
相続した不動産を売るには?売却の流れや相続税・売却時にかかる税金の注意点
不動産は、家族からの相続によって所有することも多いですよね。
両親から譲り受けた場合、受け手は税金を負担しなければなりません。
引き渡された土地・物件の活用法がない、税金などの維持費が生活の負担になっているという方は、早めに売却しましょう。
今回の記事では、相続した不動産を売る流れから、かかる税金、売却時の注意点などを詳しく解説していきます。
不動産売却の方法ガイド|不動産を売るなら読むべき鉄則!成功した人の共通点
- 相続不動産の売却手続きの流れ
- 相続した不動産は放置せず売却するのがおすすめ
- 相続した不動産を放置する責任は今後増加していく
- 相続された不動産は早めに売却すべし
- 不動産は相続放棄するよりも取得して売却するほうがお得
- 売却を前提に不動産を相続する場合は換価分割を選ぼう
- 相続不動産の売却前に相続登記を必ず行おう
- 相続した不動産の売却では委任状の作成が必須
- 相続した不動産の売却を成功させるには代表者以外の積極的な参加・協力も重要
- 他の法定相続人は不動産売却に関する知識がほぼ0と思ったほうが良い
- 相続した不動産を売却する際は共有名義人の心情を慮るのも大切
- 譲渡所得税と相続税を売却後に支払う注意点
- 不動産を相続する際は注意が必要!ケース別に売却の注意点を紹介
- 相続から不動産売却をする際に係る税金
- 相続した不動産を売却する際によくある質問Q&A
- 相続不動産の売却は手続きが複雑!専門家を活用しよう
相続不動産の売却手続きの流れ
相続した不動産を売却するには、登記を行い、名義変更をする必要があります。
しかし、相続人が複数いて誰の不動産か決まっていない場合は、家や土地は全員の共有資産になるので、勝手に登記することはできません。
このように所有者が決まっていない不動産の売却は、以下のような流れで進みます。
- 不動産の相続人を決める(遺産分割協議)
- 所有者名義の変更
- 媒介契約
- 売却後に所有権移転登記を申請する
- 売却代金を分配
不動産の相続人を決める(遺産分割協議)
遺産の権利者が複数いる不動産を共有(共同)物件などと言います。
相続物件を処理するするときは、以下の3つの方法を使うのが一般的です。
- 換価分割
- 代償分割
- 共有分割
このうち、換価分割を選ぶ場合のみ、売却手続きをおこないます。
換価分割
換価分割とは、家などの資産を現金化して分割する方法。遺物の分配のときに争いになりにくいのが特徴です。
相続人が複数いる場合、誰か一人、代表者をたてて、代表者は物件引き渡しを行った後、代金を分配するようになります。
トラブルを防ぐためには、こうした換価分割がおすすめです。
ただ、あまり知識のないまま入金期限を決めてしまうと、期限が延びてしまったときにトラブルになってしまいます。
代償分割
代償分割は、1人が不動産を所有する代わりに、他の相続人へ金銭を支払う方法です。
たとえば、4人兄弟に相続された物件を代償分割する場合、不動産所有者が他の3人に価値の75%分を支払う形を取ります。
土地相続では良く使われる方法ですが、建物は築年数によって価値が下がる(減価償却)ため、所有者にメリットがなくあまり使われません。
共有分割
不動産を共有登記し、1つの不動産を複数人で所有する方法です。
丸くおさまる方法ではありますが、固定資産税は所有期間中ずっと課されるので、その後の計画がしっかりしていないとおすすめできません。
所有者名義の変更(相続登記)
不動産売却は、正式に代理人を立てない限り、物件の名義人しか手続きができません。
→<不動産売却で代理人をたてる方法と注意点そのため、相続不動産の名義を代表者に変更します。
これを、相続登記と言います。
相続登記の注意点
不動産登記は、移転時にうつさなくても、生活に支障が出るほどではありません。
特に刑罰にも問われないので、売却直前に変えれば問題はありません。
ただ、これは被相続人にも言えることで、父から相続した不動産の名義が祖父のままだったなんてこともあり得ます。
この場合、祖父や父に兄弟がいれば、相続を見直す必要があり、非常に面倒です。
相続不動産を売却する前に登記簿で名義をチェックしておきましょう。
査定・媒介契約
相続不動産の権利関係が整理されれば、あとは一般的な不動産売却の流れとほぼ同じです。
→不動産売却の流れを査定から契約・決済・引き渡しまで一挙解説!ただ一点、必要書類は、名義人全員分のものを準備しないといけないので、そこだけ注意しましょう。
不動産会社は無料で相続時の費用・税金の相談を受けてくれるところもあるので、査定依頼がてらプロに悩みを相談してみましょう。
売却後に所有権移転登記を申請する
不動産の売買契約が結ばれたら、買主へ所有権を移転します。
このとき、登記費用がかかりますが、何も代表者がこうした費用を全て支払う義務はありません。
費用まで分割負担するかどうかも、事前に相続者間で話し合っておきましょう。
売却代金を分配
不動産が売れたら、代金を分割しますが、場合によっては予想以上に高く売れたり、低く売れたりする場合もあります。
いくらを分配するか明確にしておかないとトラブルが起こってしまうので、事前にしっかりと取り決めをおこないましょう。
相続した不動産は放置せず売却するのがおすすめ

不動産を相続すると、相続税が発生します。
ただ、かかるコストは相続税だけでなく、維持費・管理費も所有する限りかかってくることになります。
相続した不動産の使い道を見つけられず、長期間放置している方も多いでしょう。
不動産を放置しているとムダな労力がかからず一見楽に感じますが、費用を払い続けなければいけない分、結果的に放置が一番損です。
特に注意したいのが、高額な固定資産税の支払いです。
固定資産税は毎年1月1日時点での不動産所有者に対してかかる税金で、高額なので注意が必要です。
今後のコストも考えると、たとえ手続きが面倒でも、利益を得た上で損切も出来る売却を早めにおこなうのが最もお得なのです。
相続した不動産を放置しているとクレームの元になる
相続した不動産を放置し、現状を全くチェックしていないと、物件の劣化は急速に進んでいきます。
居住者が誰もいないだけでも一気に劣化が進むので注意しましょう。
居住者がいるとトイレなどの水回りやドアの開閉が定期的におこなわれるので、汚水が貯まる、立て付けが悪くなるといったリスクが軽減されます。
これを数か月放置していると、すえた公衆トイレのようなにおいが発生するようになり、近隣に迷惑をかけてしまいます。
近隣住民のクレーム対象はもちろん相続した方になるので、管理コストに加えて別途で賠償金などを払う必要が出てきます。
倒壊や犯罪の温床になる最悪のケースも考えられる
相続した不動産を放置して急激に劣化した場合、災害によって倒壊するケースなども考えられます。
また、空き家を放置することで犯罪組織のアジトになる可能性もあります。
不動産を放置する期間が長引くと、それだけで死傷者を出してしまう可能性があるのです。
このような最悪のケースに至った場合、管理責任を放棄した被相続人にも当然大きな責任があります。
「物件の状態が良いから大丈夫」「治安が良いから大丈夫」と勝手に思っていても、目を離した隙に何が起きるのか分かりません。
想定外のリスクを避けるためにも、相続した不動産は出来るだけ早く売却し、管理責任を他者に移してしまうのが安心です。
相続した不動産を放置する責任は今後増加していく
相続した不動産を放置しても、「皆やっているし問題ない」と思われている時代がありました。
ただし近年では空き家問題が深刻化したことで、相続した不動産を放置する責任は以前にまして高くなっています。
特に最近では、特定空き家と呼ばれる倒壊の危険がある物件は、所有者の許可を取らずに立て壊すことが可能になってきています。
また、不動産の放置によって重要な地方財源である固定資産税の税収が減少するのを避ける動きも活発化しています。
相続した不動産を放置するのは悪であるという認識に社会全体がシフトしていることも、頭に入れておかなければいけません。
相続された不動産は早めに売却すべし
不動産を相続すると、固定資産税を負担する義務が発生します。
固定資産税とは、市町村が土地に賦課する税金のことで、不動産の所有者に納税義務があります。
固定資産税は、課税標準額(時価の7割ほどが目安)×税率1.4%という式で算出されます。
家付きの土地は課税額が6分の1になりますが、それでも年間で10万円以上は納付をしなければならないケースが多いです。
土地のみの場合は、家付きに比べて税負担が6倍にもなります。支払いの負担が重荷だと感じるようになる前に売却しましょう。
固定資産税が突然2倍になることも
2009年に施行された長期優良住宅普及促進法により、耐震性や省エネに優れている住宅を長期優良住宅に指定するようになりました。
長期優良住宅に選ばれた場合、5年間だけ固定資産税が半額になります。
お得な制度ではありますが、もし長期優良住宅であることを知らぬまま受け渡されてしまうと、5年経ったあと突然課税額が倍増されたことに気づくことになり、あらかじめ準備ができません。
2009年以降に建てられた家を貰い受ける場合は気をつけましょう。
問題を先送りにすれば家族関係が修復不可に…
相続不動産が存在することで、遺族間の関係が悪化してしまうのが、最も避けるべきリスクです。
実家を相続したときなどは特に、思い入れの深さや価値観が相続者によって異なるので、話し合いが白熱してしまいがちです。
また、世代が違えば「家は子孫に受け継ぐもの」という固定観念を持っている方も多く、売ることを認めてくれない場合も良くあります。
こちらの体験談でも姉弟間で実家をどう処分するか意見が分かれ、一旦共同分割することでその場を丸く納めました。
→親の死後、家を売るかで揉めた友人の話ただ、価値のない不動産を持っていても税負担がかさむだけで何も良いことはありません。
処分するならする、誰かが住むなら早く引っ越すなど、なるべく早く対応して問題を先送りしないようにしましょう。
不動産は相続放棄するよりも取得して売却するほうがお得
最初から不動産がいらないと思っているなら、相続放棄をすることもできます。
ただ、相続放棄は特定の資産だけ放棄することが出来ず、全ての遺産の相続権を失ってしまいます。
相続してすぐに売却をすれば維持コストは特にかかりませんし、高額の不労所得を得ることもできます。
自分に割り当てられたものは一旦相続をした上で、それぞれ適切な方法で処理をするのがお得です。
売却を前提に不動産を相続する場合は換価分割を選ぼう
売却を前提に不動産を相続したい方も多いのではないでしょうか。
ただ、あなたが売却に積極的だったとしても、特別な規定がない場合、不動産は法定相続人全員の共有財産となります。
前述の通り、相続した不動産の売主を決定し、意見の一致を取る手続きはカットすることができないのです。
相続~売却までの間に、交渉を重ねて自分に有利な内容で売り進めることも出来ますが、不動産のような高額資産の場合はどの法定相続人もおこぼれを期待しているので、交渉の成功率は高くありません。
それどころか、1人が威圧的に対応することで、他の法定相続人との意見の一致が取れない確率が増えていきます。そうなれば、売却自体が不成立となります。
こうした状況を防ぐため、売却を前提に不動産を相続する場合は、最初から全員にメリットのある換価分割を選ぶことをおすすめします。
きっちり平等に分配ができるので、意見の一致も取りやすく、スムーズに手続きを進められる可能性が高まります。
相続不動産の売却前に相続登記を必ず行おう
不動産売却では、事前に所有者名義を変更しなければなりません。この手続きを相続登記といいます。
この登記には、期限に関する法的な決まりがありません。
物件を引き渡されてすぐに変更を行わなくても特に問題にはならないため、前の所有者のままにしてしまうケースも少なくないのが実情です。
しかし、不動産売却では、しっかりと名義変更しないと大きな損をすることになります。
登記をまだ行っていない方は、たとえ検討中の段階でも早めに手続きしておきましょう。
登記をせず不動産売却をするデメリット
名義変更をしていない場合、所有者証明ができないので、独断で売買契約を結べなくなってしまいます。
また、不動産になにか不測の事態が起こった場合などは、賠償を受けられません。
このように、登記をしない不動産売却はデメリットだらけなので気をつけましょう。
相続した不動産の売却では委任状の作成が必須
親の不動産を複数人の兄弟が相続した場合、代表者を一人立てて売却をするようになります。
この時、代表者の権限はどこからどこまでなのかを規定する必要が必ずあります。
これをしないと、高額な不動産をタダ同然で売られたとしても、何も文句を言えないことになってしまいます。
これを避けるためには、代表者以外の相続人が委任状を準備して、代表者の権利を制限する必要があります。
委任状の基本的な内容
不動産売却で作成する委任状のフォーマットは自由です。
ただ、ほとんどの場合は不動産会社が用意しているテンプレートに従って書類を作成するようになります。
委任状を作成する際に必ず明記しないといけないのが、こちらの9点です。
- 売却可能な価格条件
- 手付金の金額
- 引き渡し日(予定)
- 契約解除時の違約金額
- 公租公課の分担起算日・お金の支払い日
- 代金・費用の取り扱い方法
- 所有権移転登記などの申請手続きの方法
- 上記の条件に当てはまらないケースをどう処理するか
- 委任状の有効期限
特に最初の価格条件の設定は不動産売却を成功させるために非常に重要です。
不動産が思うように売れない場合、仲介業者から代表者に値下げを打診するケースは多々あります。
また、購入希望者が交渉上手だと、売買契約の直前で、大幅値下げで押し切られるリスクも十分あります。
委任状で価格条件を明記しておけば、それ以下の金額での売買は成立しないので安心です。
委任状には全員分の実印・印鑑証明・住民票が必要
委任状に法的拘束力を持たせるためには、委任状を作成する法定相続人全員分の実印・印鑑証明・住民票が必要になります。
全員分が必要になるので、上手く提携が取れていないとなかなかそろわず、売却が遅れて売り時を逃す可能性もあるので注意しましょう。
委任状を利用する際は仲介業者の認可も必要
委任状が効力を発揮するためには、委任状の作成者を売主の関係性を証明する必要がまずあります。
この証明は前述の書類でも出来ますが、それとは別に契約した仲介業者のほうでも関係性を認めてもらう必要があります。
そもそも、不動産の権利関係や適正価格、細かい費用に関して知っておかないと委任状を作成することはできないので、まずは法定相続人全員が業者と顔合わせをした旨で、ザックリでも良いので売却のイメージを共有した後、具体的なアドバイスを受けながら委任状作成を進めていく必要があります。
相続した不動産の売却を成功させるには代表者以外の積極的な参加・協力も重要
委任状によって不動産売却の代表者を決めたら、基本的に彼一人で手続きを進めていくようになります。
他の法定相続人は定期的な報告などをチェックするだけで、基本的には何もやることはありません。
しかし、相続した不動産の売却を成功させるには、代表者以外も積極的に協力する必要があります。
代表者以外が特に協力したいのが、草むしりや掃除・整理整頓を実施して第一印象を向上させる作業です。
相続した不動産を売る場合、すでに築年数がある程度経過しているので、高く売れる見込みはないと思っている方も多いかと思います。
確かに築年数は売却価格を形成する大きな要素ですが、築古の物件が必ずしも高く売れない訳ではありません。
個人間の不動産売買では、価格を売主・買主間の話し合いで柔軟に決定できます。つまり、買主が高く評価してくれれば、高く売れる見込みはあるということです。
築古物件はプロの不動産会社による査定では評価が低くなりがちです。
ただ、実際に不動産を購入する方は知識のない素人なので、不動産の評価は第一印象にかなり引っ張られます。
特に水回りや玄関などは第一印象に大きく影響するので、手分けをして清掃をすることをおすすめします。
清掃・リフォーム等にかかる細かい費用は最後に清算すべし
不動産売却で得た利益は決済後に分割されますが、販売活動中にも前日のような清掃や簡易リフォームなどで費用は発生していきます。
こうした費用を誰か一人が負担する必要は全くないので、費用の支払いも最後に全員で精算するようにしましょう。
ただ、清掃などによる第一印象の向上は、買主の心情的な効果が大きく、数万円の費用を負担したからといって、○○万円利益が上乗せされるという保証は全くありません。
そのことを知らせずに売却費用を負担してもらうと、後でトラブルが起こる可能性が高いので注意しましょう。
業者・第三者への対応は必ず代表者がおこなう
代表者以外の方が掃除などをしてくれるのは大変ありがたいですが、調子に乗って買い手の募集をしたり、内覧などの対応をしたりするケースは絶対に避けましょう。
窓口が増えることで混乱が生じますし、それによって有効な売買とみなされない可能性もあります。
代表者に申し訳ない気持ちも分かりますが、不動産会社や購入希望者へ対応する場合は、面倒でも必ず代表者へ回すようにしましょう。
他の法定相続人は不動産売却に関する知識がほぼ0と思ったほうが良い
相続した不動産を売却する代表者になった方は、責任もありますし専門家とのコミュニケーションの機会も増えるので、不動産売却の知識はどんどん増えていきます。
その一方で、代表者以外の人は不動産売却に関する知識がほぼ0と思ったほうが良いです。
そもそも不動産売却をするケースは人生に一度あるかどうかです。
また、日本の不動産取引は不透明性が強いと言われており、一般層で仕組みやフローを知っている方はかなり少ないです。
代表者が頑張って手続きをしたのに、何も知らない周りの相続人に傷つく言葉を言われたりする可能性もあります。
なんでそんなことも知らないんだと頭に来ることもあるでしょうが、少なくとも売買が無事に成立するまでは、得た知識を共有するなどしながら、成約に向けて手続きを進めていきましょう。
それでも周囲の無知が目立つ、突っかかってくるという場合は、仲介業者に依頼をして説明会を開いてもらうなどの対応をしましょう。
相続した不動産を売却する際は共有名義人の心情を慮るのも大切
相続した不動産を売却する場合は、他の法定相続人の気持ちを思いやることも大切です。
同じ法定相続人でも、亡くなった親に対する心情はそれぞれ異なりますし、相続した実家を売る際に、その実家に対してどれだけ愛着を持っているかというのも人それぞれです。
こうした心情を無視した上でどんどん手続きを進めてしまうと、大きなトラブルに見舞われる可能性があります。
また、法定相続人間で仲違いをしてしまったら、売却の成功がほぼ見込めなくなってしまいます。
あなた自身は一刻も早い売却を望んでいたとしても、意見の異なる共同名義人を急かさず、否定せずに議論する必要があります。
どんな人も実際は遺産に期待している
もともと家族仲が良く、家族間で「遺産はお兄ちゃんが持っていきなよ」といった言葉を日頃からかけているケースも多いです。
ただ、実際にはどんな方でも親の死後に遺産が得られることを期待しています。
特に近年は親がバブル期に得た遺産を、不景気にみまわれている子どもが得るという構図になっているので、期待度は俄然高まります。
いつも優しかった兄弟も、本当は遺産を得たかったと思っているはずです。
相続した不動産の売却を検討している方は、こうした心情を踏みにじることなく、出来るだけ全員に利益が分配されることを目指していきましょう。
遺産トラブルで開いた溝は一生埋まらない可能性がある
前述の通り、関係が良好な家族でも遺産相続時には対立しやすいというデメリットがあります。
特に、不動産のような高額資産の場合、大きな遺産トラブルが起こる可能性は十分あります。
相続問題をきっかけに、長年気づかなかったわだかまりが表面化し、老後まで引きずることも多々あります。
相続した不動産を売却するかどうか、売却後に得た利益をどう分割するかに関しては、慎重に話し合うことをおすすめします。
譲渡所得税と相続税を売却後に支払う注意点
受け渡された不動産でも、譲渡益は課税対象です。
売却をした際は、忘れずに確定申告の手続きを行いましょう。
→不動産売却後の確定申告の流れ!申告時期から必要書類の書き方までわかりやすく解説また、確定申告を行うには減価償却の数字が必要ですが、不動産の取得時期を知らなければ算出できません。
購入当時の売買契約書をしっかりと準備しておきましょう。
譲渡所得税は分割前の売却代金で計算
譲渡所得税は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得税=税率×{売却益-(取得費+売却費用) }
ただ、個々で言う売却益は、分割後の一人分の収益ではなく、全体の収益となります。
つまり、実家が2,000万円で売れて、それを兄弟3人と分割した場合も、譲渡所得税計算時の売却益は500万円ではなく2000万円で計算し、税金が発生すれば登記されている相続者1人に課されることになります。
代表者になって苦労して実家を売ったのに、税金で1人損をする場合もあり得るので、こうしたケースはどうするかの話し合いもしておきましょう。
相続税を支払う場合は譲渡税を軽減することが可能
相続した資産総額が基礎控除額(5,000万円+1,000万円×相続人数)を超えた場合、税が発生します。
ただ、たとえ売り出しを行っている段階でも、納付をしなければなりません。
こうした場合は、税の一部を取得費に加えると譲渡税を抑えることができます。
この特例は、相続税申告期限から3年以内に売却をした時に適用されます。
→相続した不動産にかかる税金の種類と内容!不動産を相続する際は注意が必要!ケース別に売却の注意点を紹介
不動産を相続するのは簡単ではなく、いくつかの注意点があります。
家、マンション、土地など、親からどんな不動産を相続するかによっても売却の考え方は変わってくるので、しっかり事前に把握しておきましょう。
ここからは、実際に不動産を相続する際に抑えておきたいポイントを紹介していきます。
相続した土地を売る際は相場の説明が必要
土地は建物と違って、デザインや間取りなどに価値を左右されません。
逆に言えば、日本の経済状況やエリアの土地開発などに大きく影響を受けやすいタイプと言えます。
このことを他の相続人が知らないと、むやみに売却を反対される可能性があります。
相続した土地を売却する際は、そもそも今売却をするのが一番お得だということを分かりやすく解説をして、納得してもらうことが必要です。
相続した一戸建て・実家を売却する際は放置のリスクを説明する
相続した空き家の実家を売却する際は、相続人それぞれに思い出があったりするので、中々首を縦に振ってくれません。
愛着のある家を保存しておくのは確かに素敵なことですが、空き家を長期間放置していると様々なリスクが発生してしまいます。
特に近年は空き家問題の社会問題化により、危険な劣化した空き家は所有者の許可を得なくても処分・廃棄できる法制度の整備が進められています。
こうした時代背景も考えた上で、しっかり説得するようにしましょう。
反対派を無理に説得する必要はない
いらない空き家は早めに売るべきというのは鉄則ですが、相続人の中に愛着から売りたくない方がいるというのも理解できます。
もし名義人の中に売却を反対する方がいる場合は、その意見をないがしろにしてまで売却を強行する必要はありません。
遺産トラブルで溝が深まり、二度と関係が修復しなかった家族は非常に多いので、まずはそうならないことが重要です。
マンションを相続した場合は部屋の状態を把握しておく
マンションは1部屋ずつ自由にリフォームをすることができないので、部屋内で遺体が発見された場合などでも、1から改修をすることができない可能性もあります。
クリーニング業者に依頼をすれば臭いや気配は消えますが、それでも事情を知った買主から避けられるケースは多々あります。
現在の部屋の状態に加えて、近隣との関係はどうだったのかも把握しておきましょう。
相続から不動産売却をする際に係る税金
相続から不動産売却をする際は様々な税金がかかります。
事前に税金についてしっかりと確認しておかなければ、税金の滞納などをしてしまい、後日追徴課税などの支払いを求められてしまいます。/p>
支払いの必要がある税金を事前に把握し置けば支払い漏れや税引き後に残るお金等を予測しその後の資産運用の計画を立てることが可能です。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
相続税
両親や家族が亡くなり、個人が所有している財産を相続する際に係る税金です。
不動産だけでなく、預貯金や貴金属などの資産として価値のあるものにかかる課税で、相続税の基礎控除を超えた際に発生します。
相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税申告をする必要があるので期間内に必ず実施するようにしましょう。
延納や物納をする場合でも10カ月以内に税務署に申告をしに行く必要があります。
印紙税
不動産などの価値の高い物を売買する際は、契約書・領収書を結ぶ際に印紙税が発生します。
契約金額によって発生する税金は異なり400円~60万円と幅が広いです。
契約を結ぶ際は、売買契約書に因子を貼り消印することで納税をする必要があります。
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 400円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 |
500万円超1千万円以下 | 1万円 |
1千万円超5千万円以下 | 2万円 |
5千万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 |
50億超 | 60万円 |
契約金額無記載 | 200円 |
譲渡取得税
譲渡所得税は、相続した不動産を売却した際に発生する税金です。
不動産の所有期間によってかかる譲渡所得税は異なります。
5年以下(短期所得税) | 30% |
---|---|
5年超(長期所得税) | 15% |
短期よりも長期で持っていた方が、税率が低くなるので注意してください。
登録免除税
相続した不動産の名義を前所有者から新規所有者に変更する際にかかる税金です。
登記を変更する種類によって発生する税金は異なりますが、不動産の場合は土地と建物2つの名義変更をする必要があります。
名義変更の種類と税率は以下の通りです。
- 売買による土地の所有権変更:2%
- 相続による土地の所有権変更:0.4%
- 売買による建物の所有権変更:2%
- 相続による土地の所有権変更:0.4%
名義変更の申告をしない場合は、前所有者の名義で納税通知書が郵送されてしまうので注意しましょう。
住民税
不動産を売却した際にかかる税金です。
譲渡所得税と同様に不動産の所有期間によって税率が異なります。
5年以下(短期所得税) | 9% |
---|---|
5年超(長期所得税) | 5% |
所有期間によって税率が4%も変わるので、売却するタイミングを考える際の1つの要素として考えましょう。
復興特別取得税
3月11日に発生した東日本大震災の復興に使われる財源を確保するための税金です。
2037年(令和19年)まで、所得税に対し2.1%が加算されます。
相続した不動産を売却する際によくある質問Q&A
相続した不動産を売却する際によくある質問について回答していきます。
不動産を突然相続した際は、やるべきことやしなければならないことなどが沢山あり、またどうすれば良いか分からなく困惑してしまうことがあります。
事前によくある質問をしっかりと確認しておくことで、相続した不動産をスムーズに売却することが出来ます。
相続した不動産を売却する際に必要な手続きは?
不動産を単独名義で相続した場合は、名義変更後に不動産売却会社や仲介会社を利用して不動産を売却することが出来ます。
兄弟・姉妹などの共同名義で不動産を相続した場合は、売却するまえに遺産分割協議を行い誰がどの不動産を相続するのかを行った後に、不動産を売却する必要があります。
必ず必要な作業は相続登記をすることです。
相続した不動産の登記変更の代行は可能ですか?
可能です。
不動産の登記変更をする際は、不動産が登記されている場所に訪問して登記変更を行う必要があります。
遠方の場合は、わざわざ名義変更に行くのが難しいですが、代行依頼をすれば遠方でも名義変更をすることが可能です。
相続した不動産が古くても売却はできる?
相続した不動産が古くても売却は可能です。
ただし、物件の立地や建物の状況によって売却価格が大きく変わります。
売却価格などが気になった際は、一括査定などを利用することで複数の不動産買取業者に査定を出すことが出来るので、平均価格や最高価格をすぐに知ることが出来ます。
相続不動産の売却は手続きが複雑!専門家を活用しよう
相続された不動産の売却は、通常の家やマンションの売却手続きよりも手続きが多くなります。
ややこしい事項も多いので、わからないことは遠慮せずに仲介先の担当者に相談しましょう。
ただ、仲介業者は、自らが不利になるような情報はなかなか共有してくれない傾向にあります。
今では、不動産コンサルタントの無料相談サービスなどもあるので、積極的に利用しましょう。
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