築年数が数十年経っているような条件の悪い古い家などを売却する際、多くの売主が「こんな状態で売り出して、本当に買ってくれる人がいるのか…」と不安に思っています。
実際のところ、売主自身が購入希望者で家を買うとしたら、新居として選ぶ要素がないと思ってしまうのも理解はできます。
こうした状況から、家をリフォームしてから売却した方が高値になるのではないか?と思う方も少なくありません。
ただ、中古住宅のニーズは購入後、そのまま定住することだけではないため、必ずしも売却前のリフォームに意味がある訳では言えません。
今回は、家を売る際のリフォームの必要性などについて詳しく解説していきます。
家はリフォームせずそのまま売るのが原則
前提として、中古住宅の売買ではそのまま引き渡すのが原則であり、売却前のリフォームは推奨されていません。
中古住宅をリフォームするのは購入後に買主側がやるべきことであり、コストの捻出も買主側でおこなうのが一般的です。
ただし、売主側の過失による瑕疵などがある場合は、売却前に修繕しておくケースもあります。
中古物件をリフォームせず売却して需要はあるの?
マンションを中心に、中古マンションをリノベーションする需要は増えてきています。
物件の状態や施工内容によっても異なりますが、専有面積70㎡前後のお部屋であれば、リノベーション費用は1,000万円前後が一般的となっています。
上記は駒込のリノベ済マンション(1978年築・リノベ―ション竣工年2024年11月)で、5,980万円(税込)となっていますが、同様の条件で新築(2025年築)とした場合、1
億42万円〜1億1,348万円が見込み価格となります。
つまり、リノベーション費用を含めても約半額で条件の良いマンションを購入できることになります。
ただし、戸建ての場合は一般的に木造なので、より構造が脆弱です。そのため、購入後リノベーションをする他に、解体して新たに建て直すのも一般的です。
家売却時にリフォームを施しても効果が出にくい理由
前述の通り、家売却時は事前にリフォームをしておく必要は原則ありません。
ただし、リフォームを実施するかどうかは売主や売主側仲介業者の戦略にも依るので、事前にリフォームを施すケースも少なからずあります。
しかしながら、家売却時のリフォームはマイナスに働いてしまうケースも多く、なかなか効果が見込めるものではありません。
理由1】希望通りリノベーションをしたい層が離れる
中古住宅を購入する層には、「物件を安く購入して、その後デザインなどを自分の希望通りにリノベーションしていきたい」という方も一定数います。
こうした方は、まだリフォーム・リノベーションされていない物件を安値で購入しようというと思っているので、売却前にリフォーム・リノベーションを実施すると購入価格が高くなる上、理想のデザインから離れてしまい、購入対象から外れてしまいます。
理由2】簡易的なリフォームでは解決しない状況が多い
売却前にリフォームを施せば高値で売れやすくなるのはその通りですが、状況によってはリフォームの意味がないケースもあります。
例えば、築40年の中古住宅の水回りなどをリフォームしたとしても、物件全体で耐震性の問題があるとしたら、建て直しレベルの大規模なリフォームが別途で必要になってきます。
このような状態であれば、簡易リフォームをしたことは購買意欲に影響しにくく、リフォームし損になりやすいです。
理由3】リフォームを施した家が売れ残る可能性もある
リフォームを実施すれば物件価値の上昇や状態の改善ができますが、それが購入を希望している人たちのお眼鏡にかない、実際に契約まで結びつく確証はありません。
購入する人は希望のエリア内の売り出し物件を比較して選ぶので、リフォーム後の物件より良い別の物件があれば、そちらに契約を申し込むようになるでしょう。
また、タイミングや外的要因によっても、売り出し物件に買い手が付かない可能性は十分あります。
売れ残ってしまった場合、いらない家に対してリフォームを実施したことになるので、単に無駄な出費が増えただけになってしまいます。
家を売る際にリフォームするメリット
家を売る際にリフォームするメリットを確認しましょう。
リフォームをすることで、家が売れやすくなることが多いです。
予算の範囲内であれば、ある程度のリフォームもおすすめです。
第一印象が大きくアップする
簡易リフォームを施すことで実用性が高まりますし、見栄えも大幅にアップします。
中古の家といっても購入希望者にとっては期待の新居ですから、シビアに内覧では見られます。
内覧をクリアできるかどうかが家売却の勝負の分かれ目ですから、直した後の状態を見せる上でも内覧前に準備するのがおすすめです。
買主が将来的なリフォーム費用を削減できる
中古の家が抱える欠陥は、そのまま放置していると見た目が悪いだけではなく怪我などのリスクにつながりかねません。
そのため、遅かれ早かれリフォームは実施する必要があります。
売主がリフォームをしないまま引き渡してしまったら買主は将来的にリフォーム代を捻出しなければいけないので、潜在的なコストになってしまいます。
特に築15~20年くらいの設備が故障しやすいタイミングで引き渡すなら、ある程度のリフォームはしたほうが良いこともあります。
家を売る際にリフォームをするケース
状況によっては、家を売る際にリフォームをした方が良いケースも存在します。
ケース1】既存の状態を活かしつつ住まいとして利用する場合
売却したい家の築年数がそこまで古くなく、買主も購入後に大きく状態を変更させることなく居住する前提で考えている場合は、売却前にリフォームをすることにより買い手が増えて売却価格も高値になる可能性は十分あります。
ただ、この場合も一般的に築年数経過による自然な劣化が理由の劣化は修繕する必要はなく、ドアノブが外れてしまっている、トイレのカギが閉まらない、ペットによるフローリングのひっかき傷があるといった場合にリフォームを検討することが多いです。
ケース2】広告写真や内覧の第一印象をアップさせたい場合
外観・内装の状態が見るからにボロボロで、広告写真に載せても買い手から敬遠されるような写りとなっていたり、内覧で実際に訪問した方のイメージと違ったりすることも多いです。
こうした状況だと一向に買い手が現れないので、壁紙の張り替えなど第一印象をアップさせるための簡易修繕を施すのも一つの手です。
家売却で有効なリフォーム以外の選択肢
家売却時にリフォームをおこなうケースは多くありませんが、第一印象をアップさせたり、欠陥を修繕したりすることは売却に有効です。
こうした部分を改善させて家売却を成功させるために、リフォーム以外の方法もいくつかあります。
ハウスクリーニング
ハウスクリーニング専門の業者に清掃を依頼し、新築同様の綺麗な状態まで掃除を依頼することも可能です。
ハウスクリーニングは、室内を全面的にクリーニングするプランと、部位ごとにクリーニングするプランに分かれていることが多いです。
各社の設定価格やクリーニングする面積によっても異なりますが、一般的には下記が費用相場となります。
掃除場所 | 依頼費用 |
---|---|
キッチン | 10,000~16,000円 |
換気扇 | 9,000~15,000円 |
バス | 11,000~16,000円 |
洗面所 | 7,000~10,000円 |
トイレ | 10,000~26,000円 |
全面的なハウスクリーニングはコストがかかり過ぎるということであれば、トイレ・バス・洗面所などの水回りは第一印象に影響しやすく、優先的に依頼するのがおすすめです。
ホームステージング
ホームステージングとは、家具の配置替えや小物の追加などで、住まいの印象を最大限アップさせる手法です。
東急リバブルなどの大手不動産会社が提供していることが多く、プロのインテリアコーディネーターによって適切なプランが作成されます。
ホームステージングをおこなうことで、広告写真を見た方の内覧申込率の向上や、内覧から購入申込までの割合の向上などが期待できます。
ホームインスペクション
ホームインスペクションとは、住宅の外回り・室内・床下・天井裏などの調査をおこない、住宅に問題がないかの検査結果を依頼者に提出するというものです。
ホームインスペクションをおこなうことで、この住まいには問題がないというお墨付きを貰えて、安心して買主に購入してもらえやすいです。
また、事前に物件の問題点を調査しておくことで、引き渡し後に瑕疵が発覚して、売主側に賠償請求が来るリスクを回避できます。(契約不適合責任)
家を売るときのリフォームは慎重に考えよう
中古物件のリフォームは、決しておすすめできるものではありません。
家をリフォームすると売却しやすいですが、費用面で損することは避けたいですよね。
不動産会社は市場の動向を理解しており、適切な価格設定や広告戦略を提案してくれます。
迷ったらまず不動産会社に相談しましょう。