不動産売却は複雑な手続きであり、初心者にはわかりにくいものです。
その上、税金や費用などのお金が絡んでくると更に複雑になってしまいます。
そのため、不動産とお金関係の情報は不確定なものも多く、特に「不動産を売ると、年金は減額される」という噂は頻繁に聞かれます。
果たして、実際のところはどうなのでしょうか。この記事で解説していきます。
意外と知らない年金の仕組み
不動産売却に絡めて理解する前に、まずは構造が複雑な年金制度を理解しましょう。
基本的にはすべての国民が加入する国民年金と、主にサラリーマンが加入する厚生年金に大別され、加入者が65歳になったときに積立金を受給する仕組みとなっています。
代表的なものとしては上記の2つですが、その他にも60歳を超えても働いている方が受給できる在職老齢年金、特定の障害があると国に認定された方が受給できる障害年金などがあります。
不動産売却で年金は減額されない
結論から言うと、物件の売却によって減額されるということはありません。
不動産売却をおこなうと売り手の収入が一時的にアップするわけなので、個人の年収をもとに算出される国民健康保険料などは値上げをしますが、年金はこのような算出方法をとってないので減額はされません。
税金、費用、手数料といった不動産売却で発生する出費や保険料などは、それぞれ性質や仕組みが異なります。
これらを一緒くたにして考えていると、こうした大きな勘違いが起こるので注意をしましょう。
在職老齢年金も不動産売却の影響を受けない
前述の通り、年金は基本的に年収をもとに算出されないですが、在職老齢年金の場合は会社の給与額が支給額に大きく影響します。
そのため、不動産売却によって減額されるという誤情報も出回っていますが、そんなことはありません。
これは勤めている企業の給与・賞与を参考に算出されるので、副収入を得ても減額・支給停止を受けることはないです。
これも、副収入まで年収に加える国民健康保険料や、譲渡所得税と混同していることから起こる、よくある勘違いですね。
障害年金は不動産売却による減額の可能性あり
不動産を売って利益が出ても減額されることはありませんが、障害基礎年金という20歳前に診断された障害に応じて受給されるものに関しては減額の可能性があります。
これを防ぐためには、不動産の所有者を移すといった対策をおこなうと良いでしょう。
年金生活の方が不動産売却する際の注意点
年金生活者が不動産を売却する際には、特に金融面、税金面、法律面など様々な要素を考慮する必要があります。
その中でも特に注意すべき3つのポイントについて以下に詳しく説明します。
1.資産価値の適切な評価
売却すべき不動産の市場価値を正確に把握することが重要です。
不動産価値は、その位置、築年数、建物の状態、近隣の相場などによって大きく変動します。
自分で評価するのではなく、不動産専門家や不動産査定サービスを利用して、適切な価格を見積もることが必要です。
年金生活者が自身の資産を適切に評価しないと、適切な価格で売却できずに損をする可能性があります。
2.税金の影響
不動産の売却益は、所得税および住民税の対象となります。
売却によって得られる利益(売却価格から購入価格や改良費用を差し引いた金額)に対して税金が課されるため、税金の影響をしっかりと理解しておくことが重要です。
特に、高額の売却益が見込まれる場合や、複数の不動産を所有している場合などは、税理士や専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。
3.売却後の生活設計
不動産を売却した後の生活設計も重要なポイントです。
売却した不動産が自宅であった場合、新たな住居をどうするか、引っ越し費用はどう捻出するかなどを考える必要があります。
また、売却によって得た資金の運用計画も必要です。
資金をどのように運用し、年金収入以外の生活費をどう補うかなどを考慮し、適切な計画を立てておくことが大切です。
譲渡所得税は課されるので要注意
不動産売却にかかる費用は、発生要件がそれぞれ微妙に異なるため、算出が非常に面倒です。
中でも特に注意したいのが、譲渡所得税の存在です。
この譲渡所得税は売却によって利益が出たときに納付しなければならない税金で、以下の式で表せます。
{物件価格-(売り手が購入した際の価格+減価償却費+譲渡にかかる諸費)}×税率
例えば、不動産を4,000万円で売却した場合、大体700~800万円ほどとなります。
かなりの出費ではありますが、マイホーム(家+土地)を売却するときは3,000万円の特別控除を受けることができるので、安心ですよ。
特別控除の意味を知っておこう
ただ、この特別控除が思わぬ勘違いを招くということも良くあります。
しっかりと理解してほしいのは、特別控除は、譲渡所得税の負担を控除したのであり、譲渡所得税の発生を無しにしたわけでも譲渡所得自体を控除したわけでもないということです。
そのため、たとえ控除が発生しても国民保険料の値上げは起こりますし、反対に年金の支給額に変更はありません。
不動産売却にかかる費用はどれも高額なので、勘違いをして資金準備を怠っていると支払いきれない可能性が高いです。
各費用の特徴や支払いタイミングを理解し、無理のない資金計画を立てておきましょう。
それぞれの費用の性質を理解すれば勘違いは解消できる
前述の通り、不動産売却をしても年金が減額されることはありません。
そうと分かれば受給者でも安心して物件を売り出せますよ!といいたいところですが、このように知識を一つずつ増やしていくのは効率が悪いですし、そもそも上記のような勘違いをしていたことに問題があります。
税金や保険料は国に支払うものなので収入が増えれば納付額が増えるのも分かりますが、年金は若いうちに積み立てて老後に少しずつ受給するというものなので、収入に応じて支払いを増やしても意味がありません。