
アパート売却でかかる譲渡所得税とは?いくら払うの?
アパートを売却すると、税金がかかってしまいます。
その中でも高額なのが譲渡所得税です。
アパートを売った時、その売却益から譲渡所得が求められ、所得税と住民税に分離して課税されます。
譲渡所得税がどんな時にいくらかかるのかが分かっていないと、税金を引いたら目標額に届いておらず、後で無駄にアパートを手放したことに気づいた…なんてこともあるので注意しましょう。
今回は譲渡所得税がどういったものなのか、節税する方法はあるのかを解説していきます。
→アパート売却の相場はいくら?高く売るには不動産会社選びが重要!
譲渡所得税はアパートの売却益が購入費用を上回る時に発生
譲渡所得税は、売却益が購入した当時に支払った費用を上回る場合に発生します。
普通は築年数の経過によって価値は下がっていくので、こうしたケースはありません。
しかし近年は東日本大震災の復興は2020年のオリンピック特需により地価が高騰しているので、リーマンショックが起こった2006年直後に購入したアパートを今のタイミングで売る場合、譲渡所得税が発生してもおかしくはありません。
譲渡所得税は、以下の計算式で求めることができます。
譲渡所得税=税率×{売却価格-(取得費+売却費用) }
売却価格というのは、実際にアパートがいくらで売れたかという成約価格のことです。
次に取得費ですが、これはいわゆる帳簿価額のことで、購入時の取得費から減価償却費を差し引いて計算します。
「買った時いくらだったかなんて覚えてないよ…」という方も多いですが、取得費が分からない場合は売却価格の5%を取得費として計算します。(概算法)
税率はアパートの保有期間に応じて変わる
次に税率ですが、これはアパートの保有期間が5年未満か、5年超かによって変化します。
短期譲渡所得(5年未満) | 長期譲渡所得(5年超) | |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 15% | 5% |
譲渡所得税は所得税と住民税に分離課税されますが、総額を求める際は上の計算式で構いません。
保有期間が5年未満だと税率は45%、5年超だと税率は20%なので、5年を超えていれば税額は半分以下になるということですね!
ただひとつ注意してほしいのは、保有期間は取得日から引き渡した年の1月1日までとなります。
2014年4月1日に取得したアパートを2019年5月1日に引き渡せば5年1ヵ月ですが、譲渡所得税の計算の時は2014年4月1日~2019年1月1日で4年9か月となり、税率は軽減されません。
アパートの譲渡所得税を計算する際は取得費の扱いに注意
譲渡所得税を計算する際でややこしいのが、取得費の取り扱いです。
取得費とは主に不動産を購入した時にかかった費用のことですが、賃貸経営していたアパートを売る際は、所有期間中にかかった設備費・改良費も取得に含むことができます。
さらに、これらの費用も取得費に含むことができます。
- アパートを購入する時に支払われた立ち退き料
- アパートを建てる前に支払った土地の埋め立て費用や造成費用
- 所有権の確保で要した訴訟費用など
- 築古の物件を買った後、新築アパートに建て替えるために支払った解体費用
- アパートを買ってから使用開始するために支払われる資金の利子
- 購入時に、他に申し込んでいた契約を解除した時にかかった違約金
取得費が高額であるほど課税額は低くなるので、計上できる分はなるべく多く計上することをおすめします。
アパートの購入価格が分からない時は3つの方法で取得費を求める
前述の通り、購入価格が全くわからない場合は売却代金の5%を取得費とします。
ただ、購入時の契約書など、書類は見つかったのに何となくしか購入価格が分からない時もあります。
この時は、以下3つの方法で購入価格を算出します。
- 契約書に建物と土地の価額が分けて記されている場合→建物部分の価額=取得費
- 建物と土地の価額が区分されていない場合→消費税額の記載に注目。建物にしか消費税はかからないので、当時の税率で価額を割り戻す
- 建物と土地の価額区分がなく消費税の表記もない➝構造、面積などを参考に標準建築価格へ当てはめる
普通に考えればアパートの購入価格が売却価格の5%しかないわけがありませんから、取得費はなるべく正確に求めないと損です。
購入価格を証明できる書類は、大事に保管しておくことをおすすめします。
出口戦略が上手くいくほど譲渡所得税は高額に!
アパートの賃貸経営が成功したら、次にどのタイミングで売るかが重要です。
特にリーマンショック直後に安く買ったアパートなら、地価が高騰している今売ればかなりの利益を見込めます。
特に首都圏の地価はバブル期を超えるほど高騰していますし、2016年のマイナス金利政策で住宅ローンの超低金利状態は続いていますから、まさに今が売り時といったところでしょう。
➝アパート経営の出口戦略!売り時のベストタイミングを見つけるポイント6選
しかし、「安く買って高く売る」という基本戦略が上手くいけばいくほど、譲渡所得税は高額になります。
場合によっては課税額が1,000万円にも上るのです。
課税額が高額になったら、正直に全額支払うのではなく、節税の特例を利用していきましょう。
譲渡所得税の節税方法は2つ!それぞれの内容は?
譲渡所得税は居住用不動産を売る場合、最大3,000万円分控除になります。
しかし、1棟アパートの収益物件を売る際はこの特例が利用できません。
アパート売却の際に利用できる特例控除は、以下の2種類です。
- 所有期間10年超の軽減税率特例
- 平成21年及び22年購入の特例
それぞれの内容を見ていきましょう。
①所有期間10年超の軽減税率特例
所有期間5年超で低くなった税率は、10年を超えると更に低くなります。
譲渡所得(円) | 住民税の税率 | 所得税の税率 |
---|---|---|
6000万円以下 | 10% | 4% |
6000万円超 | (譲渡所得-6000万円)×15%+600万円 | (譲渡所得-6000万円)×5%+240万円 |
課税額が大きいほど、この特例が効果的になってきます。
②平成21年及び22年購入の特例
平成21年、22年に購入した土地は、所有期間が5年を超えて譲渡すると譲渡所得から1,000万円が控除となります。
これは、東日本大震災を受けてのものです。
一棟アパートを敷地ごと売る際は、この控除を使えば土地にかかる税金だけは安く抑えることができます。
譲渡所得税が発生したら確定申告を忘れずに!
譲渡所得がプラスになったら、アパートを引き渡した翌年の2~3月に確定申告をする必要があります。
この時に所得税を納めた後、住民税を同年6月から4期に分けて納付していきます。
不動産売却時の確定申告手続きはかなり複雑で、サラリーマンの方などは特に戸惑うことと思います。こちらに確定申告の流れを詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてください!
➝不動産売却時は確定申告が必要!書類の書き方を完全ガイド【決定版】
最後の最後まで利益をプラスにすることにこだわり、アパート売却を成功させましょう!
