不動産の価値を正確に把握するために使われるのが「不動産鑑定」です。
不動産鑑定士は国家資格を持つ専門家であり、その評価は法律に基づいた公的根拠を持ち、裁判・税務・企業会計などの証明資料として活用されます。
不動産会社による無料査定との違いや、どのような場面で不動産鑑定が必要になるのかを理解しておくことで、大きな損失やトラブルを防ぐことにもつながります。
この記事では、不動産鑑定の定義から評価方法、費用相場までを詳しく解説していきます。
不動産鑑定とは【定義】
不動産鑑定士に依頼して算出する価額を、不動産鑑定評価と呼びます。
【第一章第二条】この法律において「不動産の鑑定評価」とは、不動産(土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利をいう。以下同じ。)の経済価値を判定し、その結果を価額に表示することをいう。
広義の意味では不動産会社が売買時におこなう無料の価格査定なども入りますが、一般的には不動産鑑定士(不動産鑑定業を生業としている人)が算出した鑑定評価のみを指します。
不動産鑑定は、不動産の経済価値を専門家が判定して、それを様々な場面で活用することを目的としています。
不動産鑑定をおこなう意義
市場における不動産の価値は下記の要因から、公平な価格を算出するのが難しくなっています。
- 個別性が高く、価値を単純に比較できない
- 取引市場が狭く、かつ法制度などで制限されている
一般的な商品であれば市場が形成されて公正な金額設定がなされるのですが、不動産の場合は上記の理由から市場のメカニズムが上手く形成されにくい面があります。
そのため、不動産の時価を公正に算出したい時は、「もし正常に市場が形成されていた場合、不動産の価値は金額換算でいくらになるか」という手法で評価額を計算する不動産鑑定が有効です。
日本国内の地価は不動産鑑定によって決まっている
日本国内の地価を表しているのが、公示地価(基準地価)という評価額です。
この価格は不動産の売却価格や不動産にかかる固定資産税、相続税の評価額の基準にもなります。
公示地価は国・自治体が決めた1地点につき、1人以上の不動産鑑定士が毎年7月1日時点の価格を算出(公表は毎年9月ごろ)して決定をしています。
つまり、不動産鑑定士による鑑定評価によって地価や固定資産税など多くのことが決まっており、言い方を変えれば不動産鑑定は最も法的に納得のいく公平性の高い方法だといえます。
個人・法人も問題解決のために不動産鑑定を利用することがある
一般的に、個人や法人が不動産鑑定を依頼するケースは多くありません。
ただ、下記のように不動産が原因で係争が発生している場合は、不動産鑑定をして問題解決を図ることがあります。
- 離婚時の財産分与について係争があり、公正に問題を解決するために、法的にも納得できる基準価格が必要
- 遺産の取り分を巡って係争があり、全員が納得いく分配をするために、法的にも納得できる基準価格が必要
- 法人間で係争があり、問題解決のために、法的にも納得できる基準価格が必要
上記のようなトラブル状態に対して、法的に認められた正しい価格を算出することで公正な解決をすることが可能です。
不動産鑑定と不動産会社による無料査定の違い
不動産会社が提供する無料査定は、あくまで売却を想定した価格(市場価格)の目安を示すものです。
一方で、不動産鑑定士による評価は市場原理・法的枠組み・統一された鑑定手法に基づいて算出される、証明力のある価格となります。
一方、不動産会社による無料査定はあくまで見積もりであり法的根拠がないものなので、例えば自社の営業力も加味して算出した価格なのか、適正価格ではなく担当者の希望的観測も含まれているのか、業界内の情報共有なども価格設定に影響しているのかなどは不動産会社によって異なるケースがあります。
比較項目 | 不動産鑑定 | 無料査定 |
---|---|---|
評価主体 | 国家資格の不動産鑑定士 | 不動産会社の営業担当など |
法的根拠 | 鑑定評価に関する法律に基づく | 特に法的根拠なし(市場価格の分析に基づく) |
主な目的 | 証明資料(税務・裁判・会計)など | 売却提案・営業用 |
価格の信頼性 | 公的に通用する | 業者や物件によってばらつきあり |
費用 | 有料(数万〜数十万円) | 無料 |
このように、目的や制度的背景が大きく異なるため、使い分けが非常に重要です。
不動産を売るだけなら無料査定で十分な場合もありますが、贈与・相続・裁判資料・企業財務・税務処理などのシーンでは、不動産鑑定の方が適しています。
不動産売却では無料査定が主に利用される
不動産売却の見積もりでは、不動産会社の無料査定が主に用いられます。
不動産会社の見積もりは鑑定評価にはない市場性データ※が考慮されることがあります。
例えば、ネットの口コミの良し悪し・心霊スポットの近くなど心理的な噂・隣の駐車場に学生がたむろっていてうるさい…といった情報は、鑑定評価では考慮されませんが不動産会社の無料査定では考慮されます。
- 西向き玄関など、風水的に敬遠される可能性のある物件を価格調整する
- 事故物件であるという噂が広まっているため、買い渋りを考慮して価格を値下げする
不動産の仲介売買は個人・法人の第三者とマッチして買ってもらうことがゴールなので、根拠に乏しくても買い渋りや人気の集中に繋がるような要素があれば価格に考慮されます。
厳密に言うと、不動産鑑定では市場性が影響しない訳ではありません。ただし、不動産鑑定で考慮されるのはあくまで客観的な根拠があるデータであり、客観性に乏しいもの・解釈の余地のあるものは考慮されません。
項目 | 考慮されるもの | 考慮されないもの |
---|---|---|
学区 |
|
|
治安 |
|
|
不動産鑑定が必要となるケース
不動産鑑定は、必ずしも日常的に必要なものではありません。
しかし、資産評価の正当性が重要になる場面では、無料査定ではなく不動産鑑定士による評価が求められます。
ここでは、不動産鑑定が活用される典型的なケースを紹介します。
法人・公的な場面で不動産鑑定が使われる例
ケース | 不動産鑑定の目的 |
---|---|
法人と経営者間の不動産売買の実施 | 内部取引による税務リスク(過少評価や利益供与)を回避するため |
不動産の証券化の実施 | REIT(不動産投資信託)などで投資対象資産の適正評価を行うため |
税務署や裁判所への提出資料の作成 | 資産価値の立証・税務調査・訴訟時のエビデンスとして |
企業会計における時価評価の実施 | 金融商品会計基準に基づく保有不動産の「公正価値」算定のため |
これらのケースでは、「○○円で売れるか」ではなく、時点における経済的価値を正確かつ客観的に評価することが目的です。
そのため、不動産鑑定士の鑑定評価書が、第三者への証明力を持つ唯一の資料として活用されます。
個人が不動産鑑定を依頼する例
個人が不動産鑑定を利用する機会は限られますが、以下のようなケースでは無料査定ではトラブルや損失を招くリスクがあります。
ケース | 不動産鑑定の目的 |
---|---|
複数名義の不動産の贈与・売買 | 持分や相続割合に応じた価格算定が必要 |
離婚時の財産分与 | 公平な資産分割のため、客観的価値を明示する必要がある |
相続財産の分割調整 | 相続人間での不動産価値の算定を巡る対立を防止 |
相続税の節税対策 | 路線価よりも鑑定価格が低い場合、税額圧縮が可能になることも |
たとえば相続時、不動産評価が曖昧なまま分割協議を進めると、後に「損をした」「不公平だ」といった争いにつながる可能性があります。
不動産鑑定士による評価書を活用することで、感情論ではなく数値的根拠に基づいた話し合いが可能になります。
また、節税対策としても、鑑定価格を採用できるケースがあるため、税理士と連携しての活用が効果的です。
不動産鑑定を無料査定で代替できるケース
離婚による財産分与や遺産の分割協議では不動産鑑定を依頼することがマストというイメージもありますが、実際は無料の不動産査定でも問題ないことがあります。
目的・状況 | 無料査定で代替可能 | 不動産鑑定が望ましい |
---|---|---|
自宅の売却予定がある | ◯ 不動産会社による売却査定で十分 | ✕物件価値を評価することは出来るが、市場性の考慮が足りない+売却時は必ず不動産会社の査定が必要 |
離婚による財産分与 | △ 夫婦間で合意できる場合は有効(係争がない場合) | ◯ トラブル回避・証明資料として必要な場合は必須 |
相続財産の分割協議 | △ 相続人全員が納得できる場合は有効(係争がない場合) | ◯ 金銭的公平性・遺産分割調停の証明が必要な場合は必須 |
相続税の申告・節税対策 | ✕ 代替不可 | ◯ 路線価と時価に差がある物件など |
親族・会社間の不動産売買 | ✕ 代替不可 | ◯ 税務署対策・適正価格の立証が必要 |
企業会計・財務報告 | ✕ 代替不可 | ◯ 金融商品会計基準に対応するため |
たとえば離婚による財産分与の場合、双方が価格に納得していれば無料査定ベースでも問題ありません。
ただし、後から「評価が不公平だった」と紛争化する可能性がある場合は、不動産鑑定士による客観的評価を取得する方が安心です。
また、相続においても、評価額の高低によって納税額や分配額が変わるため、誤差が許されないケースでは不動産鑑定が推奨されます。
不動産鑑定額の元となる6つの鑑定評価
不動産鑑定士が算出する鑑定評価は、何を目的とするかによって6つの評価に分かれます。
- 地価公示
- 相続税路線価評価
- 固定資産税標準地評価
- 売買見積もり価格・家賃収益の見積もり価格
- 資産評価
- 担保評価
単に「いくらで売れるか」という売買価格だけでなく、税務・会計・資産運用・担保設定など、さまざまな用途ごとに異なる評価軸が設定されています。
地価公示
地価公示とは、国土交通省が毎年公表する「標準地」の土地価格です。
全国約26,000地点の標準地を対象に、不動産鑑定士が1月1日時点の評価を行い、その結果が3月に公表されます。
公示地価は、公共用地の取得・不動産売買・鑑定評価の基準として広く活用されます。
相続税路線価評価
相続税路線価評価は、国税庁が公表する路線価をもとに、相続税・贈与税の算定基準となる土地の評価額を求める手法です。
土地の評価額=路線価 × 面積(+補正)という形で算出されますが、実際の土地形状や道路の影響を反映する補正計算が必要になります。
不動産鑑定士は、この補正も含めてより精緻な相続税評価を実施します。
固定資産税標準地評価
固定資産税標準地評価は、地方自治体が固定資産税を課税する際の基準価格として使用されるものです。
地目(宅地・農地・山林など)ごとに、評価倍率方式または比準方式によって評価されます。
実勢価格よりも低く、一般的には時価の7割前後となることが多いです。
売買見積価格・家賃収益見積価格
売買見積価格や収益見積価格は、不動産を売却・賃貸した場合に見込まれる金額を評価するものです。
不動産会社による査定と似ていますが、鑑定士による評価はより制度的根拠と公的性格が強く、証明資料として使える点が異なります。
投資用不動産の場合は、年間家賃収入や利回りなどから収益還元法によって算出されます。
資産評価
資産評価は、企業会計において保有不動産の時価を算出するための評価です。
企業が財務諸表に記載する際や、M&A、企業再編において必要となることがあります。
主に以下の3つの基準が用いられます。
- 原価基準:取得額から経過年数による減価を控除
- 時価基準:市場価値に基づく現在価格
- 低価基準:上記2つのうち低い方を採用
担保評価
担保評価は、金融機関が融資のために担保不動産の評価額を求める際に使われるものです。
担保評価額=時価 × 掛目(安全率)という形で計算されますが、物件の種類や担保の流動性・市場性などによって設定されます。
担保評価は、住宅ローン・事業融資・担保設定登記などの場面で重要な指標となります。
不動産鑑定の3つの方法
不動産鑑定では、対象不動産の特性や利用目的に応じて、以下の3つの評価手法のいずれか、または複数を組み合わせて評価を行います。
それぞれの評価方法の基本的な仕組みと、どのような場面で使われるかを解説します。
原価方式(積算価格)
原価方式は、同じ建物を新築した場合に必要な再調達コストをもとに評価する方法です。
たとえば、再調達価格が2,000万円で耐用年数が40年、築20年であれば、2,000万円 × (20/40)=1,000万円という形で評価されます。
原価方式は、築年数が比較的新しい住宅や再建築がしやすい戸建ての評価でよく使われます。
比較方式(比準価格)
比較方式は、周辺で過去に取引された似た物件の価格を参考にしながら評価額を求める方法です。
実際の売買価格に対して、立地・面積・築年数・日照条件などの個別事情を補正し、対象不動産の適正価格を推定します。
比較方式は、実勢価格(時価)に近い価格を把握するための標準的な方法として広く用いられ、売買・贈与・相続など幅広い場面で使われます。
収益方式(収益価格)
収益方式は、その不動産が将来生み出すと見込まれる収益(インカムゲイン)をもとに、現在の価値を算出する手法です。
主に賃貸アパート・オフィスビル・商業施設など、収益を目的とした投資用不動産で用いられます。
最も単純な計算式(直接還元法)は以下のとおりです。
たとえば、年間家賃収入が120万円、還元利回りが6%であれば、評価額は120万円 ÷ 0.06 = 2,000万円となります。
この評価方法は、収益性と市場の期待利回りに基づいた合理的な価格を示すため、不動産投資判断や証券化評価でも活用されます。
不動産鑑定で考慮される3つの要因
具体的には、大きく分けて以下の3つの観点が評価額を左右する重要な要因です。
- ① 市場・経済・社会情勢などの「外部環境」
- ② 物件が立地する地域の「エリア特性」
- ③ 土地・建物そのものの「個別条件」
市場・経済・社会情勢など
不動産の価値は、景気・人口動態・金利・税制・災害リスクなどの影響を受けて日々変動します。
たとえば以下のような要因があります。
- 周辺地域の人口増減・高齢化
- 都市計画・インフラ整備の有無
- 災害リスク(洪水・地震・液状化など)
- 金融緩和・金利変動によるローン需要
- 不動産市場の取引活発度
- 税制改正や優遇措置の影響
コロナ禍では、観光エリアの収益物件が大幅に下落するなど、社会情勢の変化が鑑定価格に直接影響する事例も多数あります。
エリアの特性
立地している地域そのものの特性も、評価額に大きな影響を与えます。
以下のような点が主にチェックされます。
- 交通の利便性:最寄り駅までの距離やバス路線の充実度
- 生活環境:学校・病院・スーパーなどの周辺施設
- 用途地域:住居専用地か商業地かなど、建築の制限
- 治安や騒音・臭気などの生活影響
また、工業地域や農地などの場合は、道路幅・給排水インフラ・日照条件など、用途に応じた特性も評価対象になります。
土地・建物の特性
土地・建物自体が持つ条件も、最終的な価格に大きく影響します。
主な評価要素は以下の通りです。
- 土地の形状:整形地(四角形)か、不整形地か
- 接道状況:公道に2m以上接しているか、再建築可能か
- 建物の築年数・構造・延床面積
- 建物の劣化状況・リフォーム歴
収益物件の場合は、空室率・家賃設定・賃貸契約の内容なども評価に影響します。
同じ場所にある物件でも、これらの個別要素によって数百万円単位で価格が変わることも珍しくありません。
不動産鑑定を依頼する際の費用相場
不動産鑑定は国家資格を持つ専門家による評価であるため、無料ではありません。
依頼する内容や物件の種類によって異なりますが、一般的には数万〜数十万円程度が費用の目安となります。
用途別の相場目安
不動産鑑定の費用は、以下のような目的別に大まかな相場があります。
依頼目的 | 相場の目安(税込) |
---|---|
個人間売買・離婚による財産分与 | 10万円~20万円程度 |
相続税・贈与税のための証明資料 | 15万円~25万円程度 |
法人・企業会計での評価 | 20万円~40万円程度(規模に応じて) |
収益物件・商業施設・開発用地 | 30万円~100万円以上(個別見積) |
特に収益不動産や複雑な権利関係が絡む物件は、調査や報告書のボリュームが多くなるため、費用も高くなる傾向があります。
鑑定費用の例(評価額ごとの目安)
以下は、横浜市を拠点とする不動産鑑定事務所の費用例です(建物+土地一体の場合)。
評価対象額 | 戸建て・宅地の鑑定評価 |
---|---|
500万円以内 | 約24万円 |
1,000万円以内 | 約27万円 |
2,000万円以内 | 約35万円 |
3,000万円以内 | 約40万円 |
4,000万円以内 | 約45万円 |
5,000万円以内 | 約50万円 |
※出典:株式会社横浜不動産鑑定 公式HP
費用が変動する主な要因
鑑定費用は、以下のような要素によって上下します。
- 対象物件の種類(宅地、農地、収益物件など)
- 対象面積や規模の大きさ
- 評価目的(税務・売買・訴訟用など)
- 報告書のボリューム(簡易鑑定 or 詳細評価)
- 現地調査の要否・調査範囲
正式な費用は見積依頼後に提示されるのが一般的です。
目的と予算を明確に伝えた上で、複数事務所に相談して比較するのがおすすめです。
不動産鑑定の3つの費用形態
不動産鑑定の費用は、事務所や案件によって異なります。
これは、鑑定報酬が「定価制」ではなく、報酬体系に柔軟性があることが背景です。
主に以下の3つの費用形態が存在し、依頼内容や物件特性に応じて使い分けられています。
報酬基準型
国土交通省がかつて定めていた「不動産鑑定報酬規程」に準じて、評価額・物件の種類・規模などに基づいて報酬を算出する方法です。
現在はこの報酬規程は廃止されていますが、多くの鑑定事務所では基準額をもとに価格テーブルを設けて運用しています。
たとえば、評価額が2,000万円の住宅であれば「基本料金+評価額に応じた加算」で料金が決まる仕組みです。
積み上げ型
「現地調査費用」「資料取得費用」「報告書作成費」など、個別の作業単位に価格を設定し、それらの合計で費用が決まる方式です。
内容に応じて柔軟に対応できるため、簡易な評価や一部資料だけが必要なケースにも向いています。
報告書のページ数や評価方法の数が増えるごとに、費用が加算されるのが一般的です。
定額型
評価額や物件の種類にかかわらず、一律料金で鑑定を行うパッケージ型の料金体系です。
「簡易鑑定一式●万円」「相続用鑑定書●万円」といった定額プランを設定している事務所もあります。
事前に内容をよく確認し、評価方法の制限や報告書のボリュームが簡易なものかどうかも合わせてチェックすることが重要です。
不動産鑑定評価の流れ
不動産鑑定を依頼した場合、どのようなステップで評価が進むのかを把握しておくことで、手続きの見通しや準備物が明確になります。
以下では、一般的な不動産鑑定の流れを6つのステップに分けて解説します。
- Step1:依頼・ヒアリング
- Step2:契約締結
- Step3:現地調査
- Step4:資料・データ収集
- Step5:評価方法の選定と価格算出
- Step6:報告書の作成・納品
【Step1】依頼・ヒアリング
まずは鑑定士または鑑定事務所に連絡し、評価したい不動産の種類・所在地・評価目的を伝えます。
この段階で、鑑定士からおおよその費用感・必要書類・スケジュールの説明を受けるのが一般的です。
【Step2】契約締結
見積金額や業務内容に納得できれば、正式に鑑定業務委託契約を結びます。
契約書には、評価対象・目的・報告書の納期・報酬額などが明記されます。
【Step3】現地調査
鑑定士が現地を訪れ、建物の外観・老朽度・立地・道路との接道・近隣環境などを目視・写真で確認します。
土地のみの場合でも、形状・高低差・周辺施設・インフラの整備状況を調査します。
【Step4】資料・データ収集
評価に必要な以下のような公的資料・周辺データを取得・整理します。
- 登記簿謄本、公図、地積測量図
- 固定資産評価証明書、納税通知書
- 周辺の地価公示、実勢価格、家賃相場など
一部資料は、依頼者が提出するケースもありますが、鑑定士側で代行取得が可能な場合もあります(別途費用が発生することあり)。
【Step5】評価方法の選定と価格算出
収集した情報をもとに、原価方式・比較方式・収益方式のいずれか(または複数)を選択し、鑑定評価額を算出します。
評価目的や不動産の特性によって、適切な手法が使い分けられます。
【Step6】報告書の作成・納品
評価結果を踏まえて、不動産鑑定評価書として報告書を作成します。
この報告書には以下のような情報が明記されます。
- 対象不動産の概要(図面・写真・登記情報)
- 評価手法とその根拠
- 価格算出の過程と結論
報告書はPDFまたは製本冊子として納品されるのが一般的です。
不動産鑑定に関するよくある質問
不動産鑑定を依頼するには何が必要?
- 固定資産税の納税通知書または評価証明書
- 登記簿謄本(全部事項証明書)
- 公図、地積測量図、建物図面
- (収益物件の場合)賃貸借契約書、レントロール
事務所によっては、鑑定士側で資料取得を代行してくれる場合もあります(別途費用が発生することあり)。
提出書類は評価目的や不動産の種別によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
不動産鑑定を依頼してから完了までにどれくらいかかる?
ただし、調査範囲が広い・書類が揃っていない・収益物件でデータ量が多いなどの場合は、1か月以上かかるケースもあります。
「急ぎで評価書が必要」という場合には、事前相談で納期を交渉することも可能です。
遠方の不動産でも依頼できる?
全国対応の鑑定事務所や、ネットワークを持つ鑑定士事務所であれば、他県の物件でも依頼可能です。
ただし、現地調査にかかる交通費や宿泊費などを別途請求される場合があるため、事前に費用内訳を確認しましょう。
鑑定結果や調査内容が周囲にバレることはある?
たとえば、離婚や債務整理などセンシティブな理由での依頼であっても、周囲に知られる心配は基本的にありません。
ただし、物件所有者以外が無断で依頼する場合、現地調査が制限されることがあり、
その結果鑑定精度が下がる・報告書に注釈がつくこともあります。
鑑定評価額の効力はどれくらい続く?
そのため、一般的には「調査日から1年以内」が有効目安とされています。
ただし、市況や地価が急変していない場合は、半年〜1年程度であれば証明資料として使えるケースもあります。
逆に、地価下落・災害発生・法改正などがあった場合には、再評価が必要になる可能性がある点にも注意が必要です。
不動産鑑定を依頼すべきシーンを把握しておこう
ここまで解説してきた通り、不動産鑑定は不動産の価値を公的に証明したいときに必要となる制度です。
「売却価格の目安を知りたい」「簡単な資産把握をしたい」という程度であれば、不動産会社の無料査定でも十分対応できるケースもあります。
ただ、特に相続・贈与・離婚・法人内売買・担保設定など、法的・金銭的な責任を伴うケースでは、不動産鑑定士による評価を取得しておくことでトラブルを防げる可能性が高くなります。
正確な情報と専門家の視点を活用し、自分や家族にとって最も適した判断を行いましょう。