離婚や相続で財産分与をするとなった場合、資産価値が最も大きく、財産の多くを占めるのが不動産です。
不動産の財産分与を円滑に進められるかによって結果が大きく左右されると言っても過言ではありませんが、金額が多い分、様々な注意点を知っておかなければいけません。
今回は、財産分与を検討している人にも分かりやすく、疑問・質問を解決していきます。
- 離婚時に行う財産分与とは?
- 離婚に伴う財産分与の種類
- 離婚に伴う財産分与の対象になるものとならないもの
- 財産分与の前に不動産を査定に出した方が良い理由
- 不動産の財産分与をおこなうケースは主に2通り
- 不動産の財産分与は換価分割という考え方でおこなわれる
- 不動産を財産分与する流れ
- 離婚のために不動産を財産分与する方法
- 不動産は売却してから財産分与をした方が良い理由/h2>
- 離婚時の財産分与で不動産を売るときに気を付けること
- 条件付きで不動産の財産分与が認められるケース
- 財産分与の請求期限に時効はない!それでも早めにすべき理由
- 財産分与の除斥期間2年を延長する方法
- 不動産の財産分与は子供も入れて計算する?
- 財産分与で相手が財産を隠していた時はどう対処する?
- 不動産の財産分与に税金はかかる?
- 財産分与では不動産をどうするか優先的に考えよう
- 財産分与では不動産をどうするか優先的に考えよう
離婚時に行う財産分与とは?
離婚時の財産分与は、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を、離婚に際して分け合う手続きです。
このプロセスでは、マンション、一戸建て、土地などの不動産をはじめ、預貯金、自動車、生命保険など、婚姻中に得た財産が全て対象になります。
たとえこれらの財産がどちらか一方の名義であっても、実質的には夫婦の共有財産とみなされます。
法律上の基本的な原則は、「夫婦が半分ずつ」財産を分け合うことです。
これは、夫婦がそれぞれ婚姻中に財産形成に同等の貢献をしたと見なされるためです。
例えば、専業主婦や収入が夫より低い妻であっても、財産分与において不利に扱われることは原則としてありません。
これは、夫が仕事に専念できたのは妻の支えがあったためと評価されることが多いです。
離婚に伴う財産分与の種類
財産分与を行う場合、以下の3種類の分与方法に基づいて分配が実施されます。
- 清算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料的財産分与
ここからは、上記3つの財産分与の特性について解説します。
清算的財産分与
清算的財産分与は離婚時の財産分与で最も一般的な形式です。
この方法では、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を、それぞれの貢献度に応じて分配します。
たとえば、専業主婦(夫)が家事に専念していた場合も、その労働は財産形成に寄与したとみなされ、財産分与の対象となります。
さらに、離婚原因を作った有責配偶者も、この形式で財産分与を請求することが可能です。
なお、分配する財産は、必ず均等になるように分配することを原則としています。
扶養的財産分与
扶養的財産分与は、経済的な困窮が予測される配偶者を扶養する目的で行われます。
例えば、病気で働けない状態や専業主婦(夫)で今後の収入が不透明、高齢で就労が難しい場合などが該当します。
この方法では、経済的に余裕がある配偶者が、相手に対して生活費を一定期間支払う形で扶養を行います。
慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与は、不倫やDVなど離婚原因を作った配偶者が、慰謝料の意味も含めて行う方法です。
この分与では金銭だけでなく不動産や株式など、金銭以外の資産による支払いも可能です。
慰謝料的財産分与は、離婚成立後2年以内に請求する必要があり、この点で一般的な慰謝料請求の3年間とは異なります。
なお、財産分与においては基本的に贈与税は発生しませんが、一方が過度に多額の財産を受け取る場合には贈与税が課される可能性がある点に注意が必要です。
離婚に伴う財産分与の対象になるものとならないもの
離婚時に行う財産分与には、対象になるものとならないものがあります。
ここでは、財産分与の対象になるものとならないものについて、それぞれ紹介します。
財産分与の対象になるもの
離婚に際して分与される「共有財産」には、夫婦が結婚中に共同で築いたさまざまな資産が含まれます。
- 現金・預貯金
- 生命保険(特に積立型)
- 株券や債券などの有価証券
- 一戸建て、マンション、土地などの不動産
- 自動車などの動産
- 年金、退職金など
上記6種類の資産は夫婦が協力して築いたものと見なされ、離婚時に分割されることになります。
「マイナスの財産」も財産分与の対象になる
離婚における財産分与では、マイナスの財産も考慮されます。
これには住宅ローンや教育ローンの残債、クレジットカードの残高、未払いの諸費用、車購入ローンの残債などが含まれます。
これらは結婚生活のために生じた共同債務と見なされ、分与の対象になります。
ただし、一方の配偶者が個人的にギャンブルや浪費で作った借金は共有財産に含まれず、分与されません。
プラスの財産がマイナスの財産を上回る場合、プラスの財産からマイナス分を差し引いた残りが分割されるのが一般的です。
このように、離婚に伴う財産分与は、プラスの資産だけでなく、負債の側面も考慮する必要がある複雑なプロセスです。
財産分与の対象にならないもの
一方、「特有財産」と呼ばれるものは財産分与の対象外となります。
これには独身時代に蓄えた貯金、結婚時に持参した嫁入り道具、どちらかの親から相続した遺産、別居後に獲得した財産などが含まれます。
これらは個人が独自に所有する財産とみなされるため、離婚時の財産分与においては考慮されません。
この区別は、離婚に伴う財産分与を適切かつ公平に行う上で重要な役割を果たします。
財産分与の前に不動産を査定に出した方が良い理由
不動産の価値は専門家の判断を仰がなければ正確に算出するのは難しいです。
まず、基本的に不動産の価値は築年数の経過によって年々下がっていきます。
更に経済状況や周辺環境の変化などの様々な要因によって不動産の時価は変化してします。
特に近年では、経済状況の変化が不動産価格に大きな影響を及ぼしています。
例えばリーマンショックや東日本大震災の直後に購入した物件が、オリンピック特需によって築10年時に購入時の価値を超えるという事例も珍しくありませんでした。
加えて2020年に新型コロナウィルスが世界的に流行したことで、再び相場が下がる可能性も出てきています。
このように、不動産価格に影響する要因は逐一変化しているので、専門家に頼まなければ自力で今の価値を知るのは難しいのです。
財産分与の前に不動産一括査定を利用しよう
家の評価額を知るためには不動産会社へ査定を依頼するのがおすすめですが、査定価格はピンキリなので、必ず複数社の査定結果を見比べる必要があります。
複数社に査定依頼をするのは時間がかかりますが、一括査定サイトを利用すればスムーズに依頼をすることができます。
申込に要する時間はわずか60秒ほど。価格だけ知りたい方でも完全無料で利用できます。
財産分与を意識した段階で、お早目に利用することをおすすめします。
不動産の財産分与をおこなうケースは主に2通り
不動産の財産分与をおこなうケースは、主に以下の2通りです。
- 離婚時に分与する
- 相続時に分与する
どのパターンに当てはまるかによって、方法等に違いが生じます。
離婚時に不動産を財産分与するケース
夫婦共同で購入し、暮らしていた住まいは離婚時に財産分与の対象になります。
片方が物件の所有権を譲り受けて住み続けることもありますが、ここで争点になってくるのが住宅ローンの存在です。
優位的に財産を与えられたほうが残債を継続的に返済していくとなると、トラブルの種を離婚後に残してしまったのとほぼ同じです。
片方だけ継続的に返済をおこなうのは経済的・精神的にも大きな負担ですし、もう片方からすればキッチリ完済してもらえる確証のないまま不安を残して生活するようになります。
こうしたケースを避けるために、離婚時に不動産を売り、代金を分与してそれぞれ新生活を迎えるのがおすすめです。
相続時に不動産を財産分与するケース
親の物件を2人以上の兄弟が相続する場合、基本的に権利を均等に分与されます。
この時、不動産は1コしかありませんが、不動産の所有権を分割したという考え方になります。
不動産の財産分与は換価分割という考え方でおこなわれる
財産の中では、文字通り物理的に均等分与できるものもあります。
しかし、不動産は物理的に分割することができません。このことが、遺産トラブルを引き起こす大きな要因となっています。
では、不動産はどう財産分与をするかというと、換価分割という考え方に基づいておこなわれます。
換価分割とは、財産を一旦価格に換算した上で、財産分与をする方法です。
- 2,000万円の物件を4人で相続した場合:1人につき500万円分(25%)の権利が分与される
- 2,000万円・4人で相続した物件を売却した場合:1人につき500万円 (25%)ずつ取得をする
この方法によって、不動産が物理的に分割できなかったとしても、財産分与をすることが出来るのです。
代償分割によって財産分与することも可能
不動産の財産分与は換価分割の他にも、代償分割という方法があります。
例えば、A・B・C・Dの4人のうちAが2,000万円の物件の権利を100%取得したとします。
この場合、分割された権利の割合は以下となります。
- A :100%
- B・C・D :各0%
その後、Aが物件を委譲せず、B・C・Dに現金500万円ずつ譲渡すると、以下のようになります。
- A :25%(2,000万円-1,500万円)
- B・C・D :各25%(500万円)
いびつな形にも見えますが、これでも4人が均等に財産分与できたことになります。
財産分与をする際の状況はそれぞれ異なりますが、この考え方を持つことで幅広いケースに対応できます。
不動産を財産分与する流れ
離婚が正式に決定すれば、これまで築き上げてきた財産の分配を夫婦間で執り行います。
- 不動産の名義確認
- ローン契約の名義と残債
- 不動産価格の査定
- 特有財産の確認
- 査定額を元に話し合い
ここでは、財産分与を行うときの大まかな流れを解説します。
手順①不動産の名義確認
財産分与の割合が最も大きい不動産を分配する場合、手始めに不動産の所有権がどっちの名義になっているかを確認します。
多くの場合が夫名義になっていますが、中には夫婦共有名義、夫婦いずれかの親族名義になっているなど様々なケースが想定されます。
また不動産の名義が誰なのか分からないという場合は、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得して確認しましょう。
登記簿謄本は、法務局に出向いて直接頂くか、郵送やオンラインで取得できます。
なお、該当する不動産の管轄外の法務局でも登記簿謄本の取得は可能です。
手順②ローン契約の名義と残債
2目は、住宅ローンやカーローンなどの契約名義とローン残債の確認です。
ローンの残債次第で、これから行う財産分与の結果が大きく変わります。
例えば、所有する不動産の名義と組んでいるローンの名義が異なる場合、分与上夫婦の共有財産に該当しても、ローンの名義が単独であるケースがあります。
このような場合は、分与割合を決める際に大きく影響します。
またローン契約の名義と残債の確認を行うときは、ローンの連帯保証人の確認も併せて行いましよう。
手順③不動産価格の査定
3つ目は、不動産価格の査定です。
不動産価格は、株式やFXのように浮き沈みが激しいわけではありませんが、築年数やその時の経済状況の影響を受けて価格が高騰したり、低落したりします。
不動産を財産分与する場合は、査定によって明記された金額を基に分与額を決定します。
手順④特有財産の確認
特有財産とは、婚姻関係に至る前に所有していた財産や夫婦の協力とは無関係で得た財産などを指します
例えば、所有している不動産を購入するとき、片方が婚姻前に貯めたお金を使用していたり、片方の親・親族からの援助があった場合は、使用した金額分を差し引いて分与額を算出します。
手順⑤査定額を元に話し合い
不動産の査定額を明確化したら、ローン残債から査定額を差し引いたオーバーローンかアンダーローンかを確認します。
オーバーローンとは、ローン残債に対して査定金額が低い場合を指し、アンダーローンはローン残債に対して査定金額が高い場合を指します。
特にオーバーローンの場合は、売却額とローン不足分を自己資金で完済するか任意売却で今後も払い続けるかを決める必要があります。
一般的にオーバーローンの場合は、財産分与をせず、ローン名義の方が今後も払い続けるケースが多いです。
とはいえ、これらの事情を踏まえて共有財産をどう分配するか、片方がこれからも住み続けるのかなどを、詳細に話し合いましょう。
離婚のために不動産を財産分与する方法
分配割合が大きい不動産を財産分与する場合は、売却して現金化する方法が一般的です。
一言で売却するといっても、方法は様々です。
ここでは、不動産を売却するときの方法をご紹介します。
高値で売却するなら仲介
一般的な売却方法にして、高値で不動産が売却できる可能性を秘めているのが仲介による売却方法です。
仲介による売却方法は、媒介契約を締結した不動産会社に仲介を依頼して個人などに物件を売買する方法です。
仲介売買のメリットは、査定によって算出された価格に近い価格で売却ができる点です。
しかし必ず物件購入を検討する買い手が現れるまで時間がかかります。
売却にかける時間に余裕があれば、仲介売却で物件売買を進めてみましょう。
即現金化を行うなら業者買取
すぐに不動産を現金化したい場合は、業者買取がおすすめです。
買取は、不動産会社に直接買い取ってもらう方法で、査定によって三種刺された金額に納得できれば最短1週間以内に現金が手元に入ります。
ただし買取価格は、相場価格よりも安くなるケースが多いですが、ハウスクリーニングやリフォームを行う必要がないうえ、売却後に瑕疵が見つかっても損害賠償や契約解除を受ける契約不適合責任を背負いません。
オーバーローンの時は任意売却
任意売却は、ローン残債に対して査定金額が低い状態(オーバーローン)の時に利用できる売却方法です。
売却の時、融資を受けている金融機関の合意が得られれば、仲介売買と同じ手法で物件を売却できるうえ、出た資金をローン返済に充てられます。
ただし金融機関側にとって、売却資金で返済した後のローン残債は無担保状態になるので、必ず承認してくれるとは限りません。
片方が不動産に住み続けてもう片方に現金を支払う
売却以外の方法を選ぶ場合は、片方が不動産に住み続け、もう片方に不動産の見込み価値の半分相当の現金を支払うという方法を選ぶのがいいでしょう。
この方法の利点は、住む場所を変える必要がなく、特に子供がいる場合はその生活環境を維持できることです。
しかし、この方法では住宅ローンの支払い責任などが複雑になる可能性があり、特に共有名義の場合は所有権の変更や住宅ローンの名義変更など、多くの手続きが必要になります。
また、現金での支払いが必要となるため、資金計画を慎重に立てる必要があります。
不動産は売却してから財産分与をした方が良い理由/h2>
不動産の財産分与は、建物を残したまま分割する方法(片方が物件を取得し、その価値の50%に相当する金額を支払う)と、建物を売って得た代金を分割する方法があります。
この2通りの方法のうち、不動産を売ってから財産分与をする方がメリットは大きい傾向にあります。
その理由をここから紹介します。
売却をする方が分割できる金額を大きくできる
物件を残して財産分与をおこなう場合、固定資産税評価額や不動産会社の査定額を参考にして金額を割り出し、それを基準にします。
この金額も時価(実勢価格)と言いますが、これは売却で得る金額(成約価格)とは必ずしもイコールではありません。
例えば築年数が古い、敷地が広すぎるなどの要因でマイナス評価を受けた不動産を売らない場合、そこで評価額は確定します。
ただ、実際に売却するとなった場合、売り出し価格は売主の意思で査定額よりも高く設定することが可能です。
その後、掃除をして第一印象をアップしたり、マイナス評価を受けた部分を気にしない買主が現れたりしたら、そのまま査定額以上の金額で売れてしまいます。
財産分与の段階で価値がないと思われていた不動産でも、高く売ってくれる業者に頼めば金額をアップすることができるのです。
ただ、査定額より高く売り出すと“割高物件”というイメージを持たれ、売れ残る可能性も増えてしまうので一括査定サイトを使って複数の業者をよく吟味する必要があります。
物件・ローンを残さないことでその後のトラブルを避ける
ローン付きの物件を片方が所有することになった場合、その人がローンを返済し続けることが前提になります。
もしその人がローンの返済を放棄したなら、離婚後でも元配偶者が肩代わりしなければいけません。
物件・ローンを残しておくことでこのようなトラブルがいつ起こるか分かりません。
売却をしてトラブルの元をなくし、気持ちよく新生活をスタートさせたほうがお互いのためになります。
離婚時の財産分与で不動産を売るときに気を付けること
離婚時に行う財産分与の対象になる財産の中で最も大きな割合を占める不動産やマンションなどの不動産を売って、現金に換金する方法を選ばれる夫婦は多いです。
しかし、離婚を理由に不動産を売る時、様々なトラブルを招くことがあります。
円満な形で財産分与を進めるためにも、これから紹介するポイントをおさえて、不動産の売却を進めていきましょう。
- 住宅ローンの残債額を必ず確認すること
- 協議が決裂したら調停を申し出ること
- 同意なしで不動産を売られる可能性がある
住宅ローンの残債額を必ず確認すること
住宅ローンの残債がある場合、その金額が売却価格にどのように影響するかは極めて重要です。
もし売却金額がローン残高を上回れば、その超過分は分与の対象となりますが、逆に残債が売却価格を下回る場合は、その不足分をどのように処理するかが問題となります。
この状況下での分与には、特に慎重な計画と相互の合意が必要です。
また、売却による税金の影響も考慮する必要があり、ここで税理士や不動産専門家のアドバイスを求めるのが賢明です。
協議が決裂したら調停を申し出ること
離婚に伴う財産分与の協議が決裂した場合、家庭裁判所に調停を申し立てることが一つの解決策となります。
調停では、中立的な調停委員が双方の主張を聞き、合意に至るための提案を行います。
しかし、調停には時間がかかることがあり、また、感情的な対立が激しい場合は調停がうまく機能しないこともあります。
このような場合には、裁判所での解決を求めることになりますが、裁判は時間とコストがかかるため、可能な限り調停での解決を目指すことが望ましいです。
同意なしで不動産を売られる可能性がある
共有財産である不動産を、片方の当事者が無断で売却するリスクを考慮することも重要です。
このような事態を避けるために、仮差押えの手続きが有効です。
仮差押えは、相手方が資産を勝手に売却や譲渡することを防ぐ法的手段であり、この登記があることで、不動産の買主や仲介業者に対して、その物件が係争中であることが明示されます。
ただし、仮差押えには担保金が必要な場合が多く、また手続きには法的な知識が求められるため、弁護士などの専門家と相談することが重要です。
条件付きで不動産の財産分与が認められるケース
財産分与は、婚姻期間中に築いた財産を分配するときに行います。
「婚姻期間=結婚している状態」でのみ行われるものと思われがちですが、事実上の夫婦(内縁関係)である場合でも、財産分与が行えます。
とはいえ、事実上の夫婦(内縁関係)である方が財産分与を行いには、特定の条件を満たしている必要があります。
- 結婚の意思があったかどうか
- 一定期間以上の同居があったかどうか
上記2点をチェックして事実上の婚姻関係があると認められた場合、財産分与が成立します。
ほかにも、財産分与が認められるケースがあります。
ここでは、その特別なケースについて解説します。
片方が死別してしまった
財産分与を検討している段階で片方が死別してしまった場合は、子供がいればそちらに相続をするという処理の仕方をします。
一方で子供がいない場合、離婚した元夫婦というのは遺産相続の関係ではありません。
そのため、財産分与は死亡した方の相続人に対して行使されます。
例えばA・Bの離婚後にBが死別した場合、AとBの相続人間で財産分与をおこないます。
死亡によって関係が解消されるケース
死亡によって婚姻関係が解消された場合、遺産を相続する形で処理されるので財産分与はおこないません。
一方で、死亡によって内縁関係が解消された場合は財産分与をすることができず、遺産相続も出来ない可能性があるので注意しましょう。
ただ、内縁解消後に死亡した場合は相続人に財産分与請求をすることができます。
財産分与の請求期限に時効はない!それでも早めにすべき理由
実は、財産分与の請求期限には時効がありません。
慰謝料には時効があるのですが、財産分与は長い話し合いが終わった時や思い出した時などに、いつでも請求をすることができるのです。
ただ、“請求期限がない”という言い方には少しカラクリがあるので注意が必要です。
2年を過ぎても請求できない場合は任意での分与となる【除斥期間】
財産分与に請求期限はありませんが、強い法的根拠を持って請求が出来るのは2年間と定められています。
2年以内であれば、相手が拒否をしたとしても、財産分与を請求できる権利があります。
一方、2年を超えても財産分与の請求は可能ですが、この際は相手側が応じてくれなければ話合いのテーブルに付くことは出来ません。
そのため2年以内に請求できるに越したことはないですが、2年を過ぎたとしても調停・裁判によって除斥期間を延長することが可能です。
財産分与の除斥期間2年を延長する方法
前述の通り、2年を過ぎると法的な財産分与の請求権を失効してしまいます。
この場合、原則として除斥期間を延長することは出来ません。
そうなると、相手側との話し合いでお互い納得し、財産分与をおこなう必要が出てきます。
ただ、家庭裁判所に調停を申し出れば除斥期間を延長することは可能です。
家庭裁判所に調停を申し出て除斥期間を延長する
家庭裁判所に調停を申し立てれば、双方で話し合いをおこなって折り合いがついたら調停成立となります。
つまり、双方の話がまとまらずに2年を過ぎてしまった場合でも、調停を申し出れば納得がいくまで話し合いをすることができます。
調停をしていくら話し合っても結論が出ない場合、裁判に移行します。
不動産の財産分与は子供も入れて計算する?
離婚で不動産の財産分与をする場合、基本的には子供を連れていく方もいかない方も同じく50%ずつで分け合います。
子供の養育をする方がお金もかかるので、多く取得しないとおかしいと感じる方も多いでしょう。
ただ、子供の養育の経済的問題は養育費によって解決します。財産分与は結婚時に財産を共有していたかどうかが重要なので、離婚後の状況はあまり関係ありません。
ただ、状況によっては通常の財産分与(清算的財産分与)以外にも、双方の承諾があれば以下2種類の財産分与の方法を選択することができます。
特殊な財産分与の方法 | 内容 |
---|---|
扶養的財産分与 | 片方が高齢・病気・育休などで就業が難しい際に、財産分与の配当を増やす |
慰謝料的財産分与 | 片方の不倫、DVなどが原因で離婚をした際に、もう片方の配分を増やす |
財産分与で相手が財産を隠していた時はどう対処する?
財産分与で相手が財産を隠していた場合はどう対処するのでしょうか?
財産分与は結婚当時の共同財産が対象になるので、本人同士が洗いざらい財産を出すしか方法はありません。
この時、相手が財産を隠していれば公正な財産分与が出来なくなってしまいます。
この場合の対処法を見ていきましょう。
除斥期間内なら弁護士会照会制度が利用できる
除斥期間内なら、弁護士に依頼をして隠し財産を見つけることができます。
これは弁護士会照会制度という仕組みで、事実関係を調べるために口座残高を調査することが許されているのです。
ただ、弁護士は銀行の支店名まで知らないと調査が出来ないので、隠し口座があった場合は財産を見つけることが出来ません。
口座の存在は離婚前からチェックをしておきましょう。
2年を過ぎた時の財産要求は根拠が必要
2年を過ぎた場合、民事裁判を起こして財産要求をするようになります。
ただ、民事裁判を起こすには証拠が必要になるので、相手が財産を隠し持っているという証拠情報は出来るだけ多く取得しておくことが大切です。
不動産の財産分与に税金はかかる?
不動産の財産分与では、原則として贈与税はかかりません。
例えば離婚後に財産分与で片方が不動産に住み続ける場合も、これは贈与ではなく財産分与義務に基づく給付と見なされます。
財産分与で不動産を受け取った側には税金がかかる
一方、不動産を受け取った側には主に3種類の税金がかかります。※ケースによって種類の増減あり。
- 登録免許税
- 不動産所得税
- 固定資産税
こちらは不動産を受け取った側にしかからず、双方で分担して納税するという決まりもありません。
ケースによっては贈与税・所得税がかかる
不動産の価値は一定ではなく、経済情勢や周辺環境の変化によって変わる可能性があります。
例えば、共同で購入した不動産が好況の煽りを受けてどんどん価値が上昇している場合は、実質的な贈与と見なされる可能性があります。
また、不動産の価値があまりに高い場合も、贈与と見なされる傾向にあります。
財産分与では不動産をどうするか優先的に考えよう
不動産の財産分与では、原則として贈与税はかかりません。
例えば離婚後に財産分与で片方が不動産に住み続ける場合も、これは贈与ではなく財産分与義務に基づく給付と見なされます。
財産分与で不動産を受け取った側には税金がかかる
一方、不動産を受け取った側には主に3種類の税金がかかります。※ケースによって種類の増減あり。
- 登録免許税
- 不動産所得税
- 固定資産税
こちらは不動産を受け取った側にしかからず、双方で分担して納税するという決まりもありません。
ケースによっては贈与税・所得税がかかる
不動産の価値は一定ではなく、経済情勢や周辺環境の変化によって変わる可能性があります。
例えば、共同で購入した不動産が好況の煽りを受けてどんどん価値が上昇している場合は、実質的な贈与と見なされる可能性があります。
また、不動産の価値があまりに高い場合も、贈与と見なされる傾向にあります。
財産分与では不動産をどうするか優先的に考えよう
前述の通り、夫婦の共有資産に占める割合は、不動産が最も大きいです。
これをどうするか優先的に考えることで、トラブルを減らすことができます。
不動産は様々な専門家が絡むものなので、売却するにしても時間がかかります。
早めに方針を決めて、早めの対応をしていくようにしましょう。