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不動産売却

積水ハウスから63億円騙し取った地面師(じめんし)とは?あなたも騙される巧妙手口

地面師とは
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2018年12月20日、大手住宅メーカーの積水ハウスが土地取引を巡って約63億円を騙し取られた事件で、逃走していた地面師グループの男・カミンスカス操容疑者(59)が逮捕されました。

地面師(じめんし)という言葉を今まで聞いたことのある方は少数でしょうが、実は長年にわたって不動産詐欺を働いてきた人達であり、企業だけでなく多くの個人が詐欺の対象になっています。

今回は、地面師の功名な詐欺手口の全貌から、騙されないための対処法について解説していきます。

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積水ハウス五反田地面師事件とは?おとりの素人女性にプロが騙された理由

東京・五反田駅から徒歩3分という好立地に海喜館という古い旅館がありました。

こちらの土地が約600坪あり、大手住宅メーカーの積水ハウスが分譲マンション用地として購入を検討していました。

いざ、土地所有者の高齢女性と契約を交わして代金63億円を支払ったのですが、この高齢女性が実は土地所有者でもなんでもない赤の他人。積水ハウスは見事に巨額をだまし取られてしまったというわけです。

おとり女性は不動産の素人!詐欺が成功した3つの理由

さて、おとり役になった70代女性ですが、過去に不動産会社に勤めた経験などもない素人。大手業者が少し話せば偽物だと分かるはずの人選です。

では、なぜ積水ハウスほどの会社が騙されてしまったのでしょうか。それには以下の3つが理由として挙げられます。

  1. 周囲の人が土地の権利関係を把握していなかった
  2. 2020年に向けた不動産会社の焦り
  3. 背後にいる地面師グループへの規制が曖昧

【理由①】周囲の人や親族が土地の権利関係を把握していなかった

旅館のように戦前から引き継がれている不動産は、権利関係を管理している書類もどこにあるのか分からず、周りにも昔の事情を知っている人はいないという状況になります。

今回の海喜館のケースだと、1990年になりすまし女性が土地所有権を持っていたようですが、この事件に際し周囲の人が疑問を抱くことはありませんでした。

積水ハウスは無事に売買をおこなったはずが、もとの所有者がすでに亡くなっており、所有権が親族に移っていることを知り、初めて詐欺と分かったようです。

つまり、当の親族すら、自分が旅館の所有者になったことを知らなかったということになります。女将が亡くなった時に「旅館の権利関係はどうなっているの?」と疑問に思ってチェックをしていれば、この詐欺が防げた可能性も十分あります。

【理由②】2020年に向けた不動産会社の焦り

不動産仲介業界は現在、まれにみる好況に沸いていますが、その理由は大きく3つ挙げられます。

  1. 景気が回復し、不動産投資熱が上がっている
  2. 東京オリンピック特需で地価が高騰している
  3. マイナス金利政策で住宅ローンがお得に借りられる

では、2020年の東京オリンピックを過ぎるとどうなるかといえば、不動産業界は全体的に下火になると考えられています。

その理由には、以下が挙げられます。

  • 本格的な少子高齢化の進行
  • 住宅ローン金利の上昇
  • 不動産投資ブームの終息

更に、2022年になると不動産相場が一気に低下する、いわゆる2022年問題のリスクも指摘されています。

「2020年までに大きな事業を成功させなきゃいけない」という不動産会社の焦りが、詐欺成功率を高めた可能性も十分あります。

【理由③】背後にいる地面師グループへの規制が曖昧

地面師には長い歴史があり、古くは戦後間もない時期に被害が多発しました。

登記所の書類が空襲などで焼失してしまったこともあり、なりすましが容易だったからです。

その後、登記簿の管理が厳しくなって地面師による被害は減少しましたが、バブル期に再び被害は増加します。

この頃は不動産価格が高騰していたこともあり、被害額も莫大なものになりました。

その後、登記簿謄本の電子化などが進んで被害は減りましたが、近年再び被害が増えています。

このように長い歴史を持つ地面師ですが、逮捕されても起訴されるケースは少なく、同じ地面師グループが何度も詐欺事件を起こしているという説もあります。

今回の事件も、背景に有名地面師グループの存在がありました。法改正など抜本的な対策が必要になるでしょう。

企業ではなく個人が標的になることも!書類・代金を手渡す際は十分注意しよう

不動産詐欺は、何も企業相手に限ったことではありません。個人が不動産売買をする時も詐欺被害にあう可能性は十分あります。

例えば、住み替え目的で家を売ったはずが、実は仲介業者が詐欺グループで、代金の振込先を隠し口座に変えた挙句逃亡したというケースもあります。

家の売買は普通の人なら一生に一度経験するかどうかの手続きです。知識の浅さに加えて、全幅の信頼をおいていた仲介業者が実は詐欺師だったとなると、見破ることは難しいでしょう。

前述の通り、不動産業にも電子化が進み詐欺を働くのが難しくなっています。そのため、こちらが代金や書類を提出した後に目を離さなければ騙される可能性は低いです。

登記移転と代金受取は同時におこなう、お金の取引はなるべく現金でおこなう、契約の場には司法書士に同席してもらうといった対策をおすすめします!