賃貸物件を探していると、仲介手数料無料とかかれている物件は意外に多いです。
仲介手数料がなければ引っ越しにかかるかなりのコストを削減できるので、非常にお得に感じる方が多いです。
ただし、一般的には賃貸物件や売買物件を仲介する場合、不動産会社の利益は基本的に仲介手数料のみとなるので、仲介手数料が無料だとすると仲介業の利益はないことになってしまいます。
では、なぜ仲介手数料無料のサービスが成立しているのでしょうか?
今回は、最近流行りの仲介手数料無料物件の仕組みや注意点を分かりやすく解説していきます。
不動産売却の仲介手数料はいくらが相場?なぜ払うの?根拠・計算方法を解説
【免許登録】
宅地建物取引業免許:国土交通大臣(4)第7845号
一級建築士事務所登録:東京都知事 第62093号(東京本社)
特定建設業許可:東京都知事 (特-2) 第135078号(東京本社)
不動産特定共同事業許可:東京都知事 第134号(東京本社)
賃貸住宅管理業登録:国土交通大臣(1)第1722号(東京本社)
仲介手数料無料の賃貸物件は意外に多い
現在、入居者を募集している賃貸物件、または各不動産会社がおこなっている募集のうち、全体の2割ほどが仲介手数料無料で募集されています。
賃貸物件の契約では仲介手数料が原則かかることを考えると、この数は意外と多いと言えます。
都心や大都市部など、家賃相場が高く各社の競争も激しいエリアだと、特に仲介手数料無料の募集物件の需要は高いです。
売買で仲介手数料が無料のケースはほとんど無い
一方で、中古の居住用住宅を不動産会社の仲介で第三者の個人に売却する一般的な仲介売買では、仲介手数料が無料になることはほとんどありません。
- 取引1件あたりにかかる時間が長く、手数料額が大きい(1件あたりの手数料に依存しやすい)
- 相続・権利関係の整理や登記関連の対応・資料作成など、かかる労力が大きい
- 広告料は仲介手数料が支払われる前提で設定しているため、手数料無料だと赤字になってしまう
仲介売却ではなく、物件を不動産会社が直接買い取る場合は、仲介手数料が無料になります。
また、仲介業者によっては専属専任媒介契約を結ぶことや、2回目以降の契約であることを条件に、仲介手数料を値引きするケースもあります。
賃貸物件の仲介手数料無料のカラクリ【手数料無料が成り立つ理由】
一般的に仲介手数料は不動産会社にとっては収益の柱となるため、単純に手数料を受け取らないということになると、赤字になってしまいます。
ではなぜ仲介手数料無料で募集されているのかに関してですが、これはケースによっていくつかの理由があります。
今回は、仲介手数料無料が成立しているケースを紹介します。
理由1】再販物件・リノベ済み物件である
築浅または状態の良いリノベーション済み物件の中には、仲介手数料が無料となっているものがあります。これは、物件の売主がリノベーション業者である場合に多く見られる仕組みです。
リノベ業者は一度中古物件を買い取り、自社で内装などを改修したうえで再販売します。
このとき、買主に物件を直接販売する、あるいは元付け業者として販売することが多いため、買主側の仲介業者には広告費や業務委託料などの名目で報酬が支払われるケースがあります。
結果として、買主からは仲介手数料を徴収しなくても業者側で十分な利益を確保できるため、実質的に仲介手数料無料が実現します。
理由2】広告料が高くなっている
賃貸物件において仲介手数料が無料になる背景には、広告料(AD)と呼ばれる制度が関係しています。
一般的に、貸主(オーナー)は物件の入居者を募集する際、仲介業者に広告費を支払います。
特に空室が埋まりにくい物件(築年数が古い、立地が悪いなど)は、より高い広告費を提示してでも早期成約を狙います。
この広告費が1ヶ月分や2ヶ月分に設定されると、仲介業者としては買主や借主から手数料を受け取らなくても利益が出るため、仲介手数料無料とすることで契約数を増やす戦略がとられています。
理由3】元付け業者の物件である
不動産取引には元付け業者(売主側の仲介)と客付け業者(買主・借主側の仲介)が存在します。
元付け業者が買主や借主に直接対応する場合、本来は売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る両手仲介が可能です。
しかし、近年は片手仲介(どちらか一方からのみ手数料を受け取る)を前提に、買主側の負担を軽減する方針をとる業者も増えています。
特に、スピーディーな成約や顧客満足度の向上を重視する企業では、売主からの手数料収入を重視し、買主の仲介手数料を無料とするケースが一般化しつつあります。
加えて、両手仲介は囲い込みの温床になってきたこともあるため、上記の理由に加えてクリーンなイメージを打ち出したい業者はこの仕組みを積極的に採用しています。
理由4】別の収益源から賄っている
賃貸物件の契約1件あたりに発生する保証サービスの手数料や借主用のオプションサービスなどで収益を得ているため、仲介手数料無料でも問題ないというケースです。
ただ、本来は仲介手数料で得られるべき収入が他の収益で賄えているということは通常より多く手数料を受け取っている可能性があり、仲介手数料無料を謳って集客をして実際は仲介手数料分のコストを請求しているということであれば、不正がおこなわれている疑いも捨てきれません。
理由5】自社管理・自社所有の物件である
仲介業者が自社で管理している物件や、そもそも自社が貸主である物件の場合、第三者の仲介という形が発生しません。
つまり、借主と貸主(不動産会社)との2者間の契約となり、貸主と借主と仲介業者がいる一般的な取引とは異なります。
そのため、借主に仲介手数料を請求する理由がなく、実質的に無料となります。
理由6】契約歴の長い・規模の大きい法人契約である
契約相手が法人で、事務所や社宅として契約する場合、今後安定して賃料収入を得られる可能性が高くなります。
貸主としても法人契約を積極的に獲得していきたいという理由から、このような優遇をおこなう可能性があります。
理由7】期間限定の割引キャンペーンをおこなっている
集客目的や認知度向上のため、期間限定で仲介手数料の割引キャンペーンを実施しているケースもあります。
仲介手数料無料の落とし穴
仲介手数料無料と聞くと非常にお得に思いますが、手数料無料で募集されている物件は契約するリスクがある場合もあります。
ここからは、契約前にチェックしておきたい注意点を紹介します。
落とし穴1】敷金・礼金が割高になっている
仲介手数料が無料でも、代わりに敷金や礼金が高めに設定されているケースがあります。
例えば、礼金2ヶ月分・敷金2ヶ月分など、一般的な水準よりも割高な条件になっていることがあります。
これは「手数料無料」の言葉で集客し、実際の利益は他の名目で回収するという手法で、物件の公式サイトなどで宣伝されている場合もあります。
総額で本当に安くなるのかを事前にしっかり確認することが重要です。
落とし穴2】物件の状態や立地が良くない
仲介手数料無料の物件の中には、以下のような傾向があることも少なくありません。
- 駅から遠い・バス便中心の立地
- 築年数が古く、設備が旧式
- 日当たりや間取りに難がある
こうした物件は入居者がなかなか決まらないため、初期費用を下げて間口を広げている可能性があります。
落とし穴3】聞きなれない名目の費用が請求される
仲介手数料が無料でも、代わりに以下のような追加費用がかかるケースがあります。
- カギの交換代金
- 室内消毒費
- 事務手数料(書類作成費)
- 保証会社保証料
- 緊急時対応サービス
これらの費用は任意であるかどうかを確認し、不要なものは外してもらえないか交渉する余地もあります。
特に必須と言われても、他物件と比較して明らかに高額であれば再検討が必要です。
落とし穴4】いわくつき物件の可能性がある
事故物件(過去に自殺・事件などがあった物件)も、入居者が集まりにくいため「仲介手数料無料」として募集されていることがあります。
事故情報は不動産業者からの説明義務がありますが、告知義務の期間を過ぎていたり、説明が曖昧なケースもあります。できる限りの情報収集を行いましょう。
以下のような事故物件情報を扱うサイトも参考になります。

※ただし、すべての掲載情報が正確とは限らないため、あくまで目安として利用してください
仲介手数料が無料であることは本当にお得?
不動産会社が仲介手数料を対価として認識しているか
仲介手数料が無料なのは借主からしても有難いことですが、本来、仲介手数料は無料に出来るものではありません。
仲介手数料は本来は仲介業者の働きや広告コスト等の捻出に対して支払われる対価なので、逆に言えば仲介業者は発生する仲介手数料分の働きをしなければいけないのです。
賃貸物件の情報はレインズで全国に共有されているため、仲介業務がどこまでを指すかが分かりにくい側面もあります。
仲介手数料が無料の場合も、借主が満足いくように契約から書類作成・説明・内覧手配などまで実施してくれるのか、しっかり確認する必要があります。
初期費用の安さだけに目を向けると後悔する可能性が高い
前述の通り、仲介手数料が無料に設定されている物件は、買い手がつきにくい物件であるケースも少なくありません。
仲介手数料の上限額は家賃の1ヵ月分ですが、支払いが勿体ないからといって適当に物件を選んでしまうと、結果的に損をするケースが高いです。
仲介手数料無料の落とし穴に注意
ここまで、仲介手数料が無料になる仕組みや注意点について解説してきました。
一見するとお得に思える手数料無料ですが、その裏には業者側のビジネス上のカラクリが存在することも多く、必ずしも無条件で得をするとは限りません。
日本の不動産業界は、借主にとって費用構造や契約条件が不透明なまま進むケースも少なくなく、知らないと損をする状況に陥りやすい業界でもあります。
契約で後悔しないためには、最低限の知識とチェックポイントを身につけておくことが大切です。
仲介手数料無料という言葉に惑わされず、本当に納得できる条件かどうかを見極める目を持ちましょう。