通常、不動産を購入するときは、世帯主の単独名義で物件を買うようになりますが、複数の人が権利を分割して物件を所有することも法律で認められています。
これを、共有名義といいます。
このような物件でも売却することは可能ですが、所有者それぞれの意思が一致していなければ売り出すことはできないので、トラブルが起こりやすいです。
この記事では、共有名義の不動産のなかでも特にマンションに焦点をあて、通常の手続きとの違いやトラブルの解決方法について解説します。
→共有名義の不動産を売却する方法とは?売却時にかかる諸経費や売却前に行う決め事について解説
共有名義のマンションを売却する流れ
通常のマンション売却は、相場調査や査定の依頼から始まりますが、共有名義のマンション売却は、まず他の所有者を説得することから始まります。
→【図解付】不動産売却の流れ全9ステップを手順に沿って解説!全体図から必要事項まで完全網羅
共有名義人が全員売却に同意することが必要で、1人でも反対する人がいれば売り出すことはできません。
その後の査定からの流れは普通のマンション売却と同じですが、売り手が書類を提出するときには、名義人全員が書類を作成する必要があり、それぞれ離れて暮らしている場合は大変です。
代表者として彼らを取りまとめるには、相当な覚悟が必要です。
代理人をたててトラブルを回避する
代表者は名義人を取りまとめるほかに売却手続きも代表しておこないますが、値下げの権限なども持つことになるので他の名義人と対立することもよくあります。
そもそも、親族のなかで一人代表者を立てるということ自体が、争いに発展しかねない作業です。
こうしたトラブルを防止するためには、名義人以外の第三者を代表者にして手続きを進める方法が有効です。
ただ、代理人をたてるときも、全員分の委任状、印鑑証明書、確認書類が必要となるので、全員が任せられると考えた人以外は代表者にすることができません。
共有マンションの持ち分を売却する流れ
もし、共有名義人を説得できなければ、マンションを売ることはできません。
ただ、あなた含めて3人の名義人がおり、それぞれ権利を3分割している場合は、その3分の1の権利(持ち分)を売却することも可能です。
共有不動産の持ち分売却の流れは以下のようになります。
- 持ち分の査定
- 投資家への販売活動
- 契約・決済
期間は物件を売る場合よりも短く、だいたい3週間以内となっています。
仲介手数料などの売り手負担は一切かからないのでリスクなく売却することができます。
共有不動産そのものを売るよりも代金が少なくなってしまうのが難点ではありますが、余計な揉め事に関与する必要がなくなる上に、固定資産税の負担もなくなるので、長期的にみればお得なことが多いですよ。
持ち分をすべて独占することも可能
共有不動産の持ち分を売ってしまえば、代金も得られて権利関係も解消されますが、反対に、権利を独占することで共有者との揉め事を防ぐという方法もあります。
これが認められるかどうかは共有不動産の利用状況や他の人の意思にもよりますが、例えば以前の所有者の一人息子であるという場合など、その人が持ち分を全部取得することが妥当であると周囲が納得し、かつ税金などの支払い能力があるようなら、共有不動産を独占することができます。
共有名義のマンションを売る際のポイント!所有権の整理も進めていこう
前述の通り、共有不動産を売却したいという方の理由としては、「権利の共有を解消してしまいたい」という方が今は多いです。
自分の家とは離れたところにある不動産の所有者に勝手になっていること自体こわいものですし、何かあったらトラブルに巻き込まれかねません。
また、相続された不動産は共有者が多くなる傾向にあり、揉め事が起きやすいです。
確かに、共有者の中に故人との関係を理由に権利の拡大を主張してくる人がいる場合は、いくら話し合ったところで意見の一致を取るのは難しいでしょう。
意見の統一を図るくらいなら自己持ち分を売却してしまおう
離婚などが理由で不動産売却を検討している場合、共有者同士が意見を統一することは難しいです。
それぞれが感情論で衝突してしまい、一致のめどが立たないようであれば、自己持ち分だけでも早期売却してしまいましょう。
自己持ち分とは、自分に配分された不動産の権利のことです。
例えば、夫婦で費用を分割して家を購入した場合、夫と妻の持ち分はそれぞれ2分の1となります。
物件自体を売らなくてもこの権利自体は売ってしまうことができ、さらに権利関係を解消することができます。
持ち分の売却先は主に投資家
この権利を買い取るのは、主に投資家となります。
不動産を住み替えや土地利用目的で取得するのではなく、他の共有者と話し合った上で権利を取得し、高値で売却することを目的としています。
この取引は特殊であり、どの業者にも依頼できるわけではありません。
Century21のグループ会社では、この持ち分売却を専門的に仲介しているところもあるので、まずはこうした会社に相談をしてみましょう。
共有名義のマンション売却でおこりやすいトラブル
代々暮らしていた家を売却する場合は、そこで生まれ育った、物件への愛着が強い人が売り出しに反対することも考えられます。
しかし、マンションは相続されたものでも築年数が浅く、共有名義人も少数であることが多いので、こうしたトラブルに巻き込まれるケースは少ないです。
ただ、マンションは価格も安く買えるので、投資目的で買ったまま放置されている場合が多く、瑕疵責任に問われかねません。
親から受け継いだマンションを売るときは、なるべく瑕疵保証をしてくれる不動産業者に依頼するようにしましょう。
弁護士協力のもと話し合いを
上記のような状態に陥ってしまった場合のおすすめとして、記事の前半で持ち分を売る方法を紹介しましたが、一度入った亀裂が修復されず兄弟がバラバラになるくらいなら、しっかりと解決したほうが後になって良かったと思えるでしょう。
不動産業者の中には、こうした「権利も主張したいけど仲直りもしたい」という人のために、弁護士協力のもとそれぞれと面談して今後の方向性を決めるというサービスをおこなっているところがあります。
親族間でのトラブルに悩んでいる人は、ぜひこうしたサービスを利用しましょう。
共有マンションの売却リスクを抑える方法
共有名義にすることで費用の支払いを分割するのは、一人の負担を軽減するためにも良い方法ですが、マンション売却の場合はデメリットしかありません。
そのため、新居の購入や住宅ローンの返済が終わったら、共有名義を単独名義に変更しておくことをおすすめします。
しかしながら、マンションなど、不動産の名義を変更するのは非常に難しく、条件が揃っていなければ実行できません。
片方が退職した場合には名義変更が可能
夫婦でローン返済をしていたが、妻が出産・子育てのために退職をした場合は、夫の単独名義に変更することができます。
ローンの名義人は返済能力があることを前提にして選ばれるので、いままで分割していた支払いは夫が全額おこなうようになります。
もし、名義を変更せずに、妻の返済分を夫が肩代わりし続けていると、贈与とみなされて税金を徴収されてしまいます。
このように、実態とはちがう名義の場合は申告して変更することができます。
相続の場合は名義変更が難しい
夫婦間の名義は、法律を利用したり、実状と比較したりすることで変更が可能ですが、相続したマンションの場合は名義変更が非常に難しいです。
なぜなら、もとの持ち主の意思や血縁が最大限尊重されるので、相続人の意見や境遇が異なっていても法律で対処することができないからです。
もし、代金の取り分などで揉めているようなら、早めに換金することをおすすめします。
マンションは家と比べて安値なので、複数で分割するとかなりの少額になってしまうので、実際にお金にすると、以前は金額にこだわっていた人が手を引いたケースも多いです。
共有名義のマンションを売却するデメリット
物件が共有名義だとデメリットになる場合もあります。
- 売却しにくい
- 単独行動できない
- 相続時に売却が長引く
- 離婚する時の財産分与が難しい
共有名義のマンションを売却する際は、上記のデメリットを理解した上で検討しましょう。
売却しにくい
共有名義のマンションは、売却する際に共有者の同意が必要になります。
共有名義にする時は問題無いと思っていても、時間が経った後に同意が取りにくい状況になるケースがあります。
単独行動出来ない
共有名義のマンションは基本単独行動で売却を進められません。
単独でできる作業は修繕のメンテナンスや居住などです。
賃貸や売却になると、共有者の同意が前提になるので注意しましょう。
離婚した時に財産分与が難しくなる
共有名義で借りたマンションは離婚した時名義変更しますが、共有名義人の同意がないと変更できます。
またマンション売却も共有名義人の同意が必要になります。
共有名義人と連絡がとれなくてもマンションを売却できる
相続したマンションの名義人を登記簿で調べたところ、見たことも聞いたこともない人が載っていることがあります。
また、夫婦で購入したマンションを、離婚をきっかけに売却するときも、連絡が取れず同意がとれないことがあります。
このように、共有名義人の行方がわからない場合は売却することができないので、まずは興信所に依頼して探してもらいます。
それでも見つからなかったとしても、裁判所の許可があれば、マンションを売却することは可能です。
築年数の経った共有マンションでもなるべく高値売却を目指そう!
マンションを購入する人は、投資目的や賃貸業を営むためという人も多く、所有者自身もあまり物件に思い入れがないケースがあります。
もし管理が行き届いていないようなら、売却しても高値がつくのは難しいので、買取にだしてしまうのも一つの手です。
買取は場合によっては即日で契約が結ばれるので、名義人との間のいざこざを防止するという意味でも効果的です。
ただ、共有名義人を納得させるには、マンションを売った利益の分け前を増やすのが一番です。
時間に余裕があれば、できるだけ高値売却を目指していきましょう。
※マンションの高額査定・売却のコツはこちらに詳しくまとめてあります!
→マンション査定の方法とは?4種類の査定方法と計算方法・査定の流れ