あなたが住んでいる家は、買った当時の価値のままではありません。経過した築年数や壁のキズ・汚れの分だけ、評価は下がっていきます。
自分の持ち家の評価を調べることは、相続や売却の際には必要となってきますが、特にイベントがなくても自分の家の最新評価は知っておきたいものです。
意識しない方も多いですが、家はほとんどの人にとって持っている中で最高額の資産です。
その資産の評価額が分からないということは、今後の人生で大きな選択ミスをする要因になりかねません。
「家の評価額を調べるなんて面倒だなあ…」と思う人も多いですが、調べ方を知っていればネットで簡単に出来るので、不動産会社に来店する必要がなく、費用もかかりません。
今回は、家の評価額を調べる方法を初心者にもわかりやすく解説していきます!
慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手監査法人の金融部、独立系会計コンサルティング会社のM&A部門を経て2009年に独立。
独立後は、設立間もないベンチャー企業から100年超の社歴を有する老舗まで幅広く税務や財務のお手伝いをしております。
不動産に関してはM&A支援の場面や個人投資家の資産運用の相談の時に対応しております。
閉じる
【概要】家の評価額とは?
家の評価額とは、不動産評価額のことを指し、土地や建物などの不動産に関わる税金を求める時に使用する基準額です。
例えば、所有する自宅を売却するとき、どれくらいの価値があるのかを調べたいときや、固定資産税・都市計画税などの税金を納める時に、この評価額を使用します。
不動産評価額には、種類があり、納税や売却など、目的によって計算方法が異なります。
家の評価額は4種類ある!それぞれの内容と計算方法
家(建物+敷地)の評価額には、4つの種類があります。
- 時価(実勢価格)
- 公示価格
- 基準地価
- 固定資産税評価額
単に「家の評価を知りたい」と思っても、その目的によって調べる評価額は異なってくるのです。
ここからは、4つの評価額のそれぞれの内容・目的と計算方法を解説していきます。
種類 | 公表機関 | 評価基準日 | 公表時期 |
---|---|---|---|
時価(実勢価格) | - | - | - |
公示価格 | 国土交通省 | 毎年1月1日 | 毎年3月 |
基準地価 | 都道府県 | 毎年7月1日 | 毎年9月 |
固定資産税評価額 | 市区町村 | 1月1日(3年ごとに評価替え」 | 毎年4月 |
評価額①家の時価(実勢価格)
家を売る前に必ず調べたいのが、時価(実勢価格)です。
いわゆる市場価格のことで、不動産屋が算出する査定額もこれに当たります。
時価の調べる際は、まず取引事例比較法、原価法、収益還元法という3つの計算方法から最適なものを選びます。
その結果を地域のブランドや経済状況、アクセスの良さなどの項目に応じて修正して算出します。
時価を調べる明確な計算式はないので、不動産会社ごとに金額が違うことも多いです。
そんなあいまいな評価額なのであくまで売る際の参考にする程度で、公式書類に時価を書き込むことはできません。
実勢価格の求め方
家を売却する前に調べておきたい実勢価格を求める際は、毎年自治体から通知される固定資産税納付通知表内の固定資産税評価額を基に計算していきます。
以下は、固定資産税評価額を使用して、実勢価格を求める時の計算式です。
実勢価格の目安=固定資産税評価額÷ 0.7 × 1.1
例えば、所有している家の固定資産税評価額が2,100万円だった場合の実勢価格は、3,300万円(2,100万円÷0.7×1.1)となります。
なお、ここで求める実勢価格は、あくまで目安額です。
正確な価格を知りたいときは、不動産会社に訪問査定の依頼を出すことで正確な価格が知れます。
評価額②公示価格
公示価格は、国土交通省が毎年1月1日に発表する全国の土地の価格です。
時価も含めて全ての不動産の評価は、この公示価格を基準にしておこなわれます。
公示価格は経済状況や周辺環境を鑑みて付けられるので、時価と似てはいますが重要さは段違いです。
ただ、公示価格は土地一つ一つの状態(表面は荒れているか、地質は汚染されていないか、など…)をチェックしてはいないので、売却価格とイコールではありません。
土地の上に建物が建っている場合は築年数、眺め、方角など、より多くの要素が関わってくるので公示価格だけではカバーできません。
家を売る際は。必ず不動産会社にチェックしてもらうことをおすすめします。
公示価格の求め方
公示価格は、国土交通省が管理・運営している土地総合情報システムの土交通省地価公示・都道府県地価調査を用いることで調べられます。
土交通省地価公示・都道府県地価調査にアクセスしたら、土地価格を調べたい地域を選択して調査します。
調査を進めるときは、以下の項目条件を設定して調べます。
- 調査対象(地価公示価格・都道府県地価調査・地価公示価格、都道府県地価調査の両方)
- 調査年
- 用途区分
- 地価
上記4つの項目条件を設けることで、該当する市町村内の公示価格が表示されます。
表示されたら、「価格(円/m2)」を見ましょう。
評価額③基準地価
基準地価は、都道府県が主体となって算出される価格です。
計算の仕方は公示価格とほぼ同じなのですが、最も異なるのは評価をする範囲の違いです。
公示価格は都市部の土地を中心に算出されますが、基準地価はそれ以外の工業地、農地なども調べられます。
評価額④固定資産税評価額
固定資産税評価額は、その名の通り不動産の固定資産税を計算する際に使う評価額のことです。
固定資産税評価額は毎年おくられてくる納付書に記載されているので、こちらを確認すればOKです。
固定資産税評価額の求め方
固定資産税評価額を基に、固定資産税を求めるときは、以下の計算式を使用します。
固定資産税=固定資産税課税標準額×1.4%(※標準税率)
基本的には、上記計算式を用いて納付する恋低資産税の税額を算出しますが、自治体によって、固定資産税の税率が異なります。
また固定差資産税は、建物と土地のそれぞれにかかります。
建物にかかる固定資産税は、固定資産税評価額と固定資産税課税標準額は同額ですが、土地にかかる固定資産税は、土地種類に応じて、固定資産税評価額と固定資産税課税標準額が変動します。
なお、納付額の相場としては、公示価格の7割ほどになります。
ちなみにこの評価額をもとに、相続税評価額も計算します。
相続税評価額に関してはこちらに詳しくまとめているので、併せてお読みください。
家の評価額(時価)を調べる簡単な方法
ここまで4種類の家の評価額について解説しましたが、家を売る時にチェックしたいのが時価(実勢価格)です。
時価と売れる金額はほとんどイコールなので、まず時価を調べて、そもそも売るべきか、いつ売り出すかの判断をするのがおすすめです。
ただ、前述の通り不動産の時価はプロが専門知識をフル活用して算出するので、素人にはなかなか難しいです。
ただ、時価(売却価格)が公表されている、似た家を参考に自分の家の時価をイメージすることはできます。
そのやり方について、ここから分かりやすく解説していきます。
似ている家の成約事例・売り出し価格のデータを集める
まずは、評価したい自分の家と似ている物件の過去の成約事例や、現在売り出し中のもののデータを集めていきましょう。
データが集まっている以下のようなサイトを使って、周辺地域の調査をするのがおすすめです。
- 不動産ポータルサイト(SUUMOなど)で売り出し情報を検索
- レインズ・東京カンテイなどの専門サイトでデータを検索
- 不動産会社の公式ページや運営サイトを使う
- 国土交通省「土地情報総合システム」を使う
次に、似ている家の特徴ですが、できれば以下の項目が同じ事例を探しましょう。
- 築年数
- 家の構造
- 最寄り駅までの距離
- 間取り・設備など
データの数が多いほど、実際に近い評価額が計算できます。
取引事例比較法を使う
データをある程度集めたら、次に評価額の計算をしていきます。
評価額の計算方法は、主にこちらの3種類です。
- 取引事例比較法:最もオーソドックスな方法
- 原価法:全く同じ家を建て直したと仮定して価格計算
- 収益還元法:賃貸に出した時の収益性から評価額を計算
取引事例比較法は、その名の通りいくつかの類似の事例の相違点に着目して評価額を算出します。
物件 | 坪数 | 売買価格 |
---|---|---|
家A | 40坪 | ? |
家B | 50坪 | 2,000万円 |
家C | 80坪 | 3,000万円 |
例えば、家A(築30年木造、××駅まで徒歩5分)と築年数、構造、アクセスの条件が同じ取引事例が2つ(家Bと家C)あれば、以下のように評価額を計算します。
2,000万円÷50+3,000万円÷80)÷2×40=(40万円+37万5000円)÷2×40=1550万円
家の評価額を調べる方法
ここからは、売却価格を決める時の指標になる評価額を知りたいときに用いる調査方法を5つ紹介します。
固定資産税納税通知書で把握する
固定資産税納税通知書は、家の公式な価値を把握するための一つの手段となります。
これは、市町村から毎年送られてくる書類で、土地や建物の評価額とその計算方法が詳細に記されています。
評価額は、その土地や建物を所有している1月1日時点での価格を基に計算され、新たに家を建てたり、リフォームをしたりした場合でもその影響を反映します。
そのため、この納税通知書を見れば大まかな評価額が把握できます。
また、固定資産税評価額は、公示価格の70%になっているので、「固定資産税評価額 ÷ 0.7」という計算式を用いることで公示価格が求められます。
公示価格は、実勢価格の代用として使用されることもあるので、公示価格を不動産価格の相場の目安にできます。
固定資産評価証明書で把握する
固定資産評価証明書は、市町村が発行する公的な証明書で、土地や建物の評価額と、その評価に至った経緯や根拠の確認ができます。
家や土地の売買や相続、贈与などの際には、評価証明書が必要となるケースが多く、一般的には申請を行ってから数日後に発行されます。
この証明書を取得することで、より正確な評価額の把握ができます。
ただし、固定資産評価証明書は、資産に関する個人情報を取り扱う書類なので、先の固定資産課税明細書のように、自動的に送付されるものではありません。
そのため、自分の手で市役所に問い合わせて取り寄せて確認するしか方法がありません。
取得には1枚数百円程度の手数料がかかり、戸建て住宅の場合、土地と家屋でそれぞれ1枚ずつ必要になります。
土地総合情報システムを用いて調べる
土地総合情報システムは、国土交通省が運営する公式サイトであり、不動産の取引情報や公示価格、土地の形状や利用状況など、さまざまな情報を提供しています。
具体的な利用方法は、サイト上で特定の地域や不動産を検索し、該当する情報を見つけ出すだけです。
こうした情報をもとに市場価格を推定することで、自宅の評価額を間接的にでも把握できます。
一括査定サイトを活用する
一括査定サイトを活用すると、複数の不動産会社による評価額を一度に比較できます。
これは、各社の市場価格の見方や評価基準の違いを把握する上で有用です。
具体的には、サイトに必要な情報を入力し、申し込むと各社から評価額や見積もりが届くシステムとなっています。
ただし、あくまで参考の一つと考え、最終的な評価額は訪問査定等により確定されることを理解しておきましょう。
訪問査定を利用する
訪問査定は、不動産会社のプロの査定士が直接家を訪れて査定を行う方法です。
これにより、建物の構造や設備、状態などを詳細に把握し、より正確な評価が下せます。
一括査定サイトなどで大まかな評価額を把握した後、売却を検討している場合には訪問査定を利用するとよいでしょう。
ただし、訪問査定は時間や手間がかかるため、準備やスケジューリングに注意が必要です。
家の評価額=売値ではない理由
せっかく調べた家の評価額ですが、必ずしもその通り売れるとは限りません。
なぜ家の評価額と実際の売却価格が異なるのかには、大きく3つの理由があります。
それぞれ見ていきましょう。
理由①家の内装の状態が考慮されていない
上で紹介した計算方法では、家の内装の状態まで比較することはできません。
家Bと家Cは内装が傷だらけで柱も劣化していたなら、家Aの評価額は計算で求めた金額より高くなるでしょうし、逆もしかりです。
内装だけでなく、敷地と道路までの距離、備え付け設備の古さなども売却価格には大きく影響します。
理由②買主のニーズ・交渉力を考慮していない
一戸建て住宅は、基本的に住む人の要望に合わせて建てます。
例えば、家A、B、Cがいずれも大家族が住むことを想定して建てた、子ども部屋の数が多い物件だったとします。
数年前の家B、家Cは売りだしたら同じような境遇の大家族にたまたま見つかり成約しましたが、家Aはタイミング悪く大家族があらわれず、売れ残ってしまう可能性もあります。
また、買主が契約前に値下げを要望してくるかも知れません。
「値下げの希望は断ればいい」と思うかもしれませんが、購入希望者の募集をかけて内覧をクリアし、契約にこぎつけるまで結構な手間と労力を要します。
値下げを断って契約が白紙になれば、また最初から募集しなければならないのは覚悟しておきましょう。
不動産売買では、高額を支払う買主の希望をどうしても聞きがちになります。
下げ幅が大きくないなら、気前よく下げてしまうのも一つの手です。
理由③不動産会社の実績・営業姿勢を考慮していない
売却前は、不動産会社に依頼すれば査定額を無料で計算してくれます。
しかし、査定額は時価と少し違います。査定額は「家を自社が請け負って3か月ほどで成約を結んだ時に付くであろう予想価格」なので、業者によって開きがあります。
「家を高く売る」といっても、仲介売却の場合は販売活動のほぼ全てを契約した不動産会社がおこないます。
つまり、高く売りたいと思ったら、高く売ってくれる不動産会社を探して契約をする必要があるのですが、これには複数社の査定額を比較することが不可欠です。
不動産に関する手続きは全て決まった店舗に依頼している人も多いですが、懇意にしていることと高く売ってくれることはまた別なので、客観的に比較する必要があります。
家を評価額より高く売るポイント
家の評価額は実際の売却価格とは異なりますが、逆に言えば評価額が低くても高く売ることは出来ます。
家を売る際は適当な不動産屋と契約して、あとはほったらかしという人も多いです。
ただ、売主がちょっとした努力をするだけで高く売れる可能性は大幅アップします。
ここからは、家を評価額より高く売る3つのポイントを紹介していきます。
掃除・整理整頓で第一印象をアップ
家の評価額は公的機関や不動産会社によって算出されますが、実際に中古の家を買うのは貴方と同じ素人です。
良い家かどうかを見極める時、プロほど構造や設備に目がいき、素人ほど第一印象のきれいさに目がいくと言われます。これを逆手にとって掃除を徹底すれば、高く早く売れる確率がアップします。
特に玄関や水回りは汚れやすく、最初に目がいく場所なので、力を入れて掃除をしましょう。
自力で限界があるなら、ハウスクリーニング業者に依頼するのも一つの手でしょう。
長年住んだ人しか分からない情報を整理する
広告に掲載された情報と内覧時の第一印象で、買主の家に対する印象はある程度固まってしまいます。
ただこの時、「騒音がなく住みやすい」「スーパーが安くて便利」といった情報を共有することで、買主の家に対する評価がアップする可能性があります。
家自体だけでなく、地域も含めた魅力を10点は持っていたいものです。
目に見える価値をつける
見た感じはそこそこ良くても、本当に買っていいのか判断に悩む方も多いです。
この時に後押しになるのが、プロからもらう”お墨付き”です。
代表的なのが、地盤調査の結果報告書です。
現在は大型地震の危険性が指摘されており、家に求められる耐震性の基準が高まっています。
事前に地盤調査をした結果を買主に見せれば、高く売れやすくなります。
また、2018年からは安心R住宅という制度が導入され、一定の基準を満たした中古の家は指定団体から優良住宅のお墨付きをもらうことができます。
こうした調査や制度の利用をやるかどうかで、買主からの信頼が大きく変わります。
家の評価額に関する質問
ここでは、家の評価額を算出する上で知っておきたいことや事前に解決しておきたいことを質問形式で解説します。
Q.家の評価額を調べる方法は?
家の評価額は、以下の方法で調べます
- 時価(実勢価格)
- 公示価格
- 基準地価
- 固定資産税評価額
「家の評価額を調べたい」といっても、目的によって評価額の調べ方が変わってきます。
例えば、自宅を売却するために評価額を確認しておきたい場合は、時価(実勢価格)からおおよその価格の確認ができます。
Q.固定資産税評価額は何処で確認できる?
毎年4月頃に自治体から通知される固定資産税納税通知書内の「価格」から確認ができます。
の土地がある役所の固定資産課税帳簿を閲覧したり、自治体から固定資産評価証明書を取り寄せて確認することも可能です。
また固定資産税は、相続税評価額を計上するときに使用するので、通知書が来たら大切に保管しておきましょう。
Q.戸建て住宅とマンションの評価額の計算式は同じですか?
マンションはマンションで、異なる求め方を行いますので、戸建て住宅の評価額を計算する時に用いた計算式は使用しません。
マンションの評価額を求めるときは、建物と土地に分けて、それぞれの評価額を算出して合算することで求められます。
Q.購入予定の戸建て住宅の評価額を求めることは可能ですか?
評価額を求めるのに、必要な固定資産税の納税通知表が必要になります。
しかし、購入予定の物件が新築の場合はモデルルームやモデルハウスを展示している販売元に問い合わせたり、中古物件の場合は、仲介会社の担当者に問い合わせることで確認ができます。
なお、確認できる価格はあくまで参考価格であり、実際の価格と乖離している可能性が高いです。
Q.評価額と不動産の売却価格はイコールの関係ですか?
無関係です。
固定資産税の評価額が高くても、不動産の売却価格が低い場合が多々あります。
そもそも建物の固定資産税評価額は、新築当初の請負工事金額の約50%~60%で評価され、築年数を重ねても固定資産税が変動することはありません。
また固定資産税評価額は、あくまで、固定資産税等の税金を課すための評価額であり、時価に応じて評価額が減額していけば、税収にバラつきが生まれます。
Q.評価額に納得がいかない場合はどうすればいい?
毎年4月1日~納期期日までの約1ヶ月間、縦覧制度と呼ばれる制度が設けられており、そこでは、自分の不動産を含む、他の納税者の固定資産税評価額の閲覧ができます。
近隣住居の評価額と自宅の評価額を比較して、あまりにも金額差がある場合は、自治体に問い合わせれば、適切な評価がなされているのか同課の審査申請ができます。
家の評価額と価値・売値の違いを理解しよう
ここまで家の評価額について解説しました。
家の時価は本来の価値とも、売値とも異なることが理解できたでしょうか。
この辺を整理できずに認識していることが。不動産取引を何となく不透明に見せている大きな原因でもあります。
違いを理解して、家の評価額を調べていきましょう!