インスペクションとは、建物の劣化・欠陥などの指摘箇所を住宅診断士によって検査してもらうサービスです。
購入時に気になる物件の診断をしてもらえば安心して居住できるのはもちろんのこと、売りたい物件も事前に検査してもらうことで、専門家からのお墨付きがもらえます。
ただ、インスペクションは日本に導入されたばかりのサービスで、基準や費用などの面でまだまだ不安が残る部分もあります。
今回は、インスペクションのメリットから活用時の注意点まで、詳しく解説していきます。
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インスペクションは近年シェアを拡大している
インスペクションは住宅について学んだ専門家が、物件のコンディションや補償内容、利用し続けられる時期などを診断する方法です。
インスペクションは特に中古住宅の売買時に実施されることが増えていきています。
安全な中古住宅の売買は政府に掲げていることもあり、不動産会社の中にも導入・サービス斡旋をするところが増えています。
インスペクションは比較的簡易な一次診断
従来にも物件の指摘箇所を検査するサービスは多くありますが、インスペクションはこうしたサービスに比べて、比較的簡易な一次診断サービスというイメージになります。
日本ホームインスペクターズ協会では、インスペクションを目視によるコンディション診断・報告と定めているように、雨漏りの形跡や基礎のズレなどを目視確認するのが主な内容になります。
一方で、特別な器具がないと分からないような内部の欠陥は診断できないと思っておいてよいでしょう。
第三者からお墨付きをもらいたいニーズがインスペクションの拡大を後押し
インスペクションは元々アメリカ発祥のサービスですが、日本に導入されて短期間で需要が拡大した背景には、もともと中古住宅の売買前に第三者からの検査を受けたいというニーズがあったからだと考えられます。
そもそも分譲マンションや一軒家を購入する際は、ほとんどの方が短期で売ることを視野に入れていません。
それでも売られている中古物件に対しては、いくら条件が良い物件でも「何か裏があるのではないか…」と訝しがられてしまうのはある意味当然でしょう。
中古住宅といっても購入のためには数百~数千万円という大金が必要になります。
欠陥住宅に大金を支払うことのないよう、第三者に検査してもらいたいと思うのは無理もないでしょう。
気軽に住宅の状態を確かめたいというニーズが、インスペクションの普及を後押ししているのです。
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インスペクションのメリット
インスペクションは事前に検査をしてトラブルを回避できるだけでなく、従来の検査サービスにはないメリットも存在します。
検査だけでなくアドバイスまでおこなってくれる
インスペクションは、検査からアドバイスまで一連の作業をおこなってくれます。
検査をして欠陥箇所が見つかったら、修理にかかる費用や最適な時期などまでアドバイスしてくれるので、その後の適切な対応ができます。
従来のように検査会社が検査をした結果を不動産会社経由で共有され、アドバイスを受けるという仕組みだと、実際に物件を見ていない担当者からアドバイスを受けるようになるので適切とはいえません。
検査だけでなく、改善までサポートしてくれるのがインスペクションのメリットです。
公平な立場で検査してくれる
インスペクションは必ず公正な立場で診断・報告をしてくれます。
絶対に買ったほうが良い/やめたほうがいいといった、売主や買主どちらかが有利になる主観的な発言や行動はおこなわないので安心です。
従来の中古売買は仲介業者の関連企業に診断を依頼することが多かったですが、仲介業者と近しいところに検査を依頼するとバイアスのかかった言動をされる可能性があるので注意が必要でした。
インスペクションは客観的な報告を受けられるので安心です。
追加で他のサービスの勧誘などを受けない
インスペクションは営業マンではないので、検査結果がどうであれ、リフォームやリノベーション、購入といった追加手続きに勧誘されることがありません。
アドバイスはあくまで依頼者が安全に生活するためのものであり、聞き逃してしまっても問題はないのでご安心ください。
インスペクションを挟むことで最安値でリフォームを完了できる
リフォーム業者も住宅検査をおこなっていますが、リフォームをさせたくて客観的でないアドアイスを受ける可能性もありますし、業者の利益になるようなパックプランでリフォーム箇所をまとめている可能性もあります。
事前にインスペクションをおこなえば、どの箇所を修繕すれば良いのかがピンポイントに分かるので、最安価で適切なリフォームを依頼することができます。
インスペクションが活用できる事例
インスペクションが活用できるのはどんな場面なのでしょうか。
中古住宅の売買を安全におこなうために活用
もっとも多いのが、安全に中古住宅の売買をおこなうためにインスペクションを活用するケースです。
購入者自らが依頼するケースがほとんどですが、売主側が事前にインスペクションをしておくことで、成約率をアップさせることも可能です。
個人だけでなく、法人の仲介会社が依頼者となってインスペクションを実施するケースも増えてきています。
瑕疵担保責任防止のために検査
インスペクションは、瑕疵担保責任の防止のためにも活用することができます。
瑕疵担保責任とは、中古住宅を引き渡してからの一定期間に見つかった隠れた欠陥の賠償金は売主に請求できる制度です。
中古住宅の欠陥は住んでいた人でも全て把握できる訳ではなく、引き渡し時に瑕疵担保責任を不安視するケースは多いです。
瑕疵担保責任が終われるのを防ぐためにも、インスペクションは活用できます。
住宅ローン審査の前にインスペクションを活用する
住宅ローンの審査では、担保になる物件に欠陥等の問題がないか、金融機関に厳しく見られます。
住宅ローンを借りる際も事前にインスペクションを実施することで、審査対策になります。
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インスペクションにかかる時間は2~3時間
インスペクションにかかる時間は2~3時間ほどです。
物件内の目視確認の他にも、敷居や境界線のチェックもおこなってくれるので、予想以上に時間がかかってしまいがちです。
また、上記の数字はだいたい30坪ほどの住宅診断にかかる時間なので、面積が異なる場合は時間も前後すると考えておいてよいでしょう。
インスペクションにかかる費用は5~6万円ほど
インスペクションにかかる必要は5~6万円ほどで、これは定義通り、目視による一次診断を依頼する際にかかる費用となります。
ただし、定義通りの診断に加えて床下や屋根裏の検査、または機材を使ったより精密な検査を依頼することもできます。
この場合は、トータルで10万円以上の費用がかかるようになります。
インスペクションを依頼する際の注意点
インスペクションは始まったばかりのサービスということもあり、利用する際にはいくつかの注意点が存在します。
どの業者を選ぶかが重要
精度の高いインスペクションを実施するためには、どの業者を選ぶかが重要になります。
インスペクションには統一の基準があり、一級建築士のような公共性の高い資格はまだありません。
日本ホームインスペクターズ協会が実施しているJSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)資格試験というものがあるので、この試験に合格しているかどうかが一つの選ぶ基準にはなってくるでしょう。
取引相手にインスペクションを嫌がられる場合もある
同じ住宅の購入を希望する2人のうち、片方だけがインスペクションを希望している場合、早期成約を希望している売主から嫌がられてしまう可能性もあります。
インスペクションは時間がかかってしまうので、相手が待ってくれるとは限らないのです。
不動産取引は売主・買主間の合意が何より大切ですから、相手が診断を希望しない場合は実施が難しくある可能性もあります。
インスペクションを活用したほうがお得とは限らない
インスペクションは費用がかかる一方、必ずしも診断したことがプラスに働くとは限りません。
それでも、万が一のリスクを避けるために、インスペクションを事前に実施しておくのは効果的です。
不動産取引は失敗したリスクも高額になることを考えると、積極的に活用することをおすすめします。