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マンション売却

【専門家監修】ビル売却の方法とは?事業用ビル売却の流れや注意点・税金をわかりやすく解説

ビル売却
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ビル売却のポイント
  • ビル売却を成功させるには、レントロール修繕履歴をまとめておくこと、投資物件としての評価を上げることなどが重要
  • ビル売却では、場合によっては管理会社契約テナントとの調整が必要になるため注意が必要

ビル売却をスムーズに進めるためには、流れと注意点を理解しておくことが重要です。

特に相続税対策としてビルを早期売却する場合は、計画的に進めることが節税につながります。

この記事では、初めてビルを売却するオーナーが押さえておくべきポイントを解説します。

この記事の監修者
中西諒太_プロフィール
監修者
城都不動産株式会社 代表取締役
中西諒太さん

宅地建物取引士第15220388号】/2級FP第二F二-〇-一七-二二三九二四号】/住宅ローンアドバイザー

賃貸仲介・売買仲介・賃貸管理会社の勤務を経て独立。2022年に法人設立。

現在は都心で不動産事業を営む。

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Contents

ビルを売る流れ【全6ステップ】

ビル売却は普通の不動産売却と方法が異なるビル売却の流れは、以下の通りです。

ビルの売却相場を調査
不動産会社に査定を依頼
業者選定・媒介契約
販売活動
売買契約
決済・引き渡し

全ての手続きが完了するまでは平均で6ヶ月ほどと考えておくと良いでしょう。

ただ、都心の条件が良いビルなら、平均の半分以下の期間で売れますし、田舎のビルなら売り出しても1年以上売れないケースがあります。ビル売却までの期間はあくまで目安と考えてください。

他にも、ビルは家などの物件と違い、大規模な買主募集は行われないことが多いです。

ビルの売主は法人や事業主がメインですが、ビルの売却が周囲にバレることで何かしらの事業転換がおこなわれたなどが筒抜けになってしまうからです。

ここからは、ビルを売る手続きを順に解説していきます。

【Step1】ビルの売却相場を調査

ビルの売却手続きに入る前に、まずは売却価格の相場を調べましょう

売られているビルの価格を調査し、周辺の価格推移を参考にしてもいいですね。

大まかで良いので、価格のイメージを付けておくだけで売却のスピードや結果が大きく変わります

【Step2】不動産会社に査定を依頼

相場のイメージがつかめたら、いよいよ不動産会社に査定を依頼します

査定額は「うちならビルをこれくらいの金額で売れる」という予想額なので、必ず複数社の査定額を比較して、高く見積もってくれた不動産会社と契約しましょう。

複数の不動産会社に査定を依頼するのが面倒な方は、不動産一括査定サイトを使うとスムーズに複数社へ依頼できます。

【Step3】業者選定・媒介契約

査定額を比較しながら業者を絞り込んでいき、媒介契約を結びます

媒介契約とは、不動産会社に販売活動を委任する代わりに、成約したら仲介手数料を支払うという契約です。

媒介契約には3つの方法があり、それぞれ内容が異なります。

契約の種類 契約の有効期間 売り手自身が買い手を見つけること 依頼可能な業者数 仲介業者からの報告※
専属専任媒介契約 3ヶ月以内 できない 1社のみ 1週間に1回、メールか文書で連絡
専任媒介契約 3ヶ月以内 できない 1社のみ 1週間に1回、メールか文書で連絡
一般媒介契約 3ヶ月以内 可能 複数社と契約可能(契約数の上限なし) なし

一般媒介契約を結ばれた業者は、自社が一番に成約できな買った時に赤字になることを考え、広告コストを出し惜しみする傾向にあります。

そのため、一般的には(専属)専任媒介契約がおすすめされていますが、高価なビルの場合は一般媒介契約を選ぶことで業者間で競争がおこり、相場以上で売れる可能性があります

売りたいビルの状況を鑑みて、最適な契約方法を選択しましょう。

【Step4】販売活動

契約が完了したら、実際に販売活動が始まります。

通常の不動産売却ではWeb広告や折込チラシを使って大規模に宣伝をしていきますが、ビルの場合は企業活動に関わるので、あまり表立ってPRしないことも多いです。

売主自身がやることはありませんが、希望者がテナントを見学に来ることもあるので、最低限の準備をしていきましょう。

【Step5】売買契約

買主が見つかったら、いよいよ売買契約をおこないます。

売買契約でおこなわれるのは主に契約書の読み合わせですが、以前に口約束で決めた事項が盛り込まれていない可能性もあるので、慎重にチェックしていきましょう。

【Step6】決済・引き渡し

売買契約を結んだら、最後にビルの決済・引き渡しをおこないます。

不動産の決済は大きなお金が動くため、セキュリティがしっかりしている銀行の1室などでおこなわれることが多いです。

決済・引き渡しの一般的な流れは、以下の通りです。

決済・引き渡しの一般的な流れ
  1. 本人確認と書類の確認
  2. ローン融資を買い手がおこなう
  3. 税金などの精算
  4. 売り手から買い手へ領収書の発行
  5. 仲介手数料の支払い
  6. 司法書士への報酬支払い
  7. 売り手のローン返済手続き
  8. 抵当権の抹消登記完了
  9. 鍵や重要事項説明書などの引き渡し

ビルを売る時の相場の調べ方

ビルを売る時は、まず売却価格の相場を調べることから始めましょう

最初にいくらで売れるのかイメージを付けておかないと、売却するタイミングの判断も付きません。

目標額に届かない場合は、損をする可能性もあるでしょう。

ビルを売る時は相場を調べた上で、売るかどうか決めてください

ビルの売却相場はネットで調べられる

売られているビルの価格を調査すれば売却相場は簡単にチェックできます。

売りビルの価格はすでに不動産会社が計算・修正して出した価格ですから、そのまま参考にすれば良いのです。

売却中のビルの情報は、HOME’S 不動産投資楽待健美家といった収益物件専用のサイトに多数掲載されています。

これらのサイトをチェックして、売却相場のイメージをしていきましょう。

ただし、売却価格=売主の手元に入る金額ではありません。

他ビルの売却価格はあくまで参考程度に考える

ビルの価格を調査する場合、情報を信用しすぎると痛い目にあいます

「隣のビルが5000万円で売られてたから、うちのビルもだいたい5000万円で売れる」とはいかないのです。

ビルはそれぞれ面積、間取り、高さなどが違います。

ほかにも、利回りや利用情報、築年数にどうしても違いが出てきます

それらも含め、表面上のステータスが似ているとしても、内部のキズ、設備などの状況はそれぞれ違いがありますよね。

そういったことからも、素人が正確にビルの売却相場を調べることは非常に難しいのです。

売っているビルの情報はあくまで参考程度に考えましょう。

ビル売却を成功させる4つのポイント

ビル売却を成功させるにはどうすれば良いのでしょうか。

ここからは、ビル売却を成功させるポイントを解説します。

  • レントロールを作成する
  • 修繕履歴を一覧でまとめる
  • テナントを満室にする
  • アクセスの良さを売りにする

ポイント1】レントロールを作成する

テナントビルを売る際は、レントロールをしっかり作っておく必要があります

レントロール

レントロールには、現在入っているテナントの賃料や契約期間などがこのようにまとめられています。

投資家がビルを購入する場合は、ビル自体の築年数などより、レントロールから収益性の有無をチェックして判断するようになります。

逆に言えば、レントロールが準備できないと投資家相手に取引をするのは難しいです。

ポイント2】修繕履歴を一覧でまとめる

修繕履歴

ビルを売る際は、これまでの修繕履歴を一覧でまとめることも忘れないようにしましょう。

投資家にとっては、コストを計算する時に近々リフォームが必要かどうかは重要なポイントとなります。

修繕が行き届いているビルは、管理が行き届いている上、コスト負担も少ないので買主にとっては好条件で購入できます

ポイント3】テナントを満室にする

ビルは満室にしてから売るほうが良いですが、急に満室にするのはなかなか難しいものです。

そこでおすすめなのがフリーレント、つまり入居後数ヶ月は賃料を0にするサービスです。

一度テナントが入ってしまえば、短期で出ていく可能性は低いです。

リスクを背負ってでも満室にして売ることで、結果的に売主の得にできます

ポイント4】アクセスの良さを売りにする

古いビルでも人気の理由は、その”場所代”も大きいです。

ビルは建物自体だけでなく、アクセスの良さにも価値があるのです。

企業の中には、並んで建っているビルをまとめて購入し、更地にしたあとショッピングモールを建てるということもあります。

ビルを売る際の相談先は?

ビルを売る際には、相場の把握や価格設定などにおいて専門的な知識を有している人に依頼する必要があります。

そのため、相談先としては次のような選択肢があります。

ビル売却の相談先【例】
  • 不動産会社
  • 資産のコンサルティング会社
  • 専門分野の有資格者

ビルの売却に強い不動産会社以外にも、資産運用面での相談先としてコンサルティング会社や資格者に相談するのも一つの手です。

それぞれの相談先の特徴を解説します。

不動産会社

ビルの売却は通常の不動産売買に比べて手順が複雑なので、ビルの取引に精通している不動産会社に相談するのは一般的です。

ビルの売却に対応している不動産会社であれば、相場を熟知しているためどの程度の費用が掛かるかなどの相談もしやすいです。

相談する際は、複数の不動産会社に相談して相場をチェックしましょう

ただし不動産会社はそれぞれ得意な分野があり、賃貸物件の取り扱いが得意な会社もあれば、戸建て住宅の仲介が得意な会社もあります。

ビルの取り扱いはしていない会社も中にはあるので、ホームページで実績等を確認しておきましょう。

資産のコンサルティング会社

不動産は所有者にとっては大きな資産なので、資産運用などに対応しているコンサルティング会社に相談するのも良いでしょう。

ビルの売却をすればどの程度の資産になるか、売却をせずに運用した方が良いのかなど、売却をするかどうかの相談に向いています。

会社によって得意なジャンルが異なるので、相談前にサービス内容をチェックしておくと良いです。

税理士や司法書士といった有資格者

ビルの売却では、専門的な不動産知識が必要です。

そのため自分が必要だと感じた分野の有資格者に相談するのもおすすめです。

例えば、不動産売却で発生する税金についての知識が不足していると感じれば、税理士に依頼するなどの方法があります。

他にも登記に関しては司法書士などを頼ることで、不明点を解消できるでしょう。

ビルの売却は特に複雑な手順となるので、専門家に依頼するとスムーズに進めることができます。

ビルを売る際にかかる税金・費用

ビルを売る際にかかる主な税金・費用は、以下のとおりです。

ビル売却の主な税金・費用
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 譲渡所得税
  • 消費税
  • 仲介手数料

ただ、こちらは最低限支払うコストになります。

売る前に簡易リフォームやクリーニングを依頼したりすれば、これ以上の費用がかかってしまいます。

今回は、5つの中でも特に高額になりがちな3つの費用について解説していきます。

譲渡所得税は売却益が出た時に発生する

ビルを売った時に出た利益が購入時の費用を超える時に発生するのが譲渡所得税です。

譲渡所得税は、以下の計算式で求めることができます。

譲渡所得税=税率×{譲渡価格-(取得費+売却費用) }

ちなみに取得費は、不動産の購入代金と取得に要した費用の合計額(家の場合は減価償却費を差し引く)と譲渡収入金額の5%のうち、大きい額の方が採用されます。

また、税率はビルの所有期間(取得費から引き渡し年の1月1日まで)が5年以下(短期)か5年超かによって、このように変化します。

短期譲渡所得 長期譲渡所得
所得税 30% 15%
住民税 15% 5%

所有期間が長引けば税金が下がりますが、その分築年数が経過して劣化してしまい、価格がつきにくくなります。

どちらがお得かは判断が難しいですが、当サイトでは、たとえ税率が高くても早めに売ってしまうことをおすすめしています。

参考:国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

ビル売却は消費税がかかる

ビルは、ほぼ全てが事業目的で利用されています。

そのため、普通のマイホームを売る際にはかからない消費税が売却価格に課されるようになります。

ただ、ビルの価格に消費税率の10%をかければ非常に高額な負担となります。

2期前の課税売上高が1,000万円未満の場合は課税を免除されるので有効活用しましょう

参考:国税庁「No.3240 個人が事業用建物等を譲渡した場合の消費税

仲介手数料は売却価格に応じて変わる

仲介手数料は、業者が販売活動をおこなってくれた報酬として、成約したときに支払う費用です。

仲介手数料の負担は、ビルの売却価格に応じて以下のように計算します。

取引額 仲介手数料(法定の上限額)
200万円以下 売却額×5%
200万円超400万円以下 売却額×4%+2万円
400万円超 売却額×3%+6万円

例えばビルの売却価格が8000万円だった場合、仲介手数料は8000万円×3%+6万円=246万円となります。

ビルを売るときの注意点

注意点1】管理会社との連携が必要

ビルの売却は管理会社とも連携が必須です。売却の予定をあらかじめ伝えておきましょう。

ビルの管理会社の経営にも影響するので、売却が決まった時点できちんと話してください

配慮して対応することで、ビルの管理会社からも理解が得やすくなります。

注意点2】テナントに立ち退いてもらう場合はコストがかかる

買主から立ち退きをを要求された場合は、対応が必要なケースがあります。

その場合は、テナントに対し立ち退き料の支払いが必要になるでしょう。

立ち退きは、売却の1年前くらいから入居者との交渉を進めていくようになります。

ただし、立ち退きを希望するメリットは少ないです。

テナントも空いてしまうので、無理な立ち退き依頼はおすすめできません。

注意点3】ビルを売る時はテナントへの通知を忘れない

ビルを売る際は、テナントへの同意を求める必要はありません。

ただ、オーナーが変われば賃料の振込先が変わるので、必ず通知をおこないましょう

通知は売主と新貸主の連名で通知書を出すのが一般的です。

売主、新貸主、テナントの3者で同意書(賃借人の地位承継通知書及び同意書)に押印をして、完了となります。

注意点4】テナントから預かっている敷金の確認をする

ビルの売却前に、テナントから預かっている敷金を確認しましょう

敷金は新しいオーナーに引き継がれるので、ビルの購入価格から敷金分を差し引いて支払われます。

敷金についてビルの管理会社が管理している場合は、手続きが長引く場合も多いです。

テナントの敷金の状態を、ビル売却前に確認しておきましょう。

注意点5】オーナーチェンジは物件売買より価格が下がる

全室が空室の空きビルを売買するケース以外に、テナントとの契約がまだ残っているビルを譲渡する場合は、オーナーチェンジ(オーナー権譲渡)が一般的です。

オーナーチェンジ

ビルの賃貸契約状況はそのままに、ビルのオーナーのみが変わる(オーナー権を売買する)というやり方ですが、空きビルの売買に比べて買主側のメリットや権限が少ないため、価格が低くなりがちです。

オーナーチェンジの売却相場
ビルの状態 想定される価格相場
都心のビルや満室状態のビル、大手企業がテナント入居しているビルなど 空室時とほぼ同額~1割引き程度
中規模地方都市のビルや一部空室状態のビル、一定以上の規模がある中小企業がテナント入居しているビルなど 空室時の1割~2割引き程度
郊外のビルや築古のビル、テナントが分散状態・空室が多い状態のビルなど 空室時の2割~3割引き程度
特定用途限定のビルなど(飲食・風俗・物販など) 空室時の2.5割~4割引き程度

全体的に、空きビルの売買時に比べて10%~30%ほど価格が下がることが多いので、注意が必要です。

ビルの売却で発生する税金を節税する方法

ビルに限らず不動産を売却する際には税金が発生します。

できる限り節税する方法として、次の方法を押さえておきましょう。

ビルの売却で税金を節税する方法
  • 所有期間が5年を超えた後に売却する
  • 減価償却を行う
  • 相続したビルは取得費加算の特例が適用できる

上記の節税方法をそれぞれ解説していきます。

所有期間が5年を超えた後に売却する

ビルなどの不動産を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」が発生します。

所有期間が5年以下であれば短期所有として税率が39.63%なのに対し、5年以上所有すると税率が20.315%と大幅に下がります。

所有期間は売却した年の1月1日時点での年数となります。

もう少しで所有期間が5年を超えるといった場合、待ってから売却する選択肢もあります。

減価償却を行う

減価償却費=ビルの購入価格×0.9×償却費×築年数」で計算できます。

減価償却で利益を小さく見積もることができれば、支払う税金の金額も減らすことが可能です

また課税譲渡所得がマイナスになったとしても、損益通算をして税金を節税できるので、確定申告をしておいた方が得になります。

相続したビルは取得費加算の特例が適用できる

相続したビルであれば、「取得費加算の特例」が適用されます。

支払う相続税の一部を譲渡所得税の取得費に加算できる制度で、利益を大幅に圧縮できる可能性があります。

取得費加算の特例は、次の要件を満たす必要があります。

取得費加算の特例の要件
  • 相続で財産を受けとった相手であること
  • 相続してから3年10か月以内に売却した場合

また相続前に親族がビルを所有していた場合は、相続してから3年10か月以内に売却した場合でも長期取得として計算できます。

参考:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

注意点を抑えてビルをスムーズに売ろう

ビルを売る際に抑えておきたい注意点を分かりやすく解説していきました。

仲介業者と契約したら販売営業や広告作成などを任せることになります。

しかし、売却を成功させるには売主の知識が重要です。

ここで紹介したような最低限の知識を抑えておき、スムーズにビルを売りましょう!

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