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不動産売却

不動産売却の3,000万円特別控除とは?制度の仕組みと適用条件・必要書類を徹底解説

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不動産売却をおこなうと、売却代金を得られる一方で多額の税金を支払う必要も出てきます。

ただ、こうした税金は法人・個人のどちらも対象として課されるものなので、個人の方は不利となっています。

そのため、国は個人でも不動産を売却しやすくできる税政策を実施しています。

その中の代表的なものが「居住用財産の3,000万円特別控除」で、不動産売却によって得た譲渡所得の金額から最高3,000万円まで特別に控除してもらえるというものです。

この3000万円控除はどのようにして利用するのでしょうか。

この記事の監修者
水野 崇
監修者
水野総合FP事務所 代表
水野 崇さん

宅地建物取引士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者。

相談、執筆・監修、講演・講師、取材協力、メディア出演など多方面で活動する独立系ファイナンシャルプランナー。

全国1000名以上から日本FP協会に寄せられる「くらしとお金」の電話相談を1年間担当。
年300本の執筆・監修を手掛けながら、学校法人専門学校では非常勤講師として金融リテラシー講義を毎週行っている。

●水野総合FP事務所のホームページ
(https://mizunotakashi.com/)

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3000万円特別控除=譲渡所得を控除する制度

3,000万円特別控除を一言でいえば、譲渡所得に課される税軽減できる特別控除のことです。

居住用物件や相続物件を売却する際、購入時よりも売却価格が上回っていれば、「売却益=譲渡所得」が発生します。

この譲渡所得が発生した場合に、税金が課され、これを一般的に譲渡所得税と言います。

つまり、譲渡所得が多くなるほど、譲渡所得税も高額になっていく仕組みです。

ただ、譲渡所得は売却代金と購入費用の純粋な差額で計算されます。

そのため、売却時にかかった費用(譲渡費用)などは、譲渡所得から差し引いて計算します。

譲渡所得の基本的な内容

譲渡所得とはその名の通り「資産の譲渡で得られる所得」を表す言葉で、不動産売却の場合はその売却益が当てはまります。

計算式で表すと、以下のようになります。

譲渡所得=売却代金-(購入時に支払った費用+売却にかかった費用)

更にこの計算で算出した譲渡所得に対して税率をかけて、譲渡所得税が計算されます。

3000万円特別控除は、この譲渡所得を最大3,000万円分控除できるという仕組みなので、譲渡所得が3000万円以下の場合は税率×0=0となり、譲渡所得税は発生しません。

譲渡所得が発生するケース

3000万円特別控除の対象は居住用不動産(マイホーム)ですが、こちらは築年数の経過によって建物の資産価値が下がるのが一般的なため、売却価格が購入価格を上回るケースは稀です。

それでも近年では、リーマンショックや東日本大震災で不動産市況が落ち込んだ時に安値で購入した物件を、東京オリンピック特需に沸く2018、2019年あたりに売却して譲渡所得が発生したケースは増えました。

さらに、現在新築マンションの価格高騰が続いているため、新築時に購入した都市部のマンションなどを築年数が浅い段階で売却すると、譲渡所得が発生しやすくなっています。

不動産売却で3000万円特別控除を利用できる条件

基本的には、居住用不動産を売却するときに3000万円控除を利用することが多いです。

「相続等により取得した空き家を譲渡した場合の3,000万円特別控除」という特例も別にありますが、様々な適用要件を満たす必要がありますので、該当する可能性のある不動産を売却した方は、税務署に確認されることをおすすめします。

居住用不動産の定義

ここで一度確認したいのが、居住用不動産の定義に関してです。

居住用不動産を一言でいうと、名義人が“生活拠点”として使用する住宅+敷地を指します。

別荘やセカンドハウスは必ずしも居住用不動産ではないので、注意しましょう。

また、居住用不動産は継続的に住まいとして使用されているかもチェックされます。

3000万円特別控除の適用範囲

3000万円特別控除は、居住用不動産の居住部分に対して適用されるものです。

ただ、自営業者などの店舗兼住宅では、1階部分を店舗として活用しているケースもあるので注意が必要です。

以下に、ケース別の適用範囲をまとめました。

ケース 適用範囲
店舗と居住部分の兼用住宅 居住部分のみ
共有名義の物件 各名義人が適用できる
土地と建物が別名義 建物部分のみ
※(土地の所有者は条件を満たした場合のみ適用)

適用範囲に関しては、事前にチェックしておきましょう。

相続物件に3000万円特別控除が適用される条件

2016年に法改正がおこなわれ、もともと親が住んでいて相続後は空き家のままになっている自宅に関しても、相続で取得した相続人に対して3000万円特別控除が適用されるようになりました。

特例が適用される相続物件の条件は、以下の通りです。

  • 相続または遺贈により取得した家屋・敷地である
  • 平成28年(2016年)4月1日~令和9年(2027年)12月31日の間に売却している
  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築されている
  • 区分所有建物登記がされていない
  • 相続開始まで被相続人の一人暮らしだった
  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している
  • 売却代金は1億円以下である
  • 売却した家屋・敷地に対して他の特例控除を利用していない
  • 同じ人から相続した別の家屋・土地で同様の特例控除を利用していない
  • 親族間売買ではない

共有名義の不動産に3000万円特別控除が適用される条件

共有名義の不動産の場合、3000万円特別控除の適用範囲が少し複雑です。

共有名義の不動産に3000万円特別控除を適用させる場合に抑えておきたいポイントは、以下の2点です。

  • 3000万円特別控除の適用は1人ずつとなる(1人につき最大3000万円)
  • 3000万円特別控除の枠があまったら、土地部分も控除できる

例えば2人の共有名義人がいる場合、持分の割合に応じて控除額の上限は以下の通り割り振られます。

名義 譲渡益の分配 控除額の上限値
建物・土地ともに2人で共有 持分に応じて分配
  • A:3,000万円
  • B:3,000万円
建物・土地を別名義で共有 持分に応じて分配
  • 建物所有者:3,000万円
  • 土地所有者:3,000万円-建物の控除で用いられた金額(=建物の譲渡所得)
建物・土地のいずれかを共有・もう片方は1人名義 共有の不動産は持分に応じて分配
  • 建物所有者:3,000万円
  • 土地所有者:3,000万円-建物の控除で用いられた金額(=建物の譲渡所得)

3000万円特別控除と軽減税率は併用できる

不動産売却は、物件の所有年数によって課される税率は変化します。

所有期間が5年以下(短期譲渡所得)ですと概ね税率は高く、5年超(長期譲渡所得)では税率が低くなります。

さらに所有期間が10年を超えている居住用財産(マイホーム)を売却をした場合、一定の要件を満たせば軽減税率が適用されます。

この軽減税率は、3000万円特別控除との併用が可能ですので、10年超所有した住宅の売却時には、譲渡所得税の負担を大きく軽減できる効果があります。

不動産売却をお得にする「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を優先して適用しましょう。

3000万円特別控除を適用するための必要書類

3000万円特別控除を利用する際は、必要書類を集めた上で申請しなければいけません。

この時、必ず必要となる書類は以下の2点です。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 住民票の写し

このうち、譲渡所得の内訳書の記入は複雑ですので、注意が必要です。

譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]トラブルを避けるためにも、税務署に記載方法を相談するか、税理士に作成を依頼することをおすすめします。

相続物件に3000万円特別控除を適用させる際の必要書類

相続物件の場合は、以下5種類の書類提出が必要です。

  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
  • 登記事項証明書
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
  • 売買契約書の写し

通常の提出書類に加えて、相続状況が確認できる書類の提出も必要になります。

相続した空き家の状況によっては他の書類が必要となる場合がありますので、詳しくは税務署に確認してみましょう。

3000万円特別控除を利用するためには確定申告が必要

不動産売却に伴う譲渡所得税は分離課税という扱いなので、給与から天引きされて納付する性質のものではありません。

そのため、会社員であっても確定申告をする必要があります。

確定申告は、不動産売却をした翌年の2月16日~3月15日におこなうのが一般的です。

不動産売却の確定申告は手続きが複雑ですので、特に確定申告を自分でおこなった経験がない会社員の方などは、戸惑うことが多いでしょう。

確定申告の際は、諸経費を計算して適切に計上するなど、初心者がやるには難しい項目も多数あります。

申告書に記載する金額の誤りを防ぐため、一連の申告手続きについて税理士への依頼も検討してみましょう。

3000万円特別控除を利用する際の注意点

3000万円特別控除を利用する際は、いくつかの注意点を抑えておく必要があります。

ここからは、3000万円特別控除を利用する際の注意点を徹底解説していきます。

注意点1】居住用不動産と認められるか確認する必要がある

急な転勤で単身赴任をしている場合などは、家を空ける期間が長期になると居住用不動産と認められない事例もあります。

仮住まいや一時的な目的で入居した物件なども3000万円特別控除の対象外なので、この条件は意外に簡単そうに見えて、難しい部分でもあります。

一方、生計を一にする親族が継続して暮らしており、名義人がもともとその家に居住していた場合は、今は住んでいなくても3000万円特別控除の対象になります。

注意点2】親族間売買では3,000万円特別控除は適用されない

親子・夫婦といった親族間の売買では、3000万円の特別控除は適用されません。

これは内縁関係の人や親族経営の法人同士なども含まれます。

親族間売買では関係性が深い故に相場よりも安い価格で取引され、税務署にみなし贈与財産とされるケースも多いです。

このような事例から、3000万円特別控除による課税逃れを防ぐために、適用の対象外としているのです。

ただ、離婚時の財産分与に関しては、配偶者という扱いにはならないので、3,000万円特別控除を利用することができます。

ただ、離婚時の財産分与に関しては、配偶者という扱いにはならないので、3000万円特別控除を利用することができます。

注意点3】3,000万円特別控除の利用から3年は他の特例を利用できない

3,000万円特別控除は、3年に一度しか適用できない仕組みとなっています。

前年や前々年に3,000万円控除や他の特例を受けていないことが前提条件になっていて、3,000万円特別控除の適用から3年間は「マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用」「マイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用」などの他の特例を適用することはできません。

また、住宅ローン控除や認定長期優良住宅の特別控除などもこの期間内は利用できないので注意しましょう。

ただし、所有期間10年超の軽減税率とは重複適用できます

注意点4】居住用不動産を解体済みでも条件付きで控除可能

家屋を取り壊して更地にした場合、1年以内に売買契約を結ぶことを条件に、住まなくなった日から3年目の12月31日までに引き渡しが成立すれば、更地の売買でも特別控除の利用が可能です。

この場合、建物を解体して1年以内に買主が見つからず売買契約ができないと、3,000万円特別控除が使えなくなります。

先に建物を解体する場合は、適用期間にも注意しましょう。

また「買換え特例」や「軽減税率」を適用する場合は、不動産を取り壊した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていることが条件です。

ほかにも繰越控除などの利用では、不動産を取り壊した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていることが条件になっています。

3000万円特別控除と併用できる特例控除

一定の要件を満たしたうえで不動産を売却すれば、3,000万円特別控除と併用できて、節税効果を高められる特例は他にもあります。

ここでは、3,000万円特別控除と併用可能な特例を紹介します。

居住用財産の3,000万円特別控除と併用できる特例

居住用財産を売却した時に適用される3,000万円特別控除の場合、10年超所有していれば軽減税率の特例と併用が可能です。

この特例は、マイホームの所有期間が売却した年の1月1日時点で10年を超えていた場合、売却時にかかる譲渡所得税を軽減できます。

居住用財産を売却し、3,000万円特別控除を利用してなお、譲渡所得がプラスになってしまった場合、6,000万円以下の部分に軽減税率(14%)が適用されます。

課税長期譲渡所得金額 所得税 住民税
6,000万円以下の部分 10% 4%
6,000万円を超える部分 15% 5%

相続空き家の3,000万円特別控除と併用できる特例控除

亡くなった親族から相続した不動産を売却した場合にも、3,000万特別控除が利用できます。

相続空き家の特別控除と居住用財産の特別控除は、要件を満たせば併用が可能となります。

注意すべきは、同年内に売却すればどちらも控除を適用させられますが、両物件合わせて上限3,000万円になります。

また住宅ローン控除と3,000万円特別控除の併用は、併用不可ですが、これは居住用財産を売却した時が該当し、相続空き屋の特別控除と住宅ローン控除との併用は可能です。

3,000万円控除の条件を満たしている場合は必ず利用しよう

不動産関連のWEBサイトでは、売却時にかかる費用をおさえるさまざまな方法が紹介されています。

不動産売却には大きなお金が動きますので、売却後に発生した税金を抑える方法も理解しておいた方がよいでしょう。

3,000万円特別控除の適用には一定要件を満たす必要がありますが、特別控除を利用すれば、自宅などの不動産売却で利益が出た場合の税金を大幅に下げられる可能性があります。

譲渡所得が3,000万円までであれば、納めるべき譲渡所得税は0円になり、節税効果が極めて高い特別控除です。

この控除に関しては、確実に受けることをおすすめします。

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