不動産の売却が成功(成約)したら、売上の一部を仲介手数料として仲介業者に支払います。
仲介手数料は不動産の成約価格に比例して、上限額が決まっています。
今回は、不動産売却時の仲介手数料を計算する方法や、仲介手数料を安くする方法、支払い時の注意点などを解説していきます。
仲介手数料の計算方法【早見表】
不動産業者が請求できる仲介手数料には、依頼者が不利益にならないように法律によって上限が定められています。
また、この手数料と別途消費税がかかる点も合わせて把握しておきましょう。
取引額(不動産の売買価格) | 仲介手数料(法定の上限額) |
---|---|
200万円以下 | (売買価格(税抜き)× 5.0%) + 消費税(10%) |
200万円超400万円以下 | (売却額(税抜き)× 4.0%+2万円) + 消費税(10%) |
400万円超 | (売却額(税抜き)× 3.0% + 6万円) + 消費税(10%) |
上が物件の売却額と仲介手数料の関係となっています。
上の金額は法定の上限値ですが、慣例上、この金額のまま請求されることが多く、値下げは基本的に難しいと考えておいた方が良いでしょう。
仲介手数料の計算例
- 不動産の成約価格(税抜)を早見表に当てはめる
- 1で算出した価格に消費税を含めて計算する
通常、不動産価格は税込み表示であらわします。
例えば不動産売却を1000万円で売った場合、うち10%は消費税になっているのです。
この時、仲介手数料の計算は、(1000万円×90%)×3%+6万円=33万円となります。
その後、更に消費税分10%をかけて戻します。
そのため、仲介手数料は33万円×10%=363,000円となります。
なお、買主側も自身の仲介業者に対して、全く同じ条件で仲介手数料を支払います。
売主側と買主側の仲介業者がそれぞれ異なることを片手仲介、売主側と買主側の仲介業者が同じ不動産会社であることを両手仲介と言います。両手仲介の場合、仲介業者は1回の取引で通常の2倍の仲介手数料を得ることができます。
仲介手数料は仲介業者に対する不動産売却の成功報酬
不動産会社に仲介を依頼することで、購入者との契約を取り持ってくれます。
個人では世間に広く物件を紹介することは難しく、また個人で取引をおこなうことはトラブルを引き起こしてしまう可能性が高くなるので、不動産会社に仲介を依頼する方がスムーズに取引がおこなえます。
- 自社の顧客に不動産を紹介してくれた報酬
- 広告を掲載することにより購入希望者を探してくれた報酬
- 不動産を売るための営業活動の報酬(広告活動、ポスティングなども含む)
- 営業活動にかかる諸経費の補填(広告作成費や交通費なども含む)
- 販売価格の計算に対する費用
- 業者の売り上げとなる(不動産仲介業の質が保たれる)
不動産の販売活動で発生した業務の費用の補填や、業務を実行して売却を成功させたことへの報酬といった意味合いが仲介手数料に含まれます。
通常の仲介業務で発生する費用は仲介手数料で賄われる
上記に、仲介手数料を支払う根拠となる業務を挙げましたが、逆に言えば、不動産会社は上記の仲介業務の見返りとして、仲介手数料以外の支払いを要求できないということになります。
よく「仲介業者に”広告費”の支払いを要求された」という相談がありますが、営業活動や広告掲載、ポスティングなどの活動は移動も含めて一般的な仲介業務とみなされるため、本来は仲介手数料に含まれます。(テレビCMの実施など、特殊な広告活動を行う場合は、別途で広告費を請求される可能性があります。ただし、事前に売主の承諾を得ていない場合は請求できません。)
これ以外の、特定のケースでしか発生しない費用(建物の解体費用、リフォーム費用など)は、仲介手数料に含まれず、売主が支払うことになります。
仲介手数料を支払うタイミング
売主から仲介業者へ支払う仲介手数料は、売買契約時と物件の引き渡し時に半金ずつ支払うのが一般的です。
ただし、仲介手数料を支払うタイミングについて厳密な決まりはないので、別のタイミングで支払われるケースもあります。(引き渡し時に全額一括払いなど)
売主から、仲介手数料を支払うタイミングに関して要望があれば、仲介業者に相談することもあります。
仲介手数料の支払いを減額することは可能?
仲介手数料は合意に応じて減額可能
取引額(不動産の売買価格) | 仲介手数料(法定の上限額) |
---|---|
200万円以下 | (売買価格(税抜き)× 5.0%) + 消費税(10%) |
200万円超400万円以下 | (売却額(税抜き)× 4.0%+2万円) + 消費税(10%) |
400万円超 | (売却額(税抜き)× 3.0% + 6万円) + 消費税(10%) |
前述の通り、上記の金額はあくまで法定の上限額であるため、仲介業者との合意があれば支払いを減額することも理論上は可能です。
ただし、慣習上は仲介手数料といえば上記の金額が請求されることが多く、何らかの見返りがないとそのまま値下げに応じてくれるケースは稀です。
キャンペーン利用で仲介手数料が減額されることも多い
上記の住友不動産販売のように、仲介手数料が条件付きで減額されるキャンペーンを実施している仲介業者も存在します。
特に多いのが、(専属)専任媒介契約を結んだ方が成約した場合に減額対象になるというケースです。
こうしたキャンペーンは、比較的大手の不動産会社が実施していることが多いです。
無理に交渉をすると販売活動に影響する可能性もある
仲介売買では、仲介手数料が不動産会社の利益となります。
また、仲介業務は基本的には不動産会社自身が費用を負担するので、費用を補填するためにも仲介手数料が必要となります。
加えて、不動産会社の仲介売買事業では、1件あたりの仲介手数料額に応じて、担当した営業マンに賞与などが支払われるケースもあります。
上記の背景から、売主側から仲介業者へ何度も値下げの要求をすると、担当者に嫌がられる可能性もあり、場合によっては販売活動へのモチベーションにも影響する可能性があります。
不動産売却時の仲介手数料に関する注意点
注意点1】仲介手数料分の働きをしてくれる確証はない
仲介手数料は前述の通り、不動産の売却が成功した報酬・不動産売却の働きに対する費用の補填という意味合いがあります。
ただし、仲介手数料の金額は広告コスト・営業コストに対してではなく、売却価格に比例して決まるので、例えば1億円の価値がある物件を9,000万円で売ったとしても、9,000万円の利益分の仲介手数料は支払わないといけません。
確かに上記の例は成約が取れたので成功とみなせますが、本来1億円で売れるはずの物件を安く買い叩かれたのであれば、売主の感情的には仲介手数料を支払いたくないという気持ちになってしまっても不思議ではありません。
仲介業者の働きぶりに不満があったとしても、成約したら仲介手数料は原則支払う必要があるので、販売活動中に契約解除に動くといった必要があります。
注意点2】一般媒介契約では1社にのみ仲介手数料を支払う
契約の種類 | 契約の有効期間 | 売り手自身が買い手を見つけること | 依頼可能な業者数 | 仲介業者からの報告 ※規定されてい最低限の回数であり、実際の連絡回数は業者によって異なる |
---|---|---|---|---|
専属専任媒介契約 | 3ヶ月以内 | できない | 1社のみ | 1週間に1回、メールか文書で連絡 |
専任媒介契約 | 3ヶ月以内 | できる | 1社のみ | 2週間に1回、メールか文書で連絡 |
一般媒介契約 | 3ヶ月以内 | できる | 複数社と契約可能(契約数の上限なし) | なし |
仲介業者との契約は、1社のみと契約する(専属)専任媒介契約の他に、複数社と契約できる一般媒介契約があります。
一般媒介契約では複数社と制限なく契約を結べますが、仲介手数料は最初に成約をとれた1社にのみ支払われます。
一般媒介契約の場合、営業コストを負担したが成約が取れず、赤字になってしまうリスクがることから、不動産会社の販売活動の動きが消極的になるケースも多々あります。
不動産会社がキャンペーンなどを通じて(専属)専任媒介契約を優遇するのは、上記のような背景があります。
注意点3】両手仲介を狙った「囲い込み」に注意する
仲介業者にとっては、片手仲介よりも両手仲介の方が、手数料収入が多いためメリットがあります。
上記は大手仲介業者の2023年取引実績を比較したものです。右端の手数料率は、売上実績に対する手数料収入の割合をパーセンテージで表したものです。
片手仲介の手数料率は約3.0%になるのに対して、大手仲介業者は4%を超えるものが多く、両手仲介の件数が多いことがわかります。
両手仲介が行われること自体は問題ないですが、無理やり両手仲介を成立させようとする、いわゆる「囲い込み」には注意する必要があります。
囲い込みは売主にとってメリットが全くない行為なので、注意しましょう。
囲い込みが心配な方は、片手仲介100%(両手比率0%)のSRE REALTY(旧SRE不動産)などの不動産会社と契約するのがおすすめです。
不動産売却時の仲介手数料の認識を抑えておこう
前述の通り、仲介手数料は不動産売却が成功した報酬になるため、報酬が大きいほうが不動産会社はコストをかけたりして成約を獲ろうとしてくれる傾向があります。
そのため、「仲介手数料は値下げを希望せず上限額を支払ったほうが、売主にとってお得」という意見がありますが、必ずしもそうではありません。
条件が良い物件であればレインズに登録すれば買い手はつくので、不動産会社の利益を増やすために販売活動費を逆に抑えようと動く可能性もあります。
仲介手数料分の働きをしてもらうためには、売主自身のチェックが必要になります。