不動産売却の売り手や買い手が外国人でも売買契約や物件引き渡しをおこなうことは可能ですが、普通の手続きとは方法が違うので、ポイントを知っておくことが必要です。
特に、住民票や印鑑証明書といった手続きに必要な書類を外国籍では取得することが難しいので、代替になるものをしっかりと準備しておくことが大切です。
この記事は、不動産売却に外国人が関わる場合の注意点と手続き方法について解説していきます。
※日本国籍でも海外に長く在住している方は、一般的な不動産売却とは異なる手続きを踏みます。
こちらにまとめてあるので、ぜひ参考にしてください!
外国人に不動産を売るケースが増えている理由
日本の不動産市場は、近年、外国人からの需要が高まってきています。
それは多岐にわたる要因が組み合わさって生じている現象で、具体的な理由を探ることで、このトレンドの背後にある背景を理解することができます。
ここでは、外国人に不動産を売るケースが増えている理由について紹介します。
日本人に適用されるルールで不動産が持てる
外国人が日本の不動産を購入する際の手続きに関して、外国人であっても日本人と同様の手続きを組むことで日本国内に自分名義の不動産が持てます。
特に、永住権がなくても、不動産の購入やその後の売却、さらには相続なども問題なく進められます。
納税に関しても、日本人と同じルールが適用されるので、外国人にとって手続きが複雑になることも少ないのです。
投資の自由度が海外諸国に比べて高い
海外の不動産市場と日本の不動産市場を「投資」という観点から見比べた時、投資の自由度は日本の方が高いと評されています。
例えば、中国では外国人の土地の所有が制限されているのに対し、日本ではそういった制限が存在しません。
また、日本の都市部における物件価格や利回りのバランスは、外国の投資家にとっても魅力的であることから、多くの海外投資家が日本の不動産市場に注目しています。
さらに、ジョーンズ ラング ラサールの調査によると、2020年の東京圏の商業用不動産の投資額は22.7億ドルにものぼり、これは世界で3番目に高い額であることから、日本の不動産への投資の魅力が高まっていることが伺えます。
国内における外国人労働者の増加
日本国内での外国人労働者数の増加も、居住用物件への需要を押し上げる要因となっています。
これに伴い、特に都市部での外国人向けの賃貸物件やマンションの需要が増えてきており、物件が売れずに悩んでいる人にとっては、新たな市場として外国人をターゲットにすることが考えられます。
このように、多くの要因が組み合わさり、日本の不動産への外国人からの需要が増加しているのです。
不動産取引を検討している際には、この点をふまえ、幅広い対象者を意識することで、より良い取引が期待できるでしょう。
外国人が不動産売却を行うときの流れ
日本国内に不動産を持たれる外国籍の方が所有する不動産を売却するときの流れは、日本人が行う不動産売却とほとんど同じ段取りで進めていきます。
しかし、不動産の購入希望者となる外国人の在留期間の長さや在住状況によって用意する書類や売買手続きの段取りに違いがあります。
また不動産売却を行う中でも、所有権移転登記が成されなければ、売買は成立しません。
原則、所有権移転登記を行うには、以下の書類をそろえる必要があります。
- 権利証または登記識別情報通知書
- 司法書士への委任状
- 固定資産税評価証明書
- 住民票
- 印鑑登録証明書
上記5つの書類は、日本人・外国人問わず、所有権移転登記を行うときに必要な書類です。
その中で、外国人の購入希望者が注意すべきが、住民票と印鑑登録証明書の取得です。
住民票と印鑑登録証明書は、最寄りの市役所の窓口で発行できる書類ですが、外国人の場合、滞在期間の長さによっては入手が困難というともあります。
ここでは、住民票と印鑑登録証明書が取得できる外国人とできない外国人の特徴、そして取得できない時の代替書類について解説します。
住民票と印鑑登録証明書が取得できる外国人
日本で住民票と印鑑登録証明書が取得できる外国人の多くは、日本国内に住所があると同時に、以下の条件を満たしている方を指します。
分類 | 定義 |
---|---|
中長期在留者 ※在留カードが交付されている方 |
日本に3か月以上の在留資格をもって住んでいる外国人 (外交、公用目的の人を除く) |
特別永住者 | 日本国憲法に定められた特例法に基づき、特別永住資格が与えられた人 |
一時庇護許可者 | 難民の可能性がある外国人で一時庇護のために上陸許可を受けた人 |
仮滞在許可者 | 不法滞在していた外国人で、その後滞在の仮資格を国から与えられた人 |
国籍喪失による経過滞在者 | 出身国での戦争などが原因で、日本に在留することになった外国人 |
上記5つのうち1つに該当する外国人であれば、日本人同様、市役所にて住民票と印鑑登録証明書の取得が可能です。
なお、印鑑証明書を得るには、実印を持っておく必要があります。
まだ実印を持っていない方は、売買契約を交わす前に作成しておきましょう。
住民票と印鑑登録証明書が取得できない外国人
一方、上記5つの条件に当てはまらず、住民票と印鑑登録証明書が取得できない外国人とは、以下のような方を指します。
- 日本で許可されている在留期間が3ヶ月未満の方
- 海外在住の方
上記2条件に当てはまる方は、所有権移転登記を行うのに必要な住民票と印鑑登録証明書の取得ができないので、これらの代替に当たる以下の書類を用意する必要があります。
書類区分 | 代替書類の発行・取得方法 |
---|---|
住民票 | 自国の公証役場もしくは在日大使館で認証を受けた宣誓供述書 |
自国の官公署で発行された住民登録証明書 | |
印鑑登録証明書 | 自国の公証役場または在日大使館で認証を受けた宣誓供述書 |
自国の在日大使館もしくは日本の官憲が発行したサイン証明書 |
住民票と印鑑証明書の代替書類として使用できる宣誓供述書は、住所・氏名などの個人情報を記入し、その内容が真実であることを宣誓したうえで、公証人や大使館から認証を得た書類を指します。
たとえば、宣誓供述書の認証を大使館に依頼できるかは、依頼先の大使館によって対応が異なります。
また印鑑証明書の代替書類として宣誓供述書を用意する際は、前もって司法書士に委任状の作成を依頼し、その後、公証人や大使館から認証を得るという流れになります。
外国人が不動産売却を行った時にかかる譲渡所得税の納税方法
不動産売却を行って利益を得た場合、外国人であっても譲渡所得税を納税しなければなりません。
しかし譲渡所得税の納税方法は、居住者・非居住者かによって納税方法が大きく変わります。
売主が居住者・非居住者のどちらに該当するかは、生活の中心になる国がどこになるのかと国籍などの情報を持って判断します。
ここでは、居住者・非居住者のいずれかに該当する外国人が、不動産売却を行って利益を得た時に課せられる譲渡所得をどのような手順で納税するかについて解説して行きます。
譲渡所得の納税方法【居住者】
居住者に該当する国内在住の外国人の方が不動産売却を行って利益を得た場合は、日本人同様、翌2月半ばに実施される確定申告の提出を持って譲渡所得税を納税します。
譲渡所得税は課の計算式を活用することで算出できます。
譲渡所得税=税率×{譲渡価格-(取得費+売却費用) }
※譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間の長さで決まります。詳しくはこちらをご覧ください!
確定申告の提出方法や記入方法については、以下の記事にて紹介しています。
譲渡所得の納税方法【非居住者】
一方、非居住者に該当する方が不動産売却を行って利益を得た場合は、売買代金に対してかかる税金を前もって差し引く源泉徴収制度が適用されます。
源泉徴収制度が適用された場合、売買代金の約10.21%(所得税10%・復興特別所得税0.21%)が適用し、売主は残りの約89.79%を売却益として所得します。
しかし、源泉徴収制度がすべての非居住者に該当するわけではありません。
以下2点の条件を満たしている非居住者に限り、源泉徴収制度は適用されません。
- 売買代金が1億円以下
- 購入者が自身もしくは親族の居住用となる不動産を購入した場合
また以下は、源泉徴収制度が適用されるかどうかの早見表になります。
売買代金 | 居住用として購入 | 投資用に購入 |
---|---|---|
1.0億円以下 | 非対象者 | 制度対象者 |
1.0億円以上 | 制度対象者 | 制度対象者 |
上記理由で購入した場合、売買代金が1.0億円以下で自身の住まいとして購入した場合のみ制度適用から外されます。
非居住者でも利益が出たら確定申告が必要
非居住者でも日本にある不動産を売却して利益が出たら確定申告を提出しなければなりません。
源泉徴収制度で10.21%の譲渡所得税が差し引かれているとはいえ、確定申告を提出して過不足分を清算します。
清算によって、不足と判断されればその分を追納し、過払い分があれば還付金として手元に返ってきます。
また非居住者が不動産売却を行うときは、税管理を代理で行ってくれる納税管理人を立てる必要があります。
所得税・消費税の納税管理人を立てたら、管理人名が記入された届出を最寄りの税務署に提出します。
外国人に不動産売却を行うことで生じるリスク
日本国籍の方が外国籍の方へ不動産売却をおこなうこと自体は、特別禁止されている訳ではありません。
契約時の印鑑証明などが利用しにくいなどの点もありますが、代替書類を準備してもらえれば、売却することは可能です。
しかし、日本人を相手にするように不動産売買を外国人相手に行うのは非常にリスキーな行為です。
その理由として、以下の5点が上げられます。
- 住宅ローンが組めず売買不成立になる可能性がある
- 非日本語話者の外国人に不動産を売る可能性がある
- 物件の引き渡しまで時間がかかる
- 支払い通貨の違いによっては利益が減る
- 値下げ交渉を持ちかけられることがある
ここからは、上記5つの理由について1つずつ解説して行きます。
住宅ローンが組めず売買不成立になる可能性がある
不動産取引の際、多くの人は住宅ローンの利用を考慮します。
日本国内にある金融機関では、貸し倒れなどを避けるため、住宅ローンの利用条件下に日本での収入や永住権の有無などの条件を設けています。
つまり、特別永住権を持っていない外国人は住宅ローンの利用がかなわず、不動産を購入するには、現金一括払いでの購入を迫られます。
その結果、取引のハードルが高まって、売買不成立となるリスクを増加させる要因になるのです。
さらに、購入者がローンの制約を十分に理解していない場合、最終的な契約段階での混乱やトラブルの原因となり得ます。
このようなリスクを回避するためには、事前に購入希望者の金融機関との関係や資金繰りを確認することが大切です。
非日本語話者の外国人に不動産を売る可能性がある
非日本語話者の外国人への不動産売却は、言葉の障壁からさまざまな問題が生じる可能性があります。
例えば、契約内容や取引の詳細を正確に伝えることが求められるため、通訳・翻訳サービスの利用が必須になります。
しかし、契約の重要性を考慮すると、ただ翻訳するだけではなく、双方が契約内容に完全に納得しているかを確認する必要があります。
不十分な説明や認識のズレが後々のトラブルの元となる場合があります。
また相手が契約内容を理解していない状態で署名・捺印するケースもあります。
形式上はこれでも契約が成立していますが、有効な契約ではないので注意しましょう。
不動産取引の契約は、双方が納得していることが条件になるので、片方の日本語能力がない場合は、確実に契約内容に納得していないとみなされます。
そのまま金銭を授受してしまうと重罪に問われる可能性もあるので、書面上だけでなく、相手の心からの承認も得る必要があります。
物件の引き渡しまで時間がかかる
外国人が日本の不動産を購入する際、ビザの取得や居住証明の手続きなど、多くの手続きが必要になる場合があります
特に、国や地域によっては、「時間」に対する認識や価値観が異なるため、予定通りの進行が難しくなる場合が考えられます。
したがって、十分な余裕を持ったスケジュールの設定や、予め期限や条件を明確にしておきましょう。
支払い通貨の違いによっては利益が減る
外国籍の購入者から日本円以外での支払いを希望される場合があります。
この時、為替レートの変動や換金手数料などで、予想よりも収益が下がるリスクが考えられます。
取引時の為替レートや通貨の選択によっては、大きな損失を被る可能性もあるため、事前の情報収集や通貨に関する契約条項の検討が必要です。
値下げ交渉を持ちかけられることがある
外国籍の購入者には、独自の価値観や交渉スタイルがあるため、積極的な値下げ交渉を求められることが考えられます。
中でもアジアや中東などの一部の地域では、価格交渉は一般的な商慣習として行われています。
文化や国によっては、交渉がビジネスの一部として位置づけられているため、初期提示価格からの大幅な値引きを期待する場合もあります。
このような状況に備え、適切な価格設定や交渉の余地を事前に検討し、クリアなコミュニケーションを心掛けることが重要となります。
書類上の契約内容をすべて日本語翻訳した時にかかる費用
不動産売却は日本の法律に則って行われるため、書類上の契約内容はすべて日本語表記で掲載します。
もし相手が日本語を読めない非日本語話者だった場合、翻訳アプリを活用したり、外国籍の友人同伴で契約を進めていくことがあります。
しかし、翻訳があっても相手が契約内容を理解していなければ、意味がありません。
このような事態を避けるためにも、前もって翻訳会社に依頼して翻訳済みの契約内容が記載された書類を別途で用意するなどの対策を講じます。
また日本語を話すことはできるけれど、漢字の読み書きができないという方は大勢いるので、注意して事前に確認しましょう。
不動産関連書類の翻訳コスト相場
翻訳会社に依頼できる不動産関連書類は、以下の通りです。
- 不動産売買契約書
- 建物賃貸借契約書
- 不動産購入申込書
- 不動産登記事項証明書
- 重要事項説明書
- 固定資産評価証明書
- 建設住宅性能評価書
- 団体信用生命保険約款
- 不動産担保ローン約款 など
翻訳料金は会社によってまちまちですが、100文字あたりで換算したときの相場は以下の通りです。
翻訳言語 | 100文字当たり依頼費用(相場) |
---|---|
日本語➝英語 | 1,000~3,000円 |
英語➝日本語 | 1,000~3,000円 |
外国人相手に行う不動産売却を成功させる方法
外国人相手に行う不動産売却は、言語や文化の違いから日本人相手に行う不動産売却とは異なる対応を持って取引を行う必要があります。
売却を行う売主にとっては、如何様な取引であっても成功したいと思うのが世の常です。
- 外国人対応に手慣れている不動産会社を選ぶ
- 支払通貨は日本円であることを伝える
- 取引内容を書面に残す
- 納税管理人を立ててもらう
- 期日を決めて取引を進めていく
ここでは、外国人相手に行う不動産売却を成功させるために売主自身が取る方法について紹介します。
外国人対応に手慣れている不動産会社を選ぶ
外国人相手の不動産取引は、文化や言語、法律の違いが影響するため、専門的な知識と経験が求められます。
そのため、外国人への対応経験が豊富な不動産会社を選択することが重要です。
彼らは外国人の購入傾向や要望を理解しており、交渉の際のアドバイスやサポートが期待できます。
また、言語の障壁を乗り越えるための通訳や翻訳サービスを提供している場合も多いです。
支払通貨は日本円であることを伝える
購入希望者が外国人の場合、自国の通貨での支払いを希望することが考えられます。
しかし、為替レートの変動リスクや換金時の手数料などの問題が生じるため、最初から支払通貨は日本円であることを明確に伝える必要があります。
契約書にもこの点を明記することで、後のトラブルを防ぐことができます。
為替のリスクを避けるための対策やアドバイスも、専門家と相談するとよいでしょう。
取引内容を書面に残す
取引内容や約束事を正確に共有することは、トラブル防止のために極めて重要です。
特に外国人との取引では、文化や言語の違いから誤解が生じるリスクが高まります。
したがって、契約内容、取引の流れ、価格や支払い条件など、取引に関する全ての内容を書面に残し、双方の合意を得ることが必要です。
これにより、「言った・言わない」問題を未然に防ぐことができます。
納税管理人を立ててもらう
外国人が日本の不動産を購入した際、日本国内での所得税や固定資産税の納税手続きが必要となります。
外国に居住している場合、これらの手続きは難しくなるため、納税管理人を選任してもらいましょう。
納税管理人は、税務手続きをスムーズに進めるためのキーパーソンとなります。
選任された納税管理人は、税金の計算から納税手続きまでを代行し、取引を円滑に進めるサポートを行います。
期日を決めて取引を進めていく
期日管理は、不動産取引において非常に重要な要素となります。
特に外国人との取引では、文化や慣習の違いから期日に対する感覚が異なることが考えられます。
したがって、最初から具体的なスケジュールや期日を明確にし、それを守ることの重要性を伝える必要があります。
契約書には期日を明記し、期日を過ぎた場合のペナルティや対応を決めておくことで、トラブルを避けることができます。
外国人でも競合に打ち勝つ意識を持とう!高値売却にこだわるメリット
日本語の能力に問題があると、どうしても相場を調べる段階などで差がついてしまいます。
結果的にネイティブの日本人より売却価格が低くなりがちですが、「外国人だし仕方ないか。」とあきらめてしまうのはもったいないです。
まず、不動産は一般の方が持つ中で最も高額な固定資産です。
マイホームを売却すれば平均4,000万円前後の代金が手元に入ります。
サラリーマンの平均年収が代替400万円前後なので、10年分の収入が一気に入るということですね。
更に、不動産を高値で売るコツは意外と知られていないので、ちょっとした努力で簡単に相場以上の価格で売ることができます。
例えば、こちらの主婦は不動産に関する何の知識も無かったのですが、自分なりに工夫することで査定額より600万円高く売ることができました。
不動産を売ると余計な費用・税金もかかるので、これらを考えてもなるべく高く売らなければ損です。
こちらの記事などを参考にして、少しでも高く売ることを目指していきましょう!
一括査定サイトを活用しよう!
近年、不動産を高く売った人の多くが利用しているのが、一括査定サイトというサービスです。
これは、所要時間60秒ほどのカンタンな情報入力をするだけで、地域に対応する不動産会社(平均6社)へ一括で査定依頼できる優れものです。
登録業者は皆さんが良く知る大手ばかりで、対応や保証・検査サービスもしっかりしています。
一括査定サイトは登録業者の広告料でまかなわれていることから利用料完全無料で、誰でも気軽に使うことができます。
こちらの記事により詳しいサイトの使い方と、おすすめのサイトランキングが掲載されているので、ぜひ参考にしてください!