り出す人も多いと考えられます。
そのため、築年数の古いアパートはいつも以上に売れにくくなるかもしれません。
逆に増税後に売っても利益を回収できる自信があるなら、人気のないアパートはあえて増税後に売り出すというのも一つの手です。
何にせよ、2019年10月を基準にどう戦略を練っていくかが、直近の課題になるでしょう。
2020年以降のアパート市場はどうなる?売り時を逃した人の経営戦略
2020年を過ぎると、マーケットはおそらく縮小すると考えられます。
利回りは数年間9%(築10年)あたりで落ち着き、過去のように年々下がっていくということがないので高額売却は見込めなくなっていくでしょう。
今後は十分な資金力と経験がある人でなければ賃貸経営は難しくなるので、それに伴い住宅ローンの審査も厳しくなっていくでしょう。
特に地銀ローンはスルガ銀行の不正融資問題があったので、より審査が厳格化する恐れがあります。
今までのような方法が今後通用するとは限らず、管理の水準を上げる必要があります。
細かい費用などもチェックをし、リスクをコントロースしていきましょう。
いつだって成功する人はいる!長期的なビジョンと手間を面倒くさがらないことが重要
今後の見通しは確かに良くはないですが、それでも賃貸経営を成功させる人はいます。
成功する人と失敗する人の大きな違いは、まずビジョンの長さ・深さです。
数十年後の見通しまで立てている人が、やはり最終的に経営を成功させています。
ただ、見通しを立てて、それに則り進捗管理をするのは非常に手間がかかるものです。
この手間を面倒くさがらず、コツコツ丁寧に作業を進めていくのが大切ですよ!
アパートは今いくらで売れるか常に考えてタイミングを伺おう
アパートを経営する際は、常に売り時を考えなければいけません。
市況は日々動いており、その変化にアンテナを張っている人しか、ベストな売り時で売却をすることはできないでしょう。
市況を調べるには、楽待などのサイトを見る、土地情報総合システムを見るなどの方法があります。
定期的に相場を調べることで、後々後悔するのを防ぐことができますよ!
※アパートの相場の調べ方はこちらにまとめています。