
土地を貸す際の賃料(借地料)相場の調べ方とは?地代の計算・算定方法・利回りの求め方を解説
相続したいらない土地の処理に困っている方は多いことでしょう。
立地が悪い土地を売却をしても高値で売れることはまずないので、貸地をするのも1つの手です。
ただこの貸地。どれほどの利益を得られるのかイマイチ相場がわかりませんよね。
土地の賃料の計算はさまざまな要素が絡んでくるので、初心者には難しいかもしれません。
ここからは、土地の賃料相場の計算方法やその他ポイントを解説します。

借地の種類

借地は大きく分けて2つの権利によって分けられます。
- 普通借地権
- 定期借地権
普通借地権は、存続期間を更新できる契約のことを指し、定期借地権は更新することができません。
また、定期借地権は「一般借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権」の3種類になります。
普通借地権は借りている人と契約を解除する場合、正当な理由が無いと解除することが難しく、正当な理由も貸している人がやむを得ず自分で住む場合と限定されています。
普通借地権は地主が認められている権利がかなり限られているので、近年の借地事業では定期借地権を利用するケースが多いです。
各種借地料の相場
各土地形態の借地料の相場について詳しく解説します。
住宅・店舗
住宅や店舗の借地料の相場は、借地上の建物が住宅か店舗かによって相場が異なります。
一般的に借地料の相場は土地価格に対する年間地代の割合によってきまります。
住宅の借地料(年間)の場合は土地価格の2~3%となっており、店舗の場合は土地価格の4~5%になっています。
また、上記の借地料の相場は定期借地権の場合で、普通借地権とは異なります。
普通借地権と定期借地権は地主の権利の認められ方が異なり、普通借地権は地主の権利がかなり制限されているので定期借地権を選ぶケースが殆どです。
普通借地権での住宅や店舗は、定期借地権のち地代相場と大きく変わりませんが、実際は定期借地権より安い金額で地代が設定されているケースが多いです。
住宅での地代は、固定資産税の3倍に設定されている事が多く、住宅地で固定資産税の3倍は土地価格の1%未満になる可能性が高く、かなり低い地代になります。
そうなると「地主は普通借地権にするメリットがないのでは?」と疑問におもいますよね。
普通借地権は地代を安くする代わりに、地主が借地の設定を行う際に借主が地主に高額な権利金を支払うケースが多く、安い地代に設定する代わりに権利金を支払ってバランス良く保ちます。
権利金は普通借地権で適用されがちですが、定期借地権では基本的に適用されません。
普通借地権での権利金は下記の計算式によって算出されます。
- 権利金=更地価格×借地権割合
事業用定期借地権
事業用定期借地権の定期借地権の賃料相場は、相当地代を目安に決められることが多いです。
相当地代は定価の地代のことを指し、相当地代は年間地代額が土地価格の6%程度とされています。
国税庁が、相当地代を求める時に下記のものを採用することを認めています。
- その土地の近くにある類似した土地の公示価格などから合理的に計算した価額
- その土地の相続税評価額又はその評価額の過去3年間の平均額
引用元: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5732.htm
実際の実務では相続税評価額が簡単に土地価格を求められるので採用されることが多く、相続税評価額は地価公示価格の80%程度になります。
上記のことを踏まえると結果的に事業用の定期借地権の借地料相場は時価相当額の4~5%程度になります。
また事業用定期借地権は地主に保証金を支払うケースもあります。
一般定期借地権
一般借地権はマンションや住宅の用途で利用されることが多いです。
住宅の賃料相場は土地価格の2~3%なので、一般定期借地権の相場も土地価格の2~3%になっています。
一般借地権での借主は収益事業目的で借りることが無く、事業用定期借地権より地代を低く設定するのが一般的です。
賃料相場は土地の活用方法によって3種類にわかれる
土地の賃料相場は、借主の利用方法によって、大きく以下の3種類にわかれます。
タイプ | 事例 |
---|---|
建物を建てて貸し出すケース | ・アパート・マンションなどの居住用不動産 ・倉庫・ビルなどの事業用不動産 |
建物を建てず貸し出すケース | ・駐車場・資材置き場など |
定額の賃料収入を得るケース | ・太陽光発電 |
ここからは、それぞれの賃料相場の考え方を見ていきましょう。
1.建物を建てて貸し出すケース
大家となって、家賃を毎月もらうケースです。
土地を貸して建物を建ててもらい借主が賃貸経営をするのであれば、貸主の収入は土地の賃料となります。
一方、自分でマンション・アパートを建てて一室を貸し出すのであれば、収入は毎月の家賃となるでしょう。
不動産のポータルサイト(SUUMOなど)を見れば、どれくらいの規模の物件の家賃がいくらに設定されているのかわかりやすく、賃料相場の検討も付けやすいでしょう。
2.建物を建てず貸し出すケース
建物を建てず、更地のまま貸し出したり、トランクルームを建てたり駐車場を設置したりして運営するケースもあります。
この場合も、建物の貸し出しと同じく契約内容・室数によって変化します。
6室のトランクルームを月1万円で貸し出す…というように具体的な価格を設定していれば、容易に相場を割り出すことができるでしょう。
ただ、ここで注意して欲しいのが、必ずしも満室になるとは限らないということです。
場合によっては1室も埋まらない期間も出てくるので、6(室)×1(万円)×12(か月)で計算しても、達成できる可能性はごくわずかということを知っておきましょう。
3.定額の賃料収入を得るケース
賃料収入が定額となるケースは太陽光発電が当てはまります。
契約内容によってはどんな土地でも毎月定額となりますが、全国一律に賃料が定められているのは、太陽光発電だけでしょう。
一般的な大きさの太陽光パネルの売電量は、以下の通りです。
月 | 1ヶ月の賃料収入の相場 |
---|---|
1月 | 約8,000円 |
2月 | 約7,000円 |
3月 | 約10,000円 |
4月 | 約11,000円 |
5月 | 約13,000円 |
6月 | 約10,000円 |
7月 | 約15,000円 |
8月 | 約18,000円 |
9月 | 約13,000円 |
10月 | 約10,000円 |
11月 | 約9,000円 |
12月 | 約9,000円 |
このように、賃料収入が一定額なので相場の割り出しが簡単なのが特徴です。
立地の悪い土地でも日当たりさえ良ければ安定した収入を見込めますが、逆に立地の良い土地だと少し勿体ない気もしますね。
土地賃料相場の求め方
まずは、土地の活用方法を考慮せず相場を求める方法を見ていきましょう。
まず、大きく分けて土地の賃料を算出する要素は以下の2通りです。
- 利用の仕方
- 立地
- 借主が得る利益
はじめの利用の仕方に関しては、前述の通り後で解説します。利用の仕方が変われば初期投資額が大きく変化しますし、3番目にあげた借主が得る利益も数千万円単位で変わります。
ただ、利用の仕方や初期投資は人によってそれぞれなので、不動産会社に自分のケースを見て確認してもらうのが一番でしょう。
土地の価値は周辺道路の評価で求められる
土地の価値は、周辺道路の評価(路線価)によって求めることができます。
路線価とは道路に面した宅地1㎡あたりの評価のことで、国定の価値となっています。
路線価がまとめられているのが国税庁が運営する路線価図・評価倍率表で、土地ごとの路線価がわかりやすく掲載されています。
路線図の見方と土地相場の求め方

国税庁のサイトを見ると、上記のような路線価図を見ることができます。
この地図では、それぞれの道路の評価を1,000円単位で表示しています。300Cと記載している場合、路線価は30万円ということです。
具体的には、以下のような計算で土地の価格を求められます。
<1路線に面する土地>:1㎡当たりの地価【路線価(30万円)×※奥行35mの補正率】×地積(35×20=700㎡)=土地の価格
<2路線に面する土地>:
①正面路線価×奥行35mの補正率=1㎡当たりの正面地価
②1㎡当たりの正面地価+【側方路線価(20万円)×※奥行20mの補正率×※側方路線影響加算率=1㎡当たりの地価
③1㎡当たりの地価×地積(35×20=700㎡)=土地の価格
上記のように、土地が接する道路の数によって計算方式は変化します。また、※が付いている補正率や影響加算率は国が土地の状況によって調整する数値で、時期によって変更もあります。
詳しくは不動産会社に相談してみましょう。
基本的に賃料相場は路線価に比例
路線価は、アクセスが良いと高くなりますが、これは土地を賃貸に出すときにも一緒です。
そのため、基本的には路線価の高い地域であれば賃料相場も高まります。
ただ、こうした国定の評価とは別に賃料の市場相場というものもあります。
土地の貸し出しは不動産会社の仲介によっておこなわれますが、実際に貸し出されている土地が地域によって偏りがあれば、貸地の少ない地域では希少価値が高く、多い地域では低くなります。
こうした市場の動向も賃料には影響することを覚えておきましょう。
賃料相場の算出で使う計算式
ここまで土地の価格の求め方を紹介しましたが、これはあくまでも「土地価格と賃料は比例する」というだけの話です。
そもそも契約によって貸し出し期間は数年にも何十年にもなるので、それによっても賃料は変化します。
このときに賃料相場を求める方法は、以下の4つです。
- 積算法を使った算出
- 賃貸事例比較法を使った算出
- 収益分析法を使った算出
- 公租効果の一定率を使った算出
ここからは、それぞれの計算方法を詳しく説明していきます。
1.積算法を使った算出
積算法の場合、以下の計算式を使います。
地代=更地価格×期待利回り+必要経費(公租公課)
期待利回りとは、一度の賃料支払いで初期投資(購入額)の何%のリターンを得られるかという割合の期待値です。例えば、100万円で買った土地の賃料を1万円にしたい場合、期待利回りは1%となります。
期待利回りの計算は非常に難しいことから、概算で2%とすることが多いです。
ただ、貸主が勝手に利回りを決めることができるので、少し貸主が有利な結果となってしまうのがデメリットです。
2.賃貸事例比較法を使った算出
賃貸事例比較法とは、その名の通り賃貸の事例を集約し、そのデータを参考に地代を算出する方法です。
前述の通り、土地の賃貸相場にはそのときの市場の動向も関わってきます。この方法は、市場の仕組みも取り入れている分、信頼性は高いように思えます。
ただ、周辺の取引事例を十分な数集めなければならないので、田舎では不利です。
また、似通った形状の土地でも路線価が異なったりするので、この方法で正確な地代を求めるのは非常に難しいです。
ただ、現実的に同じような土地の賃料はいくらかを知ることは、今後の方針を決める上でも重要です。
3.収益分析法を使った算出
収益分析法は、土地に建物を建てたと仮定して、そこから得られる収益を分析する方法です。
土地の立地や面積に応じて建物の大きさ・高さは制限されているので、その制限を基に建てられる物件の概要を予想し、仮想収益を算出します。
この方法は素人が簡単にできるようなものではなく、専門家に依頼することがほとんどです。
4.公租公課の一定率を使った算出
土地の公租公課(税金)は一般には固定資産税と都市計画税が挙げられます。
これも路線価を使って割り出されているので、逆算をすれば賃料相場を求められます。
固定資産税額+都市計画税額×3~5倍
上記のような方法で、簡単に相場を求められるのがメリットです。
この方法も他の3つと同様極めて正確というわけではないですが、初心者にもできるので試してみると良いでしょう!
ただ、地方には都市計画税がない地域も多く、この計算式が適用できないので注意しましょう。
高額の土地賃料で貸したいなら一括査定サイトを使おう
ここまで紹介した方法は一部難しいものもありますが、1人でもできる計算方法です。
算出した概算値を基に個人で貸し出すこともできますが、普通は賃貸仲介をしてくれる不動産会社に依頼して借主を探します。
このときにおすすめなのが、当サイトのような一括査定サイトです。
これは、土地の所在地や面積を記入するだけで、対応する複数業者に査定を依頼できる便利なサービスです。
一般的に売却額の査定をするサービスと思われがちですが、多くの登録会社が賃貸の仲介にも対応しているので、相談時にどちらがお得かきくこともできます。
また、サイトによっては賃料の査定のみを依頼することもできますよ!
ただ、不動産会社が必ずしも納得いく額をつけてくれるわけではないですし、気を引くために超高額の予想賃料を付けることもあります。
「この業者はおかしい」という判断をするためにも、自分で賃料相場を求めておくことをおすすめします。
土地の賃料相場は何十年というスパンで考えていこう
ここまで、土地の賃料相場について解説しましたが、相場を調べておくべきなのは貸し出してから1年など、短い期間ではありません。
一度土地を貸し出せば、借主の手元に無理やり戻すことはできず、自由が利きません。
場合によっては10年以上貸し出す形になるかも知れません。
特に、今から土地を貸し出すとなると、2020年の東京オリンピック後の地価の低下や少子高齢化の影響も受けることになります。
→2022年問題で不動産価格の今後の推移はどうなる?こうした時期・タイミングにも目を向けて、予測をたてておきましょう。
失敗する確率・税金を考えると売ってしまうのがセオリー
ネットでは「土地を貸し出して数千万の臨時収入をゲット!」なんて記事も良く見かけますが、実際は土地を貸し出して安定して回せている人は極わずかです。
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