土地売却では、圧縮記帳という言葉が登場します。
税制上の言葉であり、不動産売買の中で最も理解が難しい領域でもあります。
不動産と税に関わる用語は難易度が高く、専門性がないとわからないものでもありますが、これらの概念を理解しないことには不動産売却を安心しておこなうことはできません。
この記事では、土地売却で必要な圧縮記帳とはいったいどんなものなのかを解説します。
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圧縮記帳は土地売却のテクニックの1つ
圧縮記帳とは、固定資産を購入・売却した場合、その購入/売却金額から補助金の額を控除して購入価額とすることです。
土地売却に適用する場合は、利益に譲渡所得税の課税分を計上することで税金の発生を実質なくしてしまうというケースがメインとなります。
これを利用することで、一時的な所得の増加によっておこなわれる課税を繰り延べることができます。
これをすることで税金の支払いを遅らせることが可能です。
とはいえ、土地を相場以上の高額で売却できれば、こうしたテクニックを使う手間も省けます。
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圧縮記帳によって土地売却の税を後回しに
前述の通り、土地売却時に圧縮記帳を利用すると、帳簿の上の税金は0円となります。
ただ、これで土地売却にかかる税金の支払いがなくなったわけではなく、支払いが後回しになったということです。
圧縮をした場合は、固定資産(この場合は土地)の取得額を同時に減額します。
具体的な圧縮記帳の活用法
ここからは、土地売却時にこの方法を使ったときにどのような結果となるかを説明します。
たとえば、簿価が1,000万円の土地を時価3,000万円で売却できたとします。
このお金を元手に3,000万円の不動産を購入したとすると、計算上は3,000万円-3,000万円=0となります。
企業などの会計ではこのような形が取られますが、これを圧縮して、2,000万円の圧縮損と税務上では計上することができます。
最初の計算方式では、土地を売ることで2,000万円の利益が発生しているので、かなりの額の譲渡所得税が発生します。
これが圧縮後は2,000万円の損を発生させているので、利益と合わせると損益が0となり、譲渡所得税が発生しないということになります。
税務仕訳と会計の違い
このように、圧縮記帳によって計算できるのが、税務仕訳と言います。
その一方で、上記の3,000万円-3,000万円=0のように正確な金額で計算するのが企業などの会計です。
これら2つを比較すると、以下のようになります。
現金または預金 | 購入した土地 | 売却益 | |
---|---|---|---|
会計 | 4,000万円 | 3,000万円 | 1,000万円 |
税務 | 4,000万円 | 1,000万円 | 3,000万円 |
上の表を見ると、税務上では財務上に比べて利益が2,000万円多く計上されることになり、更に圧縮記帳によって消滅した2,000万円の利益が課税されます。
具体的な圧縮記帳の種類
圧縮記帳は実質的には課税の繰り延べ処理ということがわかったでしょうが、利用できる状況は限定されています。
主なケースは以下の6つとなっております。
- 国庫補助金で固定資産を取得した場合
- 工事負担金で固定資産を取得した場合
- 保険金などで固定資産を取得した場合
- 交換により資産を取得した場合
- 収用などにより代替資産を取得した場合
- 特定の資産買い換えをおこなった場合
これらの選択肢は主に法人向けのもので、このうち一番下の「特定の資産買い換え」が、個人間の土地売買には当てはまります。
つまり、圧縮記帳は土地を売ったお金で更に他の不動産を買い換える場合に利用できるということです。
圧縮記帳をおこなうときの注意点
圧縮記帳には税金の支払いを遅らせるというメリットがありますが、デメリットもあります。
土地を売り、そのお金で買った土地を再び売るときに、繰り越していた税金を支払うことになるのですが、このときの課税額は通常よりも多くなっています。
圧縮記帳をすることで特別控除が利用できるようになり、課税の総額はおさえることが可能ですが、支払いのタイミングが大きくずれるので、しっかりとした資金計画を組まなければなりません。
土地の買い換えは慎重に
このように、土地にかかる税金の支払いを後回しできたからといって、お得になるということではありません。
そもそも、不動産を何回も買い換えることで利益を上昇させていくのは至難の業で、大抵の場合は利益はどんどん落ちていきます。
そうした矢先に送らせていた税金の支払いが入ってくるので、いくら総額で安くなったとはいえ、負担は上昇する可能性のほうが高いです。
何でもタイミングを遅らせれば良いというものではないので、気を付けましょう。
利用時には税理士に相談を
圧縮記帳は土地売却をおこなう法人が盛んに利用する方法ですが、個人でも出来ないことはありません。
ただ、仕組みが複雑なこともあり、なかなか実施者はいないのが現状です。
もし、実際に圧縮記帳を希望している場合は、記帳の処理なども専門にしている司法書士への相談を必ずおこないましょう。