この記事の監修
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。
立教大学大学院 博士前期課程修了。
㈱船井総合研究所上席コンサルタント、Real Estate ビジネスチーム責任者、基礎研究チーム責任者 、(株)ディーサイン取締役 不動産研究所所長 を経て 現職。不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーションなどを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演、また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演は毎年年間30本を超える。
著書:「不動産サイクル理論で読み解く 不動産投資のプロフェッショナル戦術」(日本実業出版社」、 「大激変 2020年の住宅・不動産市場」(朝日新聞出版)「消費マンションを買う人、資産マンションを選べる人」(青春新書)等11冊。多数の媒体に連載を持つ。
ラジオNIKKEI「吉崎誠二のウォームアップ 840」
「吉崎誠二・坂本慎太郎の至高のポートフォリオ」
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演
不動産を高く売るためには、良いタイミングで売ることが大切です。
価格の相場は様々な要因で前後するので見極めがかなり難しいのですが、これができると高額売却の成功率が格段に上がりますし、手続き中も迷いや不安が無くなります。
今回は、不動産売却のタイミングを見極めるにはどうすれば良いのかを初心者にも分かりやすく解説していきます。
「すぐにとは言わないけど、いつか家を売ろうかなあと考えている」という方もぜひ参考にしてください!
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不動産売却とは?不動産を売るなら知っておくべき基本内容と取るべき行動・心構え
2021年まで不動産売却の市況は右肩上がりの売り時
上記のグラフは、国土交通省が毎月発表している不動産取引価格指数の推移を示したグラフです。
グラフは、2008年から2020年までの住宅カテゴリーの不動産価格指数の推移を表していますが、全体的に上昇推移で、特に区分所有マンションの価格指数は右肩上がりになっています。
長い景気低迷に加えてリーマンショック、東日本大震災で落ち込んだ不動産価格ですが、2013年以降のアベノミクス、金融緩和政策によって上昇推移となり、更に2013年の東京オリンピック決定も後押しして更に上向きになりました。
価格の推移傾向を見ると、2021年4月の現在は高値圏にあり、まさに不動産の売り時と言えます。
新型コロナウィルスの感染拡大期間は不動産売却のタイミングとして最適?
前述のように2013~2020年は価格相場が右肩上がりで推移していましたが、2020年3月ごろ初頭からは新型コロナウィルスの感染拡大により、数カ月間実質的に経済活動が一時的にブレーキがかかりました。は一部ストップ。
緊急事態宣言により、で自粛・家計の緊縮が起き、予定していた住み替えを延期する世帯も多くいたようです。ました。
レインズが提供している「季報マーケットウォッチ」によれば緊急事態宣言下かの2020年5~6月は取引件数や価格が減少していますが、7月以降は回復傾向を見せています。
項目 | 数値(件/万円) | 前年同期比(%) |
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成約件数 | 9,537件 | +1.4% |
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成約㎡単価 | 55.63万円/㎡ | +3.6% |
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価格 | 3,656万円 | +5.8% |
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築年数 | 21.59年 | -0.32年 |
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【引用】レインズデータライブラリー「季報マーケットウォッチ」2020年07〜09月度より
上記は、2020年7~9月における成約した首都圏の中古マンションの成約金額をまとめたものです。
件数・価格が回復傾向にあるだけでなく、好調であった前年(2019年)を上回る金額になっておりよりも良い数値を記録しており、コロナショックによる影響をほとんどあまり受けていないことが分かります。
コロナショック禍において、一部の方々の間で、贅沢品の購入や娯楽に対する出費に対する出し渋りが起こったのは確かですが、住宅不動産取引に関しては生活に密接する取引必須な作業でもあったるため、各世帯が緊縮の対象に含まなかったのではないかと考えられます。
2022~2023年までは市況に大きな変化はない?
居住用不動産の住み替えだけでなく、不動産投資に対しても同じく、コロナ禍で大きな変化はないと言えます。
外国からの渡航禁止でホテル・民泊投資は大打撃を受けましたが、進学・転勤などで引っ越しがどうしても必要な人の数はコロナ禍でも減らないので、大きな下落は無かったと考えられます。
ただこれは、マンションの竣工までにかかる時間が2~3年なのも影響しています。
2021年に建つマンションの土地仕入れは、2018~2019年におこなわれるのが一般的です。
土地を仕入れた段階では現在のコロナ禍は予測できていないので、デベロッパーがマンションの竣工を減らすなどの対応が出来ていないのです。
仮に、コロナ禍を受けて竣工が減るとすると2022~2023年以降の出来事となるので、影響が本格化するとしたらそれ以降だと考えられますが、今のところ兆候はほとんど見られません。
影響の度合いは地域によっても異なる
不動産価格をチェックすればコロナ禍による影響はそこまで大きくないことが分かります。
ただ、住み替えは不動産業者や引っ越し業者、クリーニング業者など多くの方が関わる作業なので、感染防止が叫ばれている今、心象的には良くないと思う人が多いです。
また、地域によっても感染状況や自粛の強弱は異なるので、場所によっては大きな打撃を受ける可能性も十分あります。
需要と供給のバランスが大きく崩れているエリアも中にはあるので注意しましょう。
持ち家離れは今後も進んでいく
都市部への人口流入が増えた、単身世帯や核家族が増えたなどの背景からここ数十年は持ち家離れが進んでいます。
上記のような社会変化の他にも、若者世代のライフスタイルに対する考え方の変化から以前のように庭付き一戸建てを持つことが格好いいという風潮も少なくなってきました。
現在60%台の持ち家比率ですが、2040年には持ち家率が50%を切るとも言われており、将来的には中古物件を売却しても買い手が全く見つからない状況になるかもしれません。
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不動産が売れない時の解決策・対処法【2021年最新】不動産価格が変化する原因
「不動産売却のタイミングはいつか?」に対する答えを端的に言えば、「不動産価格が高く推移している時を狙う」と、当たり前ですがいう事ができます。
しかし、そもそもなぜ不動産価格は変化するのでしょうか?
不動産価格が変化する要因は、大きく分けて経済情勢と需要・供給の変化の2パターンがあります。
経済情勢の変化
多くのモノは需給のバランスの変化によって価値が変化します。
不動産も例外ではなく、需給のバランスにより価格が変化します。
ただ、需給バランスと不動産価格の動きはリアルタイムで関連性がある訳ではありません。
- 景気が落ち込む
- 一般家庭の収入が下がる
- 不動産の買い渋り・需要低下が起きる
- 不動産価格が下落する
このように、景気が悪化してから実際に不動産価格が下落するまでは1年以上の期間が空くのが一般的です。
需要・供給の変化
当たり前のことですが、不動産の需要が下がり供給過多になった場合、不動産価格は減少傾向に転じます。
景気悪化→賃金減少による買い渋りが起き、マイホーム購入者が減ることが価格低下に繋がるケースはよく見られます。
不動産売却のタイミングを計る2つの指標
不動産売却のタイミングを測るためには、相場の推移に気を配る必要があります。
しかし、相場の動きが分かったところで、その意味が分からなければ意味がありません。
相場の動きでチェックしてほしいポイントは、こちらの2つです。
ここからは、それぞれの要素をわかりやすく解説していきます。
➝不動産売却相場はいくら?地域別の価格と初心者でも簡単に相場を調べる方法
①値上がり
値上がりとはその名の通り、不動産の価格が上がることです。
特定の物件ではなく、ある地域の相場が全般的に上がっている場合は、市場が活発化すると見て良いでしょう。
不動産が高く売れる要素はその他にもたくさんありますが、市況を活発にすることはプロの業者も出来ません。
市場が盛り上がっているということは買い手が多いということなので、早期成約も見込みやすくなります。
②値崩れ
値崩れとは、供給が需要を上回ることによって、価格が急に下がることを指します。
例えば市況が盛り上がっているからと周辺地域で不動産がどんどん売り出されれば、全体の相場が一気に下がる可能性があるということです。
競合が増えると買主に比較されてしまい、内見で手応えをつかみにくくなります。
相場に常に敏感になり、上がりきらない段階で売却してしまうのが理想的です。
また、値崩れは築年数の経過によっても起きます。
戸建てなら築15年以降、マンションなら築30年以降を目安に一気に値崩れが起きると言われているので、売却の意思があるのならその前に売るのがベストです。
不動産を売るタイミングを判断する4つのポイント
相場の推移を考慮して売り時を比較するのが難しいとなれば、他のポイントで売り時を判断するしかありません。
ここからは、一般の方でも比較的簡単に売り時をチェックする4つのポイントをわかりやすく解説していきます。
①周辺の物件価格の傾向
スーモやライフルホームズといったサイトで売り出し物件の価格をこまめに見て、値上がりしていれば売り時と考えることができます。
価格の推移は土地総合情報システムやレインズなどでも見ることができるので、やり方やデータには困らないと思います。
ただ、不動産には一つとして同じものがありませんし、設備やキズ・凹みの状況などはデータでチェックすることができないので注意しましょう。
②季節(春と秋)
中古の戸建て住宅は、人の流入が多い時期に売り出すのがおすすめです。
一般的に最も人の流入が見込めるのは年初~春頃でしょう。
特に転職・転勤をする30~40代の家族連れが多ければ、売れる可能性は高くなります。
次に転職・転勤が多いのが、9~10月です。
多くの会社は4~9月が上期、10~3月が下期となるので、この変わり目で異動を言われるケースが多いです。
その次に異動の多いタイミングは四半期の変わり目である6月や12月でしょう。
ただ、昔は不動産に来店しないと質の高い情報が得られないということがありましたが、現在はWEBサイトでいつでも物件の情報をチェックできますし、数か月前に良い物件を購入しておくケースも多いです。
そのため、昔ほど季節と売り時の関係はないと言われていますが、それでも頭には入れておきましょう。
③築年数の経過状況
不動産の価格に影響する要素の1つに、築年数があります。
戸建て住宅は、建物の耐久年数から勘案すると、築10年で建物価格が半減し、築15年で購入額の2割程度まで減少、20年を超えると建物価値がほとんど0になるとされています。
仮に高価格で売ろうとするならば、早く売ることが大前提となります。
そのため、売却を検討中の方は、なるべく早く必要書類や情報を集めてスムーズに手続きをしていきましょう。
しかし、家やマンションはそこに一生住むことを目的として買う人がほとんどなので、売らざるを得ないケースは突然やってきます。
買ったらすぐ売らなければいけないという訳ではなく、売ると決めたら出来るだけ早く手続きを進めること、築古なら買取に出す、解体して更地にするなどの策を取ることも検討していいでしょう。
④修繕履歴
近年、中古戸建を購入する際に買い手が重視する要素の一つが、修繕履歴が残っているかどうかです。
特に築20年超の戸建てで修繕履歴が残っていない(新築から今までリフォームをした痕跡がない)となると、見映えが良くても購入後に不具合があったり、高額のリフォーム費を払わないといけなかったりする可能性があるからです。
住宅を売却するベストタイミングをケース別に解説
住宅を売るタイミングは市況を元に判断することができますが、実際は住宅の状態や目的、売主がおかれている環境などによって、各自のベストな売り時は変わります。
ここからは売主のおかれたケース別に、おすすめの売却タイミングを紹介していきます。
ローン残債のあるケース
住宅ローンが残っている場合は、そのローンの残高と査定額を比較して、売り時を判断していくことをおすすめします。
不動産を今すぐ売れば、売却価格を使ってローンを返済することができます。
一方、すぐ売らなかったとしても返済は続けていくことになるので、ローンは減らすことができます。
不動産を売却する際は必ずローンを一括完済しなければいけないので、売るならば査定額が残債を上回るタイミングでおこなったほうが良いでしょう。
- 査定額<残債:売却できるが、追い金を払う必要がある
- 査定額=残債:売却できるが、心配が残る
- 査定額>残債:売却可能
返済額を試算できるのであれば、資産価値の推移の兼ね合いも考えて、最もお得な時期を選んでいくのがおすすめです。
住み替えを希望するケース
住まいを建てて、すぐに売る必要はないものの、何となく家を売って住み替えたいと思っている方もいることでしょう。
売却の期限がなく、かつ住まいに対する不満もないのであれば、築5~10年くらいで売るのが最もお得と言われています。
これは、住まいの利用価値を存分に味わった上で、かつ高く売れるタイミングだからです。
せっかく物件を建てたのなら、単に売却価格の高さではなく、その前にいかに有効活用できるかも考えておきましょう。
急な転勤・引っ越しを迫られるケース
不動産が売れるまでの平均期間は、売り出し開始から3~6か月と言われています。
しかし、これはあくまで平均なので、6か月以上かかるケースも少なからずあります。
引っ越し期限が半年以上先の場合は、急いで売却の手続きを進めていく必要があります。
引っ越し期限が3か月を切っている場合は早めに買取に出す
引っ越し期限が3か月を切っている場合、仲介売却で売り出しても売れ残る可能性が高くなります。
こうした事態を防ぐためには、早めに買取に出してしまうのがおすすめです。
業者買取なら最短1か月以内で換金・処分が完了するので、スムーズに引っ越すことが可能です。
住み替えでは売りと買いのタイミングが重要
住まいを売却して新居に住み替える際は、今の住まいを売ってから新居を買う(売り先行)のか、新居を購入した後に売却をする(買い先行)かの2通りの方法があります。
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売り先行 |
買い先行 |
メリット |
購入計画が立てやすい | 時間を気にせず家を売れる |
デメリット |
新居選びの期間が短い |
途中で資金や日程の計画が狂いやすい |
一般的には、住まいの売却が完了しており新居の購入にかけられる費用が明確になっている、固定資産税の二重払いやダブルローンを防げるという点で売り先行がおすすめです。
一方、潤沢に予算がある方なら最初に新居を購入してから売却を勧めていくのも一つの手です。
売りと買いのタイミングが同時になるのが理想
住まいを売る時期と新居が完成して入居する時期に隔たりがある場合、仮住まいへの引っ越しを余儀なくされてしまいます。
仮住まいへの往復の引っ越し代や賃料などが追加でかかってしまうので、今の住まい→新居へ直接引っ越す場合に比べて損をしてしまいます。
売却と購入のタイミングは緻密に設定した上で手続きをおこなっていきましょう。
不動産売却のタイミングの見極めは専門家でも難しい
ここまで、不動産の相場は細かく上がり下がりを繰り返すので、値上がりをしていると判断するのは難しいです。
かなり長いスパンで推移を見れば値上がりが分かりますが、売り時の判断は短期間でしないといけないので気を付けましょう。
売り時の見極めはプロでも難しい
そもそも、不動産売却のタイミングの見極めはプロでも判断が難しいです。
セオリーは相場が底を打つときに不動産を購入し、ピークに達した時に売るのが最もお得です。
ただ、相場の底とピークの見極めは過去の事例を見ていれば分かるというものでもなく、プロの投資家でも成功する人と失敗する人が出てきます。
もし誰が見ても売り時というケースがあったとしても、そこに売り出しが集中すれば値崩れが起きる可能性が高くなります。
結局、他者の思考・動向をイメージしないといけないので、100%正解ということがないのです。
多くの方はライフスパンに合ったタイミングで売却している
そもそもマイホームなどは長年暮らすことを想定して購入することが多いので、計画的に売るタイミングを設定できている人は少数派です。
相続した実家を売却する場合も、使い道はないし、固定資産税がかさむので我慢できなくなって売る方がほとんどです。
不動産を売却する時は良いタイミング・悪いタイミングというものが存在しますが、意識しすぎて人生計画に影響が出てしまうのは避けるべきです。
不動産屋に「今は売るべきではない」と言われたで売却をストップした結果、損をしてしまうケースも少なくありません。
目的・目標を事前に整理した上で、売却するのであれば外的要因に惑わされず、その相場の中でのベストを目指すのが良いでしょう。
不動産一括査定サイトを利用して後悔せず売却しよう
売る絶好のタイミングを見つけたら、次にいくらで売れるか査定してもらうことが必要になります。
不動産の査定を依頼する際におすすめのサービスが、不動産一括査定サイトです。
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