name:萩原パコ
1988年生まれ。IT企業勤務を経てフリーランスに。
不動産・暮らし・事件などを幅広く取材する。
南米・欧州・アジア・中東など世界数十か国での取材経験あり。
現在は「コロナ×社会」をテーマに取材へ奔走している。
Profile
name:萩原パコ
1988年生まれ。IT企業勤務を経てフリーランスに。
不動産・暮らし・事件などを幅広く取材する。
南米・欧州・アジア・中東など世界数十か国での取材経験あり。
現在は「コロナ×社会」をテーマに取材へ奔走している。
新型コロナウィルスの影響で2020年開催の東京オリンピックが2021年に延期(本当に開催されるのか?)した訳ですが、私の友人は2018年に「オリンピックを開催するため、交通改善のために立ち退きが確定した」という通知をいきなり受け、そのまま立ち退き料を渡されてマンションを追い出されました。
築年数が比較的経った分譲マンションですが、2年後の今はすでに建て壊しが終わり、そこは更地になっています。
今は、大家本人もこの仕打ちに驚き、困り果てています。
若い頃に1964年の東京オリンピックを経験したおばあさん大家で、2020年の開催は喜んでいたものの、立ち退きが確定してからは「オリンピックがなんだ!」と怒るのがクセになってしまいました。
「立ち退きって、本当に急に来るんだな」というのが友人の感想です。都からA4のコピー用紙が一枚送られてきただけで、ほぼ退去は確定で覆すのが難しい状況でした。
住民は当然猛反対で、都の職員に抗議をしたり、周辺のアパートでは訴訟を起こしたりするケースもあったようです。
この時に友人が最も印象的だと言っていたのが、「そうは言ってもオリンピックがあるので…」という言葉。
「現実問題として、公共の福祉のために国をよりよくするため工事や立ち退きがおこなわれるのは納得できるけど、オリンピックのようなスポーツイベントに一般人が蔑ろにされるほどの価値はあるのか…」という友人の意見には、かなりクルものがありました。
例えば郊外から都市部への交通の弁が良くなり、それで多くの人が幸せになれるなら少数派は我慢できるのかもしれませんが、友人は「東京オリンピックを想定した霞が関周辺の交通整備のため」という、本当に立ち退きが必要なのか良く分からない理由で住み慣れた土地を追い出されてしまいました。
結局のところ、オリンピックをゴリ押しする国や自治体によって、オリンピックにあまり興味のなかった友人は追い出されてしまった…ということになります。
そしておそらく、2021年に延期されたオリンピックが成功したとしても友人は何の利益を得ることもできない可能性が高いです。
私なんかはオリンピック招致の安倍総理(当時)のスピーチで「福島などの被災地を元気にする」とか言っていたのを聞いて、別に興味はないけどそれならいいなあ…と思っていたのですが、まさか開催に際してこんなに近場の人が不利益を被ることになるとは思いませんでした。
オリンピックをやるか・やらないかに関するいろいろな情報を見ていると「観光客が殺到することで感染爆発のリスクがある」「無理に開催しても景気は回復しない」という話を聞いて、素人目線でも納得できる部分は多々ありました。
もしかしたら、「オリンピックやったらすごいことになるから!夢いっぱいだから!」という曖昧な理由で友人が追い出されて、今になって「今さら後戻りはできないから」という理由で開催を強行しようとしていると思うと、すごくやり切れない思いになります。
最近TV離れや政治離れが進んでいるとよく言われますが、これから実際にTVが「夢のオリンピック!!!」とか言って宣伝をしまくり、終わった後に「ほら、やる前は不安とか言っていたけど、結局楽しんだでしょ?」みたいなメッセージを投げかけられたとして、まあ納得はできないよなぁというのが正直な本音です。
今のテレビにせよ、政治にせよ、普通の人のホンネとやってることがどんどん離れていっているのが日本の現状のように感じました。
ご存じの通り、東京オリンピックは2021年に延期となり、開催を理由に追い出された人たちは形容しがたい気持ちなのではないかと思います。
私の友人も同じ境遇ですが、「自分が追い出されるくらい価値のあるイベントなら、絶対開催して成功しないと困る」と、ボランティアの参加等も検討しています。
結果的に、この友人が私の周りでは最もオリンピックの開催を望んでいる人となったのも皮肉に感じます。
一体、来年の東京オリンピックはどんな形での開幕・幕引きとなるのでしょうか。