不動産取引で良く聞くのが、実勢価格という言葉です。
果たして、実勢価格とはどんな意味なのでしょうか。
その他、不動産取引では多くの価格が登場してきます。
今回は、実勢価格とそれらの価格の違いについても、わかりやすく紹介していきます!
実勢価格とは市場で売買される価格(時価)のこと
実勢価格は、市場で売買されている市場価格のことです。
例えば、ある土地が国土交通省の調査では、2,000万円とされたとします。
しかし、経済状況やトレンドの変化なので、実際の市場では1,800万円など、違う価格で売り出されるケースは良くあります。
この時、1,800万円が実勢価格となります。
ただし、売り出し価格=実勢価格という訳では必ずしもありません。
実勢価格は実際の取引価格なので、1,800万円の土地が200万円値引きされて取引されたなら、1,600万円が実勢価格となります。
ポータルサイトや広告に記載されている価格は実勢価格とイコールではない
SUUMOなどのポータルサイトや、新聞の折り込み広告に記載されている価格は、売り出し価格と言われます。
この価格は売買が成立するまでに値下げをすることも多いので、必ずしも実勢価格とイコールではありません。
売り出し価格は査定額を参考にしつつ、売主の希望も鑑みて設定するので適正価格より高くなることが多く、その分値下げを希望する買主も多くなります。
実勢価格を調べる4つの方法
実勢価格は、意外と初心者でもデータベースを使って調べることができます。
初心者が出来る調べ方としては、基本的に過去の類似物件の実勢価格を調べて、だいたいの価格帯を知るという流れになります。
その物件と実勢価格がかならずイコールになる保証はないですが、相場のイメージを掴むには十分と言えます。
ここからは、実勢価格を調べる3つの方法を紹介します。
レインズで類似物件の実勢価格を調べる
レインズは売り出し中の不動産や、過去の成約事例がほぼ全て掲載されています。
このサイトを利用して類似物件の成約事例を見れば、だいたいの実勢価格が分かります。
ただ、レインズは正規の不動産会社しか情報を確認できないので、不動産会社に情報を共有してもらえるか相談することをおすすめします。
国土交通省の「土地総合情報システム」を使用する
土地総合情報システムは、国内で行われた直近5年間の売却事例を管理している巨大なデータベースです。
当システムの管理・運営は、国土交通省が務めており、不動産の取引価格をはじめ、公表されている公示地価や基準地価の確認も行えます。
土地総合情報システムの「不動産取引価格情報」では、以下の物件種別を調べることが可能です。
- 土地
- 土地と宅地
- 中古マンション
- 農地
- 林地
土地総合情報システムの「不動産取引価格情報」を介して検索できる情報は、不動産取引価格情報に加えて、所在地や土地面積、坪単価、取引時期などの情報が得られます。
ただ、過去の取引時と今では、景気や都市開発状況などに違いがある可能性もあるので注意しましょう。
さらに、エリアによっては、取引事例が指折り数える程度にしか閲覧できなかったり、取引事例そのものがない場合もあります。
不動産会社に無料査定を依頼する
多くの不動産会社は無料で査定をしてくれます。
実勢価格を知りたいのであれば、プロに依頼するのが最も早いと言えるでしょう。
ただ、業者見積りはあくまで各社の私見なので、本当の実勢価格と乖離するケースも多いです。
査定額を吊り上げて契約を取ろうとする悪徳業者も存在するので、十分注意しましょう。
固定資産税評価額から実勢価格を計上する
固定資産税評価額とは、固定資産評価基準を基に、土地や住宅などの「不動産」に対してどのような評価を定めるかを設定した評価額です。
固定資産税評価額は、毎年4月に自治体から送付される固定資産税納税通知書から知ることができます。
手元に固定資産税納税通知書がない場合は、期間限定で公開される固定資産税課税台帳の閲覧申請を行うか、固定資産評価証明書を取得するかで情報が得られます。
先の方法で固定資産税評価額の情報を得たら、以下の計算式を用いることで、おおよその実勢価格を知ることができます。
実勢価格=固定資産税評価額÷0.7×1.1
例えば、固定資産税評価額が2,100万円だった場合、実勢価格は2,100万円÷0.7×1.1=3,300万円となります。
なお、固定資産税納税通知書は、不動産売買を行うときに必要な書類であり、再発行ができませんので、大切に保管しておきましょう。
実勢価格の計算方法
実勢価格の調べ方は、前節で紹介した4つの方法のいずれかで調査するのが手っ取り早く、手間もかかりません。
しかし、紹介した4つの方法以外で実勢価格を調べることも可能です。
手間がかかる一方、おおよその実勢価格が把握できるうえ、査定依頼を出した際の基準額として活用できます。
以下は、実勢価格の計算方法です。
- 路線価を基に計算する
- 相続評価額を基に計算する
- 基準地価を基に計算する
- 公示価格を基に計算する
路線価を基に計算する
路線価とは、土地が接している主要道路に設けられた1㎡当たりの評価額のことを指し、国税庁が毎年7月ごろに公示しています。
路線価は、相続や贈与にかけられた税額を算出するときに用いることが多いですが、実勢価格を算出するときにも使用します。
路線価を用いて算出される実勢価格は、公示価格の約80%に相当する額になるよう設定されています。
また公示価格は、実勢価格よりもやや定額になっており、公示価格に1.1~1.2をかけることでおおよその実勢価格が算出できます。
これを計算式に起こすと、とかのような式になります。
実勢価格=路線価÷0.8×1.1
先も申したように、市場状況に応じて、路線価は毎年見直しが実施されます。
そのため、路線価は土地価格の変動をリアルタイムで反映させているので、実勢価格を調べるには最適です。
相続評価額を基に計算する
相続税評価額とは、相続税や贈与税を求める時の基準になる課税価格です。
相続税評価額を求める方法は、先ほど紹介した路線価を用いて計算する方法と、倍率方式の2方法があります。
前者の路線価から相続税評価額を求める方法は、路線価図にある単価に土地面積をかけて算出します。
一方、後者の倍率方式は、路線価がないときに用いる方法で、固定資産税に税務署が設定した倍率をかけて算出します。
この2方法のいずれかを用いて算出した相続税評価額は、公示価格の80%に相当するので、以下の計算式になります。
実勢価格=相続税評価額÷0.8(公示価格)
上記計算は、公示価格の把握が難しいときに利用するのがおすすめです。
基準地価を基に計算する
基準地価とは、各都道府県の自治体が年に1度、毎年9月下旬に公表している土地価格のことです。
基準地価は、国土交通省が管理運営している「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」から調べることができます。
この基準地価を用いて、実勢価格を求めるときは、以下の計算式を用いて算出します。
実勢価格=基準地価×1.1
冒頭でも出てきましたが、実勢価格は基準地価の1.1~1.2倍に相当する金額です。
この計算式を用いれば、簡単におおよその実勢価格が把握できます。
公示価格を基に計算する
公示価格は、国土交通省が毎年3月半ばに公表している土地売買の指標になる土地価格を指し、毎年1月1日現在の土地価格を、国土交通省の土地鑑定委員会が決定しています。
公示価格は、土地の実勢価格同様、「土地総合情報システム」から調べられます。
公示価格を把握できたら、基準地価同様、公示価格を1.1~1.2倍してあげると、実勢価格が算出されます。
なお、公示価格は、土地の実勢価格とイコールの関係ではありません。
実際に土地の売買を行うときは、実勢価格基準として、土地周辺の状況や状態、今後の需要バランスなどの要素を加味して売買価格を算出します。
実勢価格と公示地価・基準地価・路線価は何が違う?
項目 | 公示地価 | 基準地価 | 路線価 |
---|---|---|---|
公表団体 | 国土交通省 | 自治体 | 国税庁 |
公表時期 | 3月半ば | 9月下旬 | 7月上旬 |
調査時期 | 1月1日 | 7月1日 | 1月1日 |
調査方法 | 2人以上の不動産鑑定士が鑑定評価、その結果を土地鑑定員会が審査 | 1人以上の不動産鑑定士が鑑定評価 | 公示地価を中心とする各評価額を総合的にチェックして算出 |
調査場所 | 全国約2万3,000カ所 | 全国約2万カ所 | 全国約41万カ所 |
実勢価格の他に、公示地価・基準地価・路線価というものもあります。
不動産取引でそれぞれ良く出てくるので紛らわしいですが、内容にそれぞれ違いがあります。
これらの価格と、実勢価格の違いを見ていきましょう。
実勢価格と公示地価の違い
公示地価は国が調べた土地価格で、価格設定や税金計算など、あらゆる不動産評価の基準になります。
実勢価格も、この公示地価をベースに設定されます。
実勢価格と基準地価の違い
基準地価と公示地価の調べ方や内容は、ほぼ同じです。
ただ、調査母体や評価時期が異なるので、主に公示地価と比較して価格推移を見るのに役立ちます。
実勢価格と路線価の違い
路線価は、その名のとおり路線(道路)の価格のことです。
土地の相続税評価額を算出するために、路線価は良く利用されます。
実勢価格と公示価格との関係性
前節で、公示価格は、土地売買を行うときの指標として用いると説明しましたが、実際の取引の場においては、公示価格を用いて土地売買を行うことはなく、実際の売却価格と公示価格には乖離性があります。
ここでは、実勢価格と公示価格の関係性を絡めて、価格が一致しない理由を解説します。
実勢価格は土地条件や取引事情によって変動する
実勢価格は、土地周辺の状況や土地の状態、面積、今後の需要バランスなど、様々な要素が複雑に絡み合うことで価格を増減させます。
さらに、売り急ぎや買い進みなど、取引相手の事情も価格に大きな影響を及ぼします。
仮に、これら要素を一切含めず、公示価格のみで取引を行った場合と、要素を含めて取引を行った場合とでは、数百万円単位の差額が生じます。
つまり、公示価格を参考に取引金額を設定したとしても、その設定額は公示価格とは異なる金額になるのが常です。
実勢価格は常に変動している
地価は、土地周辺環境の需要や市場状況など、様々な要素の影響を受けながら常に変動しています。
例えば、新駅や大型ショッピングモールの開業などの都市開発の影響で、そのエリア一帯の地価が上昇するようなケースです。
しかし、現在公表されている公示価格が、都市開発の影響を受ける前に決定したものであれば、実勢価格に大きな差が生じます。
つまり、土地の売買を行うときは、取引に出すエリアの値動きを注視しておかねば損する結果になります。
不動産取引における「実勢価格」に関する質問
ここからは、不動産取引における実勢価格を調べるうえで知っておきたいことや、解決しておきたい疑問を質問形式で解説していきます。
Q.実勢価格と公示地価に解離性が生まれるのはなんで?
公示価格は、国土交通省が年に1度のペースで調査し、公表している価格です。
毎年1月1日時点の土地価格を3月半ばに公表し、翌年まで1月1日まで価格の更新調査を行いません。
対して、土地価格は取引状況や経済情勢などの影響を受けながら、常に変動し続けています。
土地価格の変動が起きても公示価格の更新を翌年まで行わないのには理由があります。
それは、公示価格が土地取引の指標、つまり基準価格として利用されているためです。
また公示価格を変動が起きるたびに更新していれば、公共事業と国民の税収に悪影響を及ぼすため、年に1度、決まった周期で調査・更新を行っています。
Q.路線価から実勢価格を求める時に路線価がない場合は?
実勢価格を求める時、路線価から求める方法があると、「実勢価格の計算方法」で解説しました。
しかし、エリアによっては、路線価が設けられていないエリアも存在します。
そのときは、自治体から送付される固定資産税通知表中にある固定資産税に税務署が設定した倍率をかけることで算出できます。
なお、ここで算出される価格は、おおよその価格になるので、正確な価格をとりたいときは、不動産会社に査定依頼を出して価格を把握するのが最適です。
Q.公示地価・基準地価・路線価はどんなときに活用するの?
公示価格と基準地価は、主に土地売買を行うときに活用します。
とはいえ、公示価格と基準地価を用いても、実際の取引価格とでは数百万円もの差額が生じます。
なので、公示価格と基準地価を使用するときは、おおよその取引価格を考える基準額として活用したり、購入時の価格との比較に用いる参考価格としての活用ができます。
また、路線価は、相続税や贈与税を調べるときに使用します。
実勢価格とそれ以外の評価額の違いを整理しよう
実勢価格も公示地価なども不動産の価格を表す指標ですが、その中身や目的は少しずつ違います。
売買で利用するか、税金の計算で利用するのかなど、用途に応じて利用する価格を使い分けていきましょう。