
不動産物件調査の流れについて徹底解説!依頼費用や依頼時に気を付けることを紹介
不動産売却の初期に、不動産業者によって物件を調査してもらいます。
→【図解付】不動産売却の流れ全9ステップを手順に沿って解説!全体図から必要事項まで完全網羅
訪問査定とも呼ばれるこの手続きは、無料一括査定などの簡単な査定(机上査定)とは違い、実際に担当者が物件に赴いてチェックをします。
調査をするのはプロなので、事前の片づけや清掃などは評価に一切含まないといわれます。
しかし相手も人間ですし、何よりこの不動産調査で算出された査定額が売り出し価格の基準にもなるので、なるべくならどんなところが重点的にみられるか事前に知っておきたいですよね!

物件調査の流れ
不動産売却を行う前に実施する物件調査は、以下の流れで実施していきます。
- 物件概要の聞き取り
- 現地調査
- 法務局調査
- 役所調査
- インフラ施設の調査
- 市場・取引事例調査
以上の6つの調査結果と訪問調査で出たデータを総合的に判断して売り出し価格を定めていきます。
訪問調査はいくらプロがおこなうとはいえ、業者の主観が入ってしまうので、仲介先によって価格は違います。
ここからは、上記6つの流れについて1つずつ解説して行きます。
物件概要の聞き取り
物件を調査する最初のステップとして、売主から物件に関する基本的な情報を聞き取ります。
- 不動産の種別
- 土地の広さ
- 現在の使用状況
- 住宅ローンの残高・借入先
- 税金や管理費の滞納状況
- 法定相続人の確認など
上記のことを売主に質問して、得た回答を基に物件概要の調査を進めていきます。
また、物件の引き渡し時に清算が必要な収益金や、賃貸借契約、不法占有といった第三者との関係についても把握し、付帯設備の確認と物件状況確認書の確認も行います。
聞き取り調査を進めて物件の全体像をつかみ、売却時に発生する様々なトラブル発生防止につなげていきます。
現地調査
次に、物件の現地調査を行います。
実際に売り出す物件がある現地に赴き、建物の位置、境界線、近隣の環境や道路状況などを確認し、地勢や交通アクセス、周辺施設の調査も行います。
この過程では、地図やインターネットでは得られない情報を得ることができ、建物の状態や騒音、ニオイなどの環境影響を実地に確認できます。
事故や災害の歴史も把握し、物件の安全性と快適性を評価します。
チェックする内容は、道路の舗装状況、敷地の高低差、街路樹などです。
特に道路幅(幅員)はしっかりと調べていきます。
幅員が4m未満の場合は、物件の取り扱いが困難になります。また、北海道など雪の多い地域では、8m未満だと自治体から除雪費用がおりないので注意しましょう。
➝札幌市の不動産を高値で査定・売却するコツ!売り出し時期に注意しよう
公図とのズレの確認
公図と実際にズレがあるかどうかも、厳しくチェックされます。
特に、土地の境界などはズレが起こりがちです。
公図とのズレがあると、近隣トラブルや売買トラブルが起こりやすくなります。
また、災害で被害を受けても保証を正しく受けられないといったデメリットがあります。
そもそも境界がない場合も
土地の境界を示す境界杭(標)は、場所によっては打ち込まれていないこともあります。
境界がしっかり確定されていない物件は売ることができないので、業者に依頼して確定してもらいましょう。
建物の状況
建物の管理状況なども、詳しくチェックされます。
特に見られるのは古い建物の基礎が残っているかどうかです。
こうした埋没物があると売却価格が安くなってしまいがちです。
また、水道がしっかり引かれているかどうかも調査の対象となります。
騒音・においのチェック
騒音やにおいなど、現地調査でしか確認できないものは、この場でしっかり調査されます。
地図で見ると工場や川が近くても、現地に行くと意外に騒音やにおいがしないということもあるので、しっかり対応してもらいましょう。
法務局調査
法務局での調査では、不動産の登記簿謄本を取得し、物件の所有者や抵当権の状況、共有名義の有無などを確認します。
また、公図や地積測量図も入手し、物件の正確な位置と面積を把握します。
この情報は、物件取引の透明性と信頼性を確保するために不可欠であり、誤りがある場合は売却が困難になる可能性があります。
また、必要に応じて自治体にも問い合わせ、正確な情報を入手します。
登記事項証明書とは?
登記事項証明書は、不動産の詳細な情報を記載している書類です。
表題部、甲区、乙区の3部に分かれており、地番・地目といった不動産自体の詳細内容から所有権、抵当権などの権利関係も記されています。
役所調査
市区町村の役所での調査では、建築基準法や都市計画法による制限、その他法令による制限を確認し、物件がこれらの法律に適合しているかを調査します。
また、道路状況やインフラ設備についても再確認し、物件のアクセスや利便性を評価します。
この情報は、将来的なリフォームや改築の際に重要となるため、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
また、前工程の現地調査で実施した道路調査を再度実施し、道路の種類や幅員などについて調査していきます。
道路調査
役所調査でも道路の調査がおこなわれます。
接道が公道か私道かをまず調査し、次に通行権の有無などを調べます。
もし接道が公道の場合は、土地測量にかかる費用が高額になります。
➝土地を売る時は測量・境界確定が必要?測量費用・流れを徹底解説
都市計画法・建築基準法調査
物件が法律に定められた規定内で収まっているかどうかの調査も行われます。
具体的には、以下の項目などがチェックされます。
- 用途区域
- 建蔽率
- 容積率
- 防火規制
- 高度地区
- 日陰規制
その他、農地法、景観法など、状況やエリアに応じた物件調査がおこなわれます。
インフラ施設の調査
水道、ガス、電気などのインフラ設備は、私たちの日常生活を支える重要な要素です。
インフラ施設の調査では、これらの設備の有無や状態を確認し、居住の際に必要な費用や手間を評価します。
飲料水や下水設備、電気やガスの供給状況を把握し、設備の更新やメンテナンスにかかる費用を算出します。
この情報は、物件の価値評価と直接関連しており、購入者にとって重要な判断材料となります。
ここからは、インフラ施設の調査の詳しい内容を見ていきます。
飲料水調査
水道局から資料を取り寄せて、配管の口径を調べます。敷地に配管自体が引き込まれていない場合、高額のコストがかかります。
状況によっていくらかかるか異なるので、負担金額もここで確認します。
電気調査
ブレーカーを確認し、何アンペアまで容量があるかをまず確認します。
また、電柱の位置や電線の引き込み状況、電線移動が必要かどうかなどを確認します。
ガス調査
都市ガスかプロパンガスかなど、利用されているガスの種類をまず確認します。
また、ガスメーターが取り付けられているかなどもチェックされています。
ガスの埋没図面はガス会社から取り寄せて確認されますが、埋没がない場合はガスボンベがしっかりあるかを確認していきます。
下水施設調査
下水道局から平面図を取り寄せ、下水管の接続状況などを調べます。
浄化槽がある場合は、点検業務記録なども合わせてチェックされます。
市場・取引事例調査
最後に、市場価格と取引事例を調査して、物件の適正価格を判断します。
不動産市場は常に変動しており、土地の人気や需要によって価格が大きく変わるため、周辺の物件価格や過去の取引事例を調査して市場動向を把握します。
また適切な売出価格を導き出すために、周辺物件の値段を参考にしながら、売りに出ている物件数や値下げ実績なども調査していきます。
これにより、適正な価格で物件が売買されることを目指し、購入者と売主双方の利益を守ります。
売却時の物件調査は種類によって内容が異なる
売却前に業者がおこなう調査は、マンション・家・土地といった不動産種によって重点が異なります。
家や土地の場合は、境界の確認などが特別必要ですが、マンションは特別必要ありません。
その一方で、マンションは居住者でも管理の実態がわかりにくいので、規約や管理会社の確認を特別おこなう必要があります。
それぞれの不動産が何を求められているかによって、調査の内容も変わるということを知っておきましょう。
マンションの調査内容
マンションは、部屋の状況の他にも以下の内容を調査されます。
- 共用スペース(ポスト、廊下、駐輪場など)の状況
- ゴミ収集場所、ルールについて
- バリアフリー環境が整っているか
- 管理規約(ペット飼育や楽器演奏、喫煙などの可否)
- もともと付いていた設備の状況
上の項目はマンション特有のものとなっており、競合物件に差をつけるため、誤情報を防ぐためにも必要となってきます。
ただ、共用スペースや管理については売り手自身ではどうすることもできないので、まず不動産業者の無料相談サービスを利用して、どうすれば良いのかアドバイスを聞いておいたほうが良いでしょう。
家・土地の調査内容
家や土地の調査内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 建て付けや雨漏りなどについて
- 近隣建物の状況について
- リフォーム状況について
- 境界の確認
- 埋没物の確認
- 接道状況の確認
家の場合は、マンションよりも建て方に種類があるので、まずはそうした構造を調べることから始めます。
また、道路との接し方によって支払わなければならない税金の額も変化するので、しっかり調査されます。
築年数の経った家は壊されて更地にして利用される可能性が高いので、そうした場合は、より土地環境に焦点をあてた調査がおこなわれます。
物件調査にかかる費用はいくら?
不動産売却を行う前に実施する物件調査の刷らす費用は、調査依頼を出す会社によって依頼費用が異なるため、一概に同じ価格で引き受けてくれるわけではありません。
以下は、物件調査を引き受けているある不動産会社が提示している調査費用になります。
調査項目 | 調査費用 |
---|---|
現地調査 | 約42,000円 |
法務局調査 | 約31,500円 |
役所調査 | 約52,500円 |
ガス・水道・排水・電気の諸設備調査 | 約31,500円 |
建築確認証明書 | 約21,000円 |
道路境界関係調査 | 約10,500円 |
土壌汚染可能性調査明書 | 約10,500円 |
合計 | 約199,500円 |
上記例の場合、調査依頼費用は約20万円の費用が発生します。
また調査依頼を出す会社や物件の種類・規模によっては、この倍の費用が掛かるものとみていいでしょう。
物件調査を依頼するときに気をつけたいこと
不動産会社が物件調査をおこなう際に、しっかりした調査を怠っていると後でトラブルに巻き込まれる可能性が高いです。
物件調査は大まかな部分が分かっていれば良いケースも多く、時間をかけすぎるのも良くありません。
- 売主の本人確認
- 法令による制限がないかの確認
- 利権関係の確認
ここでは、力を入れて調査をすべきポイントを紹介していきます。
売主の本人確認
不動産の取引において、売主の本人確認は非常に重要なプロセスです。
これを怠ると、詐欺にあうリスクが高まります。
また地面師詐欺と呼ばれる事件では、売主を装った詐欺師が不動産を売却し、巨額の被害をもたらします。
本人確認の際には、公的な身分証明書の提示を求め、それが本物であるかしっかりと確認する必要があります。
また、本人確認だけでなく、売主が物件を売却する権利を有しているかも確認する必要があります。
認知症を患っている売主が不正な取引に巻き込まれるケースもありますので、十分な注意が必要です。
法令による制限がないかの確認
不動産の取引において、物件が法令の制限を受けていないか確認することも重要です。
建築基準法や都市計画法、国土利用計画法など、さまざまな法律によって物件の使用が制限されている場合があります。
例えば、特定の地域では建物の高さや建ぺい率が制限されている場合があり、これを守らなければ建築許可が下りない場合があります。
また、農地法によって、農地を他の目的で使用することが制限されている場合もあります。
これらの法令に違反してしまうと、罰則を受けるだけでなく、取引自体が無効になる可能性もありますので、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
利権関係の確認
物件には様々な権利が絡むことがあります。
抵当権や地上権、賃貸権など、これらの権利が物件に付着している場合、物件の売買に影響を与える可能性があります。
権利関係を正しく把握しておかないと、後でトラブルになることがあります。
例えば、抵当権が設定されている物件を購入した場合、抵当権者が権利を行使すれば、物件は競売にかけられてしまう可能性があります。
これを避けるためにも、物件の権利関係をしっかりと確認し、必要であれば権利の解除や移転を行う必要があります。
不動産登記簿だけでなく、実際の利用状況を確認することも重要です。
物件調査に関する質問
ここでは、物件調査を依頼する前に解決しておきたいことや知っておきたいことを質問形式で解説して行きます。
物件調査を効率よく進めていく方法はある?
物件調査を効率良く進めるためには、事前準備が重要です。
例えば、調査対象となる物件の基本情報をしっかりとリストアップし、どのような点を重点的に調査するか計画を立てておくことが大切です。
また、不動産取引ではトラブルが発生することも多いので、購入する物件の法律上の制約や権利関係を把握しておきましょう。
合わせて、物件調査では可能な限り、詳しい質問をすることも大切です。
たとえば、「××はありますか」といったような「ある/なし」といった簡素な回答が返ってくるような質問ではなく、具体的な回答が得られるような質問を用意しましょう。
物件調査を依頼するときに必要な物はある?
物件調査を依頼する際には、複数の書類が必要になる場合があります。
例えば、登記簿謄本や公図、地籍測量図などの法的な書類をはじめ、物件の詳細な情報を記した図面や、調査を依頼する者の身分を証明する書類などが挙げられます。
また、委任状が必要なケースもありますので、事前に確認しておくことが大切です。
不足なく必要な書類を揃えることで、スムーズに調査を進めることができます。
さらに調査時に効く質問をまとめたリスト表やメモ帳を用意しておくのもおすすめです。
物件調査を依頼するときに気を付けることはある?
物件調査を依頼する際には、依頼する業者の信頼性を確認しておくことが大切です。
経験豊富で信頼できる業者であれば、調査結果の正確性も高まり、後々のトラブルを防ぐことができます。
また、調査内容によっては専門的な知識が必要な場合もあるため、依頼する業者がその分野に詳しいかどうかも確認しておくべきです。
費用に関しても明確にしておくことで、後々のトラブルを避けることが可能です。
これらの点に注意して、慎重に業者選びを行いましょう。
質問を物件調査前に考えておく
多くの不動産業者では、査定をする前に無料で相談できるサービスを提供しています。
このサービスを、売り手の方はなるべく利用することをおすすめします。
訪問調査で初めて物件の状況について知るとなると、そこから業者の方も更なる調査をしなければならなくなり、効率が悪いです。
事前に簡単な疑問を解決しておき、業者に現物を見せた上で答えてほしい質問は調査前に準備しておきましょう。
不動産調査の担当者の対応を見て、本当に媒介契約を結んでも良いかをチェックするくらいの余裕があれば良いですよね。
