土地の上に建物を建築しようとする際、造成工事をしなければ建物を建築できない場合があります。
造成工事は土地の用途を変えて建物を建てられるようにすることですが、造成工事について分からないという土地の所有者がほとんどです。
そのまま工事を進めていこうとすると、「どのような工事の方法があるの?」「どれぐらいの費用や期間がかかるの?」という疑問にぶつかることになります。
そこで造成工事を検討している人のために、工事の種類や方法、かかる費用や期間について解説していきます。
造成=土地の用途を変えること
造成工事とは土地の用途を変更し、その用途に合った土地にすることをいいます。
例えば住宅を建てたいのに土地が田んぼや畑だと住宅に適した土地だとは言えません。
土地を宅地へと変更させることで、住宅を建てることができます。
しかし造成工事は法律によって規制されている部分も多いため、自由に個人で進めるこはできません。
そのため造成工事についての理解を深めることが重要です。
造成工事の種類
造成工事と一言で言ってもその種類には様々なものがあります。
それぞれ適しているケースや特徴が異なるため、用いる際には注意が必要です。
整地による造成
人の手が施されていない土地のほとんどは、傾斜や凹凸があります。
そのような土地を平らにすることが整地です。
宅地として造成する際にも適している方法で、土地の資産価値を高める効果もあるため住宅を建てる際に必要な造成方法になります。
伐採や防草による造成
どんな土地の利用をする時でも木や草は邪魔なものです。
そのため造成工事ではこれらの木や草を伐採もしくは防草する必要があります。
木や草はどんなに抜いたところで生えてくることがほとんどなので、根こそぎ抜いたり、防草シートなどを使ったりする方法が有効的です。
地盤の改良による造成
軟弱な地盤に建物を建築してしまうと、地盤沈下や建物の傾きを生じさせてしまう原因になりかねません。
このような土地と建物が建てられる土地にするためには地盤改良が必要です。
具体的な方法として、表層改良工法や柱状改良工法、鋼管杭工法などの方法があります。
予算や用途に合わせて適切な方法を用いましょう。
土盛や土止による造成
道路や他の土地よりも低い土地を購入した場合、水害や土壌の流出を防ぐために土盛や土止をする必要があります。
まず土盛でその土地の高さを上げ、土止で土盛部分の流出を防ぐことが可能です。
最近では土盛や土止と一緒に擁壁の設置を行い、その効果を向上させるケースも増えてきております。
残土処分による造成
傾斜地などにある土地を整地する際に、切土といって土地を切り取る作業を用いるケースがあります。
土地を切り取った際に出る土つまり残土をどう処分するか、これが残土処理です。
残土処理の方法としては、主に埋め立てや埋め戻し、宅地の造成などに用いられます。
造成工事の方法
造成工事の種類について解説してきましたが、ここからは具体的な造成工事の方法について解説します。
粗造成
粗造成は造成工事の際に一番用いられている造成工事の方法です。
建物解体後に出てくる廃材を一緒に土地を転圧する作業のことを言います。
その名の通り、粗い造成工事の方法なので細かいルールなどは決められていない方法です。
砂利造成
土地に砂利を加えて、転圧する造成方法が砂利造成です。
砂利造成は水はけが良くなったり、外観も綺麗に見せたりすることもできます。
またその他のメリットとして、防犯対策が挙げられます。
砂利を交えることで足音が立つようになるため、不審者の侵入などにも気づきやすいです。
防草仕上げ
防草仕上げは防草シートなどを用いて、草の繁茂を防ぐことができます。
綺麗に仕上げるためには事前の除草が重要になってくるため、事前処理は徹底に行うようにしましょう。
コンクリート・アスファルト舗装
土地を駐車場や道路として利用する場合、コンクリートやアスファルト舗装を施す必要があります。
コンクリートとアスファルトにもそれぞれメリット・デメリットがあり、舗装を利用する際にはそれらを理解しておくことが必要です。
一般的にはコンクリートは耐久性があり、アスファルトは価格が安いというメリットがあります。
造成工事の流れ
ここからは造成工事の大まかな手順と流れについて説明していきます。
実際に工事を進めるとなった際に、戸惑わないようこの機会に理解しておきましょう。
- 地鎮祭
- 道具の搬入
- 樹木の伐採・除根と掘削・残土処分
- 土の運び出し・入れ替え・追加作業
- 転圧作業
- 工事の終了
地鎮祭
地鎮祭は建物の建設や土地の造成工事を行う際に催される儀式のことです。
土地の神様に土地を使う許しをもらって、工事の安全を祈願します。
道具の搬入
土地の造成工事には様々な機材が必要になります。
中には大型の機材などが運ばれてくる場合もあるため、搬入できるのかどうかの把握は事前にしておくことが必要です。
樹木の伐採・除根と掘削・残土処分
道具を搬入した後は、具体的な造成作業に移っていきます。
木や草の伐採や除根、地盤の掘削や残土処分などを行いながら土地の造成する最も主要な部分です。
土の運び出し・入れ替え・追加作業
掘削した土や残土処理するための土を運び出します。
また土が足りていない部分には新たに土を追加する工程です。
転圧作業
転圧作業で土地を固めていきます。
ローラーのようなものを使って地盤を固めることで、地盤を強化することが可能です。
工事の終了
このような工程をたどって造成工事が完了です。
場合によっては補強などを行い、さらなる強化を施すケースもあります。
造成工事にかかる費用
造成工事にはその土地に応じて異なる費用が掛かります。
また造成後の用途によってもその費用は様々です。
傾斜地の工事費用
傾斜地の場合は斜面の崩壊などのリスクに備えて様々な工事を施す必要があります。
またその傾斜に応じて費用も高くなってくるのが通常です。
傾斜角度 | 費用(坪単価) |
---|---|
傾斜3~5度 | 35,000~38,000円 |
傾斜5~10度 | 60,000~63,000円 |
傾斜10~15度 | 85,000~90,000円 |
傾斜15~20度 | 130,000円前後 |
上記のような金額が傾斜にはかかってきます。
傾斜15度以上の場合は何十万という単位になってくるため、造成工事を進める際には注意が必要です。
田んぼの工事費用
田んぼは液状化や地盤沈下のリスクがあります。
そのため地盤の改良を行うことが必要です。
しかしその分費用は大きくなり、坪単価18~20万円ほどかかる見込みがあるためトータルでの費用は非常に大きくなります。
駐車場の工事費用
駐車場を造成する際には、アスファルト舗装などの工事をする必要性があります。
そのためその分のコストを踏まえてトータルコストを考えるのが一般的です。
相場としては30台ぐらいの駐車場であれば200~300万ほどで造成することができます。
畑の工事費用
畑の場合は土壌が宅地向けではない場合が多いため、土壌を入れ替える必要があります。
坪単価としては3~5万程が相場となっていますが、土壌の状態や工事の方法によっても費用にはばらつきがでます。
造成工事にかかる期間は1週間程度
造成工事と聞くと非常に長期間にわたって工事をする必要があると感じてしまいますよね。
しかし実際のところは1週間程度で工事自体は完了します。
大規模の造成工事の場合でも、2か月かかるかかからないかぐらいの期間です。
これぐらいの期間で工事が完成するということを前もって知っておきましょう。
造成工事の費用を抑える方法
上で解説したように、造成工事の費用は比較的大きくなってしまいます。
そのためできれば費用を抑えておきたいところですよね。
これから紹介する知識があれば、他の人よりちょっとお得に工事をすることができるかもしれません。
複数の業者の見積もりをとる
造成工事の見積もりは1つの業者だけに頼むのではなく、複数の業者に頼むのが良いでしょう。
なぜなら複数の業者の費用を比較しながら自分にあった業者を選択することができるからです。
いちいち色んな業者に連絡するのが面倒という人は、一括見積などを利用して同時に複数の業者の見積もりを取ることをオススメします。
業者は自己発見で手配する
造成工事は仲介業者もはさんで依頼することは避けた方がいいです。
例えば不動産業者に工事業者の紹介を依頼した場合、必ずその間で利益を取ってきます。
そのため仲介業者などは通さずに、自分で見つけた業者に工事を依頼するようにしましょう。
工事時期にも注意する
工事業者だけでなく、工事時期についても注意が必要です。
工事費用とは直接の関係はないですが、工事の時期によって固定資産税の特例が受けられないケースがあります。
固定資産税は毎年1月1日を基準にして課税されているのはご存じでしょうか?1月1日時点でその土地を住宅として利用していれば、固定資産税の特例を受けることができます。
課税評価額が1/6にまで軽減されるため、工事費用以外のところでもお金を節約することが可能です。
造成工事の注意点
造成工事に関しての知識を深めてきたところで、造成工事を実際に行う際の注意点について解説します。
実際に工事を進めていく中で、失敗したと思うことがないように確認しておきましょう。
事前説明を行う
自分が今住んでいる家の近所でいきなり工事が始まったらどのように思うでしょうか?おそらく誰もが嫌がるだろうと思います。
そのため工事を始める際には、必ず近隣住民への説明を行うようにしましょう。
これによって近隣トラブルなどを未然に防ぐことができますし、工事中の変な気遣いの必要もなくなります。
造成工事は自由にできない
「自分の所有する敷地内だから自由に工事します」と考える人がごくまれにいます。
しかし、造成工事はそのように個人で自由にできるものではありません。
土地の造成は都市計画法と宅地造成等規制法という法律により、その工事が制限されています。
これらの法律については非常に複雑なため、個人で判断せず工事を依頼する業者に必ず確認を取ってもらうようにしましょう。
マニフェスト制度を理解する
マニフェスト制度とは産業廃棄物の処理を法律に則って行っているかどうかを確認するための制度です。
世の中のほとんどの工事業者は、工事で排出された産業廃棄物に関して適切に処理を行っていますが、中には不法投棄などで処理を行っている業者もあります。
不法投棄が判明した際、工事を行った土地の所有者が違反したとみなされるケースもあるのが現状です。
そのようなことを避けるために事前に業者のマニフェストを確認し、適切な産業廃棄物の処理を行っているかどうか確認するようにしましょう。
造成工事を依頼する業者の選び方
造成工事の業者を適当に選んでしまうと、工事後に後悔してしまったり失敗してしまったりする可能性があります。
そうならないためにも自分にあった適切な工事業者を選ぶことが必要です。
以下に良い工事業者に依頼する際の選び方についてまとめてみましたので、これを参考により良い工事業者を選んでみましょう。
- 見積もりや説明が細かいこと
- 造成工事の実績が豊富であること
- 依頼主への対応にスピード感があること
- メンテナンスやアフターフォローなどのサービスあること
ホームページだけで判断できない場合は、口コミやレビューなども参考に判断してみましょう。
造成工事の際はつなぎ融資を使うと便利
造成工事には非常に多くの費用が掛かってしまうことは理解してもらえたと思いますが、この費用はどのようにして捻出すればよいでしょうか?正直、何百万もの大金をポケットマネーで支払うことは厳しいかと思います。
しかし造成工事に用いられた費用は住宅ローンに加算することはできません。
そこで利用をオススメしたいのがつなぎ融資と言われるローンです。
つなぎ融資の仕組み
つなぎ融資は住宅ローンを借りる前段階に一時的に融資を受けることができ、造成工事の費用を賄うことができます。
用途は土地の取得や建物の建築などの制限はされますが、住宅ローンの融資を受けることが決まっている利用者は融資を受けることが可能です。
つなぎ融資の返済は住宅ローンの借り入れまでは利息を払い、住宅ローンの借り入れが始まると住宅ローンでつなぎ融資を完済する仕組みになっています。
つなぎ融資を使う際の注意点
つなぎ融資は住宅ローンなどと違って担保を設定しない無担保融資です。
そのため、他の有担保融資よりも比較的利息が高く設定されています。
何百万という大金の利息になれば、利息部分のお金も非常に大きくなるため注意しておかなければなりません。
事前に自分が利用しようとしているつなぎ融資がどれぐらいの利息なのかということを調べておきましょう。
造成工事の基本的な内容を事前に理解しよう
造成工事は建物を建築する際には必要になってくる工事です。
どのような種類があって、費用・期間はどれぐらいかかるのかを把握しておかないとあとあと後悔してしまう可能性があります。
そのような事態を避けるためにも、事前に造成工事に関する知識を付けておくことが必要です。
自分に合った工事方法や業者を選び、より良い造成工事を行いましょう。