不動産を売却した時、住民税がかかることを意外に知らない方も多いのでしょうか?
期限までに引き渡すことばかりに注目していると、課税のタイミングを忘れてしまう可能性もあります。
今回は、不動産売却でかかる住民税の計算方法や納付のタイミングについて徹底解説していきます。
不動産売却では条件付きで所得税と住民税がかかる
不動産売却は、特定の条件をクリアした時に所得税と住民税がかかります。
所得税と住民税は、不動産売却に対して得られた利益に対してかかってきます。
この利益とは、不動産の売却価格が購入費用を上回った場合の差額分のことを指します。
戸建て住宅などは築年数の経過によって価値が減少していくので、利益は多くの場合で発生しません。
ただ、経済状況が悪くて相場が低い時期に購入をして、相場が高まってきた時期に売却をした場合は、中古住宅でも利益の発生することがあります。
不動産売却で発生する所得税と住民税は分離課税と言われて、サラリーマンの給与所得などとは分けて課税されるため、確定申告が必要になります。
確定申告で納付をするのは所得税だけ
不動産売却で利益が発生すると所得税と住民税がかかります。
この場合には確定申告が必要になりますが、申告時に納付するのは所得税のみです。
少しややこしいですが、確定申告をおこなった時は所得税を納付したのに合わせて住民税の申告も終わっているので、後は通常の納付のスケジュールに合わせて上乗せされた住民税を納めていきます。
不動産売却でかかる住民税の計算方法
不動産売却で利益が発生すると所得税・住民税が上乗せられます。
ただ、多くの方は一括で税金がかかることしか知らないので、実は別々に課税されていることを知らないケースも多いです。
不動産売却でかかる税金の税率を、所得税率と住民税率に分けた結果がこちらです。
短期譲渡所得(5年未満) | 長期譲渡所得(5年超) | |
---|---|---|
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
所有期間が5年以内か5年超かで税率は変わってくるので注意しましょう。
所有期間4年の不動産を売却して1,000万円の利益が発生した場合、住民税は9%×1000万円=90万円となります。
この金額を、1年かけて納付していくのが一般的です。
不動産売却にかかる住民税の計算シミュレーション
譲渡所得にかかる住民税の計算には、所得税と同様に、不動産の所有期間に応じた税率が適用されます。
ここでは異なる譲渡所得金額で、住民税の金額を計算してみましょう。
例として、譲渡所得金額をそれぞれ1000万円、2000万円、3000万円とします。
- 短期譲渡所得(所有期間5年以下)-住民税率: 9%
- 長期譲渡所得(所有期間5年超)-住民税率: 5%
この場合、計算例を当てはめると、下記の通りになります。
- 長期譲渡所得の住民税: 1000万円 × 5% = 50万円
- 短期譲渡所得の住民税: 1000万円 × 9% = 90万円
- 長期譲渡所得の住民税: 2000万円 × 5% = 100万円
- 短期譲渡所得の住民税: 2000万円 × 9% = 180万円
- 長期譲渡所得の住民税: 3000万円 × 5% = 150万円
- 短期譲渡所得の住民税: 3000万円 × 9% = 270万円
以上の計算により、譲渡所得金額が増えるにつれて、住民税の金額も増加することがわかります。
実際の課税額は所得税上乗せ分と合わせて計算されることも忘れないようにしましょう。
また、その他の所得や控除等によって異なる可能性があるため、正確な計算には専門家への相談がおすすめです。
住民税を納付する2つの方法
住民税の支払い方法には、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類が存在します。これらは利用できる人や納付方法、納付のタイミングなどに違いがあります。
普通徴収
普通徴収は、住民税を本人が納付する方法です。
自営業者やフリーターなど、勤務先で住民税を徴収されていない方が該当します。
6月頃、自治体から住民税通知書と納付書が送られ、前年の所得に基づく税額を4期に分けて納付します。
支払い期日は通常6月、8月、10月、翌年1月の各末日です。
特別徴収
会社員や年金受給者は、給与や年金から住民税が差し引かれる特別徴収に該当します。
この方法では自分で納付する必要はありません。毎年6月から翌年5月までの給与から住民税が支払われます。
不動産売却後の住民税の支払い
不動産売却に関連する住民税は、売却翌年の6月以降に1年間で支払います。
自分で納付する場合は普通徴収に、給与所得者であれば特別徴収に該当します。
特別徴収の場合、会社に所得が知られることになるため、プライバシーを考慮して普通徴収を選ぶこともできます。
不動産売却で上乗せられた住民税は1年で支払う
不動産売却で住民税の上乗せが発生した場合、その上乗せ分の住民税は1年で支払うようになります。
つまり、住民税の増額がおこなわれるのは、不動産を売却した次の期の1年だけです。
不動産売却が完了した後はずっと住民税が高額になる訳ではないので安心してください。
不動産売却でかかる住民税を控除する方法
不動産売却で利益が発生すると、住民税が高額になってしまいます。
ただ、特別控除などの仕組みを利用すれば、かかる税金を控除することができます。
ここからは、不動産売却で住民税がかかった時に利用できる、代表的な3つの特別控除について紹介していきます。
3,000万円の特別控除
別名マイホーム特例とも呼ばれる3,000万円特別控除は、居住用として利用していた不動産を売却する際に発生した税金を最大3,000万円まで控除できる制度です。
控除できる金額が非常に大きく確実に利用したい制度ですが、以下の条件を満たしている必要があるので注意しましょう。
- 売却した日が買取り等の申出があった日から6ヶ月以内
- 売却した人が最初に買い取りの申し出を受けている(6ヶ月以内に相続した場合を除く)
- 固定資産としての土地を売却した
軽減税率の特例
所有期間が10年以上の不動産を売却する場合、特例によって以下の計算式で税金を算出するようになります。
- 6,000万円以下の部分:年14.21%(所得税: 10.21% 住民税:4%)
- 6,000万円を超える部分:年20.315%(所得税15.315% 住民税:5%)
この特例は3,000万円特別控除と併用することができるため、住民税をよりお得にすることができます。
買い換えの特例
買い換えの特例は、所有期間10年超の不動産を売却して新たに持ち家を購入する場合、税金の納付を新居の売却時に繰り越せるという制度です。
この制度は、以下の条件を満たしている必要があります。
- 新居を購入している
- 敷地所有者の所有期間が10年を超えている
- 敷地所有者の居住期間が10年以上である
- 敷地と建物の同時譲渡である
- 敷地と建物の所有者が同居している(別々の場合)
- 譲渡価額が1億円以下である
ふるさと納税を活用する
また、ふるさと納税を活用することも有効です。
自己負担金2,000円で地方自治体に寄附し、寄附金額分の税控除を受けることができます。
この際、不動産売却による譲渡所得が増えることで控除の限度額が上がるため、より多くの税金を節約できる可能性があります。
不動産売却で住民税が発生した場合の手続きや特例を知っておこう
不動産売却で住民税が発生した場合は申告や異なる金額の納付が必要になるので、事前に基礎的な内容をしっかりチェックしておく必要があります。
税金に関する諸手続きをおこなっていないと売買自体が不成立になる可能性もあるので、十分注意しましょう。