代々地方に住んでいる方は、家の裏にある山林を保有している場合があります。
このような土地を売却するときは、通常の不動産売却とは違った手続きをおこなう必要があるので注意しましょう。
山林を売却する場合は、居住や保有を目的にしている買い手に売る他に、伐採した木材を売る方法などもあるので、自分がなぜ土地を売るのかを明確にしておくと、適切な売却方法を選びやすくスムーズですよ!
山林の売却は難しい?注意点を紹介
今の若い人で、上記のような土地を購入するケースは稀だと思います。
こうした土地を保有している人の多くは、相続によって得たものがほとんどでしょう。
ただ、先祖代々保有していた土地を相続するのであればそこまで問題はありませんが、その土地が原野商法に引っかかった場合はとても売りにくいです。
原野商法とは30年以上前に流行った詐欺の手口で、価値のない土地を「今後、この辺の地価が急騰する」と言って、買わせる手法です。
買わされた土地はアクセスも悪く、相場も低いので、普通に考えれば高値で売れにくいです。
大抵の売出し山林地は手入れが行き届いていない
戸建てやマンションなどの建物と違い、土地は管理が面倒な不動産です。
特に山地・山林地は市街地からのアクセスも悪く、定期的に雑草の管理などをしている方はほぼいないでしょう。
せっかく相場の高いエリアの土地だったとしても、管理が行き届いていなければ高値で売ることはできません。
以下の記事で詳しく説明されていますが、土地の評価は路線価によってほぼ決まります。
ただ、実際の土地取引額は買い手の目的にマッチしているか、第一印象が良いかで大きく変わります。
そのため、山・山林を高額売却したいなら面倒ですが年に数回の草むしりなど、定期的に管理・状態チェックをするのが理想です。
山地・山林地の仲介を不動産会社が嫌がることも
こちらに紹介されている大手不動産会社は、土地なら住宅地・商業地の取り扱いがメインです。
これは、住宅地・商業地のほうが相場が高く、手続きも簡単なことが理由です。
いっぽう、山地・山林地は仲介対象でない会社もあります。査定依頼の際はまず電話で聞いてみると良いでしょう。
別荘・リゾートに発電事業…山林には独自の購入需要がある
山・山林は市街地から離れており、暮らすには不便なため、住み替えを目的とする売り手は付きません。
反面、人里離れた閑静な立地のため、別荘地・リゾート地としての需要も高いです。
もしあなたが山地と別荘住宅を持っているなら、まとめて売ったほうが需要は高いです。
また、日当たりが良く、周囲に高層住宅が建つ可能性も低いので、個人・法人を問わず発電事業目的で買われることも多いです。
逆に言えば、こうした土地が売れない場合は、自分で太陽光パネルを設置して発電量をもらうのもおすすめです。
山林を査定・売却する流れ
上記のような詐欺被害を避けるためには、早めに売ってしまうのが一番です。
ただ、一般的な不動産売却とは流れが少し違う部分もあるので、事前に確認をしておきましょう。
引き渡しまでの流れは以下の通りです。
- 土地の状況調査
- 売却方法の確認・決定
- 媒介契約
- 売買契約成立・売却
実際には、以上の手続きの他に、土地の境界測定をおこなう必要があります。
この記事の後半に記述しますが、山・林の境界測定は土地の中でも特に厄介なので、しっかり時間をとっておきましょう。
1.土地の状況調査
まずは、土地状態を把握する必要があります。
中には通り道があるのか、生えている木の種類や樹齢はどうか、傾斜はどのくらいかといった情報を、登記簿や森林簿を参考に調査していきます。
森林簿は、役所の農林課に依頼すれば確認することができますが、情報が古いケースも考えられるので、目視での確認も一度おこなっておきましょう。
2.売却方法の確認・決定
状況をつかんだところで、どのような売り方をするかを決めていきます。
もちろん、不動産業者に査定を依頼し、売却する方法もありますが、山・林の場合は木材のみを売るという方法もあります。
通常の土地売却であれば、まず業者に相談しますが、くわえて森林組合へ相談しておくと、より専門的なアドバイスをもらえるかもしれません。
3.媒介契約
一般的な方法で売り出すのであれば、セオリー通り不動産業者に依頼をしましょう。
大手業者であれば、ネットワークを使った大規模な宣伝をおこなってくれますが、山・林は立地が悪いところにありがちなので、利益を重視する業者は積極的に販売活動してくれない可能性が高いです。
購入者も周辺地域に住んでいるケースが多いので、まず地元の業者に相談してみるのがおすすめですよ。
4.売買契約成立・売却
買い手が見つかれば、売買契約を結び、引き渡しをおこないます。
居住用として購入する人は少なく、多くは農業・林業をするために購入しているようですね。
なお、引き渡し前には境界を確認しておく必要がありますが、山の境界は決まっていないことが多く、一から測定しなければならないので時間がかかります。
測定を後回しにすることで買い手に分割負担させるというテクニックもありますが、余裕をもってなるべく早めに境界を確定しましょう。
山地・山林地売却で必要な書類について徹底解説!
山地・山林を売る前に、業者は以下のさまざまな書類を参考にして査定額を算出します。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産税通知書または固定資産税名寄帳兼課税台帳
- 公図
- 地盤図
- 森林情報
上記5種類の書類の他に、必要に応じて以下の書類を求められることがあります。
- 物件位置図
- 地籍図
- 所有地番一覧表
ここからは、それぞれの書類の内容と取得方法を紹介していきます。
登記事項証明書(登記簿謄本)
登記事項証明書は、土地の地番、地目、地積などが詳しくまとめてある資料です。
以前は登記簿謄本と呼ばれていましたが、今は登記事項証明書と名前が改められ、管理もコンピューターによって一括でおこなわれるようになりました。
登記事項証明書は最寄りの法務局で申請すれば1枚1,000円で取得できます。法務局は各都道府県に1ヶ所のみなので、時間が取れない方は郵送してもらうのがおすすめです。
固定資産税通知書または固定資産税名寄帳兼課税台帳
山林を含む全ての不動産所有者には、年間を通して固定資産税の納付が義務付けられています。
固定資産税は1年に4回ずつ納付するのが一般的(地域によって一部例外あり)で、その都度通知書が自宅に郵送されます。
固定資産税は土地の評価額に比例してかかるので、通知書に書いてある課税額を逆算すれば最新の評価額がわかります。
登記事項証明書に記載されているのが公式の内容ですが、評価額は周囲の都市開発や政策・金融状況の変化によって変わるので、最新の評価額が算出できる固定資産税通知書は意外と査定時に重宝されます。
固定資産税名寄帳兼課税台帳
固定資産税名寄帳兼課税台帳とは、自治体の税務課などで保管されている固定資産税の課税状況を示す書類です。
通知書は課税・納付の証明能力があるので、紛失しても再発行することができます。
もし紛失してしまったら、こちらの固定資産税名寄帳兼課税台帳を代わりに使うようになります。
取得の際は、まず自治体の総務部税務課などに電話連絡してみましょう。
公図
土地の公図とは管轄の登記所で取得できる俯瞰図で、土地が一筆ごとに区切られています。
例えばあなたが一つの山林を所有していると思っていても、実は山林は3つに区切られており所有者がそれぞれ違うというケースが考えられます。
山林の権利関係を正しくチェックするためにも、公図のチェックは不可欠です。
地盤図
地盤図はボーリングデータなどを元に調査した地質の状況とマップ式でまとめたものです。
これは、地質調査総合センターなどの機関でチェックすることができます。
最近は土地を売る前に地盤調査が義務付けられているので、地盤図の提出をおそらく求められます。
山林の地盤調査を一からおこなうとなると大変な時間と費用がかかるので、事前に地盤図の有無を確認しておきましょう!
森林情報
森林情報とは、各自治体などが保有しているデータや、民間企業が実施している情報共有データベースのことを指します。
山林の状況を森林情報からチェックできますが、各自治体がどんな保護政策や取り扱い制限を設けているかの確認がメインになるでしょう。
自治体によっては自然環境の保全や過剰な都市化の制限を目的に、山林の勝手な売買を禁止しているところもあるので気をつけましょう。
物件位置図
物件位置図は、その名の通り物件が地域のどこに位置しているかを示した俯瞰図です。
山林などの広大な土地にいくつか空き家がある場合は、物件位置図があると不動産会社も把握が簡単になって便利でしょう。
これは査定調査時などに担当業者が作成することが多いですが、売主自身で作ってしまっても問題はありません。
地籍図
地籍図は登記事項証明書に記されている境界、地目、地番などの項目を地図上で図解している大縮尺図です。
山林の状況を調べる中で、文章だけではわからない部分があった時にこの地籍図を確認するようになります。
地籍図は縮尺 250分の1から 5000分の1までのものがあり、役場や税務署に公簿として保管されています。
所有地番一覧表
山林のいくつかの地番に分かれている場合、それぞれの地番の所有者を確認する必要があります。
これがまとめられているのが、所有地番一覧表です。
登記事項証明書を見てもわからなかった場合に、この表を合わせて使うようになります。
山地・山林地は測量せずに売るのが一般的?
土地を売却する際は、境界が確定している必要があります。もし売りたい土地の境界があいまいなら、業者に頼んで測量をしてもらいます。
測量依頼から境界確定までは平均3、4ヶ月ほどですが、広大な山林では測量により時間がかかってしまいます。
山林を売る際は、なるべく早く測量を依頼するようにしましょう。
測量ができない場合は公簿面積を使って売却
測量によって計測された土地面積を実測面積といいます。
不動産売却は基本的に実測面積をもとに広告作成や価格の算出をおこないますが、測量費用が払えない・複雑な形状で境界確定まで膨大な時間がいるという場合は公簿面積を使って取引されます。
公簿面積とは登記簿などに記載されている面積のことで、実測したときの差異は考慮しません。
ほとんどの場合、山林は測量をせず、公簿面積を使って取引されます。
山林売却にかかる税金!確定申告で気を付けたい山林所得とは?
山地・山林地を売却するとかかる税金は印紙税・譲渡所得税など、通常の土地とほぼ同じです。
当たり前ですが、売却仲介を不動産会社に依頼すれば仲介手数料がかかります。
これらに加えて、山地・山林地売却では森林所得税という税金が課されます。
山林所得税の計算方法
不動産業者に依頼して土地を丸ごと売る場合、譲渡所得税以外にも山林所得税が課されます。
この税金の課税額は、以下のような計算式で表せます。
{(森林所得金額)×0.2×税率}×5
この山林所得金額とは、売却価格から管理費、伐採費などの必要経費を引いた額となります。
通常の土地売却より税が高額になってしまいますが、所有年数が15年を超えた場合は控除を受けることができます。
税率は山林所得金額に応じて変化
山林所得にかかる税率は、山林所得金額に応じて以下のように変化します。
山林所得金額÷5 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円超330万円以下 | 10% |
330万円超695万円以下 | 20% |
695万円超900万円以下 | 23% |
900万円超1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
所得金額を5で割って計算する方法は5分5乗方式とよばれています。
山林売却時は税金の特別控除が使える!
山林売却時に発生する税金は、特別控除で節税することができます。
節税できる額(控除額)は山林所得金額に応じて以下のように決まっています。
山林所得金額÷5 | 控除額 |
---|---|
195万円以下 | 0円 |
195万円超330万円以下 | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 4,796,000円 |
税金計算の際は、上の控除額を山林所得から差し引いて税率をかけるようになります。
木材のみを売る方法もあるが相場下落の可能性もある
丸ごと土地を手放さずに、生えている木を売り生計を立てる、いわゆる林業を営むために山林を利用することも可能です。
ただ、林業をおこなう場合は家の裏山程度の規模では利益を生むことは難しいです。
また、木にも質の高さがあり、道路の脇に生えている樹木を家具などに利用することはほとんどできません。
一度検討するのもアリだとは思いますが、実際に収入を生むのは非常に難しい方法です。
土地と木材を別の買い手に売ることもできます
山林に生える木材が欲しい人(法人)と、土地が欲しい人が別々という場合もあります。
この場合は、それぞれを別の買い手にバラ売りすることも可能です。
山地・山林地の土地としての査定価格は、面積・アクセスなどによってほぼ決まり、生息する樹木の種類などは微々たる影響しかありません。
土地の査定がどのようにおこなわれるか、その内容はこちらにまとめてあります!
査定におすすめの業者なども掲載されているので是非お読み下さい!
つまり、土地と木材をバラ売りできれば、トータルの利益はそのまま売った場合の価格+木材の価格となり100%お得なのです!
北欧の輸入木材シェアが拡大中!木材を売るならお早目に!
ただ、現在は国が農地や山林地の保護をおこなっているので、家具製造メーカーなども国産木材を買いにくい状況にあります。
こうした背景から、質が高く安価な北欧の輸入木材のシェアが急速に拡大しており、今後、木材は更に売れにくくなるでしょう。
上で紹介したような土地と木材のバラ売りにチャレンジしたい方は、なるべく早期に手続きしましょう!
山林の売買に関するよくある質問
山林御売買に関するよくある質問をまとめました。
自分の持っている山林を売りたい、山林を買いたいという人はぜひ参考にしてください。
山林所得とは?
国税庁によると山林所得とは「山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得を言います。ただし山林を所得してから5年以内に伐採または譲渡した場合は、山林所得ではなく事業所得か雑所得になります。また山林を山ごと譲渡する場合の土地の部分は譲渡所得になります。」と定義しています。
保有期間によって税の種類が変わるので注意しましょう。
山林の固定資産税はいくら?
山林の固定資産税の税率は1.4%です。
課税標準額×1.4%で固定資産税の金額が求まります。
山林の固定資産税は、自分の住んでいる市町村や国に納税するのではなく、山林がある市区町村に納税を行います。
初めて不動産を売買した際は、税のスペシャリストである公認会計士や税理士に相談をするようにしましょう。
山林は誰でも買える?
山林を購入する際は、制限がなく誰でも購入をすることができます。
特に近年は、キャンプが流行り山の売買が活気に溢れています。
まずは自分の求めている山林が売りに出されているかを確認した上で、購入を検討しましょう。
山林を探す際は、山林専門のサイトを利用することでスムーズに自分の求めている山林を見つけ出すことができます。
山林の相続税はいくら?
山林の相続税は、山林のタイプによって異なります。/p>
市街地山林であれば、宅地比準方式で計算をすることができ「山林の評価額―造成費用」で求められます。
中間山林・準山林の場合は倍率方式で計算をすることができ「固定資産税評価額×倍率」が山林の相続税になります。
山林の管理義務とは?
山林は所有者に対して空き家と同じように管理義務が付帯してきます。
山林の管理が出来ていない場合は行政からの指導を受けてしまうため、しっかりとした管理を行うようにしましょう。
相続をした山林の利用予定がなく、管理が難しい場合は売却を選択するようにしましょう。
山林を売却することで、節税と山林の売却による利益を得ることができます。
山林を売却した場合は、その年に必ず確定申告をするようにしましょう。
不動産屋・林業組合…山林売却はまず相談からはじめよう
山・山林の年間取引件数は、少なくとも1万件以上はあります。
決して多くありませんが、需要がないわけではありません。
しかし、保有者の中には「どうせ売れない」と決めつけて土地をほったらかしにしている人も多いです。
ただ持っていても税金を支払うだけなので、利用価値がないと思ったら早めに売却してしまいましょう。
また、このようなタイプの土地はどの角度から見るかによって価値が変わります。
業者だけでなく、農業・林業の組合の人など、なるべく複数人に相談するようにしましょう。