
不動産売却時の決済の流れ!場所や時間・必要書類を詳しく解説
不動産を売り出し、売買契約を結ぶと、その後におこなわれるのが残金の決済と引き渡しです。
この2つの手続きは同日におこなわれるのが一般的ですが、具体的に何をするのかわかっていない人も多いのではないでしょうか。
「ただ家の鍵を渡すだけでしょ?」と考えている方は非常に危険です。
意外と準備や当日やるべきことが多いので、事前に確認しておきましょう。
この記事では、不動産売却の最後の手続き。決済の流れを解説します。

不動産売却の決済はどのようにおこなわれる?
不動産の決済は、基本的に売買契約を結んでから一か月以内におこなわれます。
所要時間はだいたい1時間程度となっていますが、業者の営業時間を考えると平日の日中であることが多いので気をつけましょう。
とりおこなわれる場所は、ケースによってまちまちではありますが、多額のお金が動くため、安全を期して銀行の契約室でおこなわれるのが一般的です。
決済方法は銀行振り込みか現金手渡し
不動産売却時の決済方法は、銀行振り込みか現金の手渡しでおこなうのが一般的です。どちらにせよ、銀行で手続きしたほうがスムーズですし、安全も保証されています。
ごく稀に小切手を使って決済することもありますが、基本的にはこの2通りと考えてよいでしょう。
不動産売却の決済は立会人が必要
不動産売却の決済は、売り手・買い手のほかにも立会人が必要となります。
代表的な例では、以下のような方々が立ち会うことになります。
- 不動産業者
- 司法書士
- 買い手がローンを借りた金融機関の担当者
- 売り手がローンを借りていた金融機関の担当者
通常、売買契約が決まった段階で、まだ不動産に住宅ローンの残債が残っていた場合、引き渡し前に完済しておくことが求められます。
しかし、完済をした後も抵当権(ローンを返せない場合、金融機関が不動産を強制的に売り出せる権利)が物件に残っている場合があるので、ローンを借りていた金融機関の担当者立ち合いのもと、抵当権を抹消していきます。
決済時の注意点
前述の通り、基本的に手続きは銀行の契約室でおこなわれますが、どこの場所かの決定は買い手の意見は優先されます。
お金が動くリスクは、支払い義務のある買い手側のほうが大きいというのが主な理由です。
また、不動産の決済には売り手、買い手のほかにも司法書士が同席しますが、これも買い手が指定する権利があります。
売り手も報酬を支払わなけれればならないですし、相手の有利なまま手続きが進む可能性があります。
損をしないためには、このタイミングで起こる売り手不利な状況を予測し、売買契約書に記載しておくのがおすすめです。
不動産売却の決済・引き渡し当日の流れ
不動産の決済はたった一日でおこなわれるので、事前に流れを確認し、短期間でスムーズに完了させることがおすすめです。
当日の流れは、以下の通りです。
- 本人確認と書類の確認
- ローン融資を買い手がおこなう
- 税金などの精算
- 売り手から買い手へ領収書の発行
- 仲介手数料の支払い
- 司法書士への報酬支払い
- 売り手のローン返済手続き
- 抵当権の抹消登記完了
- 鍵や重要事項説明書などの引き渡し
複雑な手続きではありませんが、これだけの異なる作業を一日でおこなうのは割と大変です。
この流れを不動産決済の前に学んでおくとスムーズですし、業者の指示通りに動き、後で不安になるということがありませんよ。
1.本人確認と書類の確認
決済をおこなう上で一番初めの手続きです。
まず、契約室に集まった人が売り手本人であるかの確認をおこないます。
同席しているのが顔なじみの業者であっても、必ず本人証明が必要なので注意しましょう。
住民票、印鑑登録証明書を持っていくことをおすすめします。
2.ローン融資を買い手がおこなう
書類の確認などが終わると、次に買い手が融資を受けます。
つなぎ融資、住宅ローンを申し込み、お金が下りれば、売り手に残金を支払い、全代金の振り込みが完了します。
3.税金などの精算
代金の支払いが完了すると、次におこなわれるのが精算です。
不動産売却における精算とは、税金や管理費など、引き渡し日を境に払い手が変わるわけではない費用を日割りなどで計算し、分割負担する作業です。
トラブルになりやすい作業でもあるので、売り手が全額支払いをすることもあります。
4.売り手から買い手へ領収書の発行
精算が終わると、売り手名義で買い手へ領収書を発行します。
この手続きに関しては、業者、銀行担当者にきいておこなうのがおすすめです。
5.仲介手数料の支払い
仲介手数料は、不動産の売買契約が成立した段階から支払いの義務が発生します。
一般的には、契約から決済までの1.5か月で分割返済するのが一般的です。
→仲介手数料の相場はいくら?なぜ払うの?根拠・計算方法・値引きのコツ
6.司法書士への報酬支払い
前述の通り、自分が指定した司法書士でなくても、報酬を支払わなければいけません。
司法書士によっては報酬値下げのサービスなどをおこなっているケースもありますが、相場としては10万円ほどとなっています。
7.売り手のローン返済手続き
買い手から代金を全て支払ってもらったら、最後に売り手が残ったローンを完済します。
ローンが残ったままだと買う方も困ってしまうので、必ず支払えるように貯蓄と合わせた資金計算をしっかりおこないましょう。
引き渡し日に支払いができれば問題はありませんが、万全を期すためになるべく早く完済することをおすすめします。
8.抵当権の抹消登記完了
ローンを完済した後に必ずすべきなのが、抵当権の抹消登記です。
抵当権とは、ローンを借りている不動産に対してつけている担保です。
期限内に支払いがおこなわれなかった場合、抵当権を発動し、物件を競売に出すことが可能です。
この抵当権は、ローン完済後も手続きをしないと外れないので注意が必要です。
登記簿謄本に抵当権の有無も記載されているのでチェックしておきましょう。
9.鍵や重要事項説明書などの引き渡し
ここまできて、ようやく鍵と重要書類の引き渡しをおこないます。
ただ、もちろん鍵の引き渡しは自由にやって良いわけではありません。
特にマンションやアパートの場合は、管理会社に連絡をしておく必要があります。
重要事項説明書は、売買契約書や登記簿謄本に記載がないような情報も載っている書類です。
マンションを例に出すと、ポストの暗証番号、管理費の額、ペット飼育の有無、同棲は可能かといった規則が物件ごとに設けられています。
重要事項説明書は、そんな規則の全てが載っている書類です。
売買契約書と同じくらい重要なものなので、必ず引き渡しをおこないましょう。
不動産売却の決済で支払う費用リスト
【買主→売主へ支払い】
- 代金の残り
- 固定資産税・都市計画税の清算金
売買契約時に、買主は売主へ不動産代金の一部を支払いますが、その残りは最後の決済時に全て支払われます。
また、不動産を1月1日に所有していたものに1年間、固定資産税・都市計画税が課されますが、これは引き渡し日を境に精算されます。
5月1日に引き渡しをおこなった際は、売主が4ヶ月分の税納付を、買主が8ヶ月分の税納付をおこなうということです。
→不動産売却後の固定資産税はどう精算・納付する?【売主が支払い】
- 住宅ローンの返済金(一括返済)
- 仲介手数料の半金
- 司法書士の報酬
不動産売却の決済で必要な書類リスト
不動産の決済では、以下の書類準備が必要です。
【売主が準備する書類】
書類 | 内容 | 取り扱い |
---|---|---|
登記済証・登記識別情報 | 不動産の権利者・データが詳細に記載 | 司法書士へ提出・預ける |
実印 | 実印登録済みの印鑑 | 登記関係の書類に押印 |
印鑑証明証 | 実印登録を証明する書類 | 司法書士へ提出・預ける |
固定資産税納付書 | 不動産にかかる固定資産税が明記 | 税金精算のため、買主と確認 |
公共料金の領収証 | 自宅に届いた電気・ガス・水道料金などの明細 | 引き渡し日で日割り精算するため、買主と確認 |
管理規約・パンフレット・建築確認通知書など | 物件(特にマンション)のルール・利用方法が書かれたもの | 買主へ渡す |
次に、買主が決済時に提出する書類を紹介します。
【買主が準備する書類】
書類 | 内容 | 取り扱い |
---|---|---|
実印・銀行印 | それぞれ登録された印鑑 | 住宅ローン・銀行振り込み関係の書類に押印 |
印鑑証明証 | 上の印鑑の登録を証明する書類 | 司法書士へ提出・預ける |
住民票 | 登記変更の手続きなどに必要 | 司法書士へ提出・預ける |
当日の忘れ物が不安な方は、事前に仲介業者や司法書士に預けておいても良いでしょう。
決済時に一気に提出すれば、自分は揃えたつもりでも不備が有り得ます。契約から決済まで1ヶ月超あるので、ゆっくり専門家に書類を提出し、確認してもらうのがおすすめですよ!
→不動産売却の必要書類と取得方法をタイミング別に徹底解説不動産売買の決済・引き渡しにかかる時間は1時間程度
決済・引き渡しは、上記の流れをだいたい1時間程度でこなします。
前述の通り決済をおこなうのは銀行や不動産会社などが主ですが、担当者が本業を優先すれば、その分だけ長い時間がかかるので注意しましょう。
不動産会社は、春先や秋口などの入社・転勤が多い時期が繁忙期となるので、できればこの時期は避けたいところです。
次に銀行ですが、ゴトー日と呼ばれるゴ(5)とトー(10・20・30日)のつく日は季節にかかわらず混雑が予想されます。
平日の早い時間におこなわれるのが一般的
決済・引き渡しは不動産会社や銀行の営業日におこなわれるので、平日が一般的です。
また、全ての手続きを1日で済ませるので、万が一ミスが起きたときも対処できるように午前中など早い時間からはじめることが多いです。
売主本人が仕事で行けない場合は、配偶者などが代理人となって手続きするのも可能ですが、この際には代理の申請や、売主・代理人2人分の身分証明書や実印が必要となります。
意外と時間のかかる作業なので、売主本人が出席するか、誰かに代理を依頼するか早めに決めておくようにしましょう!
不動産の購入代金の現金受け取り・手数料の現金支払いを希望する時の注意点
中古不動産の売却をしたとき、売り手は銀行振り込みではなくて現金での受領を希望できます。
以下では売買契約の時と引き渡し時の決済について、現金受領したときの対処方法を解説していきます。
売買契約時にキャッシュ受領を希望する
不動産の売買契約のときに手付金を受領する方法として売り手はキャッシュでの受領を希望したとします。たとえば、手付金は売る不動産の代金の10%であるとします。
具体的に言えば、売る予定の6000万円の中古不動産の手付金が10%とすると600万円となります。
現金受領は事務所でおこなうのが基本
このときに注意しなければならないことがあります。
それは、売買契約は不動産会社の事務所においておこなわれることが原則であるということです。
そのため、キャッシュを受領したら、なるべく近くにある金融機関に向かって、ATMなどに振り込んでください。
また、売り手だけで金融機関へは向かわずに、不動産会社の担当者にも同伴してもらって2人以上で向かってください。
それは、キャッシュをもちはこんでいるために、多くの危険が伴うことが予想されるからです。
引き渡し時の決済で現金受領したときの対処法
中古不動産の売買契約を締結がなされた後、約1ヵ月前後で物件引き渡しの決済がおこなわれます。
買い手が手付金以外の残金売り手に支払いますので、金融機関においておこなわれるケースがほとんどです。
これは売り手が住宅ローンを借りた先の金融機関において引き渡し決済をおこないます。
それは、売る不動産の住宅ローンをすべて完済していなければ、物件の引き渡しをおこなうことができないからです。
現金受領するときの注意点
引き渡し時には、抵当権の抹消がおこなわれます。
また、このときには司法書士の人も立ち会って、売却した不動産の引き渡しに必要となる登記済権利証(登記識別情報)印鑑証明書、住民票などを渡すので、しっかり準備しておきましょう。
引き渡しのときの残金は売買代金の90%となっています。
たとえば、売却した不動産の売買代金が5000万円で手付金が500万円、住宅ローンの完済が4000万円とるれば、残金は500万円となります。
もらった現金はすぐ振り込むのがおすすめ
この残金を現金受領するときには注意しなければならないことがあります。
それは、引き渡し決済の後、受領したキャッシュを金融機関の中にあるATMですぐに振り込まなければならないということです。
間違っても、キャッシュを外で持ち歩くのは危険でなのでやめましょう。
外で現金を持ち歩いてしまっていて、盗難などにあったとしても誰も責任をとれません。
手数料も現金支払い可能
不動産の売り手が受領した現金を使って、不動産の売却にかかわった不動産屋への仲介手数料や司法書士への登記に関係する事務手数料などを当日に渡すことができます。
この場合、不動産の売り手にとって振込手数料の負担がないのがメリットです。
振り込み以外の支払いは事前に相談すべし
しかし、これらの料金をキャッシュで支払いたいのならば、事前に関係者に相談しておく必要があります。
それは、これらの料金を受け取る人はキャッシュでの受け取りをできるだけ避けたいと思っているからです。
やはり振り込みの方がその安全性や履歴確認ができるという点で利便性が優れています。
そのため、不動産の売り手は相手方の事情をよく考慮したうえで、支払方法に関して考えていく必要があります。
不動産売却は多額のお金が動く!決済こそ慎重におこなうべし
販売活動や内覧も不動産売却においてかなり重要な手続きですが、「絶対にミスをしてはいけない手続き」は、売買契約と決済です。
多額のお金が動く手続きは、結果に関係はありませんが、一歩間違えると大損につながります。
詐欺がおこりやすいのもこの2つの手続き時です。
事前に売買者間でルールを決めておけばトラブルが起こるリスクは抑えられますが、それでも小さなトラブルはやはり起きてしまうので、当日にどう振る舞うべきかのシミュレーションはしっかりおこなうようにしましょう。たとえば、銀行振り込みでかかる振り込み手数料は、数百~数千円程度ですが、どちらが負担をするかで揉めることも少なからずあります。
売り手からすれば、ここまで来て買い手に拒否をされてしまったら利益を得ることができないので、多少の損失は我慢したほうがメリットは大きいですよ。
勢いに呑み込まれず冷静に手続きをしよう
人生の中で、ここまで巨額のお金が動く場に出席したことのある方はほとんどいないでしょう。
だからこそ、慣れない場に出席して緊張をしてしまうかもしれません。
特に決済は立会人も多く、専門用語も多く飛び交う中で手続きが進行していきます。
はじめて不動産売却をする人などは勢いに呑まれ、わからないことがあってもそのままにしてしまうでしょう。
ただ、ここでわからないことを放っておくと、後々トラブルに巻き込まれてしまいます。
いくら初歩的な質問でも恥ずかしがらずに全て聞くようにしましょう。
