

株式会社不動産経済研究所 企画編集部
一不動産関連全般に関するオピニオンや分譲マンション供給データを掲載した『不動産経済Focus&Research』(週刊)、マンション管理の専門紙『マンションタイムズ』(月刊)を発行している。
そのほか、不動産関連団体の広報誌の編集・制作などを行っている。
株式会社不動産経済研究所 企画編集部
一不動産関連全般に関するオピニオンや分譲マンション供給データを掲載した『不動産経済Focus&Research』(週刊)、マンション管理の専門紙『マンションタイムズ』(月刊)を発行している。
そのほか、不動産関連団体の広報誌の編集・制作などを行っている。
購入した不動産価格の今後の推移が気になる方は大勢いると思います。
不動産価格は日本全体でどのように推移してきて、今後はどうなる見通しなのでしょうか?
ここでは、不動産価格の今後の推移について説明していきます。
近年の不動産価格の推移はどのように動いたのか、見ていきましょう。
不動産価格指数(住宅)(令和2年11月分・季節調整値)
2013年後半から、アベノミクスの影響などにより、不動産価格は上昇傾向にあります。
また、価格が上昇していても不動産取引はかなり活発なので、これからも価格に関しては高い水準が続く可能性が高いです。
取引が活発な理由としては、以下の要因が挙げられます。
こうした傾向は特に東京の住宅街を中心に盛んです。
2020年から新型コロナウィルスの世界的感染拡大により、外出自粛などの影響を多くの人が受けました。
この未曾有の事態は不動産価格にどう影響を与えたのでしょうか?時系列に沿って解説していきます。
新型コロナウィルスの感染拡大が起こってから発令された緊急事態宣言は多方面に影響を与えました。
最初に感染拡大のニュースが多く発信されたこの時期は、消費者の購買意欲が大きく下がっています。
不動産をもともと購入する予定で、かつ収入にそこまで問題がなかったとしても、「今後何があるか分からないから、とりあえず貯蓄に回そう」と考える人が多くなりました。
不動産の売買には引っ越しなど、移動や対面での接触が伴います。小さな部分を見れば、内見や不動産会社、役所へ赴くといった移動も含まれます。
実際、この時期には首都圏を中心に取引件数・取引価格が大きく減少し、価格もました。
一方、2020年7月以降は価格が徐々に回復を見せています。
エリア | マンション価格 | 前月比 |
---|---|---|
首都圏 | 3,687万円 | 0.5%上昇 |
近畿圏 | 2,458万円 | 0.3%上昇 |
中部圏 | 1,952万円 | 0.4%上昇 |
東京カンテイが8月24日に発表した報告では、2020年7月の三大都市圏(東京・大阪・名古屋)での中古マンションの価格推移が総じて上向きになっています。
特に首都圏では、前年よりもマンションの取引価格が上昇し、成約件数が増加しています。
項目 | 数値(件/万円) | 前年同期比(%) |
---|---|---|
成約件数 | 9,537件 | +1.4% |
成約㎡単価 | 55.63万円 | +3.6% |
価格 | 3,656万円 | +5.8% |
築年数 | 21.59年 | -0.32年 |
【引用】レインズデータライブラリー「季報マーケットウォッチ」2020年7〜9月度
緊急事態宣言が解除されたことで人々の購買意欲が戻ったこと、政府が住宅ローン金利の低水準が続いていること、テレワークの浸透で自宅の住み替えに関心が向かったことなどが、買い渋りの回避につながったためと考えられます。
2020年まで不動産価格が上昇した理由として、次の4つの要因が挙げられます。
不動産業界の好調を“オリンピック特需”と表現することも多いですが、一過性のスポーツイベントよりも、上記の➀と②が価格に与える影響は大きかったとみられます。
不動産価格は株価、金利、投資の3項目に大きく影響されます。
もちろん、この3項目が上向きになるには、その土台である国内経済が好況であることが大切です。
第二次安倍政権下の経済政策、いわゆるアベノミクスの効果を疑問視する声もありますが、少なくとも2012~2020年の間に震災復興の影響などもあって景気回復が進み、日銀による金融緩和策で不動産価格が上昇推移を見せたのは明らかです。
次に要因として挙げられるのが、都市の再開発です。
これによって都市の価値が上昇するだけでなく、不動産業にかかわる様々な業者が動員されることで景気が良くなります。
2020年までの都市の再開発は、東京だけでなく、千葉、埼玉などまで広範に渡ったのが、大きな特徴でした。
東京はいまや世界中の人々が知っている世界最大の都市の一つとして海外の投資家から注目されています。
なぜかというと、東京は世界の有名都市である香港やロンドン、ニューヨークに比べ、不動産価格が割安で、利回りが高いのに加え、価格、賃料が安定していることから、収益を得る手段として需要が高まっているからです。
東京がオリンピックの開催地になったということもあって、海外投資家からの日本における不動産の需要が高まっています。
この需要を考えると不動産価格は上昇していくことが予想できます。
2015年に相続税が改正され増税となったことによって、資産を現金ではなく、少しでも税金の安い不動産で所有しようという考えの人が増えました。
これからもこのような傾向が続くことになれば不動産価格も上昇してくことが考えられます。
しかし、タワーマンション購入で節税する人が多いことを受けて、課税が強化されるようになったので、このまま資産を不動産で所有していく人が増えていくかは注目ポイントとなります。
2008年から2018年までの10年間でどのように不動産価格が推移してきたのかを、中古住宅の成約価格をもとにチェックしていきましょう。
なお、ここから紹介するグラフは全て公益財団法人東日本不動産流通機構が発表したデータをもとにしています。
近年の不動産価格の上昇推移は、中古マンションで特に顕著です。
2011年の東日本大震災直後から2018年までを見ると、全体で1000万円前後も伸びています。
オリンピック特需を強く受けている東京都心は、さらに大きく上昇しています。
特需を受けられるうちに不要なマンションは売るのがおすすめです。
中古戸建住宅の相場も上昇してはいますが、マンションほどではありません。
戸建ては築年数の影響で評価が大きく変わるので、個別に価値を見ていく必要があります。
新築戸建住宅もそこまで大きな影響を受けている訳ではありません。
比較的横ばいですが、一部の地域では施工業者の人件費の上昇などの影響で高くなってきています。
土地の価格推移も全体的に横ばいですが、都心では地価がバブル期以上に高騰しているエリアもあります。
不動産価格は経済情勢や社会的な出来事も反映しながら変化してきました。
景気変動による価格変動はどの不動産タイプも同じく受けていますが、影響の度合いはタイプによって異なります。
ここからは、戸建て、マンション、土地がそれぞれどのような価格変動をしてきたのか、今後どう変動するかの予測を解説していきます。
戸建ての価格は2010年代には、マンションと異なり全国的に横ばいから微増傾向となりました。
一戸建てに住むのが一般的な地方・郊外には好況や再開発の影響がそこまで大きくなかったこと、転勤の可能性が高い人が多く住んでいるマンションに需要を取られたことなどが要因と考えられます。
コロナ禍で一時取引件数は落ち込みましたが、第1次の緊急事態宣言が明けた2020年7月以降は回復傾向を見せています。
将来の不安からくる出費の緊縮は多くの家庭で起きたようですが、住み替え・引っ越しをセーブせざるを得ないほど家計に影響を受けた人は少なく、影響も限定的です。
逆に新築戸建ての取引に関しては、2020年の自粛明け以降は前年よりも良い数字を記録しています。
自粛やリモートワークの整備によって居住環境の重要性が人々の間で高まり、戸建て需要が回復したのが要因と予測されます。
マンションの価格は、2020年まで上昇推移となっています。
特に、首都圏・名古屋圏・関西圏(大阪・兵庫など)の三大都市でマンション価格が高騰しています。
ただ、人々のマンション購買意欲は2019年ピークを迎えており、今後は価格の上昇に需要が追い付かなくなる可能性があります。
一方で、マンション価格の上昇は、当初予想しているほどではなかったという見方もあります。
新築マンションの価格はすでに頭打ちとも言われていますが、需要は依然高く、湾岸エリアの高額マンションの取引数は増えているというデータもあります。
ただ、緊急事態宣言が明けた以外にも以下のような要素が取引を後押ししている可能性もあります。
マンションの竣工は土地の仕入れから2~3年かかると言われています。
今後影響が出る可能性があるとしたら、コロナ禍が始まった2020年の2~3年後。つまり2022~2023年が目安だと考えられます。
土地も価格上昇の傾向を見せはしましたが、関西圏で大幅に上昇した以外は、首都圏・名古屋圏などで、そこまで大きな上昇は見せていません。
土地購入の目的は建物を建設する場合が多いので、戸建て需要が増加していないということは、土地も上がっていないということになります。
土地の価格も戸建て・マンションと同じく緊急事態宣言明けから回復を見せています。
ただ、観光地・訪日外国客の多い土地の需要は減少しており、インバウンド収益が大きな資金源となっている大阪・ミナミの3地域(心斎橋、宗右衛門町、道頓堀)は2020年7月の路線価が史上初の減額補正となりました。
コロナ禍でも需要を失わない居住エリアとこうしたエリアの二極化が今後進む可能性が高いです。
このことを踏まえると、不動産の価格を調べたいなら個別で調査する必要があります。
不動産に関して全くの初心者でも、比較的簡単に価格相場を調べることはできます。
ただ、注意して欲しいのは、ここで算出される価格はあくまでイメージであり、不動産の価格が100%その通りという訳ではないということです。
個別の不動産価格をより正確にチェックするためには、プロの不動産会社に依頼をするのが一番です。
不動産会社は無料で査定をおこなってくれますが、算出される価格は法的な証明力のないあくまで私見です。
そのため、必ず複数社に査定を依頼し、査定額を比較する必要があります。
複数社へスムーズに査定を依頼できるツールが一括査定サイトです。
不動産の簡単な情報を入力するだけで平均6社以上に一括で査定依頼が出来る優れもので、不動産会社の広告費で成り立っているため、利用料は完全無料です。
複数社の査定額を知ることで平均の価格が分かりますし、売却する際はどこに依頼すれば一番高く売れるかなども分かります。
まだ売却を検討中の方も利用可能なので、価格を知りたいだけという方も気軽に利用することができますよ!
→不動産一括査定サイトおすすめランキング!33社を比較【2021年最新】2020年~2021年は新型コロナウィルスの感染拡大や東京五輪の延期があったものの、基本的には上昇基調を見せていました。
現在は日本全体の不動産市況が上向きという安心感がありますが、今後も数十年にわたって不動産価格が上昇し続ける確証はなく、むしろ下落の可能性が高いと考えられます。
その理由を一つずつ解説してきます。
東京オリンピックに向けて行われたスタジアム建設や交通網の整備、開催に関連した施設の建設などは、閉幕によって一旦ストップしてしまいます。
これによる経済波及効果はそこまで大きくありませんが、建築業者の仕事が減り、人件費が減少すれば、不動産市場の縮小にもつながります。
2020年以降に本格化すると言われているのが少子高齢化です。
子どもがいる世帯の数が減少すれば、ファミリータイプの持ち家需要の減少にもつながります。
今までは状態の悪い家でも長期的に売り出していれば成約できるという認識がありましたが、今後は売れる中古住宅と売れない中古住宅に二極化する時代がくる可能性があります。
近年、不動産業界の大きな懸念に、「2022年問題」というものがあります。
これは生産緑地が原因で起きる問題です。
こちらにまとめてあるように、不動産は都市計画法などで性質・種類をタイプ分けされています。
→都市計画区域・市街化調整区域とは?特殊な土地売却のコツをわかりやすく解説!
この中の市街化区域内にある農地のことを生産緑地と言います。わかりやすく言えば、都市の中にある農地=生産緑地ということです。
ただ、市街化区域は「土地の宅地開発を奨励する区域」という意味なので、そこに農地があるのは少し矛盾していますよね。
1990年前後、市街化区域の指定が進み、区域内の農地には固定資産税・相続税を引き上げることで宅地転用を促しました。
しかし、都市部に緑がなくなり、全面がコンクリートに覆われることで地盤悪化、水の枯渇、自然と調和した都市環境の消滅などのデメリットも起こりうるということで、国・自治体が指定した農地は宅地転用しなくてもいいことになりました。
このルールを定めた法律が生産緑地法(1992年施行)で、指定された農地が生産緑地ということです。
生産緑地は宅地よりも税負担が軽かったので、当時多くの人が指定を受けました。
この優遇策は30年の期限付きで、その後は以下の3通りの方法で処理することになっていました。
まず一つ目ですが、当時はそう約束したものの、地方財政が苦しい中、自治体が不動産を買い取り、お金を払うことはまずないでしょう。こちらに書いてある通り、買取ではなく寄付という形で無償譲渡されるケースが最近はほとんどです。
→土地を高く売る方法!いらない土地は国や自治体に売却できるって本当?
二つ目も、なかなか上手くいくとは思えない方法です。農地は基本的に、農家に農地のまま売らなければいけません。
しかし、統計では2022年に日本の農家の平均年齢は70歳を超えます。
跡継ぎもいない中で農地を買い、耕作の手間を増やそうと思うでしょうか?
きっと多くの人が同じように「税負担が重くなる前に手放したい」と考えるでしょう。
結局、三つ目を選ぶしかない人が多く出てきて、耕作放棄や不動産会社に駆け込む人が続出すると予測されます。
2022年に生産緑地を手放す人が続出することで、都市部全体の地価が暴落するとも考えられています。
駆け込まれた不動産会社はかつての生産緑地を、宅地として売り出します。
ただ、農地は国の食料自給率を保護方針によって、農家以外に売ったり宅地に転用して売ったりするのを制限しています。
前述の通りかつての生産緑地が農家間で取引される望みはかなり薄く、結果として値下げ後も売れ残り続ければ、不動産市場全体の相場低下を招きます。
戸建て住宅・マンション所有者も都市部の価格暴落前に売って利益を出そうとし、どんどん売り出すようになれば、不動産の需給バランスが大きく崩れ、業界へ大ダメージを与えるでしょう。
この一連の流れを、「2022年問題」と業界では呼んでいます。
このような予測を受け、生産緑地法を2032年まで延長しようという動きもあります。
ただ、前述の通り地方財政が苦しい中、このまま税制優遇策を続けていくのはリスクでもあります。
そのため、2032年まで生産緑地法を延長するかは個々の自治体の判断に拠るのではないか?と言われています。
とはいえ、現在はまだ憶測に過ぎません。生産緑地法解除による市場暴落が一部で起これば、2032年まで延長された地域でもリスクを避けるために一気に売り出し、混乱を招きます。
結局のところ、2022年以降の郊外部の不動産価格は低下するリスクがあると考えられます。
ここまで、2018年から2022年以降の不動産価格の推移を分析しましたが、まとめると以下の通りです。
西暦 | 不動産価格推移の内容 |
---|---|
2020年まで | 相場は上がり続けた |
2020~2021年 | 新型コロナウィルス感染拡大の影響があったが、安定的に推移 |
2020~2022年 | 需要低下、少子高齢化の影響で緩やかに価格低下 |
2022~2032年 | 2022年問題で不動産相場下落の可能性 |
2032年以降 | 不動産下落が本格化か |
結果的に全体的な不動産価格は下がる見通しですが、それでも日本は世界3位の経済大国で、首都の東京は都市としては世界1位の規模を誇るわけですから、都心のマンション価格が今の半額近く下がることは考えにくいです。
数年前に比べると価格は確かに下がる可能性はありますが、「大手不動産会社が次々潰れる」といったことには恐らくならないでしょう。
オリンピックが終わっても不動産価格が下がりにくいエリアはあるのでしょうか。
価格が安定すると思われるエリアの特徴は以下の通りです。やはり、利便性の高いところ、人気のある所はいままでもこれからも不動産価格は安定していくと考えられます。
また、オリンピックに伴い、交通や買い物などの生活が便利になるように整備されていく地域は価格が上昇していくと考えられます。
オリンピックで使用されるスタジアムや競技場がある地域は価格上昇が見込めるかもしれません。
今後、不動産価格が下向きに推移するといっても、日本全国の不動産価格が一様に1割下がるといったことは起こりません。
下がり方は地域によって大きく異なるでしょうし、隣の地域の相場が暴落したことでこちらの地域の需要が増し、価格が高まることもあり得ます。
結論としては、「2020年以降、不動産相場は下がるので早めに売れ!」ということでなく、「2020年以降、不動産相場は細かいエリアごとに大きく変わってくるので、入念に調べることが大切!」ということです。
実際、将来的には不動産価格がどう推移するかは専門家にもわかりません。まして、あなたの家の価格の推移は、あなたにしか調べようがないのです。
そのため、売主自身が積極的に情報取得を進める必要があります。